「君も同じ空を見ているのかな」
再会してしまった危険な人。でも、関係を崩せない。
再び危険な恋に落ちる、ちょっと大人な長編(?)小説です。
生意気に高校生が実体験を元に書かせていただきます…!!!
現在更新中です(2015/11/30 更新)
「…え?」
足元からザクザクと音が鳴る。
ため息が白くなる12月下旬、今年ももう終わろうとしていた。
今夜も冷えるなぁ。
そうもうひとつため息を漏らし、ひらひらと雪を零す空を見上げ、息を吐く。
かじかむ指先を温める為に、ポケットに手を入れグーパーと動かした。
早く帰ろう。立ち止まった足を再び動かしてから3歩目のことだった。
「……桜乃?」
「…え?」
先ず自分の名前を呼ばれたことに驚いた。
それが聴き慣れていた声だとも気づかず、勢いよく振り向いて、その顔を見て気が付く。
心の奥に眠り凍っていた氷が溶け、感情が戻ってくる。
「翔…ちゃん」
2年前に別れた翔ちゃんだった。
「きっと、そんなことない」
2年前、私はまだ学生だった。
翔ちゃんは一足先に社会人となり、私は就活と卒論に追われながらお互いに忙しい日々を送っていた。
今思えば、忙しい事を理由に連絡もろくに取らず、さびしい時間を作らせてしまった私も悪かったと思う。
無事に就活を終え、卒業を待つばかりとなった雪が溶け始めたある日、
翔ちゃんが浮気しているという事実を知ってしまった。
発覚した原因は、私に隠れて登録していたSNSサイト。
彼は私も登録していると気がつかなかったのだろう。仲良く二人、デートしている写真がアップされていた。
きっと何かの間違いだ、友達とか、きっとそんな。
そう思えば思うほど、真実味を帯びていく。
浮気なんて、翔ちゃんが浮気なんて
「きっと、そんなことない」
声に出して深く、深く息を吸って吐いた。
確かめよう、この目で。
「久しぶり」
「就職&卒業祝いしてあげるよ」という翔ちゃんの誘いに答え、住み慣れた北海道から東京へ飛んだ。
会いたい気持ちと会いたくない気持ちが交差する中で、雲の上の空をただただ見つめていた、ずっと。
こんな気持ちで会って良いのだろうか。
ドキドキも感じない。何も感じない無の感情に、自分が一番震えていた。
こわい、こわい、ほんとうをしるのがこわい。
しばらくすると、小さな街が見え始めた。
それは次第に大きくなり、降り立つ合図でもあった。
ドンッという鈍い振動と共に、私は東京へ降り立った。不思議とその頃には落ち着いていた。
――――……
自分の荷物が流れてくるまでの間に到着の合図を送る。
「着いたよ」
数分と待たないうちに通知音が鳴り響いた。
「搭乗口で待ってるよ」
胸が大きく高鳴った。それは緊張なのか、それとも期待なのか。
このざわつきを消したくて、心臓を手で強く押し付け、フタをした。
しばらくして、私の前に荷物が流れてきた。
フタをしていた手を解き、持ち手に手をかけた。
扉に向かって歩き出す。ここを抜けたら、彼が居る。
深呼吸をして一歩、踏み出した
右、左と顔を動かして、
「あっ」
無意識に声が漏れた。その声に気づくように、携帯に落としていた視線をゆっくりとあげる。
目があった。ああ、翔ちゃんだ。
彼はさっと立ち上がり、私の方に向かって歩いてくる。
用意していた言葉を伝えようとしたとき、まるで分かっているかのように、
「久しぶり」と私に伝えてきた。
「久しぶり」同じ言葉を返して、私たちは駅へと歩き出す。
胸のざわめきは、いつの間にか消えていた。
つづく→近日
「君も同じ空を見ているのかな」