Black sweet ・Canelé カヌレ第1巻夏雲のように

Black sweet ・Canelé カヌレ

Black sweet ・Canelé カヌレ ブラックスゥイート・Canelé カヌレ
夏雲のように

Prologue プロローグ
僕は、念願の高校に幼なじみと共に受かった。
入学式の6日前、僕はある河川敷の公園でアルトサックスの音色を耳にする。
そこにいたのは、金色の髪を後ろに束ね小柄で、まるで妖精のような女性だった。
彼女の奏でるアルトサックスの音色は、僕の心を今までにないくらい揺さぶった。
僕は、およそ1年と3ヵ月の間、彼女に一方的な恋をした。
彼女の奏でる音色は、どこか切なく悲しい。
想えば、想うほど、彼女の苦しみが僕に伝わってくる。
「告白」彼女のある一面を目にした僕は、自分の不甲斐なさを思い知る。もう一人の心の声と共に。

そんな想いの中、両親は、僕一人を残してこの世を去った。
引き取り手のない僕を「Cafe Canelé カヌレ」のオーナー兼パテシェの彼が身元を引き受けてくれる。
だがそこは、僕が想いを抱く妖精のような彼女の家だった。
運命、この言葉はいたずらの様に僕を新たな生活へと導く。
彼女と一つ屋根の下、僕の心はもどかしく揺れ動いた。
とめどなく、流れる雲の様に。

Contents

I. その妖精は・・・
II. 日常との別れ
III. ペパーミント・フラッシュ
IV. Owe it to the wind --風に任せて--

I begin now Love story

 「ブウゥン、ブウゥン」
 「まったくさっきからうっせいなー」
マナーモードにしているスマホが鳴りやまない。
 「なんでこんなしらねー番号から何回もくるんだよ。まったく、変なのにかかわるのはごめんだぜ」
イライラしながら スマホの電源をおとした。
 これから、自分におきることがらを予想すら出来ずに・・・

その妖精は・・・

僕は、帰宅途中の電車の中で、イラついていた。
 「まったく今日は厄日だ」
 「なにそんなにイラついているだ。お前らしくない」
と 不用意に、しかも いつもの事のように問いかけるこいつは、
村本 孝義(むらもと たかよし)こいつとは小学校以来の付き合い。幼なじみというやつだ。
孝義は僕とは正反対の性格をしている。
いつもの事ながら本当に楽天家だ。
少し引っ込み気味の僕を、孝義はいつも引っ張り出す。
 小学のころ、隣町の中学生と喧嘩になった時、まったく関係のない僕まで引きずり出されて、2人でボロボロになった。
孝義が原因で僕が巻き込まれたことを考えると切りが無いくらいだ。
だが、孝義にもいいところはある。
あいつのいいところ・・・考えても思い浮かばない。今はやめておこう。

 「それはそうと 、どうだったんだ?」
 「はあ?」
 「またまたぁ 、ようやく告ったんだろう 「三浦 恵実」にさー」

 そう 僕は、以前から片想いを抱いていた 彼女「三浦 恵美」に告白した。
彼女は同じ学年で別のクラス、吹奏楽部に所属 サックスを担当している。

 彼女に初めて出会ったのは、この高校に入学をする6日前だった。

 合格した学校の下見(見学)をした僕らは、帰りの電車二駅を歩いていた。
何のことはない、これから3年間通うこの街の下調べもかねていたのだ。
しかし孝義の奴は一駅を過ぎるなり、「俺もうダメ」などと言い出した。

 「わりー、まじ眠う、夜更かしが今になってきやがった」
 「俺ここで電車で帰るわ」

というなりすたすたと駅の改札口へと向かっていった。こいつの行動はいつもこんな感じだ。
小学生からの付き合いだからこそわかる行動だった。
 「わかったよ。俺は次の駅まで歩いていくよ」
そう言って孝義と別れた。
とは言っても、次の駅まではゆっくり歩いても高々20分程度の距離、
まー大した距離ではない、僕は一人で歩き出した。

 次の目指す駅は、大きな川に架かる橋と共にある一風変わった駅だ。
正直その駅はかすかに目にすることができる。
駅自体が高架橋のように高い位置にあるせいだろう、だが、初めての町を甘く見ていた。
僕は、迷った!
さまよい気が付くと、ある河川敷の公園のような場所にたどり着いた。
 そして我に戻った僕は、
まだ冬をなごり惜しむような、頬を刺す冷たい風と、
澄み切った空を赤く照らす夕日の中に溶け込むように、
甘く暖かいアルトサックスの音色が、
耳からではなく 心の中から聴こえてくるのを感じた。

その曲は僕が生まれる前に、はやった流行歌だった。

 その音色を奏でていたのは、肩より先に長い金色の髪を後ろに束ね、
小柄で日本人離れした小顔の、妖精のような少女。
 彼女、「三浦 恵美」(みうら えみ)に出会ったのは、この時が初めてだった。
そして僕は彼女に、一方通行な恋をした。 およそ1年と3か月の間。

まだ桜の蕾は、己の行く末すら解らないまま、固い殻に閉ざされていた。

 入学式の日、僕は彼女が同じ学年の、違うクラスであることを知る。
入学をしてから、今まで彼女と話したことはない。正直、声をかける事すらなかった。
 彼女の容姿通り、彼女を慕う男どもは、数多くいた。いわゆるライバルと言うやつだ。
僕にとって彼女は僕だけの妖精であって、他の如何せん男子どもに彼女が軽く話しかける事すら、
僕はいい気はしなかった。
ここまで来ると、犯罪者の心境が良く解る。
だからと言って、自分の欲望のままに彼女を、自分だけの籠に閉じ込めるだけの甲斐性もなかったのだ。
 この甲斐性なしの僕を、あの学校のマドンナとして、多くの男どもから好意を浴びている彼女に「告白」という、自分でも到底出来ないと思っていた行動に出たのには、ある事がきっかけとなったからだ。

 いつもの晴れた日曜の時間、僕はあの河川敷に彼女、僕の妖精の奏でるアルトサックスを聴きに来た。いつものようにあの駅から歩き、遠くから彼女を眺め、あのアルトサックスの音色が十分に聴こえる、自分の決まった場所に。
しかしその日は、途中から雲行きが怪しくなってきていた。
 彼女はいつもの様に、あの場所でアルトサックスを奏で始めた。

あの河川敷には彼女がアルトサックスを奏でていることを知っているのは、その河川敷の近所の人たちだけだろう。
気軽に彼女に声をかけている。彼女もまた、気さくに声を返している。
 数曲吹き終わり、最後に必ず奏でる、あの曲、僕が生まれる前にはやった流行歌を奏で始めた。この曲が一番僕の心の中に残る曲。

 だが、その曲は途中からいつもとは違い、次第にその音は途切れだし、次第に音色は止んだ。

雨が、いつしか空を厚く覆い隠した薄黒い雲から、こぼれだしていた。
 彼女は次第に強くなる雨の中、アルトサックスを抱えながら、大声で泣いていた。
もうその場所には、僕と彼女の二人しかいない。
雨は彼女のすべてを濡らしていく。
 ここからも、彼女の高らかで、切なく悲しい鳴き声が聴こえていた。
その声を聴くたび、僕は物凄く切なく、遠くでしか彼女を観ている事しか出来ない、もどかしい自分が許せなくなった。
手を出せば、一歩踏み出せば、現実に彼女三浦恵美に近づけるのに。
 「動けない」
悔しい、自分が想う彼女が、自分の心をナイフで削り取るような鳴き声を聴いているのに。
 「守ってあげたい」
そう強く想った時、もう一人の誰かが、心の中で

 「もうダメなんだ、守ることも何も出来ないんだ。もう君にしかできないことなんだ」

その声はどこから聞こえて来たのかは解らない。もうそこには誰も居なかったのだから。
でもその時僕は、そこから動くことはなかった。

 自分でも信じられない行動だった。

 三浦 恵美に告白

 あの、悔しい想いが薄れる前に

 結果は ・・・
 三浦恵美に、素直に自分の気持ちを伝えればいいものを。

 その時、自分でも何を話したかさえ思い出せない。
あの時の想いが先走り、言葉が想う様に出ない。
 ふと、あの時出た言葉
 「君のことを、僕は知っている」

 「あなたは、私の何を知っているの」
彼女が返した言葉だった。
なぜ、僕はいきなりあんなことを言ったのだろう。 
そして彼女の言った
 「私の何を知っているの」
この言葉がやたらと、胸のあたりを熱く蒸しかえさせていた。

 確かに彼女の言う通りだった。
僕は彼女のことは、ほとんど知らなかった。 
同じ高校で、学年で、晴れた日曜日の夕方、あの河川敷でアルトサックスを奏でている事以外は何も知らなかった。
 それっきり僕は何も話すことが出来ず、その場を立ち去ってしまった。
つまり、その時点で、妖精は僕から飛び立ってしまった。
僕の勝手な思惑の中で・・・

 「降りるぞ!」

孝義は僕の腕を引っ張り電車から降りた。

「いつまで、ぼけっとしてるんだ! しっかりしろほら」
孝義が僕に激を飛ばし、改札に向かおうと肩を返した時、孝義のスマートホンが鳴り出した。

 僕はこの日、すべてを失った。

 私立 森ケ崎高校 2年 笹崎 結城 (ささざき ゆうき)
その日、空は青く、白い雲が綿菓子のようにふんわりと青い海空を漂っていた。
もうじきこの街にも、夏が 訪れようとしていた。

日常との別れ

 そこには、白い布をかぶった二人が冷たいベッドに横たわっていた。
そうおと、布をめくると、そこには久しぶりに見る親父の顔が、
隣の布をめくると、そこには今朝見た母親の顔が。

 交通事故だった。

 親父を迎えに空港までお袋が赴いていた。 いつものことだった。
だがその日は、歯車が少しばかり「ひずんでいた」
そのひずみは大きな故障を生み、その歯車そのものを壊してしまった。

 二人で横断歩道を渡っていたとき、信号無視をして交差点に突っ込んだ大型トラック、
 居眠り運転だった。
逃げようがなかったらしい、あっという間に二人をなぎ倒し、その反動で気が付いた運転手が急ブレーキを駆け停止した。

 その側方の傍らに、大切な人を必に抱え込むように、二人は全身を己の体から流れ出る褐色の液体の中に浮かんでいた。

 人間、一度に自分が処理(理解)できる数倍のことがらが押し寄せてきたとき、それを判断するのをやめてしまうらしい。
 僕は、その時泣くことさえできなかった。 
いやその現実を受け入れることが出来ていなかったのだ。

 親父は、小さいが食材の輸入業をしていた。
主に菓子材をメインとした、珍しいものやその土地にしか知りえない商品などを、現地に赴き直接交渉で日本に輸入をしていた。

「世界には、表に出ないだけで本当にいい食材がたくさんある。俺はそんな表には出ないが本当に良い食材を少しでも多く日本に紹介したい」
それが親父の確か口癖だったと思う。
 出張が多くほとんど海外を飛び回っていて、あまり家にはいなかった。
だが夫婦中は良かったと、子供ながら感じていた。
 そのなかが良いといっても、二人でべたべたするようなことではなく、今思えば お互いに信じ合い慈しみ合い、尊敬をしていたように思える。
その二人の若いころのことはほとんど聞かされていない。
 母親は、秋田の出身で、今はもう実家というものもなく、近親の親戚もなくなったと最近聞いていた。
 今となればどうやって、あの二人が出会ったなど、なれそめを聞いておくべきだったと後悔している。 

 我が親ながら、二人の想いは相当に強固な糸で結ばれているように感じていた。

その、二人の強い思いを結晶として世に生まれた 僕を残して二人は、だれも手が届かない世界に旅立って行ってしまった。

 僕は、必死に二人を送ってやった。

 出来ることはすべてやりたかった。いやだれの手も借りたくはなかった。
しかし高校2年の「ガキ」にそのすべてを取り仕切ることは不可能だった。
そして思い知る。はじめて親父の偉大さを。
本当に多くの人が 弔問に来た。その人々を一つ一つを僕はただ眺めることしかできなかった。

 それからしばらくして、僕は二人を、本当に静かななるところへ導き、形あるものから、自分の心の中へと二人を導いた。

そして季節は、夏をこの街も迎えていた。

 ペパーミント・フラッシュ

 その日、僕は学校へ来ていた。
担任や学年主任に挨拶をし、すでに夏休みに入っていることもあり、休み明けから学校へ来ることを担任に告げた。
その他もろもろの手続きが、この後俺を引きずり回した。

 両親を亡くし、未成年の僕は孤児となった。
この国では、未成年者は保護者がいなければ何も、学校すら行くことが出来ない。

 親父の親類からは、僕を養ういや、迎え入れるようなところはなかった。

 決して、親父が親類から煙たがれているわけではない。
本当にどこも苦しいのだ。
 まして、母方の親類は皆無に近い状態。
本来であれば、児童福祉施設へ行かなければならないところだった。
 そんな状況のなか、元、親父の会社の顧問弁護士をしていた
斎藤 律子から連絡があった。

 「ごめんね 結城君 遅くなちゃって」
 「いえ、どうしたんですか 僕に相談ごとって。」
彼女は自分のいつものキッチンの椅子に腰かけた。
 その場所は、彼女専用と言ってもよかった。うちの家族公認の彼女の居場所だった。

 親父の会社は、親父の片腕として業務をこなしてきた「宮村 隆浩 みやむら たかひろ」が、親父の残した会社を、いや一緒に歩んできた軌跡を亡くしたくないと、すべてを受け継ぎ会社を存続させていた。

 その時、彼女は会社の顧問弁護士の担当降りた。

 理由は事務所の方針としか言わなかった。
そのあとも彼女は、僕のところにはよく来てくれた。
そればかりか、事後処理と言って、親父の財産管理処理や、僕の法的手続きなどもろもろ親身に行ってくれている。

 「社長には本当にお世話になったからね」
肩の先まである長い髪をなでながら、瞼をそっと落とし寂しげにそういった。
彼女の瞳が少しづつ熱く、うっすらとうるんでいるのがわかる。

 彼女は、社長である 親父に特別な思いがあったのだろう。
それに対して、僕は何も問う気持ちはなかった。
それよりも彼女はよくこの家に来ていた。
仕事としてだけではなく、プライベートとしても・・・

 彼女が親父の会社の顧問弁護士を担当して3年。
親父の会社は、小さいながらも海外と取引を行う会社。
バイヤーとして、会社の代表として、そして自分の信念のため世界各地を飛び回っていた。
当然トラブルも数多くついて回った。
 こういったトラブルの回避または解決の道しるべとして、弁護士事務所と契約を結んでいた。
彼女 斎藤 律子は、その弁護士事務所から派遣されていた。

 はじめのころは親父が家にまで呼んで、彼女から家にきて、まるで家族が一人増えたかのような・・・・
そして僕もいつしか彼女を姉のように感じ始めていた、ちょっと年の離れた何事にも頼りになる、姉貴的存在。

 いつのころからだろう、僕は彼女のことを「律ねえ」と呼ぶようになっていた。

 「あの・・・・律ねえ」
 「あ ごめん ごめん」
 「あのね実は・・・」
 「あなたの保護者になっていただける方を紹介したかったの。」
 「えっ 保護者?」
はじめは何のことかと、それが自分に向けれれた言葉であるのを理解するのに一瞬の間が必要だった。

 葬式のとき、誰かが口にしていたことを思い出した。
 「結城、これからどうするんだろうね。 誰かいい引き取り手がいるといいんだけどね。」

 僕は一人になったんだ。

 「あなたもこのままだと施設に行くしかなくなっちゃうのね。」
 「それにこの家も、会社の抵当物件になっているから、このままだと、 宮村君がいくら頑張っても、今の状態だと」
 彼女は口をつぐんだ。
辛そうな彼女をなだめるように
 「それは、僕もうすうす感じていました。それにこの家に僕一人は広すぎます。」
いや本心はものすごく寂しかった。
 「・・・・・」
 「んっ」
 彼女にとってもこの家は思いで深い空間だったろう。
重く、とてもながく感じられる沈黙が続いた。

 うつむいた彼女の顔を、サラサラとした髪の毛がうっすらと隠している。
今にでも、零れ落ちそうな涙を、隠すように。

 自分の特等席から彼女は、中庭に面した居間にある、親父の好きだったソファーに腰かけ黙って中庭にあるハーブ畑を眺めている。

「律ねえ。 コヒー入れるね。」

僕は冷蔵庫から、ミネラルウオーターを取り出し、およそ二人分であろう量を専用のスリムケトルに入れコンロに置き火を着けた。
コーヒー豆を測り、ミルに入れる。
豆を挽く、慎重に豆の状態を確認しながら。
 そして、温めて置いたミルクパンに挽いた豆を入れ、余熱で豆に目覚めを告げさせる。
ドリッパに豆を入れ一息入れる。
そうすると、ケトルから合図の音が奏でられる。「ぽっ、しゅ、」
火を止めケトルのお湯を落ち着かせる。
あらかじめ、カップにお湯を注ぎあたためておく。

 ケトルのお湯が落ち着くのを見て、ドリッパの豆へお湯を注ぐ。
静かに、ゆっくり「のの字」を描きながら、一段目、二と・・・
次第にコーヒーの甘く切ない香りがたちこめる。
そーと、彼女の前にカップを置く。
 「ありがとう」
 「結城君の入れるコーヒー 本当においしいね」
 律ねえは僕の入れるコーヒーのファンだ。
親父や会社の人たちからも評判はよかった。
これと言ってどこかで勉強したわけでもなかった
本当に自己流のサーバーの仕方だ。
 でも、誉められるのに悪い気はしなかった。
自分でもコーヒーを入れる度いろんな入れかを試してみた。
しかし、まだまだ発展途上だ。

 「ごめんね 結城」 
彼女はあえて、「結城」と言ったように思えた
 「本当は、私があなたの・・・
この家も あなたの唯一の居場所も、わたし何も守ってやること出来なかった。」
 「ごめんね」
 「ごめんね 結城」
 彼女はうつむきながら、涙を頬に這わせ両手を「ぎゅっ」と力を込めて握っていた。
そして肩を震わせながら 今までため込んでいた気持ちを一気に解放した。
今まで見た事のない「「律ねえ」」の姿だった。
 仕事のときはいつも凜とした力強さを感じさせ、それ以外のときは、朗らかで柔らかく心に温かささえ感じさせてくれた。
 ふと、お袋と一緒に、キッチンで料理をしている姿や、庭のハーブ畑を二人してニコニコしながら、顔に泥を付けながら世話をしている姿がフラッシュバックしてくる。
今、ここに お袋と親父 律ねえがやさしく微笑んで・・・

 何かが、僕の中ではじけたような・・・

 その瞬間、胸の鼓動が高鳴り、熱い何かが、僕の頬を伝わった。
気が付けば、僕は律ねえを胸の中に抱きかかえ、泣いていた。

 そう、今まで自分に禁じえていたものを開放するように。

 彼女もその変化に気が付いたのだろう、そっとやさしく僕の背中に手を回した。
そして少しづつ、僕を包み込む手に力がそそがれる。
 ふと見る彼女の顔は、あふれんばかりの涙が、通り過ぎたことを語っていた。
うるんだ瞳をやさしく見つめると、彼女は恥ずかしそうに、下唇を軽く噛んだ。
 少し赤く高揚した彼女の唇に、いつしか自分の唇が重なるのを感じていた。
彼女の唇は柔らかく、暖かく、かすかにコーヒーの香りがした。
そして二人は、強く寄り添った。
 庭のペパーミントから落ちる雨の雫が、雲の間からさす日の光に輝いていたのを僕は、ただ目に入れていた。

 彼女がこの家を後にしたのは、次の日の昼下がりだった。
律ねえは、僕に保護者の名乗りを上げてくれた人物について説明してくれた。
その人は、親父の古くからの知人であり。昔、僕が幼かった頃、何度か家にも来ていたらしい。
 親父が、この仕事をするきっかけになったのも、その人が大きく関わっていたこと。
その人と知り合ったのは、海外で彼はその当時、某有名店でパテシエの修行をしていたこと、親父は大手食品商社に勤務していて、その店に何度も惜しげなく通っていたこと。

 そして今彼は、この近くでカフェを経営していること。

 律ねえと親父、そしてお袋も、そのカフェの常連であること。
親父は 律ねえに僕ら(たぶんお袋と共に)知らないことまで話をしていたようだ。
葬式のとき、彼は僕には声をかけれないでいたこと。
あまりの心痛さに声をかけることが出来なかった。
律ねえが僕の身を按じていたのと同じく彼もまた察していたこと。
その他もろもろ・・・・・
彼女は最後に、彼の店の住所と彼の名前を書いたメモを僕に渡した。

 「Cafe Canelé カヌレ」  
 「三浦 政樹(みうら まさき)」
 ふと まさかと思う気持ちが僕を貫いた。
しかし、いくらなんでもそんな偶然はないだろうとその時 僕はその気持ちを軽く流した。
律ねえは、出来るだけ早く彼、 三浦氏も僕に会いたいと言っていたことを告げる。
 「本当は、一緒に行ってあげたいけど、彼、初めは結城一人で来てほしいって言ってたわ。」
 彼女は、カップのコーヒーを飲み干し、僕に軽くキスをして、この家を後にした。

Owe it to the wind --風に任せて--

 その日は 朝からまぶしいほどの日差しが降り注いでいた。
昨夜、久しぶりに 村本 孝義(むらもと たかよし)と電話で話をした。

 彼もまた、僕のことを心底心配していたようだった。
僕からすると少し信じがたい面もあるんだが。

 まずは、明日僕の保護者に名乗りを上げた人物に会いに行くこと、
この家を出なければならないかもしれないこと。これはほぼ確定事項かもしれない。
 そして、孝義から三浦 恵美も心配していたことを告げられた。
 「お前本当に、振られたんかよ、三浦なんか俺にお前のことどうしているかとか、よく聞きに来てさ。最初、俺も分けわかんなくて、「俺もわかねんだよ」ってちょっと強くいったら
大声あげて泣かれちまってさ、まいったよ。」
 そういえば、僕は三浦恵美からのはっきりとした返事をされていなかった。
あの時、舞い上がった僕は、もしかしたら勝手に返事を作り上げていたのかもしれない。
しかし、今となってはもう僕的には、過ぎたことだった。

 次の日の午後、律ねえから受け取った三浦氏の店の住所を頼りに、僕は 「カフェ・カヌレ」を目指した。
 その住所は、あの橋の駅のある街だった。
やはり、一抹の不安は、否定できなかった。
 あの日、三浦 恵美と初めて出会ってから、およそ一年と三か月の間、日曜日の晴れた夕方に、あの河川敷の公園に行き彼女の奏でるアルトサックスを聴いている。

晴れた夕方、しかも日曜日限定だった。彼女のいた確率はおよそ六割。
後の4割は空振りに終わった。

特別彼女との会話はなかった。そして
また彼女も僕の存在に氣づいていたが、話しかけては来なかった。
お互いの存在を感じながらも・・・

 僕は久しぶりに、あの河川敷の公園へ赴いてみた。
当然のことながら彼女は、いなかった。
僕は、わざわざ彼女 三浦恵美がいないことを確認に来ていたのだ。
今日、三浦氏の店 「カヌレ」へ赴く日に、
いつもの、日曜日の夕方ではない日と時間に。
思わず苦笑いをしてしまった。 
「俺っていつからこんなにセンチメンタルになったんどろうって」

 ふと、三浦氏との約束の時間が迫っていることに気付く。

 しかし、便利な時代に僕らは生まれてきたんだろう。
スマートホンに目的の住所を打ち込むとGPSで自分の現在地から目的地までの道のりと所要時間を計測表示してくれる。

僕はそれを見て、焦った。

 自分の表示位置と、目的地の表示ピンが、同じところを指していたからだ。
僕は、地図を拡大して住宅を表示させ、それを見て、あたりをぐるっと見渡した。

 堤防と同じ高さに、5階建てのマンションが立ち並び、きれいに区画整理された住宅地が目に入った、
その一角に、ログハウス風のしゃれた喫茶店いやカフェがあった。
入口の両脇にある樅ノ木(もみのき)が、その店の雰囲気を感じ取らせているかのように、どっしりと構えていた。
 なぜ、一年半近くもこの場所に足を運んでいたのに、今の今間で気が付かなったのだろうか。

 玄関の前には、がっちりとしたイーゼルに木製の大きなプレートが置かれていた。
ライトアップされたプレートには「Pâtissier Masaki Miura」「Cafe Canelé」と木製プレートに焼印されていた。
 分厚そうなウッドドアの前に立った時、その香りは僕の心を揺さぶった。
ほのかに香る。澄み切ったような甘い切ないコーヒーの香りと
オーブンからだろう、たまごと小麦粉が程よく香(こう)ばしく解き放つ香りとが。

 僕は、その分厚そうなウッドドアを押した。
と同時に、「カウベル」が、カラカランと鳴り響いた。ドアは思いのほか軽かった。
 店の中に一歩踏み込もうとしたとき、「いらっしゃいませ」と、どこか聞き覚えのある声で迎えられた。
顔をあげて、その声のほうを向くと、そこには
赤いベレー帽に黒のオープンシャツを着こなした、三浦 恵美が少しはにかみながらいた。
僕はいきなりの出来事にただ茫然としていた。

 だが、心の奥底では、安心感が宿った。
「なぜだろうか」

 一瞬の沈黙を切り裂いたのは彼女からだった。
 「意外と早かったじゃん」
こっち来てすわってて、今パパ呼んでくるからと照れ臭そうに、僕をカウンターへ招いた。

意外と早かった? 

彼女は僕が来るのを知っていたのだろうか? 
ふと彼女の示すカウンターへ目をやった。
 そこは、目に鮮やかな洋菓子がずらりと並んだショウケースと斜めに、5席ほどのカウンターが見えた。
 そのカウンターは少し離れたところから見てもわかるほど、高級感があり鈍い黒の光沢が、その存在感を座るものに問いかけているようだった。
 よほどの、常連でなければ まっすぐにこのカウンターへ座ろうとすることは出来ないだろう。
黒塗りのアンティークチェアの背もたれが、凜とその容姿を醸し出していた。
窓越しには、アンティーク調のテーブル席が、3セットあり、その窓からは、彼女 三浦恵美が、アルトサックスを奏でる、運河のような河川を眺めることが出来た。

 そして、その並びに大きなテディベアがロッキングチェアに座り、静かに夕方の河川敷を眺めていた。

 カウンターの椅子に座ろうとしたとき、カウベルが高らかに響いた。
その音の方を見ると、息を切らしながら店に入る 「律ねえ」 の姿を見た。
 よっぽど急いで来たのだろう、ウッドドアの前で膝に手をやり、前かがみになり息をはあはあさせていた。
ふと頭を上げると
 「あちゃ 結城君もう来ていたんだ。」 と息が落ち着かないまま話した。
僕はやっぱ外では「結城君」なんだと、律ねえを見てはにかんだ。
彼女は、僕の方を見るなり、顔をさらに紅葉させて軽くうつむいた。
 「どうしたのさ 律ねえ?」
 「ははは。」
 「今日ここには僕一人で来るようにって言ってたじゃんか」
 「もしかして僕のこと心配で?」
 「まーね」
 「まったく子供扱いなんだから、そんなに僕って頼りないかな。」
ちょっとふてくされてように、律ねえを睨んでやった。

ちょうど弟が、姉貴に甘えるような感じに。

 「いやー待たせてすまん」
奥の厨房の方から低音の太い声が、こちらに向けて発せられた。

 そこには、背の高いがっちりとした胸板の厚い熊のような男性が立っていた。
頭には、黒の低いコック帽をかぶり、がっちりと型とられた黒のコックコートにオレンジ色のチーフが首元を引き締めていた。
彼は、こちらを見るなり
 「あれ!律っちゃんも来てたのか」
と、律ねえをはにかみながら見つめた。
 「だってちょっと心配だったから。」
 「はは、僕は別に彼をとって喰おうとなんか思ってないよ」
とあごの髭を手で擦りながら僕の方に視線を落とした。
 「ようこそ結城君」
彼は、さっと手をだし握手を求めた。

 とっさに椅子から降りて、カウンター越しに彼、三浦氏と握手をした。
その手は、その腕は、ものすごくがっちりとしていて、ごつごつしていた。
どうしたら、こんな手からあんな繊細なスイーツを生み出せるのか不思議なくらいに。
 「はじめまして、笹崎結城です。」
 「そうか、君にとっては、はじめましてか」
 「そうね、そうかもね」 律ねえがつぶやいた。
三浦氏が「ふう」と一息ついた。
 「そうか、それでは改めて」
 「ここ 「Canelé-カヌレ」のオーナー兼パテシエの三浦 政樹(みうら まさき)です。
僕については、彼女、律っちゃんから訊いている通り。君の父上、いや、ご両親とも古くからの付き合いでね。本当は君とも初対面ではないんだよ。」
 「はい、大体のことは訊いています。」
 「でもどうして、僕のことを・・・」
 「うん、本来であれば、ご両親の親類が受けるのが筋だろうけどね。でも実際はこんな状態だったからね。  僕は君のご両親が事故に遭ってからすぐに、君のもとに行かなければならなかったんだが、まっいろいろと事情があってね。」
しばらく三浦氏は沈黙を唱えた。
彼は思い立ったように。
 「今、僕と君のご両親のことを話しても、今の君の状態では理解しかねる部分が多すぎると思う。
そのことについては、ゆっくり時間をおいて話をした方がいいと思うのだが・・・」
三浦氏は視線を律ねえの方に落として俺に問いかけた。
 「なぁ結城君、君は僕の申し出を受けてくれるのかな?」
 「それを決めるのは、君自身であるべきだからね。だから僕はあえて律っちゃんに、君一人で来るように伝えてもらったんだ。」
 「ごめんね。姉バカで」と言って律ねえは肩をひょいとすくめた。
 あの時、律ねえから三浦氏の話を訊いたとき、僕は特別深くは考えていなかった。
むしろその時は、自分の置かれている状況を甘く考えていた。
 仮に誰も、引き取り手が無くても、この家がなくなっても、自分ひとりなら何とかやっていけるのではないかと。
律ねえから、ある程度、僕が大学を卒業するまで充分過ぎるほどの金額の保険金があることを聞かされていた。
 無論 律ねえから三浦氏のことを聞かされた時、自分が考えていたことを話してはいた。
しかし、その考えはこの国の法律がゆるさなった。

 律ねえは法律のことになるとさすがだった。
あんな複雑で堅苦しい言葉が並ばれている世界。それでも律ねえは分かり易く説明をしてくれた。
要するに、未成年者は保護者がいなければ何にも出来ないという事に、僕の頭は到達した。

 僕は、三浦氏の問に返事をためらった。

 確かに僕一人では何もできないことは理解している。
しかし、なぜか胸の奥に重くのしかかるような、やりきれない想いが、僕を前に進めさせなかった。
沈黙が、さらに自分のいる空間を重く息苦しくさせていた。
三浦氏の視線が重くのしかかる。
 「ふう」 三浦氏が軽くため息をついた。
 「だめかなー 僕の申し出は?」
沈んだ声で彼、三浦氏は問いかけた。
 店内の曲が静かに代わり、聞き覚えのある懐かしいメロディーが流れ込んでくる。

子供の頃何度も、何度も観ていた物語の曲。
 「新たな世界」
そう、僕も今、本当の「新たな世界」を受け入れなければならないのだ。
 僕は、勇気を振り絞り 三浦氏に答えた。
 「僕のこと本当に心配して頂い有難うございます。」
 「正直、今自分が置かれている状況も解ります。」
 「でも、自分がこれからどうしていったらいいのか、全くわからないんです。」
 「僕が、これから・・・ うぐっ これから・・・」
両手は、痛いほど固く拳を握りしめ、腕は微かに震えていた。
言葉を出そうにも声が出ない。
 最後に
 「僕、もうどこにも行くところは、ありません。」
 「宜しくお願いします。」
そう言って、うつむいたまま、顔上げることが出来なかった。

 三浦氏は、静かに
「わかった」
と呟いて、僕の頭を軽くなでた。

 「こちらこそよろしく 頼む」

 三浦氏は、ショウケースから焼き菓子を取り出し、僕と律ねえの前に置いた。
 「ふぁ 「カヌレ」だー」
律ねえが手を組んで喜んだ。
 「ねぇ結城君マスターの創る「カヌレ」ものすごくおいしいのよ」
 「だってお店の名前にしちゃうくらいなんだもんね。」
 「カヌレ?訊いたことない名前だった。」
 そこにのは、白い皿の上に「こげ茶色」?いやもっと黒々としていて、カップの型だろうか、縦に溝があり、厚い歯車のよな形をしていて、ちょうどカウンターのライトの光が型の光沢部分を照らしていた。
 律ねえは、一押しと言っていたが、外見は乏しく地味でこんな時にこの菓子を選んだということは、あまり歓迎されていないんだと感じていた。
しかも、フォークさえ添えられていなかった。あまりいい気はしない。
 「どうした」
三浦氏が問いかける。
 「いえ、なんでもありません。」
 「いただきます」
僕はその焼き菓子を手で取り、口にした。

 その瞬間、微かな甘酸っぱい香りが鼻をかすめる。
表面はカリッとしていて、もっちりとした弾力の歯ごたえがファーストインパクトを与える。
次の瞬間、濃厚なたまごの風味と上品なバニラの香りが、程よい甘さとともに、口いっぱいに広がる。
その濃厚なハーモニーを必死に感じながら、一口目をゆっくりと飲み込む。
正直、衝撃だった。
外見からは想像もつかないほど繊細な洋菓子。
こんなの初めてだった。
 「どうだ」
 「うまいか」
 「おいしいです」
 「初めてです。こんなにおいしいお菓子を食べたのは」
三浦氏は、「うん」とうなずいて
 「君には、この「カヌレ」をたべてもらいたかった。
この「カヌレ」は僕にとっては想いで深い菓子なんだ。そう、君のご両親と出会うきっかけになった菓子でもある。」
「そうなんですか?」
僕がそういうのと同時に奥から、長い金髪をアップに束ね青色の縁取りのある白いコック服を着た女性が僕の視界に入った。
 彼女の肌は透き通る様に白く、その瞳は鮮やかな青色に輝いていた。
その容姿からは想いもよらないほど綺麗な日本語が放たれた。
 「初めまして、結城君」
 彼女の優しい声と、その微笑はまるで映画のヒロインの様だった。
差し伸べた彼女の手に、応える様に僕も手を差出し握手をした。
彼女の手はとても小さく、壊れてしまいそうな柔らかな手をしていた。
 僕が手を放すと三浦氏は、彼女の肩に手をやり

 「Militza  ミリッツァ」妻だと紹介した。

 彼女「ミリッツァ」はふと僕と律ねえの前にある「カヌレ」を見て
 「そう」
 「よかったわ」
そうつぶやき
 「宜しくね結城」と微笑んだ。
なんだかとても暖かく名前を呼ばれた様に感じた。

 その横には僕の妖精、「三浦恵美」が恥ずかしそうにうつむいている。
 告白の答えも無いまま、僕は彼女と同居することになった。
風の赴くままに

 まだ僕には、これから明かされる彼女の大きな苦しみと、
悲しみを受け入れなければならないことを、想像すらしていなかった。
あまりにも切ない、恵美の音色を。

 僕が彼女「恵美」と一つ屋根に暮らし始めたのは、
夏休みもあと残り僅かとなったころだった。

Black sweet ・Canelé カヌレ第1巻夏雲のように

Black sweet ・Canelé
ブラック・スゥイート・Canelé カヌレ
第1巻 夏雲のように 
終わり
著作:榊原 枝都子

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ブラック・スゥイート・Canelé カヌレ
第2巻 届かない願い First part 前篇

First part Notice

あの時、告白した返事を恵美はしてくれた。でもその返事は、納得のいく答えではなかった。
恵美の過去にある悲しい想いが、その答えを物語っていた。

恵美と一つ屋根の下での生活も2ヶ月が過ぎた。
三浦氏との間に小さな壁を作っていた僕は彼の妻、ミリッツァの振舞いにより、綻びも少しづつほどけていた。
恵美と共にある新たな日常もゆっくりと動き出していた。

恵美にとって忘れる事の出来ない日。
だが彼女は、前の晩9時を過ぎても家には帰って来なかった。
胸騒ぎが治まらない僕は夜、駅に恵美を探しに向かった。

なぜその日が、恵美にとって忘れられない日なのか、その答えを知っているかの様に、
先生は、行先も告げづに僕を連れ出す。
その地で僕は、恵美の過去にある悲しみと苦しさを知ってしまった。


第2巻 「届かない願い」は、前篇、後編の2部構成にてお届けいたします。

Black sweet ・Canelé カヌレ第1巻夏雲のように

高校入学の6日前、ある河川敷の公園でアルトサックスの音色を耳にする。そのアルトサックスの音色は、僕の心を揺さぶった。恋愛におくてで少し引っ込み思案な僕は、その彼女に1年と3か月の間、ただ彼女を見守るだけの一方的な恋をする。高2の夏、僕は事故で両親を亡くす。僕の引き取りとなったのは、あのアルトサックスを奏でる彼女の家だった。現実の距離は、手を差し伸べれば彼女に届く距離に僕はいる。だが、彼女の本当の心は儚く遠いところにあった。彼女の持つ悲しい過去が、僕を遠のかせていた。彼女を好きになることは、容易い。恋愛にまだ未熟な僕と彼女が、入り乱れる恋愛状態から少しづつ自分の大切なものは何かを模索しながら、成長していく過程を描いた作品。 ブラックスゥイート・Canelé カヌレ 第1巻 夏雲のように 全体の始まりに充る部分です。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-12-18

Copyrighted
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  1. その妖精は・・・
  2. 日常との別れ
  3. Owe it to the wind --風に任せて--