改変童話-オオカミ少女は赤ずきん-

改変童話-オオカミ少女は赤ずきん-

改変童話-オオカミ少女は赤ずきん-

ある村に赤ずきんという小さな女の子が住んでいました

今日は天気もいいので一人で散歩にでかけます

「ランランラン♪わ・た・し・は~赤ずきん~♪ランランラン♪」
赤ずきんはを歌いながら気分よくスキップしています
しかしその途中 オオカミにでくわしました 小さな子供のオオカミです

「まあかわいいわんちゃん 迷子かなー こっちにおーいで!」
赤ずきんは手を差し伸べました

ガブリッ!

子供オオカミは赤ずきんの手に噛みつきました
「痛!やだ!ちょっ・・・と・・・離してよー!」

腕を引き離そうとしましたが引き離そうとすればするだけ 噛みつく力が強くなっていきます
「や・・・だ・・・ああああああ!!!」

声にならないほど赤ずきんは叫びました しかし周りには誰もいません

おししいおいしいムシャムシャガツガツと

子供オオカミに食べられてしまいました

子供オオカミは食べてるうちに気づいたら赤ずきんの顔になっていました 体も人間のそれになっていました

「あ・・・れ?」

人間の姿になった自分にびっくりして その場に倒れてしまいました



「赤ずきんや!赤ずきんや!」

声が聞こえてきました 子供オオカミは目を覚ましました

「にん・・・げん!!」
子供オオカミは人間に襲いかかりました

勢いよく

首筋にかぶりついたのです

「おやおや 赤ずきん 怖かったんだねえ よしよし いい子だよ おばあちゃんがついてるからね」

赤ずきんの体では噛みちぎる力はなく 少し歯のあとが残る程度です

赤ずきんのおばあちゃんはなだめました

「う・・・うるさい!人間!わたしはオオカミだ!!離せ!」

子供オオカミは必死に抵抗して、おばあちゃんの家から飛び出していきました


なぜこんなことになってしまったんだろう

初めて独り立ちして山を降りた

初めて人間を食べた

まさか人間になるなんて思わなかった

丈夫な牙がない

よく効く鼻がない

速く走れる足がない

こんな体じゃ・・・何も食べれない!

そんなことを思いながら走り続けます


走り続けられませんでした

「山がこんな遠く感じるなんて・・・」

子供オオカミは疲れてきたので木の影で休もうとしました

「ハハハハ!うまそうな人間だなあ!」

オオカミです 体がひと回りもふた回りも大きなオオカミがそこにはいました

「ま まて わたしはオオカミだ ちょうどよかった 助けてよ 人間を食べたらこんな姿になっちゃって・・・」
子供オオカミは心を落ち着かせて必死に話します

しかし殴られました

大きい前足で

子供オオカミは木に叩きつけられました

「餌が喋るなよ 訳のわからないことをいいやがって」

オオカミはイライラしていました

子供オオカミの体は動きません

「ちが・・・う わたしは・・・」

体を動かせません

ああ 人間の体はなんて脆いんだろう

簡単に骨が折れて 簡単に血をだす

仲間に食べられて 死ぬのか わたしは 人間の姿で

人間なんか食べなきゃよかったな

バンッ!

と銃声が響き渡りました

「ぐあああ!め・・・目がああああ!い・・・痛ええ!なんだあ!!」
オオカミは右目にダメージを負いのたうち回りました

バンッ!バンッ!バンッ!

銃声が続けて二発三発

「が・・・ちくしょおおお!!」
オオカミは慌てて逃げていきました

「・・・・?」
子供オオカミは何が起こっているのかわからず 動けないまま震えていました

「だ・・・大丈夫かい!?赤ずきん!しっかりおし!りょ・・・漁師さんや! 赤ずきんを運んでやってください!」
慌てて駆け寄ってきたのは赤ずきんのおばあちゃんです

「こりゃあひでえ!可哀想なことを 早く赤ずきんちゃんを手当てしなければ!!」
漁師と呼ばれた男は赤ずきんを担ぎました

家に村一番の医者を呼び手当てを施しました


「ほんとに危ないとこでした ですがもう大丈夫 安静にしていればしだいに完治いたしますよ」
医者は言いました

「生きててよかったよー!赤ずきん おばあちゃん!おばあちゃんね!心配で心配で心臓とまりそうだったよー!!」
「まったくだ ばあちゃんが赤ずきんを探してくれと 言いに来た時は何事かと思ったけど どうやら拳銃を持っていって正解だったみたいだな」
おばあちゃんと漁師は心配そうに赤ずきんを見ています


何故こいつらは優しくするのだろう

オオカミの世界だとありえない

見殺しだ わたしなんか

心配してくれている

泣いてくれている

なんか あったかいな

子供オオカミはそう思いながら眠りにつきました



その夜子供オオカミは目を覚ましました

「起きたら元に戻っているなんてことは・・・ないか・・・体も痛い・・・」
起きたらオオカミの姿に戻っていることを少しは期待していたので 少しショックを受けました

「起きたかい? 赤ずきん おいしいご飯を作っているのよ 食べれるかい?」
どたどたとおばあちゃんが近くによってきます

おばあちゃんはスプーンでスープをすくって子供オオカミに飲ませようとしました

子供オオカミは不振がりました

しかし匂いを嗅ぎ 口に運びました

「・・・おいしい」

子供オオカミは久しぶりに口を開きました

こんなにおいしいもの食べたことない

でも懐かしい味だ

きっとこの体がそう感じてるんだろう

「もっと・・・食べたい」
子供オオカミは言いました

「おやおや まだまだあるからたーんとお食べ」
おばあちゃんは笑いました

この体は愛されてるな

幸せ者だな

いっそ赤ずきんのフリをするのも悪くないのかも

そう思ったとき

「あなた ほんとに赤ずきんかい?」
おばあちゃんは聞きました

「え?いや・・・わたしは・・・」
子供オオカミはびっくりしました

わたしは・・・なんだろう・・・

オオカミでもない

人間にもなりきれてない やはり このままいてもいつかはばれる いっそ逃げ出してしまおうか

いや・・・わたしは・・・

「・・・ごめんよ 赤ずきん 変なことを聞いたね」
そう言うとおばあちゃんは食器を洗いに行きました

「いや・・・わたしはオオカミだ」
全部話してしまおう

おいしいものを食べさせてもらった礼だ それくらいの情は ある

全て話しました

自分はオオカミで

初めて山を下り

初めて人間を食べ

食べた赤ずきんの姿になってしまったこと


「そうかい・・・うすうす・・・気づいてたよ 様子がおかしかったからね」
おばあちゃんは悲しそうな顔をして言いました

「・・・追い出すか?」
子供オオカミは聞きました 下手したら殺されるんじゃないかと内心びくびくしながら

「あなたはどうしたいんだい?赤ずきんのことはすごく悲しい・・・あなたを許せないわ だけどあなたを追い出せば またあの大きなオオカミに襲われるかもしれないよ」
なんとおばあちゃんは 孫を食い殺した本人を心配するようなことを言うのです

「・・・できることならオオカミに戻りたいけど・・・戻る方法が分からない」
正直に答えました

「じゃあ よかったらこれからもこの家で暮らさないかい?暮らしながらオオカミに戻る方法を探しましょう」
おばあちゃんは言いました子供オオカミの顔をじっと見つめながら

「わたしは・・・おまえの大事なやつを殺した それに 元に戻ったらおまえを食べるかもしれないぞ?」
子供オオカミは言いました

「かまいません 二度と赤ずきんを死なせるほうがよほど辛いからね」
そう言うとおばあちゃんは子供オオカミに抱きついてきました

ギュッと

その声は震え 目には涙がたまっていました

「・・・わかった おまえと 住んでやる」
おばあちゃんの感情に気圧されて 子供オオカミはうなずきました

でも悪い気はしないと 心の中で思いました

「ここで暮らすのだったら その言葉遣いは直さないとね 赤ずきん あとわたしはおまえじゃなくておばあちゃんだよ」
おばあちゃんは子供オオカミの頭をぽんぽんたたきながら言いました

「わかった・・・よ おばあちゃん」
子供オオカミはしどろもどろになりながら答えました


人間のこと 少しは分かった気がする

ただの食料じゃない

生きているんだ

そして生かしてもらった

人間にも家族はいる

わたしが家族になれるか分からないけれど もう少し このおばあちゃんのそばにいてあげよう



そして3年もの月日が流れました
成長した子供オオカミ もとい赤ずきんはおばあちゃんに頼まれて買い物をしてきました

「帰って来たよ!おばあちゃん!おばあちゃんの大好きな赤ワインとパンをたくさん買ってきたんだよ」

赤ずきんは勢いよくおばあちゃんの家の扉をあけます

「おやおや赤ずきん すまないねえ 楽しみにしていていたよ こっちにおいで」

おばあちゃんが手招きします すると赤ずきんはあることに気づくのです

「わっ!どうしたの?その体 大丈夫?」
赤ずきんはびっくりしました なんとおばあちゃんのお腹が大きくなっているのです さらには体も大きくなっていて 体にたくさんの毛が生えています
そして右目には十字の傷がありました

とててててっと心配して側に近寄りました

「赤ずきんや 何も心配いらないよ ほらっ食事も作れるくらい元気さ ほーらお食べ」

テーブルの上には焼いたお肉と赤い飲み物が置かれていました

「少しおばあちゃんの匂いがする 」

肉の匂いを嗅いだ赤ずきんは言いました

続いて飲みものの匂いを嗅ぎました

赤ずきんはおばあちゃんを見つめました

「おやおや どうしたんだい赤ずきん?」
おばあちゃんが首を傾げます

赤ずきんはおばあちゃんを見つめます

見つめます

見つめています

「あなたはだれ?」
赤ずきんは聞きました

「おばあちゃんだよ。顔を忘れてしまったのかい?」
おばあちゃんは笑いながらで答えます。

「違うよ おばあちゃんはこのお肉だから」

「あなたはだれ?」

もう一度聞きました

おばあちゃんは笑いました

「ハハ!ハハハハ!よく気づいたな。俺はオオカミだ!お前のおばあちゃんはもう腹のなかさ!」

「次はお前を食ってやる!!」
と おばあちゃんに化けたオオカミは赤ずきんに襲いかかりました!

「知ってるわ わたしもあなたを食べたかったもの ずっと ずっと」

赤ずきんは持ってきた赤ワインの栓を抜きました

「なんだ!?それは・・・嫌なにおいだ…クラクラする」

オオカミはその場に崩れ落ちました

「おばあちゃんはね お酒が大の苦手なの 匂いを嗅いだだけで酔っぱらって・・・ほんといつも大変なの」
赤ずきんは説明しました

「特にオオカミは鼻が効くから強烈でしょう わたしたち狼にはね」

赤ずきんは赤ワインを床にバラまきました

「オオカミ?だと?お前が!?」

オオカミは驚きを隠せない様子で赤ずきんに問いました

「赤ずきんだよ 今はね でも昔は狼だったわ まだまだ子供だった そう 何も知らなかった いえ 今も知らないままなの どの本にも書いてなかったわ オオカミが人間を食べたら人間になるなんて信じられる?もうこれは呪いみたいなものだと思ってるけど」
「ありえないよね あなたのまぬけな変装を見てたらよけい思った おばあちゃんの服を着ただけで騙されるほど人間はバカじゃない」
赤ずきんは這いつくばってるオオカミを見下しながら話しました

「おまえ・・・!俺をバカにしてるのか!だが・・・おまえ もしかいて いつか殺し損ねたガキか!あのときも自分がオオカミだとか言っていたな・・・!」
オオカミは怒りました

「・・・バカのくせに覚えてるのね そうよ これも運命かもしれない」
そう言うと持っているバスケットの中からマッチを取り出しました

「この右目の傷がうずいてるからなあ!!」
「ハッ 食べたらその人間の姿になる?なるほどその姿でババアを騙し 住み着いてたわけか だが残念だったな ババアは俺に食われて死んだ おまえは住む場所がなくなったというわけだ」

オオカミは哀れむようにして言いました

「おばあちゃんはわざと食べられたのよ あなたの動きを少しでも鈍らせるためにね この提案をしてきたときは焦ったわ わたしは精一杯止めたんだけどさ・・・わたしがオオカミに戻るためだというから どうしてもと聞かなかったのよ」
仕方なく 仕方なくなのよと 赤ずきんは悲しむようにして言いました

「戻るだあ?おまえがほんとにオオカミだとしたら 滑稽だな いまだに元の姿に戻れていない不完全な力 身につけちまったんだからなあ!おまえはオオカミじゃねえ・・・人間だ」
オオカミは赤ずきんをにらみつけました

「そうかもね オオカミを食べたら元に戻れるんじゃないかと ずっと思ってきた でもこんな姿だとすぐ殺されてしまうわ だから力をつける必要があったのよ 人間の知恵が必要だった こんな風にね!!」
赤ずきんはマッチに火をつけてオオカミのもとに投げつけました 赤ワインに点火して火は勢いよく燃え上がりました 赤ずきんは家の外に脱出します

「あああああああ!!熱ちいい!!くそがああああ赤ずきんんんんー!!」
オオカミは燃え上がり 叫びました 体に炎をまとったまま立ち上がり なんと 赤ずきんに襲いかかったのです

「こんどはしっかりととどめをさしてあげる」
赤ずきんはバスケットの中に入っているパンの下に拳銃を隠していました それをオオカミの頭に狙いを定め


パァン!

銃声が響き渡りました



「やっぱお肉は焼いた方がおいしいよね」
こんがりと焼けたオオカミを赤ずきんは食べました

腕の肉を食べ足の肉を食べ 腹の肉を食べ 顔の肉を食べました


ムシャムシャガツガツ


オオカミには戻りませんでした

「・・・やっぱり無理よね 分かってた」


今更戻ってもたぶんオオカミとして生きていけないけど

わたしは人間に染まりすぎた

そう悔しくもあり 諦めたような感情になりました


「おばあちゃん・・・」

おばあちゃんはきっと本物の赤ずきんに会いたかったんだ たぶん 死なせてしまったことを後悔してて わたしがそばにいれば気がまぎれると思ったけど おばあちゃんの心の中では受け入れてなくて 会いたかったんだね ずっと

でも

好きだったよ おばあちゃん

「おばあちゃん・・・おばあちゃん・・・おばあ・・・ちゃん・・・・う・・・うああああああああん!」
泣きました 大声で 燃える炎に泣き声がかき消されながらも 泣きました 泣き続けました




「ありがとう そしてさようならおばあちゃん」
赤ずきんは 燃え尽きた家のそばに簡単なお墓を建ててやりました

「そして赤ずきんも さようなら」
赤ずきんを脱いでお墓にくくりつけます

代わりにオオカミの毛皮をまといました


「さあて 第3の人生だ!新しく人間として生きる方法を探そう」

「まずはわたしの名前を決めるかな んーと・・・オオカミずきん? あははは なんだそれ」


まあゆっくり決めていこう


人生は長いのだからね

改変童話-オオカミ少女は赤ずきん-

サイトではイラスト付きです。よろしくお願いします。
http://iwako-light.com/story/post-1280/

改変童話-オオカミ少女は赤ずきん-

赤ずきんの童話を自分なりの解釈を加えてアレンジしました。 一つだけ言います。主役は赤ずきんではなくオオカミです! オオカミが赤ずきんとで会うことでオオカミ人生が変わっていきます。オオカミが人間とふれあうことで心も体も成長していく物語です。どうぞお楽しみください。

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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