玖珂さん家のながら飯

0杯目「自己紹介」

 はじめまして。
 別にこんなこと書かなくてもいいんだけど、まあ、一応自己紹介ってのは大事だから、ってどっかの誰かが言ってた。

 自分は玖珂。
 ニートに限りなく近い人型の何か。
 俗に言う実家暮らし。
 2階建ての1階にある小さな和室に基本的にいる。
 明るいところは好きじゃないし、ちょっと事情もあって部屋の障子は開けない。

 病気っていうか、一応区分的には障碍者枠。
 食べ物の好き嫌いは若干。ただ、日常生活で困る物が食べられないとかそういう重症なやつじゃないから大体食べられる。

 後……?
 そんなに話すほどのこともないんだけどな。
 ……あぁ。

 ながら飯ってのはその名のとおり、何かしながら作ったり食べたりする飯。
 こう1日は24時間しかないからさ、食べてる時間がもったいないだろ?
 いや、ちゃんと食べれるけどもったいないことはしたくないからさ。
 そういうこと。

1杯目「茶碗飯」

 起きると部屋が明るかった。
 しめ切ったままとは言え障子は紙なので、そこから光が入ってきてるのだ
 スマホを確認すると正午ちょい前で、昨日は日が変わる前に寝たから割と寝たんだなと思った。

「腹減った」
 布団から抜け出すと、寒かったので上半身だけ出た体を布団に引っ込める。
「寒い……腹減った」
 布団から手だけ出して、その辺に脱ぎ散らかしたズボンとフリースを手に取ると布団の中で着る。
 これがまた冷たい。
 布団の中に入れておけばいいのだが、寝るときに邪魔だから仕方ない。というか、布ごときに自己発電で温めた布団の温度を分けるのが嫌だ。寒いから。

「飯……」
 ひざ掛けを体に巻いて台所にいくとレンジの上に握り飯がひとつ置いてあった。昨日の夕飯の残りか。
 やかんを火にかけてからとりあえずどんぶりに握り飯を入れ、鰹節とすりごまをかける。
 個人的にいりゴマの方が食感は好きだがあれは胃で分解されないから栄養素をとるならすりゴマの方がいい。
 後はマヨネーズを適当にかけてから七味唐辛子としょうがを少々。
 辛い物は苦手だが、寒い時は少し刺激物を取ったほうが体が温まる。
 それを混ぜて、卵を割りいれたらこしょうを少し振ってまた混ぜる。
 それをそのままレンジに入れ
「600wで1分……位か」
 ここは好みが分かれるところ。
 卵が茶碗蒸しのような柔らかさがいいなら40秒とか、50秒でもいいが、今日の握り飯が冷たかったので1分。
 ご飯は温かいのがいい。

 お湯が沸く頃、レンチンも終わるので、それまでにざっと片付けてスマホでメールチェック。
 手がかからない料理はこれが出来るからいい。
 炒め物とかずっと手を動かすの疲れるし。

 ダイエットジュース用のシェイカーにお湯と緑茶のパックを入れ、出来た飯をかき混ぜながら部屋に戻る。
 基本的に飲み物こみで2品以上は作らない。
 両手で持ちきれないから。

 部屋でネット巡回をしながらスプーンを動かす。
 利き手はマウスに奪われているから、違う手で食えるスプーンは現代に則した食器だと思う。あと丼も。

 ゴマと鰹節の香りが食欲をそそる。
 あと、半熟より一歩固めの卵が親子丼ぽい感じでいい。
 マヨネーズが七味唐辛子の辛さをマイルドにしていて、後から生姜が追いかけてくるのも悪くない。

「……72点」
 即席の適当丼にしてはいい出来だと思う。
 時計を見るといつもやっているゲームの定期メンテ終了時間だ。
「メンテ終わったな。よしやるか。……っと、いただきました」

 食材と、自分のセンスと、飯が食べられたことに感謝して、自分は空になった丼に手を合わせた。

玖珂さん家のながら飯

玖珂さん家のながら飯

色々難ありな玖珂さんのだらだらした(主に食事辺り)を綴る日常系ノベル。 ファンタジーも青春も恋愛もサスペンスもないけど、ご飯とゆるさはあるよ。

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-22

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 0杯目「自己紹介」
  2. 1杯目「茶碗飯」