独立祓魔官の愛ある日常 ~黒の使役式~

ハローハロー、漆黒猫でございます。

かなり昔にアニメを見て以来、じわりじわりと来ていた東京レイブンズ。

ぶっちゃけ、鏡伶路氏の外身も中身も大好物なのです、はい。
ナニあの武闘派ヤクザ陰陽師・・・!!
ガラ悪いどころじゃないし・・・!!

アレだけ問題行動起こしまくってて国家公務員とかっ!!
能力だけは人一倍とかっ!!
アレか、実力さえあればどんだけグレてても許されるのかっ?!

宮地室長や倉橋長官も、頭抱えつつ評価しちゃうとかどんだけだっ!!

・・・思わず叫んでしまいましたが。

ちなみに、漆黒猫はアニメしか見ておらず、且つ、そのアニメもウロ覚えです。
どうせ隙間ネタにしか反応しない猫なので、読んでても多分同じかと・・・。

ウィキ先生が居るから須らく良し。

あと、鈴鹿ちゃんとのセットが好きです。

義兄妹ネタが好物な漆黒猫。
デレデレシスコンブラコン義兄妹も美味しいですが、
お互い口を開けば悪態の応酬、でも任務となれば最高のコンビ。

そんな義兄妹も捨て難い・・・!!

あ、大友先生は呪捜官ポジションで、禅次郎さんや天海部長繋がりで、
祓魔官たちの輪に、当然のよーに入ってくる感じです。

鈴鹿クンとも『故に』自然な会話が・・・!!
と、強引にまとめてみる。

お楽しみ頂ければ幸いです。

独立祓魔官の愛ある日常 ~黒の使役式~

 目が痛い。
 視線が刺さる。

「鏡クン・・・道理で女っ気がなくても平気で居ると思うたら・・・。
 そういう趣味やったんやね。」

「鏡・・・何というか、まぁ・・・悩みがあったら相談に乗るぞ、うん。」

「ねぇよっ!! つか大友っ!
 テメェはコイツに会った事あんだろがっ、シレっと誤解を振りまくなっ!!」

 十二神将イチの問題児・若頭的なナニかにしか見えないヤクザ幹部。そんな男に凄まれても、鍛えられ引き締まった腰元に『少女』をひっ付けているのではコワさも半減だ。
 年の頃は13、4といった所か。
 年齢1ケタの『ガチ幼女』ではない分妙にリアルで、むしろ別の意味でヤバさが漂う。

「ナニ騒いでるの? 宮地のヒゲが呼んで・・・、」

 通りすがりの『神童』が、言いかけた用件を噤んでマジマジと見つめる。
 『鬼喰い』の腰に両腕回して、しっかりと抱きつく女の子・・・『鈴鹿と同じか少し下、くらいの年の』女の子の姿を。
 艶やかな黒漆の髪と瞳を持つ、小柄で和風の美少女だ。今時、ここまで混じり気の無い『黒』の瞳を持つ娘は、そうは居まい。華奢な体格に、余計な飾りを一切排した、黒一色のシンプルなワンピースがよく似合う。伶路の趣味だろうか、唯一、両の耳にひとつずつ、小さいながら綺麗なイヤーカフスが光っていた。

『・・・・・・。』

 無言で回れ右した鈴鹿は、猫被り全開で駆け出した。

「弓削せんぱ~い☆ 鈴鹿、貞操の危機☆☆」

「その自意識過剰ごと死ねクソガキっ!!!!」

 独立祓魔官。十二神将。
 それはつまり、変人の巣窟。個性の極限。悪態のエキスパート集団。
 モブ陰陽師たちからは、『実にシンプルに』そう呼ばれていた。



 自分の式神を持っていない陰陽師は居ない。
 と言い切ってしまうのも乱暴な話だが、実際、市販されている機甲式や捕縛式まで含めて考えると、呪符だの何だのだけで戦っている呪捜官や祓魔官の方が珍しいだろう。
 護衛の為の式・護法式だの、個別に降した使役式だの、そういうのを持つか、持たぬか。その辺りの違いである。霊力の多寡だけでなく、自身の戦闘スタイルや個人的な趣味(護法式を持つ実力はあっても、傅かれるのが嫌だから置かない、とか。)が関係する話だ。陰陽師ごとに、その選択は千差万別である。
 鏡伶路という男の場合は、使役式しか持っていない。それも『鬼』一択だ。
 己の陰陽術ひとつで強大な鬼を降し、使役式として契約を交わす。そうする事で自分との霊的パイプを作り、パイプを通して『鬼』の力を己が力として吸い上げる。鬼に、自分の力の裏打ちをさせているのだ。
 それが、彼の二つ名『鬼喰い(オーガ・イーター)』の由来。
 二つ名を知っている者なら大抵の者は知っている、彼の戦闘スタイル。
 の、筈だったのだが。

「こンの節穴神童が・・・。
 明らかに人外の霊気だろ? 俺が『鬼喰い』って知ってるだろ? 俺が連れてる人外って時点で、鬼確定じゃね?」

「謝んないわよ、あたしは。日頃の行いが悪過ぎるアンタが悪い。
 思わず『ロリコンの鬼喰いが、いたいけな少女に催眠掛けて密室で扱き使い、あまつさえ夜もベッドの中でご奉仕させてるに違いない。』とか誤解しても、あたしは全然悪くない。」

「いや、悪いよなっ?! それは明らかにお前の性根が悪いよなっ?!」

「せやなぁ、鈴鹿クンは悪ぅない。全然、全く、悪ぅないでホンマ。」

「そういう妄想って、コンマ何秒の速さで脳内で構築されるよな。」

「木暮先輩、せめてアンタだけでも常識人で居て欲しかったんだが・・・。」

 呻く伶路は、謝罪要求は取り敢えず諦めた。誤解が解けただけでも良しとするかと、隣で抹茶パフェの白玉を突っつく『少女』を見やる。
 所は陰陽庁・祓魔局。職員専用食堂。
 昼も昼、午前の早い時間なせいだろう。人影はまばらで、せいぜい夜勤明けの連中が眠い目をこすりながら軽食を摂っている程度だ。
 ここ数日霊災が多く、祓魔局でも仕事が立て込んでいる。普段はほっつき歩いている伶路でさえ駆り出されていて、今日も既に泊まりが決定していた。
 『彼女』には、その為のお泊りグッズを持って来てもらった『だけ』なのだ。シェイバに頼まなかったのは、アレを単品で出歩かせると必ずトラブルを起こすから。そもそもアレは禁呪指定をカッ食らったせいで、今も倉庫に眠らされている。禁呪指定されている式神を、お泊りグッズを持って来させる為だけに、禁を破って形代から取り出せと言うのか?
 本当に、明白に。ただ、それだけだ。
 疚しい所など欠片も無いその現場を、陣と禅次朗、それに鈴鹿に見られたからといって、伶路に何の非があろう? いや、無い。
 地味にアイデンティティの危機を感じた伶路は既にほったらかしで、『少女』の前に座った鈴鹿は頬杖をつき、興味津々で一挙一動を眺めている。
 ちなみに『少女』は、初見から一言も声を発していない。
 伶路曰く『声に力がある鬼でな。女鬼は貴重だし、シェイバの二の舞にならない内に自主規制して封印してる』のだそうな。
 『あの』伶路に自主規制を語らせるとは。
 それだけ大事な子・・・使役式、という事なのだろう。それもまた、鬼をガソリン程度にしか考えていないらしい伶路には珍しいと、鈴鹿は思う。この男でも誰かを、それもこんなか弱そうな女の子を、そんな風に大事に出来るのか。

「でもいいな~。鏡のクセに。
 使役式が居れば、急な宿直も着替え持って来てくれたりするんだ? あたしも使役式か護法式、欲しいな~。
 もしかして家事もやってくれたりするの? お弁当作ってくれたりとか?
 うわっ、似合わない、鏡のクセにっ♪」

「テメェ、マジで年上に対する口の利き方直せクソガキ。
 俺ンとこは、他より鬼の数が多いからな。家事全般に加えて、他の鬼たちの仕切りも任せてる。暴走したシェイバ相手に力負けしねぇのは、俺の他はコイツだけだ。」

「何体の鬼が居るんだっけ?」

「シェイバ含めて5体。ま、アイツは禁呪指定されてて普段家に居ねぇから、4体だけど。コイツ以外の3体は異界に引き籠ってて、滅多に人界に来ないしな。
 毎日顔突き合せてんのなんざ、実質コイツだけさ。
 クソガキ、お前、使役式が欲しいの? テメェの折り紙遊びには要らねぇだろ。」

「そ。戦略上必要ないから、欲しくなる度に我慢してるんだけどね~。
 『こういう時』に届け物してもらってる他人を見ると、無性に羨ましくなるっていうか。」

『・・・・・。』

 さりげない口調だし、実際、鈴鹿本人に悲劇ぶった『構ってオーラ』は欠片も見当たらないのだが。その分、年長者たちから見た『痛ましさ』は割増になる。
 いくら『史上最年少』『神童』と褒めそやされても、振り返った時、既に鈴鹿の後ろには誰も居ないのだ。
 怪我して帰った時、どうしてるのかな。
 こういう時、さりげなくフォローするのは難しい。不自然だろうが何か言わなくちゃ、と焦った禅次朗より先に、伶路が口を開いた。
 いつも通りの、不機嫌そうに酒焼けした声だ。

「・・・どうしても気になるってんなら、護法式にしとけ。
 使役式だと維持するだけでも霊力消費がハンパねぇ上に、個性が強くて馴染むのに時間がかかる。折り紙遊びに霊力回したいテメェの戦闘スタイルには合わねぇよ。お前、我が侭だし。
 護法式なら細かいトコまでカスタムメイド出来るだろ。
 自由意志を持たせたいって言うなら、AI搭載して人格設定できるヤツもあるぜ。無駄にクソ高(た)っけぇから、そこらの浮遊霊でも依り憑かせとく方が楽だがな。
 ・・・何なんでしょうねぇ先輩方。その生ぬりぃ視線は。」

「いやいやぁ~??♪♪♪
 『あの』鏡クンも、『妹分』の前じゃ格好付けはるんやなぁと。
 なぁ、禅次朗?」

「新人時代から『凶犬』振りに散々煮え湯を飲まされ・・・もとい、手を焼かされた俺たちにとっては感涙モノだよ、鏡・・・。
 『義理の妹』って、何かロマンある響きだよな☆」

「ねぇよっ! どんなロマンだよこの変質者どもっ!!! こんな口の悪いクソガキが妹でたまるかっ!!!!
 食い終わったなら行くぞ、那智(なち)っ!!」

 ロリコンはお前らの方じゃねぇかっ! という冷たい視線を、隠しもせずに先達2人に突き刺してから、伶路は乱暴に少女の名を呼ぶと食堂を出て行った。
 お泊りグッズの入った紙袋を大切に胸に抱き締め、伶路の高い背を一心に見上げ、小走りに付いて行く少女。
 犬だ。犬が居る。それも、小型犬が。
 金髪碧眼のシェイバがヤンデレ・ゴールデンレトリバーなら、あの和風美少女は思慕全開の一途なデレデレ・ポメラニアン(黒毛)だろう。
 那智。
 この業界の人間が、この言葉で連想するのは・・・那智大社。と、那智黒石。最高級の碁石や硯石の材料として超有名な、アレだ。
 鈴鹿はあの使役式の少女の、美しい黒髪を思い出した。それはもうサラッサラの、艶々の美髪。黒いワンピースも、よく似合っていた。
 『那智』という名は確かに、黒を纏う彼女には似合いの名ではあるのだが・・・。
 別の違和感が『神童』を襲う。
 即ち『そんな雅やかな名前を己が使役式に与えたのが、『あの』粗野で粗暴で乱暴で、5分に1回はシェイバを殴り、蹴り、問題行動多すぎて額に派手なバッテンを与えられても猶、問題行動を繰り返す『あの』ヤクザ野郎である。』という凄まじい違和感。

「前から思ってたけど・・・鏡って、結構ネーミング魔人よね。『髭切』が『シェイバ』だったり。普通に『髭切』って呼べばいい気がするんだけど。
 あの子の名前だってどうせ鏡が付けたんでしょ?
 マジ似合わなさ過ぎ。あのバッテン頭の何処からあんな綺麗な名前思い付くんだか。」

「いやいや、鈴鹿クン。
 あの子ぉは、アレで中々教養人なんよ? 実技だけじゃなく、古典の知識だの儀式事にも精通しとるしな。いや、褒める訳やないけども。
 むしろ指導官だった頃の、僕の教えが良かったんやろけども。」

「武闘派ヤクザなのは確かだけど、気骨も根性もあるんだよ、アイツ。勉強家で、陰陽の理に『だけ』は真摯に向き合ってるトコは、もっと評価されてイイと俺は思う。
 ま、横道に逸れそうになったら、俺がちゃんと引っ張り戻すってのもあると思うけど。」

「・・・取り敢えず、いつまでも『鬼喰い』が問題児のまんま成長しない理由が判った気がするわ。」

 『36の三羽烏』の噂は、鈴鹿も知っている。その内2人から日々薫陶を・・・ある意味で『英才教育』を施されているのだ、伶路は。元々あったのであろう素質を鍬で掘り返したのは陣、日夜せっせと水や堆肥を施しているのは禅次朗だろう・・・無自覚に。
 反骨精神が収まらない訳だ。
 自分の事は全力で棚に放り投げて、鈴鹿は上司の心労に黙祷を捧げた。



                   ―FIN―

独立祓魔官の愛ある日常 ~黒の使役式~

独立祓魔官の愛ある日常 ~黒の使役式~

東京レイヴンズ × (鏡伶路&大連寺鈴鹿)× 式神 + 大友先輩 + 木暮先輩。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-13

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