そうして、私はミルクティを呑む。


いつもの帰り道、疲れた私の目に飛び込んできたのは、夕焼けのような光を漏らすちいさなカフェでした。

第一章


「疲れた・・・。」

学校帰り、私は溜息をついた。
18歳、高校3年生。
つまり受験前、故にこの時期は悩みが多い。

今日帰ってきた成績表を思い出してまた一つ溜息をついた。
大学に高校が推薦状を書いてくれるかどうかがかかっている今回のテスト・・・結果はいつもと変わらずだった。
大学自体も本当に自分が志望しているそこでいいものか、実は迷っていたりする。
受験を控えていて、みんなピリピリしていることもあり仲の良い友人グループも正直居心地が悪い。
一つうまくいかないと他の者もなかなか、うまくいかないものである。

また一つ、溜息をついた。
もし、溜息をつくと幸せが逃げるという噂が本当であるのなら
もう私の幸せは残っていないんじゃないか。マイナス換算でもされて寧ろ不幸ごとが増えたりして?

・・・うん、中々笑えない。

なんて、一人で考えることはもうやめにして耳に当てているヘッドホンから流れる音楽に集中をすることにした。
ちょうど今かかっているのは、とある歌手の18歳。という曲だ。

大人になれば強くなれるの?
大人になれば自分守れるの?

と、問いかけるこの歌詞はまさに私たち18歳の心境じゃないかなと私は思う。
おかしいな、普段こんなこと考えないのにと音楽から意識をそらした瞬間に私の目にあるものが目に入った。

注意していなければ、見過ごしてしまうようなその場所は、
白い外装の壁、そこにある茶色の扉にある小窓から夕焼け色のあたたかい光が漏れていた。
近寄ってみると見えないところにちいさな看板が立っていた。
どんなお店なのか調べようと思い、スマホを出して看板をよく見るとそこには「open」の文字だけが書かれていた。
周りを見回してみたものの、お店の名前が書かれている看板は見つけることができない。

なんのお店かわからないため、少し勇気が出ず私は回れ右をする。
少し歩いて、そのお店へと引き返した。

特に、おなかがすいていたわけでもなければのどが渇いていたわけでもない。
お金を持っていたのかと聞かれたら、財布には野口さんの絵が描かれた紙が2枚しか入っていなかったし、
学校の帰宅途中だったので体力や時間を持て余していたわけでもない。

ただ、私はそのオレンジ色のひかりの漏れるその家のような外見をしたカフェに心惹かれて
気が付いた時には引き返し、ドアノブを握っていた。

ひねるのには、少し勇気がいる。
妙な緊張感に襲われた私は、ふっと深呼吸をした。
今度は、息を吐くだけではなくちゃんと酸素を吸った。
そして、ドアノブをひねる。
夕焼け色が私を包んだ。

「いらっしゃい。」

そうして、私はミルクティを呑む。

 人や物との出会いは、偶然と奇跡が重なって起きるものだと考えると
普段、自分がかかわりを持っている人や物が少し変わって見えますね。
この偶然や奇跡って、本当に素敵なものだと私は思います。

さて、主人公の少女はどんなお店に入っていったのでしょうか。

次回の更新を楽しみにお待ちください。

(この作品は、長編小説となっているので他の短編小説をたまに挟みつつ更新していきます。)

そうして、私はミルクティを呑む。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-23

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