華麗なる近親相姦の結末

 彩香(さやか)は、その地方では明治からつづく老舗の割烹
旅館の三代目の父が半玉の十七歳の芸妓・美穂に生ませた娘。
三歳の時から、継母のもとで腹違いの二人の姉と一緒に厳しく
育てられ、母と呼べるのは継母だけだ。
生みの親の美穂は父が東京にブティックを持たせてひとり立ち
させ、父が仕事の関係で上京する時にそこに泊まるというのは、
身内では公然の秘密になっていて、生みの親は「美穂さん」と
呼ぶように育てられた。
経済的には何ひとつ不自由しないが、継母やふたりの姉からは
事あるごとにうとまれ、たよれるのは父だけという、精神的に
厳しい環境でそだったが、それを不憫に思った父だけには溺愛
されて、わがままいっぱいに育った。

     第一章 処女喪失

 彩香(さやか)はその地方の老舗の割烹旅館の三代目の父が
半玉になったばかりの芸妓に手を付けて生ませた娘で、継母の
もとで腹違いの二人の姉と一緒に厳しく育てられた。
 経済的には何ひとつ不自由しないが、その出生から、継母や
ふたりの姉からは事あるごとにうとまれ、たよれるのは父だけ
という精神的に厳しい環境でそだった。
 ただ、それを不憫に思った父だけには溺愛されて、わがまま
いっぱいに育った。

 そんな彩香にも高校二年の冬がやってきて、週に一回、家庭
教師の所に通うことになった。
 もともと勉強が好きでない彩香だから、同じ高校で優等生で
通した姉たちと比べて成績が見劣りするので母がたんだのだ。
 彩香が通うのは育ちの良い女の子が多い有名私立女子校だ。
 家庭教師の太田は、謹厳実直を絵にかいたような教師が多い
なかで独身でイケ面の教師で、生徒たちの人気の的なのだ。
 家庭教師は生徒の家に出向くのが普通なのだが、いつも客の
出入りが多いので、彩香が太田の所に通っている。
 学校の飲み会で出入りしている太田のことは親もよく知って
いて、母親と一緒に暮らしているので心配ないと考えたのだ。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「あら、お母さまは?」
「買い物に出たんだ。ジュースはそこに置いてってくれたよ」
 いつもは太田の母が持ってきてくれるものだ。
「はい、いただきます」
 彩香はそれを一気に飲み干した。
「急いで来て、のどが渇いていたから美味しい!」
「そうか。お代わりを持ってこようか?」
「ええ、もう一杯ほしい」

 太田が持ってきた二杯目を飲み終えて雑談がつづいた。
 もともと真面目に勉強するつもりがない彩香だから、ここに
くるのも親を安心させるためのアリバイ作りなのだ。
 そのあたりは心得ている太田だから、勉強の押し売りはせず、
時間の半分は雑談で終るのだ。

 まもなく、彩香の動作や言葉が間延びしたものに変わった。
 元来おっとりした話しぶりなのだが、それ以上の変わり様で、
まもなく机の上に突っ伏してしまった。
 まるでする―モーションビデオをみているように・・・・

「彩香さん、どうしたの?」
 彩香の顔を覗きこんだ太田に驚いた様子はない。
 彩香の肩に手を置いてゆすったが形だけのものだ。
「ううーん・・・・」

 彩香から小さなうめき声が洩れたが頭を上げる気配はない。

 それに安心した様子の太田が、机に突っ伏したままの彩香の
うしろに廻り、腋の下から両手を差し入れて胸元をさぐる。
 もちろん、彩香のそれを振り払う素振りはない。
「困った彩香さんだ。向こうでやすもう」
 机に突っ伏した彩香を両腕ですくい上げた太田だが、どちら
かと言えば小柄な彩香だから、一八〇センチ近い太田にとって
なんの造作もないことだ。
 隣の寝室に運ばれた彩香がそっとベッドに横たえられた。

「彩香さん、大丈夫?」
 返事がないのは判りきったことだ。
 太田の手がスカートのホックにかかる。
 スカート、ソックス、パンティ・・・・
 順番に手際よく剥ぎ取られる。
 もっとも、眠りこけている彩香では、太田でなくても赤子の
手をひねるようなものかもしれない。

 彩香が下半身丸裸にされてベッドに横たわる。
 太田がそれに見とれていたのはほんのいっときだ。
 あたふたとスラックスとブリーフを脱ぎ捨てた。
 勢いを飲み込んだような肉棒が股間にそそり立った。

 太田の手で、彩香の脚が大きく拡げられる。
 そこにある、いまだオトコに蹂躙されたことがないぷっくり
盛り上がった秘丘の中央に、ひと通り生えそろっているように
見えるヘアでも隠しようがない割れ目がある。

 太田の目がソコに釘づけになっていたのは一瞬のことだ。
 ベッドに上がった太田が、秘丘に顔を近づけると、しっかり
唾液を乗せた舌先を二、三度クレバスに滑らせる。
 眠っている彩香が相手ではクンニなど無意味なこと、それは
潤滑剤を与えるためにすぎない。
 さらにたっぷり潤滑剤を塗りつけた肉棒をクレバスに沿って
二度、三度と滑らせる。
 彩香の両脚が掬い上げられ、肉棒がクレバスに押し当てられ、
唾液で光ったクレバスに膨らみきった亀頭が埋め込まれる。
 正体なく眠りこけている彩香が相手なのだから当然だろうが、
まるでスローモーションビデオを見ているようにゆったりした、
それでもためらいのない流れるような動きだ。
 次の瞬間、太田の腰が一気に押し下げられた。
 太田の目の前で、怒張した肉棒がクレバスに消えて、もじゃ
もじゃしたヘアで、クレバスがすっかり覆いつくされた。
 いきり立った肉棒のすべてがクレバスに挿し込まれたのだ。
「ううっ!」
 彩香からうめき声があがった。
 彩香の顔が苦痛にゆがみ、左右に振られた。
「い・や・ー・っ・・・・」
 彩香の口から洩れた、はっきり聞き取れないくぐもった声は、
夢うつつの中の本能的な*叫び*だったにちがいない。
「しっかり入った! もう大丈夫だ!」
 彩香の目がいったんは薄く開いたが、すぐに閉じられた。
 わけのわからない衝撃の理由をたしかめるため目を開こうと
したが、目が覚めるに至らなかった・・・・そんな感じに見える。
「おっ、これまでの中でいちばんだ」

 なにしろ、生まれてはじめて固い棒のようなモノを挿し込ま
れたあげく、ソレがクレバスに埋め込まれたままなのだ。
 たとえはっきり眠りから覚めていなくても、そういう事態に
なってバギナが静まり返っているはずがない。
 太田が勝ち誇った言葉のあとに感きわまった言葉を洩らした
のは、ソレを押し出そうとバギナがうごめいていたのを感じた
からに違いない。

 ともかく、彩香を抱え込んだまま太田の動きが止まった。
 もしも太田が激しく動いていたら、彩香は深い眠りから無理
やり目覚めさせられていたかもしれない。
 ところが太田は、あまりの快感に動けなかったようだ。

 じっと動かないでいた腰がすこし動いたかと思うと、今度は
太田から低いうめき声が洩れて、からだが固まった。
 彩香には判らなくても、処女膜を突き破った感覚はまちがい
なく肉棒から脳裏に伝わったはずで、それが引き金になって、
はじめてオトコを受け入れたバギナの中で、あっけなく肉棒が
弾けてしまったのだ。
 そのあと未練たっぷりに太田が彩香から離れると、クレバス
から紅色に染まったエキスがたっぷりと流れ出た。

       * * * * *

 それから三十分もしないうちに、太田がふたたび動いた。
 さっき弾けたばかりだと言っても、処女を破った肉棒がいつ
までも眠ったままでいるはずもないのだ。

 まだ眠りから醒めきっていない彩香の脚が拡げられた。
 そこに膝をついた太田が勢いを増した肉棒をつかみ、こびり
付いたティッシュをはがし取った。
 さっき当てられたそれにも処女の鮮血がにじんでいる。
「うーん・・・・」
 太田が赤い血に染まった肉棒をクレバスに当てようとした時、
彩香の目がぼんやりと開いた。
 おそらく、彩香の目には、両脚の間に膝をついている太田の
姿が朦朧とした目に写ったに違いない。
 自分の身に起ころうとしていることが判らないはずはない。
 彩香が脚をばたつかせ、カラダをひねって逃れようとした。

「先生、なにをするの!」
「あまりに寝顔が可愛いかったのでつい・・・・」
「だめーっ、だめよーっ!」
「わかった。わかったから・・・・」

 太田があっさり矛を収めて彩香のそばに横になった。
 それは、彩香の抵抗の激しさに驚いたからではないだろう。
 いまだけがれを知らない処女のクレバスを目の前に、まさに
これから肉棒を挿し込もうという時だったら、男がそう簡単に
あきらめられるはずはない。
 多少の抵抗なら、それを抑えて思いを遂げようとするだろう。
 むしろ、いちどは思いを遂げたのだから、あとはあわてなく
てもいい・・・・という思いでいったん鉾を収めたのだろう。
 太田の懐の中で、彩香の手が下に伸びた。
 ソコになにかしら違和感を感じ取ったのかもしれない。
 もしそうなら、処女にとってもっとも大事な処をガードする
のは本能的な動きだろう。
 もちろん、そこにはパンティはなく、指先が太田のエキスの
ぬめりを感じ取ったに違いない。
 それに加えて、そこに肉棒を挿し込まれて処女膜を破られた、
という違和感がまだ残っていたに違いない。
 すべては終わってしまって、手遅れだったのだ。
 高校二年生になっているのだから、彩香には、それらが意味
するところが判らないはずがない。

「先生、アレを入れちゃったのね」
「だって、アソコを見たら我慢ができなかった」
「いやだ! いやだ! 先生のバカ!バカ!バカーっ」
「だって、しかたがなかったんだ」
「もう・・・・いやだ! いやだ! いやだ!」

 太田の胸を激しくた叩き続ける彩香だが、それでこれまでの
ことのすべてが帳消しになるわけではない。
 ひとしきり太田の胸を叩き続けたあと、つぶやいた。

「でも、なんか急に眠くなるなんておかしいわ」
「勉強疲れかもしれないね」
「そんなはずは・・・・先生、ジュースにお薬を入れたのね」
「なに? そんなものは持ってないよ」
「でも、あんなに急に眠くなるなんて・・・・」
「うそじゃないよ」
「だって、だって・・・・」
「彩香さん、もういちどいいだろ」
「いやっ、いや、いや、いやーっ」

 彩香は、組み敷こうとする太田を振り切ってベッドを下りた。
 そのあと、彩香はノーパンティでみじめな気持で帰った。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 かたい校風の女子高だが、みんな年ごろだから、それだけに
むしろセックスへの関心が強いのかもしれない。
 さまざまなうわさ話が面白おかしくクラスメートの間を飛び
交っていたが、少なく見ても半数は初体験済みだ。
 それに、男にナンパされ、こっそり睡眠薬を飲まされ、気が
つかないうちに処女を奪われた話などめずらしくもないのだ。
 しかし、彩香にとってはあこがれの的だった太田からそんな
仕打ちを受けることなど想像もしていなかっただけに、彩香が
受けたショックは大きかった。
 そのショックで、翌日からしばらく、彩香は学校を休んだ。
 それで、仲の良いクラスメートが心配して、入れ替わり立ち
替わり見舞いにやってきたが、彩香は太田とのことは、誰にも
打ち明けなかった。

        * * * * *

 彩香が太田の所に顔を出したのは一ヶ月ほど後のことだ。
 一ヶ月前のことを厳しい母に話すわけにはいかないし、いつ
までも仮病を使っているわけにはいかなかったのだ。
 それになによりも、太田は彩香には憧れの的だったのだ。

「この前のこと、怒ってるの?」
「だって・・・・あんなことをするんだもの」
「ちゃんと責任はとるよ」
「えっ? どんなふうに?」
「ご両親に、結婚を許してもらうよう話をするよ」
「そんなのヤメテ!」
「え? どうしてなんだ?」
「だって・・・・いまから縛られたくないから」
「でも、僕は彩香さんが忘れられない」
「私とアレをしてしまったからでしょ」
「そうではなく、彩香さんがここに入学した時から・・・・」
「どう思っていたの?」
「お嫁さんにするならこの人だ、って・・・・」

 彩香はその地方の老舗の割烹旅館の、三人姉妹の末っ子だ。
 損得勘定で考えても、これぐらいのことを言うのは当然だ。

「さぁ、勉強を始めようか」
「ええ・・・・」
「今日はどこからだったかな?」

 からだを寄せた太田の鼻孔がふくらんだ。
 そのうち、太田の顔に赤味がさし、息遣いが荒くなってきた。
 あれからたっぷり一ヶ月も経っているのだ。
 彩香を目の前にして、そうなるのは若い男としては当然だ。
 周りに立ち込めた彩香の体臭が鼻孔から吸い込まれて、沸騰
しはじめた体中の血に火が付いたのかもしれない。
 うしろから抱きしめられた彩香のうなじに太田の唇が触れる。

「彩香さんが欲しい」
「だめっ!」
 腋の下から挿し込まれ乳房を探ってくる太田の腕を締め付け
たまま、彩香のからだが左右に揺れる。
「彩香さんは僕のものだ!」
「じゃ、先生も私だけのものになってくれる?」
「もちろんだよ」
「ほかの子に手を出しちゃいやよ」
「それは当然だよ」
「ほんとう? 約束してくれる?」
「もちろん約束するよ」

 この前のように彩香に肉棒を挿し込めるのだったら、太田が
彩香の言うままにうなづき返すのは当然だ。
 たとえ眠らされている間であっても、あこがれていた太田に
処女を破られたばかりのウブな彩香だから、そんな男の心理の
奥まではわかるはずがない。
 太田の素直な返事に、彩香のからだの揺れが止まった。

「それじゃ、向こうに行こう」
 いっときも無駄にしたくない太田が彩香を促した。
「お母さまが来ないかしら?」
「呼ぶまで上がって来ないように言ってあるから」
「ほんとうに大丈夫かしら?」
「大丈夫、絶対上がって来ないよ」

 重ねて言いきられて、椅子から立ち上がった彩香だ。

        * * * * *

 寝室ですることはひとつしかない。
 だが、この前のように何も知らないうちに、というわけでは
ないと言っても、一か月前に処女を破られたばかりなのだ。
 そして、今度が二度目と言うのだから、積極的にそれを望む
気持ちが彩香にある筈はない。
 それなら、彩香の背中を押したのは何かと言えば・・・・
 太田が憧れの先生だったということもあるだろう。
 それに一度あげた相手だから、二度目でも三度目でもおなじ
ことだという思いもあるだろう。
 さらに、皆の憧れの的だった太田をひとり占めできるという
優越感もあったかもしれない。
「さぁ、ここにおいで」

 ベッドのそばに誘った太田の手が彩香の洋服にかかる。
 彩香には、太田の目の前で自分から裸になることなど出来る
はずもなく、太田に素直にからだを預けるだけだ。
 彩香が着ているものなどあっという間に剥ぎ取られる。
 すっぽんぽんにされた裸身は、身長こそ一五五センチ足らず
だが、アクセントがあるスリーサイズはもう立派な大人だ。

「素敵なからだだ!」

 太田の目が裸身に目を釘付けになっていたのはわずかの間で、
彩香をベッドに寝かせると、自分の大急ぎで裸になる。
 股間には、この前にも増してそそり立つ肉棒がある。
 太田に、彩香に入念な愛撫をくわえる余裕などない。
 あるのは、いちど知ってしまったあの味を早く味わいたいと
いう焦りだけだろう。
 愛撫もそこそこに、押しひろげた彩香の脚の間に膝をついて
怒張した肉棒につばを塗りつけはじめる。
 そして、からだを繋ごうとする太田を彩香が抑えた。

「だめっ! アレを付けて!」
「えっ、付けないとダメ? この前も付けなかったよ」
「今日はだめ! この前は私が知らなかったんだから」
「今日はアブナイ時なの?」
「そうみたいなの」
「出来てもいいじゃないか。結婚すればいいんだから・・・・」
「だめっ! そんなこと、勝手に決めないで!」
「そうか。だめかぁ」
「赤ちゃんができたらこの街には居られないわ」
「そんなことはないと思うけど・・・・」
「だってぇ・・・・」

 いかにも未練たっぷりと言う感じで、引き出しからスキンを
取り出して来た太田が仕切り直しに入る。
 それに安心したのか、好きなようにして! というそぶりの
彩香に背中を押された太田が、いきおいづいた肉棒にかぶせた
スキンの上から唾液をたっぷり塗りつける。
 その根元をつかんでクレバスに沿わせてすべらせるが、その
動きは滑らかと言うにはほど遠い。
 おそらくペッティング経験もないのに、十七歳になっていき
なり処女を破られたばかりのカラダだ。
 前戯の名にも値しないおさわりだけで濡れるはずもない。
 太田にもそれが判ったようで、クレバスにも直に唾液を塗り
つけてから肉棒を押し込みにかかる。
 だが・・・・案の定というべきか・・・・彩香から悲鳴が上がる。

「だめーっ! 痛いよう!」
「そんなに痛いのか? すぐによくなるから我慢して」
「だめーっ・・・・我慢できないよう!」
「大きな声を出さないで! 下に聞こえてしまうよ」 
「ああーっ、痛いよう!」
「もうすぐだから・・・・」
「だめ、だめっ! やめてっ!」

 脚をばたつかせ、両手を突っ張って逃れようとする彩香・・・・

 つい一か月前の性交体験で増幅された男の本能を満たそうと、
この前のように一気に挿し込んでしまおうと焦る太田・・・・
 左手で彩香を抱え込む一方、クレバスのあたりに右手を挿し
込みながらあがく太田・・・・
 そんなせめぎ合いが果てしなく続くかと思われたが、決着は
思いのほか早くついた。

「ううっ・・・・」

 太田から意味不明のうめき声があがった。
 彩香から離れた太田の股間に、まだ勢いが残っている肉棒が
屹立しているが、その先端には男のエキスで膨らんだ液溜めが
ぶら下がって揺れている。
 バギナに肉棒を挿し込もうとあがいているうちに、その究極
の思いを遂げる前にあっけなく肉棒が弾けてしまったのだ。
「こんなにいっぱい出たよ」
「・・・・・・・・」
「もうこれ以上は出ないから・・・・いいだろ?」

 肉棒から取り外したそれが彩香の目の前に突きつけられた。
 ちらっとそれに目を移した彩香の眼はすぐ閉じられた。
 返事はないが、彩香が小さく頷いたように見えた。
 もうスキンを付けなくても大丈夫だよ、ということを彩香に
納得させたいのが太田のねらいだが、それは聞き入れられた。

        * * * * *

「さぁ、からだから力を抜いて楽にしていなさい」
 やや命令口調で言われて、彩香は大きく息を吸い込んでから
ゆっくりと吐き出した。
「そう、その調子・・・・もう一度・・・・」
 彩香がリラックスしたのを見届けると、太田が動いた。
 両脚がひろげられても逆らわず、彩香は太田のために十分な
居場所を作った。

「こんどは痛くないから・・・・」

 さっきに比べれば太田の振る舞いには余裕が見て取れる。
 彩香を暗示にかけるような言葉をかけておいて、指先でクレ
バスを拡げて攻め込むところをたしかめる。
 クレバスの奥にかわいらしいホールが現われる。
 小柄なカラダに似会う、指一本が入るかどうかという感じだ。
 そこに、根元を絞られた肉棒の先っぽが合わされる。
 スキンが取りはずされたばかりのソレは、まだ男のエキスで
艶やかに光っているという生々しさだ。
 一度はじけただけに猛々しさは消えているが、こすりつけて
いるクレバスから精気を吸い込んで勢いを取り戻し始めた。

 それが十分な固さになったと見たのか、ようやく動いた。
 膨らんだ先っぽがクレバスに消えたところで彩香のカラダに
緊張がはしり、眉が寄った。
 初めての時、恐るおそるではなく一気に突き破られたのだ。
 二度目のいま、ある程度の痛みがあってもおかしくはない。
 それが判ったのか、太田は一気に挿し込むのではなく先っぽ
だけの出し入れを入念に繰り返した。
 たぶん、膨らんだその先っぽが一か月前に破られたばかりの
処女膜のあたりをゆっくりと擦っているに違いない。

 それが繰り返され、彩香の顔が目に見えておだやかになった。
 処女膜が破れた所もナマの肉棒になじんできたのだろう。
 もう安心だと見きわめた太田がからだを傾けて両手を付くと、
彩香の顔にしっかり視線を当てた。
 腰がゆっくりとしかも力づよく前に押し出され、その動きは
二つの腰が密着して初めて止んだ。

 彩香の様子に安心したのか、太田の腰がそれまでと段違いの
大きなストロークで動きはじめた。
 いったんソレが抜け外れるぐらいまで後退した腰を、今度は
ゆっくり行き着くまで前に進めたのだ。
 つい一か月前に処女を破った彩香に、思う存分に肉棒を出し
入れできるのだから、これに勝る至福の時はないだろう。
 だが、太田にとって、至福の時はあまり続かなかった。
 なにしろ、彩香が自分を受け入れてくれているという実感が
持てたのは初めてのこと、急激な高まりに襲われたようだ。
 もはや彩香の様子を窺っている余裕はない。
 ただ、からだを重ねて抱え込むと激しく腰をしゃくりあげた。
 その瞬間、彩香から悲鳴が上がった。

「いたかった? どこが?」
「なんか奥の方が・・・・」
 長い肉棒を思いっきり押し込まれて、初めてのことに子袋の
あたりが悲鳴を上げたのかもしれない。
 彩香にとって幸いだったのは、腰をしゃくり上げるあがきは
その時が最後で、秘奥に押し込まれたまま弾けたことだ。

「ふーっ・・・・いいきもちだった」

 彩香は大田にしがみついたままだ。
 二つのからだが離れると『もう出ないよ』という、さっきの
言葉とはうらはらに、わずかに色づいたエキスが流れ出た。

「先生、ティッシュをとって!」
「わかった。僕が拭いてやるよ」
「イヤ! 自分でするから・・・・」

 思いのほか強い口調に、太田がだまってティッシュを渡すと、
彩香はそれをクレバスに当ててトイレに向かった。
 彩香に、エキスを注ぎ込まれたことを気にする様子はない。
 もう高校二年になっているのだ。
 太田の『二度目ならもう出ない』という言葉を信じたのでは
ないだろう。
 太田の所に顔を出したらどうなるかは判らないはずはない。
 たぶん、生理が終りかけた時を選んできたに違いない。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 一週間が過ぎた。

「さぁ、あちらのお勉強を先にしようか?」
「ダメ! あちらのお勉強は今日はお休みよ」
「どうして?」
「女性にはいろいろ都合の悪いことがあるの」
「そうか、今日はアレなのか?」
「アレ、ってメンスのこと?」
「もちろん、そうだよ」
「それなら大丈夫だけど、いまアブナイ時なの」
「だったらちゃんと付けるから」
「ダメ! アレを付けたら痛いから・・・・」
「だったら、最後に付けるから」
「ダメ! あぶないからダメなの!」
「だったら、いつなら出来るの?」
「月に一度、いちばん安全な時よ」
「月イチかぁ。我慢が出来ないなぁ」
「そんなこと言うんだったら、わたし、来るのやめる」
 彩香がプイと横を向いて見せたので太田があわてた。
「ごめん。怒った? 機嫌を直してくれないかなぁ」
「先生が私を困らせなかったら・・・・」
「わかった。彩香さんの言うとりにするよ」
「うれしい。わたし、先生が大好きだから」
「それで、いつなの?」
「それ、その日にわたしが決めるの」
「ちょっとだけ教えてくれたらいいのに・・・・」
「あら、男の人にもカラダの都合があるの?」
「そんなものはないけどね」
「でしょ。それだったら、いつでも準備OKよね」
「それはそうだけど・・・・」
「だったら、わたしの言うことを聞いて!」
「わかった。言う通りにするよ」
「じゃ、今日は本当のお勉強だけよ」

 それ以来、彩香のおまけの*お勉強*は月にいちど、しかも
その日になって彩香が決めるというルールになった。



     第二章 お受験

 彩香にとって番外の*お勉強*も今日でおわりだ。

 受験が近いという理由をつけて、夏ごろからは二時間に延長
していた*お勉強*だが、その大半はベッドの上だったのだ。
 もっとも、月イチで、合わせても両手にも足らない回数では、
彩香の*お勉強*の成果はしれたものだ。
 なぜなら、太田は彩香のカラダを愉しむことに夢中で、教師
としてはともかく調教師としては失格間違いなしなのだ。
 それでは、彩香にはいいところなしなのだが、その代わりに
母から渡されるお月謝は袋ごと彩香に戻ってくるというわけだ。
 経済的には恵まれていると言っても、高校生では、表向きの
お小遣いの額も限度があるから、彩香には大助かりなのだ。

 この日も、しっかり*お勉強*を楽しんだ太田が・・・・

「彩香さん、受験校はあれできまりなんだろ」
「ええ、そうよ」
「試験日は年が明けてすぐだったね」
「そうよ」
「彩香さんはトリプルAだから心配ないよ」
「トリプルA? それってわたしのカラダのこと?」
「もちろんそれもだが、内申書もだよ」
「ほんとなの?」
「ほんとだとも。トリプルAは彩香さんだけだ」
「うれしい」
「それで、試験が終ったら、東京で会えないかなぁ」

 太田がそう言うのは無理もないことだ。
 田舎で、教師と女子高生がラブホに出入りしているのがバレ
たら大変だから*お勉強*は狭苦しい家のベッドだったのだ。
 これからは大ぴらに彩香を抱けると期待してのことだ。

「そんなのダメ!」
「どうして? 試験の後は何日か東京に居るんだろ」
「厳しい叔母さんの家に泊めてもらうから、無理だわ」
「そうかぁ。でも、大学生になったら大丈夫だよね」
「わからないけど、たぶん大丈夫かも・・・・」

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 彩香が泊まるのはひとり住まいをしている叔母の所だ。
 もっともそれは表向きで、本当は彩香の生みの母なのだ。
 いまから二十年近く前、その土地で明治時代から続いている
割烹旅館の三代目の父が、半玉になったばかりの十七歳の娘に
手を付けて産ませたのが彩香なのだ。
 三歳になってから、彩香は父の元に引き取られて、腹違いの
二人の姉と一緒に継母に育てられた。
 もちろん『お母さん』と呼ぶのは育ての母だけ、生みの親は
『美穂さん』と呼ぶように厳しく育てられたのだ。
 美穂は、父が東京にブティックを持たせてひとり立ちさせ、
父が上京する時にそこに泊まるのは、身内では公然の秘密だ。
 その美穂が住んでいるのは3LDKの小奇麗なマンションだ。
 彩香がここに来るようになったのは、それも年に二度ぐらい
なのだが、小学校に入ってからのことだ。
 彩香が父と一緒に来た時には、彩香は玄関横の洋室に、父は
和室の奥にある美穂の寝室に、というのがいつものきまりだ。
 その頃には、父と美穂と自分の関係を父から教えられていた
彩香だから、それを不思議とは思っていなかった。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「彩香、元気にしてた?」
「うん、元気にしていたよ」
「時々は*あの人*から聞いていたけど、早いものね」
「え? なにが?」
「もう高校卒業だなんて・・・・わたしもおばさんね」
「そんなぁ・・・・美穂さん、まだ三十六でしょ」

 自分の産んだ娘が十八歳ともなれば、やはり自分の歳が気に
なるのが人の常と言うものだろう。
 少しばかりしんみりした表情をした美穂が、急に声も表情も
はなやいだものに変わった。

「あ、そうそう、さっき*あの人*から電話があったのよ」
「え? どういう電話?」
「彩香をよろしく頼む、って」
「あら、それだけなの?」
「それから・・・・三人で夕食を食べるから、って」
「向こうではそんなこと言ってなかったけど」
「なにか急な用事が出来たからでしょ」
「そうかも・・・・」
「お夕食の支度をするから、先にお風呂に入ってなさい」
「そうするわ」
「向こうの部屋、使えるようにしてあるからね」

        * * * * *

 風呂からあがってきた、美穂の*あの人*が先にテーブルに
座って待っていた彩香に声をかけた。

「どうだ彩香、自信はあるのか?」
「ええ、なんとかなると思うわ。なんと言ったって、内申書は
トリプルAらしいから」
「そんなこと、学校が本人に教えるのか?」
「ある先生がこっそりと・・・・」
「そうか。まぁ、彩香は好かれるたちだからな」
「でも、けっこう言いたいことも言ってるのよ」
「とにかく、いまさらじたばたしても仕方がないから、自分を
信じて気を楽にして受けることだな」
「大丈夫、そうする」

 頃合いを見て、美穂がふたりを促した。

「それじゃ、あなた、そろそろ食事にしましょう」
「そうだな。彩香の健闘を願って乾杯しよう」
「あなた、お飲み物はなににします?」
「まぁ、シャンパンが無難だろう」
「そうね。それなら大丈夫かしら」

 美穂が持ってきたシャンパンが三つのグラスに注がれた。

「あなた、彩香のは多すぎない?」
「これぐらいは大丈夫だ。それに、よく眠れるよ」
「そうね。緊張して眠れないかもしれないからね」
「わたし、そんなに緊張なんかしてないわ」
「じゃ、ともかく彩香のために乾杯!」
「ありがとうございます」

 親子団らんの食事がわると、美穂が彩香をうながした。

「彩香、明日があるんだから、先にやすんだら?」
「そうね。でも、こんなに早く眠れるかしら?」
「横になっていたら眠れるでしょ」
「そうね。じゃ、パパも美穂さんも、おやすみなさい」」
「ああ、おやすみ!」
「ぐっすりやすむのよ」
「シャンパンを頂いたから、たぶんすぐ・・・・」

         * * * * *

 一旦はベッドに横になってみた彩香だが、やはり試験前日の
せいか目が冴えて寝付けない。

 ・・・・あれぽっちのシャンパンじゃ、睡眠薬にもならないわ
 ・・・・参考書でも読んでいれば眠れるかも
 そう独り言をつぶやきながら、ベッドの横の机に向かった。
 しばらくして、美穂らしい静かな足音が、追っかけるように、
父のものらしい勢いのある足音がバスルームに消えた。
 ・・・・あれっ? パパはさっきお風呂に入ったのに
 ・・・・それほど広くないのにどうして一緒に
 ・・・・あそこでパパが美穂さんにアレをいれるのかしら

 どれぐらい経ったか、そんないぶかしさが頭から消えた頃、
二人が出てくる気配と、ひそやかな話し声が聞こえた。

「彩香はもう寝たかな?」
「シャンパンをしっかり飲んだから・・・・」
「じゃぁ、ひさしぶりに○○○○○・・・・」
「うふふふ・・・・」
「しっかり○○○○○してやるよ」
「うれしい」

 二人のひそやかな話し声の後に静けさが戻った。

         * * * * *

 いつまでも起きているわけにもいかないわ、横になってたら
眠れるかも・・・・そんな想いで彩香が机を離れた時だ。
 奥の方からかすかに声が聞こえはじめたのだ。

 ・・・・何だろう? なにか言い争いをしているみたい
 気になった彩香が部屋のドアを開けて廊下を窺うと、居間へ
つづくドアの向こうからはっきりした声が聞こえてきた。
 それは普段とは違う美穂の声のようだ。
 これまで何度か泊った時は聞いたことがない声だ。
 たぶん、それが聞こえてくる前に眠りに落ちていたか、聞こ
えていても微かな声で気にならなかったのかもしれない。
 それが気になったのは、それだけ大人になったせいだろう。
 なにしろ、太田に処女を破られてからの一年あまり、毎月の
ように抱かれて来た彩香なのだから、普段とは違う美穂の声が
なにをしている時のものか判らないはずがない。

 ・・・・パパが美穂さんにアレを入れているんだ
 ・・・・そうなんだ。アノ時の美穂さんはあんな声を出すんだ

 ところが、美穂の声はまもなく止んだ。
 彩香がそーっとドアを閉めてベッドにもぐりこんだすぐあと、
美穂の静かな足音がバスルームに消え、すぐに戻って行った。
 ・・・・美穂さんがアソコを洗いに来たんだわ
 ・・・・パパは男だから洗わなくてもいいんだ
 ・・・・太田先生もティッシュで拭くだけだったわ
 ・・・・パパって淡白なのかしら? 太田先生と同じみたい

 はじめて聞いた美穂の声が、父にアレを入れられている時の
声だと判っているだけに、彩香はしばらく目が冴えていた。
 ところが、まもなく、さっきと比べものにならない声が耳に
飛び込んできて、せっかく落ちかけた眠りを破られた。
 今度は、廊下に出て突き当りの居間へ続くドアを少しあけた。
 そこから先は、居間と寝室の間のドアがあるだけだ。

 ・・・・あれから一時間もしてないのに、また始めるなんて
 ・・・・パパって意外に元気なんだ。
 ・・・・そこのところも太田先生とあまり変わらないわ
 ・・・・さっきと違う声みたいだけど、ずいぶん長いのね
 ・・・・あれって、美穂さんが泣いてるような声だけど
 ・・・・もうそろそろフィニッシュかな

 彩香が居間へ続くドアを閉めかけた時だ。
 とつぜん美穂の泣き声がはっきりした言葉に変わり、それに
からんだ父の声と一緒に、らせん階段を駆け上がり始めた。

 いいのよ~ ほしい、はやく入れて~
 いや、まだだ!
 いまがいいの はやくぅ~
 そんなに欲しいのか?
 ほしい! はやくほしい!
 そうか、入れてやるぞう! 
 あっあうーっ!
 はいった!
 ああぁーっ!

 彩香は、ドアを閉めるのも忘れて、立ちすくんでいた。

 ・・・・ええっ、パパはいまアレを美穂さんに入れたんだ
 ・・・・それじゃ、いままでは何をしてたのかしら?
 ・・・・わたし、太田先生にあんなこと言った覚えはないわ

 そんな彩香の驚きをよそに、美穂の哀願、父の合図、美穂の
呻き声がよどみなく続いた。
 ドア一枚を通して聞こえる、これまで聞いたことのない声に
圧倒されて、彩香はそこから動けなくなった。
 そのあと、美穂の声がさらにヒートアップして、その迫力は
さっきとは段違いになった。
 そればかりではなく、父の声はもちろん、ベッドがはげしく
きしむ音、カラダとカラダがぶつかり合う音、どちらともつか
ない激しい息づかいを伴ないはじめた。

 ・・・・美穂さんにあんな声を上げさせるなんて
 ・・・・パパのアレ、どんなかしら?
 ・・・・太田先生のアレも大きかったけど
 ・・・・もっと大きいのかしら?
 ・・・・美穂さん、どんな格好をしてるのかしら
 ・・・・パパ、どんなふうな形で入れてるのかしら

 そんな間にも、美穂の声もさまざまに変化した。
 ある時は泣き叫び・・・・ある時は叫び、ある時はうめき・・・・
 そしてついには、自分のフィニッシュが近いことをはげしく
訴えながら、最後の出動を求めはじめた。

 いいのよーっ、きてーっ
 まだ、まだーっ
 おねがーぃ
 だすぞーっ
 あっ、ああぁーっ
 おーっ、締まる―っ

 流れるような一連の叫びのあと、ついに静寂がおとずれた。
 ベッドに戻っても、彩香はしばらく寝つけなかった。

 ・・・・パパも美穂さんもすごい声を上げてたけど
 ・・・・パパも美穂さんもすごくいい気持ちだったのね
 ・・・・でも、どうしてあんな声が出るのかしら

 彩香は、いままで触れたこともない男と女の営みの奥深さに
触れた心地だったに違いないが、その根っこにあるものがどう
いうものかなど、まだ経験の少ない彩香には判らないことだ。
 まもなく彩香は眠りに落ちていた。

         * * * * *

 翌朝はやく、彩香は美穂の声で眠りをやぶられた。

「彩香、早く起きないと試験に遅れるわ」
「うーん・・・・いま何時?」
「もう六時になるのよ」

 大急ぎで身支度を整えてダイニングに出た彩香を迎えたのは、
昨夜のはげしい営みがまるで嘘みたいに、輝くばかり美穂だ。

「あら、パパは?」
「少しお疲れのようでまだ寝てるわ」
 昨夜の一部始終を聞かれたことなど知らないのだから当然の
ことだが、美穂の言い方はこともなげだ。
「じゃ、頑張ってくるから、と言っておいてね」

 彩香はすっきりした顔の美穂に見送られて試験場に向った。



     第三章 東京生活

「これ、母からのお礼です」

 入試が終って、太田の所の*お勉強*の口実はなくなったが、
まもなく合格通知が届いて、母がまとまったお礼の包みを準備
してくれたので、その*お礼*を持ってきたのだ。

「いいよ、東京でお小遣いにしたら」
 包みの中身を知らない太田は鷹揚に言って押し返した。
「うれしい。ありがとうございます」
 彩香は素直に礼を言って、それをカバンにしまい込んだ。
「彩香さん、今日はいいんだろ」
「ええ・・・・」
「アレ、付けなくてもいいんだろ」
「ええ・・・・」
 うつむいて見せる彩香を引き寄せた太田が耳元にささやいた。
「じゃ、お祝いにアレをしっかり入れてあげる」
「そんなぁ・・・・」

 初めてスキンを付けた肉棒を挿し込まれた時の痛さに懲りて、
それからずっとナマで、そしてエキスを受け止めてきたのだ。
 いちおうは嫌がる素振りをしてみせるだけの彩香だ。
 思いのほか素直な彩香に有頂天になった太田は、久しぶりの
彩香のカラダにあっけなく弾けてしまった。
 注ぎ込まれる大量のエキスを秘奥に受け止めながら、彩香は
醒めた気持ちで、この間のことを思い返していた。

 ・・・・太田先生、あれをいっぱい出したみたいだけど
 ・・・・パパも美穂さんの中にこんなふうに出したんだわ
 ・・・・いつになったら美穂さんのような声が出るのかしら
 ・・・・パパは『締まる―っ』って大きな声で叫んだけど
 ・・・・太田先生からは聞いたことがないわ
 ・・・・これで終りだから、そんなこと、どうでもいいわ

 そんな彩香の心の内を知らない太田がからだを寄せた。
「もう一度・・・・いいだろう」
「あ、大変! すぐ帰らないと」
「ええっ、もう帰るの?」
「母といろいろなものを買いに行くの」
「少しぐらい遅れてもいいだろ」
「だめよ! お礼を渡したらすぐ帰る約束だから」
「じゃ、今度またきてくれるんだろ」
「それはダメよ! 先生の所に来る理由がないもの」
「それじゃ、東京で・・・・連絡先、教えてくれないか」
「男からの電話、叔母さんはぜったい取りつがないわ」
「それじゃ、叔母さんの家の近くで・・・・」
「そんなのダメよ」
「どうしてなんだ?」
「叔母さんの家のあたりをうろうろ出来ないわ」
「だったら近くの駅で・・・・それははどこ?」
「変なことするんだったら、学校に連絡するからね」
「そんなぁ・・・・」

 それっきり太田は口をつぐんでしまった。
 もともと、太田に彩香への恋愛感情があったわけではない。
 彩香の家のことを良く知っているため、妻にしても損はない、
と言うぐらいの気持ちで処女を奪っただけなのだ
 彩香の気持ちが自分にないことを察して、深追いして職場を
失うわけにもゆかない、と打算を働かせたに違いない。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 彩香の学生生活も、あっという間に平穏な半年が過ぎた。
 彩香は、月に一、二度は上京してくる父に思いっきり甘えた。
 これまで、可愛がってくれた父に甘えるにも継母や腹違いの
姉たちを気にしながらだった。
 しかし東京では、美穂は生みの親だから、だれに気兼ねする
こともなく思いっきり父に甘えられたのだ。
 ただ、平穏には違いないが、十数年ぶりに美穂と一緒に住む
ようになってから、これまで頭の中で理解していただけの父と
美穂の間柄を身近になまなましく感じはじめてもいた。
 やはり、太田との一年あまりのセックス経験で、それなりに
大人になていたからに違いない。
 彩香がいつも見ている美穂は、いつもは父に出してもらった
ブティックの仕事でさみしさを紛らわせている様子だが、父の
上京が近くなってくると目に見えてそわそわしはじめた。
 十八歳で彩香を生んだ美穂はまだ三十六歳、お色気たっぷり
の旬の女、まさに*サセごろの女*なのだ。
 一方の父は美穂とは十八歳違う五十四歳、まだまだ元気だ。
 彩香がまだオトコを知らない生娘で、普段と違う美穂の声を
知らないでいたら、男と女の機微もわからず父におもいっきり
甘えていたかもしれない。
 しかしこの頃は、父が上京してきた夜は、父と美穂を残して
いつもより早めに自分の部屋に引き揚げていた。
 しかし、すんなり眠りにつけるわけではない。
 しっかりした造りの3LDKのマンションで、防音も十分な
はずだが、奥のベッドルームから微かな声が聞こえはじめると
眠気など吹き飛んでしまうのだ。
 となると、もっとはっきり聞きたくなるのはいつものことだ。
 眠れないままに耳に入ってくる声から察すると、あっという
間に終わるのは初めだけで、一時間ぐらいしてからの二回目は
おそらく一時間ぐらいかけて愉しんでいるようなのだ。
 ある時は、それは父が何かの会合で酔って帰った時なのだが、
早朝に眠りを覚まされることもあった。
 そんなことが半年あまりも続いているのだ。
 女盛りの美穂と男ざかりの父だから、しかも月に一度か二度
ぐらいのことだから、二人が燃え上がるのは当たり前と判って
いても、自分もすでにオンナになっているだけに、父をひとり
占めしている美穂に嫉妬心が芽生え始めてもいた。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 美穂の*あの人*が帰っていった。
 たいていは二晩泊まるのだが、今度に限ってはひと晩だけの
せいなのか、激しくて長い夜が終り、早朝にもあった。
 夕食を取っている時、美穂が、寝不足気味の彩香のあくびを
見逃さなかった。
「あら、彩香、昨夜は遅くまでお勉強してたの?」
「うん・・・・あれ、お勉強というのかしら」
 彩香はすこしばかり皮肉っぽい言葉を返した。
 昨夜と早朝、しっかり付き合わされたからだ。
「え? あれ、って何のこと?」
「いいえ、べつにたいしたことでは・・・・」
「そうお? テレビの深夜放送でも見てたのね」
「それだったらよかったんだけど」
「なんか、おかしな彩香ね」

 要領を得ない彩香の返事に解せない顔をしてみせた美穂だが、
彩香に誘われるようにあくびをもらした。

「あら、美穂さんだって眠いみたいね」
「彩香のがうつったみたい。あくびってうつるらしいから」
「昨夜、遅くまで起きてたからじゃないの?」
「そんなことないわ。あれからすぐやすんだわよ」
「ベッドに入ったのはそうかもしれないけど・・・・」
「あら、ベッドに入ったら、もう寝るだけでしょ」
「それはそうだけど・・・・」
「そうにきまってるでしょ」

 美穂の口調は、まだ彩香がオトコを知らない生娘か、そうで
なくても微妙な男女のことは知らないと決めつけているようだ。
 自分のことはともかく、実の娘だから当然かもしれない。

「普通はそうかもしれないけど、パパが来た時は特別でしょ」
「いいえ、特別っていうわけでは・・・・」
「あら、そうかしら? パパは何のために来るのかしら?」
「昔からのお友達だからでしょ」
「お友達なのに、どうして同じ部屋でやすむのかしら?」

 核心を突いた彩香の言葉に言葉を詰まらせる美穂だ。
 それでも体勢を取り戻したところはさすがだ。

「大人だから、一緒にやすんでいるだけよ」
「そうね。大人だから、アレをしてもいいのよね」
「え? どういうこと?」
「だって、遅くまで美穂さんの声が・・・・」
「あら、話し声が彩香の部屋まで聞こえたのかしら?」
「話し声は聞こえてこないけど、美穂さんのいい声よ」
「えぇっ? ほとう?」
「ええ、ほんとうよ」
「そんなはずはないでしょ」
「だって、聞こえたんだもの」

 正直に驚いた様子を見せた美穂だが、彩香の皮肉っぽい顔を
見てすべてを察したようだ。
 なにしろ母と娘、それに彩香は十九歳なのだから、十八歳で
彩香を産んだ美穂から見れば立派なオンナというわけだ。
 それからの美穂はすっかり開き直った。

「そうなのね。あの声が聞こえたのね」
「そうよ。いつもと違う声が延々とね」
「まぁ、はずかしい」
「あれって、恥かしいことなの?」
「彩香も十九歳なんだから、何をしてたのか判っているのね」
「もちろんよ。パパにアレを入れてもらってたんでしょ」
「あら、どうしてそんなことまで判るの?」
「だって美穂さん『いれて! いれてーっ』と泣いてたから」
「まぁ・・・・彩香ったら・・・・」
 彩香にそこまで言われて絶句する美穂だ。
 それなのに、さらなる彩香の追及がつづく。
「男が女に入れるの、大きくなったアレしかないでしょ」
「あら、はっきり言うわね。彩香も経験があるの?」
「もちろんよ。もう十九歳なのよ」
「そうよね。わたしは半玉になった十七歳の時だから」

 美穂に開き直られて、天の邪鬼の彩香も逆襲する。

「二回もパパに頑張らせてたでしょ」
「あら、そうだったかしら?」
 核心を突いた彩香のこ質問に、美穂はとぼけて見せた。
「そうよ。たっぷり二時間ぐらいかけていたみたいだから」
「あら、そんなことまで?」
「それに、もっといっぱい判っているわ」
「えぇっ、どんなこと?」
「言ってもいいの?」
「言いたくなかったら、言わなくてもいいわよ」
「言いたくない訳じゃないけど・・・・」
「だったら、言ってごらんなさい」
「じゃぁ・・・・いつも最初は長くないみたいね」
「そうだったかしら?」
「もう済んだのかと思っていたら、また始まったりして・・・・」
「・・・・・・・・」
「美穂さんの泣き声が一時間ぐらい続いたりして・・・・」
「・・・・・・・・」
「あの声って・・・・自分でも判っているものなの?」
「そんなこと、自分に判るわけはないでしょ」
「だったらどうして『あの声が』って判ったの?」
「あの人がテープに録った声を聞かせてくれたことが・・・・」
「ええっ、パパもなかなかやるのね」

 しばらく沈黙の時が過ぎた。

「それで・・・・彩香があれを聞いたの、昨夜が初めてなの?」
「そんなことないわ。大学入試で泊まった晩よ」
「ええっ、あの時に?」
「そうよ。あれからパパが来る時はいつも」
「まぁ・・・・そうだったの」
「でも、おとな同士なんだから・・・・」

 美穂の表情は、自分が、半年以上もそのことを知らなかった
ことへの驚きのようなものだったかもしれない。

「初めての時はびっくりしたし、すごいと思ったわ」
「なにが?」
「美穂さんもだけど、パパのパワーもすごいと思ったわ」
「そうだったのね。なにも言わないから知らないのかと・・・・」
「美穂さんの声、いつも聞いてます、なんて言えないでしょ」
「それもそうね」
「今日は話の流れで言ったけど、言わなければ良かったかな」
「いいえ、いいのよ。いつかは・・・・」
「そうよね」
「彩香も大人だから・・・・あの人、わたしの生きがいなのよ」

 しんみりした美穂の口調に、彩香が話を振った。

「美穂さん、試験の日の朝のこと、覚えてる?」
「受検の日の朝、ってなぁに?」
「朝早くわたしを送り出してくれた時に言ったことよ」
「なにを言ったかしら? 覚えてないわ」
「美穂さん『あの人、少しお疲れのようで、まだ寝てるの』と
顔を赤らめて言ったのよ」
「そんなこと言ったかしら」
「だから、わたし、おもわず美穂さんの顔を見たの」
「それだったら、ほんとうのことを言っただけでしょ」
「だって、自分が疲れさせたくせに、って思ったから」
「まぁ・・・・あの人ががんばったのよ」
「あらぁ、そうだったの?」
「なによ、その言い方・・・・」
「だって美穂さん、パパに『もっとしてくれなきゃイヤ!』と
言ってたみたいだけど・・・・」
「まぁ・・・・」

 しばらく沈黙の時が過ぎて・・・・

「美穂さんもだけど、パパも元気なのね」
「わたしとだと元気になれるって・・・・」
「あら、それってオノロケなの?」
「そう言うわけではないけど、一ヶ月に一度のことだから」
「そうよね。おたがいに・・・・」
「それはそうと、彩香がいま付き合っているカレは?」
「初体験したカレのこと?」
「そんなに何人もいるの?」
「そんなにいるわけじゃ・・・・」
「初体験はいつ? だれとなの?」
「高校二年の冬、学校の先生と・・・・」
「それ、いちどっきり?」
「いいえ、卒業するまで毎月のように」
「ええっ、毎月もだったの?」
「でも、危なくない時に一回だけよ」
「まぁ・・・・それで、卒業したあとはどうしたの?」
「結婚してほしいと言われたけど断ったわ」
「それ、あの人は知ってるの?」
「話したのは美穂さんが初めてよ」
「そうなのね。それで、いまは?」
「それはヒ・ミ・ツ・・・・」
「あら、そうお・・・・だったら、試験の前の晩にアレを聞いても
驚かないはずね」
「ええ、試験場でちょっと眠かっただけよ」
「そうだったのね」
「でも、していることは判ったけど・・・・」
「けど? それってどういうこと?」
「美穂さんがあんな声を出すのには驚いたわ」
「そうなのね。彩香はまだアレが判らないのね」
「アレってなんのこと?」
「いい気持ちになるって言うことよ」
「美穂さん、いつ頃からあんな声が出るようになったの?」
「そんな昔のこと、覚えてないわ」
「そんなに昔のことなの?」
「もう・・・・そんなことはどうでもいいでしょ」
「そんなことは、どうでもいいことなのね」

 美穂がそれ以上は追及せず話が終ったのは、大よその察しが
ついたからだろう。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 ひさしぶりに*あの人*が来た夜、美穂がきりだした。
「あなた、彩香のお祝いはいつしてあげるの?」
「え? なんのお祝いだ?」
「まぁ・・・・入学祝ですよ」
「あ、そうか。入学したんだな」
「まぁ、あきれた。もうすぐ夏休みが終わるんですよ」
「じゃぁ、彩香はなにか欲しいものはあるか?」
「ないわ。いつも買ってもらっているから」
「それもそうだな。じゃぁどうしようかなぁ」
「どこかに二人で旅行に行くのはどうかしら」
「どこか行きたい所はあるのか?」
「海外旅行は無理でしょ。パパと一緒ならどこでもいいわ」
「じゃ、月末に仕事で長野に行くから、一緒に行くか?」
「それ、どこなの?」
「松本の奥の温泉だ。行きたいならもうひと部屋予約するよ」
「行きたいわ。でも、急に部屋は取れるの?」
「無理のきく所だからだいじょうぶだよ」
「じゃぁ、それで・・・・美穂さん、パパをお借りするわ」
「ええ、どうぞどうぞ。ご遠慮なく」
「おいおいお前たち・・・・わたしはモノじゃないよ」

 美穂の*あの人*は苦笑いをうかべた。



     第四章 入学祝い旅行

「さぁ、食事がすんだから、芸者を呼んでにぎやかにやるか」
「まぁ、たのしそう」
「じゃ、手配してもらおう」
「芸者さんってどんなことをするの?」
「まあ、それは来ての楽しみだ」

        * * * * *

 座敷にやってきた芸者二人を交えて、芸者遊びがはじまった。
 やってきた芸者は贔屓客のことはよく知っているが、彩香が
その娘だとはもちろん知らない。
 にぎやかにはしゃいでいる彩香をみて、二人がどういう関係
なのか知りたいと思うのは当然だ。

 歳上の芸者がさりげなく探りを入れた。
「こちらの方、すてきな方ね。フーさんのこれ?」
 こういう世界では、判っていても名前は呼ばないのが普通で、
省略した呼び方をするのがしきたりなのだ。
「もちろん、そうよ」
 小指を立てて見せた芸者に、返事を迷っている*フーさん*
に代わって、彩香がはっきり言いきった。
 それも*フーさん*にしなだれかかってだ。

「まぁ、こんな素敵な恋人がいてらうやましいわ」
「女のあんたが羨ましがることではないだろ」
「それはそうだけど・・・・お元気なのね」
「ん? 何がだ?」
「まぁ、おとぼけになって。もちろん夜のことですよ」
「そうなの。いつも三時間ぐらいは可愛がってくれるの」
 返事に窮している*フーさん*に代わり、彩香がまた横から
割り込んだから、座が一気に盛り上がった。
「おいおい、そんなことまで言わなくても・・・・」
 うろたえた*フーさん*の言葉が火に油を注いだ。
「まぁ、三時間もだなんて、やっぱりうらやましいわぁ」
「でも、パパが心配だから無理しないで、と言ってるの」
 彩香が言った*パパ*は花街ではダンナさんと同じ意味だ。
 みんなは、本当のことだとは気が付いていない。
「こんな方がいて、*フーさん*はしあわせね」
「そうよ。腹上死しても本望でしょ」
「おいおい、縁起でもないことを言ってくれるなよ」
「そうですよ。私だって困っちゃうわ」
 すかさず彩香が合いの手を入れたから、皆が羨ましがる。
「あたしも*フーさん*みたいなダンナさんがほしいわ」

 話が盛り上がり 皆がすっかり本気にした様子にうろたえた
のは*フーさん*だ。
 この辺りではちょっとは知られた顔だから、冗談話を本気に
されたらのちのち困るというわけだ。

「おいおい冗談だよ。これは正真正銘のわたしの娘だよ」
「あらぁ、ほんとうかしら」
「ほんとうだよ。本人に聞いてごらん」
「ほんとうよ。この人、わたしの父なの」
 話を振られた彩香がぺろっと舌を出して見せた。
「あらぁ・・・・そうだったの」
「わたし、いくらなんでも恋人はないと思ったわ」

 芸者たちは*フーさん*の打ち消しに納得顔でうなずいた。
 たしかに、彩香はどう見ても二十歳前にしか見えないから、
愛人にしては若すぎると思っていたにちがいない。
 それでも、父と娘が芸者を呼んで遊ぶなどあまりないことで、
彩香の言葉を半分ぐらいは真に受けていたのだろう。

「それで、お嬢さん、おいくつなの?」
「この春大学に入学したから、そのお祝いなんだ」
「まぁ、そうだったの。いくつお泊りになるの?」
「明日の晩も泊まって帰るつもりだ」
「それじゃ、良い旅行を・・・・」

 話がそこに落ち着いたのを潮に、芸者たちは帰っていった。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「そろそろ寝ようか。彩香の部屋は隣だよ」
「二人っきりなんてひさしぶりだから、もうすこし・・・・」
「じゃ、かるくビールでも飲むか?」
「そうしたい。わたしが持ってくるわ」

 彩香が持ってきたビールで親子の乾杯だ。

「じゃ、乾杯しよう」
「ひさしぶりの楽しい夜に乾杯!」
「大学に入学できた彩香に乾杯!」
「お元気な*フーさん*にも乾杯!」
「おいおい、それはないだろ」

 コップのビールを一息で飲み干した*フーさん*が、すこし
ばかり思い切った様子で口を開いた。

「そう言えば、この間、美穂をずいぶん困らせたらしいな」
「え? なんのこと?」
「彩香がすっかり大人になって・・・・と驚いていたよ」
「だって、もう十九歳なんだから当然でしょ」
「いやそう言うことではなくて・・・・」
「だったら、どういうことなの?」
 はっきり問い詰められ*フーさん*が言葉をつまらせる。
「まぁ、どう言ったらいいのか・・・・」
「あら、パパってあんがい煮え切らないのね」
「はっきり言えば、初体験も済んでると言うじゃないか」
「あら、ちっともはっきりなんて言ってないじゃない」
「ん? どうしてだ?」
「だって、初体験って、いろいろあるじゃない?」
「それはそうだが・・・・」
「そうでしょ。何をする時だって初体験はあるのよ」
「じゃぁ、どう言えばいいんだ?」
「たとえば、男にアレを突っ込まれたらしいな、とか・・・・」
「うーん・・・・いやにはっきり言ったな」
「だって、パパが聞きたかったのはそのことでしょ」 
「ばか! 父親が娘にそんなにはっきり聞けないだろ」
「そうよね。それって男がすることだものね」
「まぁ、そういうことだな」
「そんなことはいいけど・・・・それならほんとうよ」
「やっぱりなぁ」
「そうよ。やっぱりよ」

 まじまじと彩香の顔を見つめる*フーさん*だ。
 そのしみじみとした*フーさん*の言い方は、父親としては
本当だと信じたくない気持だったのに、本人に止めを刺された
という感じかもしれない。

「これ、美穂さん、パパにみんな話したのね」
「ああ、みんな聞いたよ」
「美穂さん、おしゃべりね。それ、ベッドで?」
「まぁ、そんなことはどうでもいいだろ」
「あらどうでもいいことなの?」
「とりあえず、彩香のこととは関係ないからな」
「あら、わたしには大いに関心があるわ」
「どうしてだ?」
「ベッドでの寝物語だったら気にならないけど、居間で深刻な
顔で話をされたら困っちゃう」
「ん? どうして深刻な顔で話されたら困るんだ?」
「だって、これ、そんなに深刻な話ではないでしょ」
「そうなのか?」
「だって、女にはかならず一度はあることでしょ」
「それは・・・・そうかもしれないが・・・・」
「それで、いつなの?」
「なにが?」
「だから・・・・ベッドでアレをしてる時なんでしょ」
「アレって、何のことだ?」

 彩香本人から初体験も済んだと聞かされても*フーさん*の
頭の中では彩香はやはりまだ娘なのだ。
 意地悪く聞き返したら彩香も黙るだろうと思ったのだろう。
 ところが、そんなことで黙ってしまう彩香ではなかった。

「もちろん、男と女がすることよ」
「わかったよ。ベッドで美穂にアレを入れた時だよ」
「アレってなんなの?」
「そんなこと、言わなくても判ってるだろ」
「それ、美穂さんがいい気持ちになる前なのね」
「まぁ、そんなところだ」
「美穂さん、どう言ったの?」
「彩香も誰かにこんな風に入れられたみたい、と・・・・」
「まぁ、いやらしい」
「いやらしい? どうしてなんだ?」
「パパが美穂さんにアレを入れてる時に言うなんて・・・・」
「だけど、いつなの?と聞いたのは彩香だよ」
「それはそうだけど・・・・」
「それに、ソレをしたのは彩香なんだろ」
「いいえ、彩香は、そうされたのよ」
「どちらだって同じことだろ」

 彩香のことをもっと聞きたかった*フーさん*だが、はぐら
かされ、話をどうにか別の方に振った。
 ところが、彩香から初体験のことをあっけらかんと話された
反動からなのか、それからは、きわどい話になった。

「どんな男か知らないけど、その男は幸せ者だよ」
「あら、どうしてなの?」
「美穂に似て、彩香のアソコも締りがいいだろうからね」
「締りがいい、ってどういうことなの?」
「彩香には判らないだろうが、美穂のは入口が締まる」
「美穂さんのアソコ、そんなによく締まるの?」
「そりゃ、これまで出逢った中では最高だよ」
「するとどうなるの?」
「美穂がイッタ時、締め付けられて抜けなくなるんだ」

 そんな話をしている*フーさん*の顔といえば、娘を相手に
しているというより、本当に愛人を相手にしているようだ。
「だったら・・・・わたしのも確かめてみる?」
「ばか! そんなこと出来るわけないだろ」
「あら、どうして出来ないの?」
「どうしてって、そんなこと決まってるじゃないか」
「でも、太田先生がアレを入れた感じがすごくいいって」
「ん? あの先生がそう言ったのか?」
「そうよ。だから何度も・・・・」
「だけど、親子でそんなことは出来ないだろ」
「でも、確かめるだけなら・・・・わたしも確かめてみたい」
「そんなことしたら『親子どんぶり』になってしまう」
「こういうの『親子どんぶり』って言うの?」
「そうだよ。もういいから部屋に帰って寝なさい」
「わかったわ。そうする」

        * * * * *

 部屋に帰って、お化粧を落としたり寝支度を整えた彩香だが、
そのまま布団に入ろうとするわけでもない。
 ソファに座るわけでもなく、立ったままつぶやく。

 ・・・・どうも、すぐには寝つかれそうもないわ
 ・・・・冗談のつもりでいったのに
 ・・・・それなのに、ムキになって怒るなんて
 ・・・・でも、美穂さんにあんな声を上げさせるなんて
 ・・・・パパのモノ、どんなのかしら
 ・・・・こんな機会でないと確かめられないわ

 美穂は実の母親だが、彩香のいちばん大切な父をひとり占め
している美穂へのジェラシーが無かったと言えば嘘になる。
 彩香の歳なら、たいていの母親は四十代半ば過ぎだろうから、
ジェラシーなど芽生えないだろう。
 ところが美穂は、まだ三十代半ばの女盛りなのだ。
 女としてのライバル意識が芽生えたとしてもおかしくない。 

        * * * * *

 彩香は自分の部屋を出てもとの部屋に舞い戻った。
 そして、もう布団の中に入っている*フーさん*をしり目に、
ソファに座り込んでしまった。

「彩香はいったいどうするつもりなんだ?」
「そうねぇ・・・・」
「はやく部屋に返って寝ないと風邪をひくよ」
「でも、まだ眠れそうにないわ」
「と言って、朝までそこに居るわけにいかないだろ」
「そうだけど・・・・」
「さぁ、お酒の酔いが醒めないうちに布団に入らないと」
「じゃぁ、そうしようかしら」

 布団の中から声を投げかけてきた*フーさん*にあいまいな
返事を返した彩香が、さらに促されて腰を上げたが、それから
部屋の照明を暗くして*フーさん*の横にもぐり込んだ。

「おいおい、どうするつもりなんだ?」
「酔いが醒めないうちに布団に入れというから・・・・」
「それは、向こうの部屋で入れと言ったんだよ」
「でも、風邪をひきそうだから早く入らないと・・・・」
「どうせ、彩香は向こうの部屋で寝るんだろ」
「でも、昔みたいに一緒に寝てみたいの」
「そんなこと言って・・・・もう子供じゃないだろ」
「いくら十九歳になっても、子どもは子どもでしょ」
「それはそうだが・・・・」
「だったら、かまわないでしょ」

 しかたがないな、と言う様子をこれ幸いとばかりに、彩香は
*フーさん*にからだをよせてだきついた。
 しかたがない子だ、という雰囲気で背中に手を廻されたので、
彩香は*フーさん*の懐にすっぽりもぐりこんでしまった。

        * * * * *

 しばらく時が流れて、暗闇でうろたえたような声が流れた。
 もちろん、それは*フーさん*の声だ。
「おいおい、なにをするつもりなんだ?」
「ちょっと触ってみるだけだから、いいでしょ」
「だめだよ。よしなさい!」
「ちょっとだけだから・・・・」
「ほんとうにダメだよ」
「ほんとにちょっとだけだから・・・・」

 二人の押し問答を聞くかぎりでは・・・・
 いっしょに寝てみたいだけと言ったはずの彩香が、その舌の
根もかわかないうちに*フーさん*の寝間着をかき分け股間に
手を突っ込んでしまったようだ。

「すごーい!」
「・・・・・・・・」
「パパの、すごく太くて長いのね」
「・・・・・・・・」
「だからなのね。美穂さんが・・・・」

 手を突っ込んだばかりでなく、ソレを握り込んだようだ。
 彩香があげた感嘆の声は外交辞令というよりも本音なのは、
おそらく太田のモノとの違いに驚いたからに違いない。
 いっぽうの*フーさん*だが、彩香に肉棒を握り込まれては、
狼狽が先に立って返事に窮するのは当然だ。
 なにしろソレは、二十年ほど前、十七歳の美穂の子袋に当の
彩香を植え付けるために使った道具なのだ。
 まぁ、言いかえれば、種イモみたいなモノなのだから・・・・

 しばらく彩香に蹂躙されるままだった*フーさん*も、よう
やく体勢を立て直したようだ。

「誰のだって、みんなこんなものだよ」
「そんなことはないわ」
『彩香はそんなにたくさん知ってるのか?』
「ほんと言うと一人だけよ」
「そうだろうな」
「こんなのを入れるから、美穂さんがすごい声で泣くのね」
「どうしてそんなことが判るんだ?」
「だって、いつも美穂さんの声を聞かされてるから」
「・・・・・・・・」
「このこと、美穂さん、話さなかったの?」
「そういえば、そんなこと言ってたな」
「パパのに触ってみて、あのわけが良く判ったわ」
「これっ、だめだよ・・・・」
「あら、さっきより固くなってきたみたい」
「ふーっ・・・・それぐらいで、もういいだろ」

 ソレをいじられて、彩香をたしなめる声が弱々しくなる一方、
オトコの息遣いが次第に荒くなってきた。
 本当ならば突き放さなければならないのに、懐に潜り込んだ
彩香を、さっきよりもしっかり抱え込んでしまったようだ。
 実の娘だろうと誰だろうと、若い女に肉棒を握られて快感を
感じない男はいないはずで、ひとたび湧き上がり始めた快感に
耐えるにはそうするしかないだろう。
 こうなることは、横にもぐり込んだ彩香を抱きかかえた時に
決まっていたようなもの、*フーさん*の抵抗もここまでだ。

        * * * * *

「もっとよく見たい」

 抵抗がさほどではなく、自分を抱え込んで腰を微妙に動かし
ている*フーさん*に、彩香はもう大丈夫と思ったようだ。
 懐からするりと抜け出すと、布団をぱっとはねのけた。

「あっ・・・・」
 何とも言えない*フーさん*の声がした時には、薄明かりの
中に、肉棒が天を突いてそそり立っていた。
「まぁ・・・・すごーい・・・・」
 布団の中で触れてみた感じとかなり違ったのか、彩香の前に
曝されたことでいっそう勢いを増したのかどちらかだろう。

 もしも、触ってみたい、直に見たいと言われても、自分から
娘にソレを曝して見せる父親はあまりいないだろう。
 だが娘に実力行使された結果とは言いながら*フーさん*が
彩香の振る舞いを止められる時期はとっくに過ぎていた。
 それに、実の娘とは言っても、自分のモチモノに感嘆の声を
あげられ、悪い気はせず、ソレを隠すどころか誇らしげな様子
さえ見せるのが男というものかもしれない。

「あらぁ、さっきよりも固くなってしまったわ」
「あたりまえだ。そんなことをするからだよ」 
 やがて、*フーさん*のソレを堪能した彩香がつぶやいた。
「パパのコレを入れてみたい」
「・・・・・・・・」
「ねぇ、入れても構わないでしょ?」
「そんなこと、出来るわけはないだろ」
「パパが出来なくても、わたしが上に乗って・・・・」
「そう言うことではなくて・・・・」
「親子だからダメだというぐらい判ってるわ」
「判ってるんだったら、もうよしなさい」
「でも、ちょっと試してみるぐらいなら・・・・」
「ちょっと試してみるのだって同じことだよ」
「だって、こういうこと珍しくないらしいわ」
「それに、彩香は上に乗った経験はないだろ」
「どうしてそう言えるの?」
「はじめのうちは、男が上に乗るのが普通だからな」
「美穂さんもそうだったの?」
「もちろんだ。彩香だってそうだろ?」
「ううん、教えてもらって上に乗ったことが・・・・」
「うーん・・・・そうか」
「そうよ」
「それで、ちゃんと出来たのか?」
「ええ、ちゃんと出来たわ」

 おそらく*フーさん*は、口では『自分が上に乗って・・・・』
などと簡単に言ってるが、セックス経験の少ない彩香に出来る
はずがないと高をくくっていたに違いない。

        * * * * *

 二人の間にしばらく沈黙の時が流れた。

 その間*フーさん*の脳裏では、実の娘に肉棒など突っ込め
ないという父親としての想いと、美穂と同じかどうか確かめて
みたいという男としての欲望が葛藤していたはずだ。
 
 からだを起した彩香が、心の中の葛藤に決着を付けられない
でいる*フーさん*にまたがってしまった。
 上に乗って肉棒を自分のクレバスに収めるつもりなのだ。
 そんなふるまいは『わたしがしてみたいのだから、わたしの
好きなようにさせて』『これからのことはわたしがしたことで、
パパがしたことではないから』というシグナルに違いない。

 それでも自分から動く決心も出来ず、かといって彩香を押し
止めることも出来ないでいる*フーさん*をしり目に、彩香が
怒張した肉棒をクレバスに当てがった。
 だが、人並み外れて長大な肉棒を、まだ十分に濡れていない
クレバスにやみくもに収めようとしても収められるはずがない。

「パパの、大きすぎてなかなか入らないよう!」
 そんな彩香に、心の葛藤に決着をつけた*フーさん*の絞り
出すような言葉が返された。
「わかった、入れてやるよ」
「だったら、どうしたらいいの?」
「彩香が下だよ。本当にいいんだな?」
「いいの・・・・いれて!」
「いま、あぶなくない時なのか?」
「いまはだいじょうぶよ」
 こともなげに答えた彩香には何の迷いもないようだ。
「ほんとうなんだな?」
「ええ、ほんとうよ。あれが終ったばかりだから」
「ここにはスキンなどないからな」

 絞り出すようなつぶやきは最後の止め金が外れた証だ。
 そこには、父親であることを捨てひとりのオトコとして振る
舞うと自分を納得させた*フーさん*がいた。
 つまり、ソコの造りが愛人の美穂と同じかどうかを確かめて
みたいという、男としての欲望が勝ったのだ。
 しかし、自分の娘の彩香に、備えもなく肉棒を挿し込むのに
不安を感じるのは当たり前で、確実に安全な時でなければ、と
いう思いは父親として当然だ。
 そして彩香が出した断定的な青信号が*フーさん*の背中を
決定的に押したのだ。

        * * * * *

 そこにいるのは、オトコに変身した*フーさん*と、それを
ためらいもなく受け止めようとしている彩香だ。

 彩香のシグナルを素直に受け止め、娘に肉棒を挿し込むこと
への迷いをふっ切ったオトコが、そこで初めて動いた。
 彩香がそっと布団に横たえられた。
 相手が初めて相手にする女なら、ましてや熟女にはほど遠い
もぎたてのような女なら、男は誰でも優しくあつかう。
 まして相手は娘、われ物に触れるようになるのは当然だ。

 次の行動に移るのにためらいを見せたオトコだが・・・・
 身にまとっていた浴衣の細帯が解かれ、いちど横たえられた
彩香が抱きあげられて浴衣が脱がされた。
 丸裸の彩香が薄明かりの中に浮かび上がった。
 それは、誇らしげな気持ちと羞恥心が混在した裸身だ。

 ・・・・あの頃の美穂とまったく同じだ
 感に堪えないようなつぶやきを洩らしたオトコがごく自然に
ひろがった両脚の間に膝をついてクレバスをさぐった。

「彩香、本当に男を知ってるんだな?」
「うん・・・・」
「だったら・・・・」
 そこで言葉を飲み込んだオトコは、ひとりごとをつぶやく。
 ・・・・しっかり濡れてる。これなら
 ・・・・だけど、美穂に似てタイトなホールだな
 ・・・・はじめは痛がるかもしれないな

 一年近く太田の肉棒を受け止めてきた彩香がオトコの肉棒に
触れているうちに濡れてきたのは不思議ではない。

 腹をくくった様子のオトコはおもむろにいきり立った肉棒を
抜き身のままクレバスに沿わせてすべらせた。
 何度かそれを繰り返してから、オトコが身構えた。

「痛かったらそう言いたらいいからな」
「うん・・・・」
「我慢しなくてもいいんだよ」
「うん、やさしくして」
「それじゃ、入れるよ」

 そういう言葉をかけたオトコの胸の内には
 ・・・・本人が言うのだから
 ・・・・よもやこれが初めてということはないだろう
 ・・・・だが、もし初めてだったら
 という想いが行きつ戻りつしていたに違いない。

 オトコの腰がゆっくりと押し出された。
 彩香の表情のわずかな変化も見逃すまいと、オトコの視線が
彩香の顔とクレバスの間を行き来する。
 肝心の処ではぶっとい肉棒がゆっくりと挿し込まれてゆく。
 その間、声こそ上げないものの、彩香は眉根を寄せて、唇を
かみしめて何かをこらえている様子だ。
 半分ほどが消えるまで、彩香の表情がゆるむことがない。
 オトコにもそれは判ったに違いないが、あからさまに苦痛を
訴える言葉がないことに安心したのか、オトコの腰に力がみな
ぎり、さらに押し出された。
 目の前で、長大な肉棒のほとんどがクレバスに消えた。

「ふーっ・・・・」
 彩香から大きな吐息が洩れ、初めて顔がゆるんだ。
 オトコの顔にも安どの表情が浮んだ。

 のだ。
 オトコのモノに触れた時の驚きの声はソレが太田のモノより
はるかに大きかったことを暗示していたが、いったん収まれば、
これまで太田のモノを受け止めてきた、柔軟性に富んだバギナ
だから、それをしっかりと受け止められたようだ。

 そのあと、オトコから洩れたのは、いたわりの声ではない。
「うーん、入れた感じも美穂と同じだ」
 その言葉は、愛人に産ませた娘に、愛人にしているのと同じ
ように肉棒を突っ込んでいる、という複雑な想いの裏返しだ。
 彩香から返事はないが、苦痛をこらえている顔でない。
 それに勇気づけられたのか、肉棒が大きなストロークで動き
始めたが、それでもまだまだ余裕があるように見える。
 それは、やはり彩香へのいたわりからに違いない。
 しかし、男なら己の肉棒の全てを押し込みたいのが本能だ。
 彩香へのいたわりと、男の本能の葛藤に決着を付けるために、
オトコが彩香に顔を近づけた。
「もっと中までいれても大丈夫か?」
 その問いかけに、薄目を開けた彩香の顔がタテに動いた。

 いったん肉棒のほとんどが姿を見せるまで後退したオトコの
腰がふたたびゆっくりと前に進んだ。
 ソレのすべてがクレバスに消えるまで止まらなかった。
 最後の一瞬だけ、オトコの腰に力がみなぎった。
「ううっ・・・・」
 彩香から洩れたうめきはさほど大きくはない。
 眉間に寄ったしわもすぐに消えて穏やかな顔に戻った。

「ぜんぶ入ったよ。痛くはないか?」
 なんとも言えない言葉だが、己の肉棒が余すところなく受け
入れられたという満足感と、彩香へのいたわりの発露だろう。
「うん、だいじょうぶ・・・・」
 彩香の返事を聞いて、オトコの動きに逡巡はなくなった。
「そうか。かなり大きいモノを入れてもらってたんだな」
「そんなぁ・・・・」

 何かを言いかけた彩香から言葉が消えた。
 さっきまでの、いたわりに満ちたゆったりした動きが、たち
まちピッチがあがったからだ
 おそらくオトコの脳裏には、自分の知らない男が自分と同じ
ようなモノを入れてきた違いない、というジェラシーにも似た
想いが湧きあがってきたのだろう。

「あっ、あっ、あっ・・・・」
 リズミカルなオトコの腰の動きに合わせて、二つのカラダが
ぶつかり合う軽やかで淫靡な音がほのぐらい空間に広がった。
 その音は、彩香の口からもれる、うめきともあえぎともつか
ない声と見事なコラボレーションを演じた。
 しかし、それもあっという間のことだ。
 オトコの、早いピッチのリズミカルな動きがとまった。
 それも、彩香にぴったり密着したままだ。

 その直後、ほんとうに突然、オトコから言葉が洩れた。

「ううっ・・・・イキそうだ!」
「ああぁーっ・・・・」
「もうダメだ! 出るーっ」
「あうぅーっ・・・・」
「あ・・・・」

 オトコから意味不明の声が上がって、オトコの腰がいったん
彩香から離れたように見えたが、しかし次の瞬間・・・・
 一五五センチの小柄な彩香が一八○センチを超えるオトコに
がっちり抱え込まれ、オトコの腰がふたたび彩香に密着した。
 密着したまま動きを止めたたくましい尻の筋肉がふるえた。
 それはオトコのエキスが彩香の秘奥に注ぎ込まれた証だ。
 おそらくオトコはそれを外に出すつもりだったに違いない。
 しかし、肉棒を挿し込んでいるのが実の娘だ、という異常な
精神状態での快感にタイミングを失ってしまったのだろう。
「彩香、すまない」
 オトコの声はまさにうめきに近かった。
「いいの。大丈夫よ」
「いいや、そんなことではないんだ」
「じゃ、なんなの?」
「彩香にアレを挿し込んでしまったことなんだ」
「パパ、後悔してるの?」
「とうぜんだろ」
「いや! 後悔なんかしちゃいやよ!」
「うーん・・・・」
 オトコは複雑な表情でからだを起しかけた。
「いや! 離れちゃいや!」
「だけど、いつまでも・・・・」
「パパのアレ、まだ大きいのに・・・・」
「それでも、すぐにやわらかくなるよ」

 そういう言葉を吐いたオトコの心の内は、いつまでもそこに
留まっていたいのはやまやまだが、いずれ勢いを失って抜けて
しまう、という無念さでいっぱいだろう。
 いっぽう、肉棒を収めたままで抱きしめられた彩香の目から
一粒二粒と涙がこぼれ落ちた。

「彩香も後悔してるんだな」
「ううん、ちがうの」
「ほんとうに違うのか?」
「ほんとうよ。彩香はうれしいの」
「・・・・・・・・」
「彩香はパパが大好きだから」
「・・・・・・・・」

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 予期しないことの連続から、彩香に肉棒を挿し込み、そして
はじけるまで、オトコの脳裏から二人が*実の親と娘*なんだ
という意識は消え去っていたにちがいない。
 そうでなければ、彩香に肉棒を挿し込めるはずがない。
 しかし、ひとたびはじけてしまえば、本能の領域から理性の
領域へと引き戻されるというのは誰にも共通したことだ。
 夫婦や恋人同士なら残るのは満ち足りた余韻だが、不倫関係
ならいくばくかの後悔の念が残るのは当然のことだ。
 まして父と娘なら後悔の念はそればかりで済むはずがない。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「もう抜いてもいいか?」
 彩香がうなずくのを待って、オトコが動いた。
 だが、自分から言ったにしては、オトコの動きは緩慢だ。
 まだそのままでいたい・・・・しかし、勢いが消えゆく・・・・
 そんな二つの相反する想いが交錯した結果、未練たっぷりな
動きになったのかもしれない。

 オトコの肉棒がゆっくりクレバスから姿を見せた。
 オトコの目の前で、肉棒が抜き取られたホールのあたりから、
白濁したものがじわーっと湧いて出た。

「ずいぶんたくさん出てきたよ」
「そんなに? ぜんぶパパが入れたんでしょ」
「もちろんだ。ほんとうに大丈夫だったのかな」
 当の彩香が太鼓判を押したからと言っても、はじめてなのに
エキスを注ぎ込んでしまったのだ。
 オトコに一抹の不安があるのは当然だ。

「いいの。大丈夫よ」
「洗ってこなくてもいいのか?」
「このままでいたい。パパのモノだから・・・・」
「しかたのない彩香だ」
「だって、本当のことだもの」
「いつもそうしていたのか?」
「だってぇ・・・・」

 意味不明な甘えるような言葉を返した彩香は、オトコに覗き
こまれて、くるりとうつ伏せになった。
 自分から誘ったとは言え、実の父親のエキスを受け止めたの
だから、平静にオトコを見ることは出来なかったのだろう。
 いっぽう、彩香の背中からふくらんだヒップに手を這わせる
オトコの顔は、父親というよりも、まさに男のものだ。

 オトコの手が愛おしげに這い回るにつれて、彩香の背中から
ふくらんだヒップにかけての線が揺れはじめる。
「あふーっ・・・・」
 大きな吐息を洩らした彩香がくるりと向きを変えた。
 さっきまでオトコを受け止めていたままの姿になった彩香が
ひと言も発しないでじっと見上げた。
 オトコの手が内腿に触れただけで脚が大きく拡がった。
 彩香が求めていることを察したオトコが、ティッシュで流れ
出たエキスで濡れたクレバスの周りをていねいに拭き取った。

 後始末を終えると、オトコは彩香をしっかり抱きしめた。

「どうする? 向こうで一人でやすむか?」
「いや! パパと一緒に居たい」
「そうだな。ちょっと狭いけど、そうするか」
「うれしい・・・・」
「それじゃ、昔みたいに・・・・」
「しっかり抱いていて!」
「わかった。朝まで抱いていてやるよ」

 しがみついてきた彩香を、オトコは懐に抱きこんだ。
 思わぬ成り行きとは言え、彩香を無理に隣の部屋に送り出す
ことも、彩香を残して自分が隣の部屋に移ってしまうことも、
オトコには出来ないことだ。
 常ならぬことだけに、オトコは、しっかりケアをしなければ
ならないことが判っているのだ。

        * * * * *

「おはよう。よく眠れたか?」
「ぐっすり眠れたわ。パパは?」
「あぁ、よく眠れたよ」

 オトコの懐の中で目覚めた彩香は、見上げた顔に恥じらいの
色を浮かべて胸元に顔を埋めた。
 自分から求めてのことだと言いながら、はじめて父の肉棒を
受け止めた一夜が明けてのことだから当然だ。
 いぽう、彩香を抱きしめているオトコも、たとえ求められた
ことであっても、実の娘に肉棒を挿し込んだあげく、エキスを
注ぎ込んで秘奥を汚してしまったのだ。
 とうぜん、後悔の念もあるだろうし、自分を受け止めた彩香
への愛おしさもあったに違いない。
 抱きしめているオトコの懐の中で彩香の方が少し動いた。

「もうダメだよ!」
「だって昨夜は・・・・」
「こういうことは、何度もしちゃいけないんだ!」

 オトコの強い口調に懐に埋めた彩香の顔がタテに動いた。



     第五章 いじわる

 旅行から帰ったあとで美穂の*あの人*が上京してきた時、
彩香も*あの人*も美穂の前では素知らぬ顔で通したのは当然
だが、彩香がちょっとだけ意地悪をした。
 いつもなら、食事のあとは早く部屋に引き揚げていたのだが、
この日はわざとぐずぐずして見せた。
 そのわけが判っているのは*あの人*だけで、父親が一ヶ月
ぶりに出てきたのだから、いろいろ話しをするのは当たり前の
ことで、美穂から見ても、すこしも不自然なことははない。

「彩香、先にお風呂に入ったら」
 片付けをしながら、美穂が彩香に声をかけた。
 なかなか引き上げる気配がない彩香に美穂がじれたようだ。
「もうすこしパパと話したいの」
「あら、そうお? なにか特別なこと? おねだり?」
「そんなに特別ってことではないけど・・・・」
「そうお? 今日はなんだか歯切れが悪いのね」
「だって、パパが話に乗ってくれないから・・・・」

 彩香の言葉とは裏腹に、肝心の*あの人*は彩香が話しかけ
ても生返事ばかりで話しに乗って来ないのだ。

 三人いる時のお風呂の順番は決まっている。
 食事の前に*あの人*が入り、食事のあとしばらくして彩香
だが、入ったらすぐ部屋に引きあげる。
 美穂は最後で、いつもは三十ぐらいかけるのに*あの人*が
来ている時は十分ぐらいがいいところだ。

        * * * * *

 美穂にうながされて仕方なく風呂に向かった彩香だが、めず
らしく居間に舞い戻った。

「あぁ、のどが渇いたからビールを飲みたいわ」
「え? これから飲むのか?」
「大学生だからいいでしょ。そしたら良く眠れるから」
「オレはいいから、一人で飲んだら?」
「パパ、つめたいのね。いいわ、一人で飲むから」

 彩香が缶ビールを持ってきて飲みはじめると・・・・
「わたしもそろそろお風呂に入ろうかしら」
 少し思わせぶりな美穂の言い方だが、彩香と*あの人*への
謎かけだということが判らない彩香ではない。
「わたし、これを飲んだら引き上げるから」
「そうお?」
 それで、迷っている風だった美穂もバスルームに向った。

 美穂を目で追った彩香が、声をひそめた。

「パパも一緒に入るんじゃないの?」
「もう入ったよ」
「だって、いつも寝る前に一緒に入ってるでしょ」
「まぁ、今日はもういいよ」
「でも、美穂さんが向こうで待ってるんじゃない?」
「そうでもないんじゃないか」
「そうかしら?」
「なにも、一緒に風呂に入らなくても・・・・」
「そうよね。これからずっと一緒だものね」
「まあな」
「パパもしっかり頑張らなないとね」
「ば~か! 親をからかうもんじゃないよ」
「だって、これから美穂さんと仲良くするんでしょ」
「ん? 美穂と仲良くしちゃいけないか?」
 彩香がわざと*美穂さん*と強調した裏を察したのだ。
「そういうことじゃなくて・・・・」
「じゃ、どういうことなんだ?」
「美穂さんに太くて長いアレを入れてあげるんでしょ」
「いやにはっきり言ったな」
「だって、この間、わたしも経験済みだから」
「ダメだよ! それは、ここでは禁句だろ」
「ともかく、しっかり可愛がってあげないといけないわ」
「そうだな」
「そうでないと楽しみが・・・・」
「楽しみ? そうか、美穂の声のことか?」
「そうよ。ほれぼれするようないい声だから」
「そう言えば、美穂が気にしてたな」
「え? なにを?」
「これからは声を抑えないといけないわ、って」
「そんなこと気にしなくてもいいのに」
「そうなんだが・・・・」
「そんなこと忘れるほどパパが可愛がってあげればいいのよ」
「それもそうだな」
「美穂さんを待たせたら悪いから・・・・おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」

        * * * * *

 彩香が部屋に入るとすぐ、バスルームに人が入る気配がして、
しばらく人が出入りする気配が消えた。
・・・・やっぱり、パパも一緒に入ったんだわ
・・・・へんね。パパはカラスの行水なのに
・・・・それに美穂さんはだいぶ前から入っているのに
 人の気配が戻ってきたのはそれからだいぶ経ってからだ。
・・・・あらぁ、お風呂で済ませたみたい。これで終りかしら?
・・・・やっぱり・・・・もうおやすみしたんだ
 彩香がつぶやいた通り、二人が寝室に引き揚げたあと、しば
らく静かな時が過ぎた。

 ところが彩香が布団をかぶった時・・・・
 いつもとは違った声が聞こえてきた。
 それは、かすかに聞こえるというのではなく、押し殺した声、
迫力のある声だ。
 ・・・・あらぁ、まだおやすみしてなかったんだ
 ・・・・あれ、いつもより激しいみたい
 ・・・・さっきまで我慢してたせいかしら? 
 ・・・・パパ、わたしに聞かせようとがんばってるんだ
 そうつぶやいた彩香がそっと部屋を抜け出して居間へつづく
ドアをそっとあけた。
 そのあと、押し殺した声は長くは続かなかった。
 突然、いつものような高い調子の泣き声に変わった。
 美穂の泣き声にあわせて、彩香のつぶやきが続いた。
 ・・・・美穂さんは自分の声が聞かれていると判ってるんだ
 ・・・・だから必死に声を抑えていたんだわ。
・・・・でも、パパは自分のパワーをわたしに知らせたいんだ
 ・・・・それでアレを激しく出し入れさせるんだ
 ・・・・だから美穂さんがとうとう我慢ができなくなったんだ。
・・・・あの調子だとあまり長くはもたないかも

彩香がつぶやいた通り、美穂の泣き声は、そのあとひときわ
大きな叫び声を最後に静寂が戻ってきた。。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 眠りを破られた彩香が枕元の時計を見るとまだ五時だ。
 昨夜はそんなに遅くまで夜更かしをしたのではないが、こんな
時間に目が覚めることはめったにない。
 何かの物音が彩香の眠りを破ったのだろう。
 ・・・・なにかしら? パパはゆっくりのはずだけど
 ・・・・美穂さんが食事の仕度をしているのかしら?
 彩香の頭の中が醒めてくるにつれて聞こえてきたのは、あの
時の声だと判ったが、いつもとは違って二人の声だ。
 ふだんになく男の声が聞こえたのは、朝の静けさが男の声も
引き立たせたのかもしれない。

 ・・・・えっ、朝もなの? そう言えば、パパは今日帰るんだ
 寝室からの声はしばらく続いて、最高潮を迎えた。
   ああぁーっ、いいのよう、いいのよう
   どうだ、こうか
   もっと、もっとーっ 
   よーし、もっと突いてやるぞ~
   いく、いくーっ 一緒にいってーっ
   よーし、いくぞーっ
   いまよう、いまなのよーっ
   よーし、だすぞーっ
   あっ、あうーっ

 そのあと、静寂がおとずれた。
 目が冴えて眠れなくなった彩香は、喉の渇きをいやそうと、
そっとキッチンに行ったが、起きているかもしれないと思った
美穂の姿はなく、奥の寝室は物音ひとつしない。
 ・・・・あらぁ、また寝ちゃったのかしら
 ・・・・あんなにいいことをした後だから、しかたないわね
 ベッドに戻って眠れないまま本を読んでいると、バスルーム
から物音が聞こえたのは八時になってからだ。
 ・・・・美穂さんがアソコを洗いに来たんだわ
 ・・・・パパのアレを中に出してもらったまま寝たんだ

        * * * * *

 朝の食卓に向った三人の顔は三者三様だ。

 美穂の*あの人*はいつもと変わらないがすこし疲れ気味の
様子だし、彩香は目元が腫れた明らかに寝不足気味の顔だ。
 それなのに、美穂の顔だけはすっきりと輝いている。

 美穂の*あの人*はさっさと朝食を済ませてソファで新聞を
読みはじめたので、彩香は美穂に向って声をひそめた。

「寝不足気味だから今日のお勉強は大変だわ」
「あら、彩香はよく眠れなかったの?」
「昨夜はすぐには寝付けなかったし、今朝はまた・・・・」
「え? 今朝はどうしたの?」
「五時ごろ、なんかの音で目が覚めちゃって」
「なんの音かしらね」
 とぼける美穂にさらに顔を寄せた。
「美穂さんのいい声よ。それにパパの声も・・・・」
「えっ、あの人の声も?」
「そうよ。いくぞー、とか、だすぞー、とか・・・・」
「そうかしら? そんなこと言ってたかしら?」
「美穂さんも大きな声をだしてたから判らないでしょうけど」
「でも、あれからまた眠れたんでしょ」
「あんな声を聞かされたら、眠れるわけないでしょ」
「そうお。悪いことをしちゃたわね」
「悪いことじゃなくて、いいことをしたんでしょ」
「うふふふ・・・・そうかしら?」
「そうにきまってるでしょ。だからなのね」
「え? 何がだからなの?」
「美穂さんの顔、羨ましいぐらいきれいだから」
「あら、そうお。よかったわ」
「昨夜から三回もパパのアレを貰ったからでしょ」
「あら、そんなに頂いたかしら」
「最初はバスルームでしょ。それから・・・・」
「もうわかったわ」
 そんなひそひそ話の途中に、ソファから声がかかった。

「二人で何を話しているんだ? 私の悪口か?」
「あなたには関係ないことよ」
「あら、パパにも大いに関係があるんじゃないかしら」
「ん? どういうことだ?」
「ううん、なんでもないわ。パパの今日の予定は?」
「仕事は昨日済ませたから、ゆっくりするよ」
「美穂さんもお休みだから、ゆっくりできるわね」

 どちらにともなく思わせぶりな言葉をかけてみせた彩香だ。
 ところが、彩香の言葉の裏が判っている*あの人*からは
返事がないかわり、美穂からは無邪気な言葉が返ってきた。

「ゆっくりさせてもらうけど、彩香の帰りはいつごろ?」
「午後の授業は休講だから二時頃には帰れるわ」
「あらぁ、そんなに早く帰れるの?」
「でも、お邪魔虫にはなりたくないからお友達と・・・・」
「だったら、お夕食は一緒に出来るのね」

 そんな取り繕った言葉とは裏腹に、美穂の顔には『夕方まで
しっかりアレを入れてもらえるわ』と書いてある。



     第六章 二人だけの家族旅行

 ひさしぶりに美穂の*あの人*が来た日・・・・

「あなた、明日は行けそうにもないわ」
「えっ、どうしたんだ?」
「店長の実家にご不幸があって、急に郷里に帰ったの」
「ほかに留守を任される従業員は居ないのか?」
「店長のほかは、店の切り盛りは無理だわ」
「それじゃ、また今度にするしかないか」
「それだとキャンセル料が無駄だわ」
「それはそうだが・・・・」
「彩香も楽しみにしていたから、ふたりで行ってきたら?」
「うーん、どうするかなぁ」
「お部屋も二つとってあるから・・・・彩香もいいでしょ」
「いいけど、皆で行けないのは残念だわ」
「じゃぁ、今度にする?」
「でも、お友達の誘いを断ってるし・・・・」
「じゃぁ、二人で楽しんできてね」
「わかったわ。パパ、ふたりで行きましょ」

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 結局、父と娘だけで伊豆の温泉に泊まりに行くことになった。

 旅館に落ち着いた父と娘は、食事が済むと、この前のように
芸者を呼んでにぎやかに遊ぼうということになった。
 なにしろ、遊びなれた粋な父と花柳界に育った美穂の血筋を
受けついでいる彩香だけに、父の提案に大喜びだ。

 三味線の爪弾きで小唄が終ると、話は盛り上がってきた。
 ただ、いい歳の男が二十歳を過ぎたばかりらしい娘を連れて
芸者遊びをするなど普通では考えられないことだから、やって
きた芸者たちは彩香を若い愛人と思っている様子だ。

「パパ、お酒はほどほどにしてね」
「ん? もう少しぐらいはいいだろ」
「それぐらいにしておかないと、お後に差し支えますわ」
「そうだな。じゃぁ、これぐらいにしておくか」
「おねがいだがら、そうして」

 なにか言いたそうな芸者たちをあおるように、彩香が小唄を
聞きながら杯を重ねる*フ―さん*をたしなめてみせる。
 普通の父と娘の会話でも通るやり取りだが、中年男と愛人に
違いない、という色眼鏡で見れば意味深な会話かもしれない。

「まぁ、フ―さん、素敵な方がご一緒で羨ましいですわ」
「いやぁ、口うるさいばっかりでねぇ」
「でも、これから頑張ってほしいから・・・・」
「そうですよ、フーさん。こんな素敵なお連れさんのためにも
お酒は控目にされないと・・・・」
「おや、そんな商売っ気のない言い方をしていいのかね」
「あらぁ、わたしとしたことが・・・・」

 年かさの芸者が首をすくめて見せた。

        * * * * *

「そろそろ風呂に入って寝るか。彩香は向こうだぞ」
「もうお休みするの? つまんないわぁ」
「あまり夜更かししたら、せっかくの美人も台無しだぞ」
「しかたがないわ。それでは、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」

 思いのほか素直な彩香に、ほっとした様子で*フーさん*が
バスルームに向ったのを見てから彩香は部屋を出た。
 部屋でお化粧を落とした彩香はざぁっとシャワーを浴びると、
浴衣姿でバスタオルを抱えて部屋を出た。
 もちろん、舞い戻ったのは*フーさん*の部屋だ。
 浴室から小唄が聞こえるのを幸いに、灯りを暗くした彩香が、
すっぽんぽんの丸裸になって主のいない布団にもぐりこんだ。

 バスルームから出てきた*フーさん*の足が止まった。
 明るいはずの部屋の灯りが消えて、薄明かりの中に、布団が
盛り上がっているのだ。
 それがどうしてなのか、それが判らないはずはない。

「そこに居るのは彩香か?」
「うん・・・・」
 聞こえたのは布団の中の彩香のくぐもった声だ。
「彩香は向こうの部屋で寝る約束だったろ」
「わたし、そんな約束してない」
「しようがない彩香だ・・・・」
「だって、そうなんだもの」

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 彩香に強行策に出られてしまったら、*フーさん*に出来る
ことは、自分が彩香の部屋に行くことしかない。
 ところが*フーさん*にはそうする気配がまったく見えない。
 なぜなら、半年前、禁断の実を食べてしまった弱みがある。
 たしかに、そのあと強い後悔の念に襲われて、翌朝になって
すり寄ってきた彩香をたしなめたのは父親として当然だ。
 だが、あの時に肉棒を通して脳天まで届いた快感は、相手が
はちきれそうな彩香だけに目も眩むようなものだったろう
 あれから半年、あの時の後悔の念は薄れる一方だが、あの時
味わった禁断の果実の味は増幅される一方だった。
 なぜなら、後悔の念は理性にもとづくものなのに、性の快感
というのは人間の本能の領域だから当然のことなのだ。
 おそらく、いちど麻薬の味を知ってしまった人間が容易には
その魔力から抜け出せないのと同じ類いなのかもしれない。
 その本能の前には、父親としての想いなど無力なのだろう。
 いちどそれを越えてしまった二人の前にあるのは、かすかに
痕跡を残す垣根にすぎないのだ。
 それは、彩香とオトコにとっては、ことにそれが障害になる
はずのオトコにとってはないも同然のものだ。
 いまさら彩香を残して逃げ出すことなど出来ない相談だ。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 そこに*フーさん*が立ちつくしていたのもわずかの間だ。

「これから・・・・オトコになっても構わないのか?」
 まもなく*フーさん*が絞り出した言葉は、これから彩香と
同じ部屋で、しかも同じ布団に入っていて、父と娘でいること
など出来ないと告白したも同じこと、もちろん、この期におよ
んでは、言わずもがなの念押しの言葉だ。

「うん、またそうなって・・・・」
 布団から顔を出した彩香の目がきらりと光った。
「わかった・・・・」
 つぶやくような言葉を洩らしたオトコが、クローゼットから
何かを持ってきて布団の傍に寄った。

 彩香はそれを待っていたようだ。
 オトコが傍に寄るのと同時に、彩香からひと言もれた。
「暑い・・・・」
 その声が先か、オトコの手が布団に伸びるのが先か・・・・
 いっしゅん早く、彩香の手で掛け布団がはねのけられた。
 薄明かりの中、オトコの目の前にぼんやり浮き上がったのは、
オトコを誘うように見上げる、すっぽんぽんの彩香の裸身だ。

 彩香の傍に膝をつき、それに魅入られたように彩香の裸身に
みとれていたオトコから言葉がもれた。

「灯りを点けてもいいか?」
「うん・・・・いいわよ」
「もっとよく見たいんだ」
「なにを見たいの?」
「なにもかも見たい」
「この前も見てくれたのに・・・・」
「それが・・・・」
「それが・・・・どうしたの?」
「この前のことはよく覚えていないのだ」
「そうなの? だったらしっかり見て!」

 たしかに、オトコのつぶやきはもっともなことだろう。
 いくら女性経験が豊富な男でも、初めて相手にする女を前に
したら冷静では居れないのに、あの時はもののはずみとは言え、
実の娘のバギナに肉棒を挿し込むことになったのだ。
 そんな時、冷静にすべてを観察できたはずもない。

 オトコの手が枕元のスタンドに伸びた。
 はなやかなランプシェードを通したなまめかしい灯りの中に、
両脚をゆったりと開いて男を見上げる裸身が浮かびあがった。
 オトコの視線がゆったり開いた両脚の狭間に釘つけになった。
 それもそのはず・・・・そこは、半年前に肉棒を挿し込んで男の
エキスを注ぎ込んだところなのだ。
 それを目の当たりにして冷静でおられるはずはない。

「昔の美穂と同じだ」
 つぶやくようなオトコの言葉を彩香は聞き逃さなかった。
「どんな処が同じなの?」
「ヘアが薄くて割れ目がはっきり見えるところだ」
「そうなの?」
 彩香が膝を立て、脚をいっそう大きく拡げて見せた。
 オトコが言うとおり、ヘアが薄いため、ふっくらした秘丘に
続いて、オトコを待つ割れ目がさらにはっきり現われた。
「美穂さん、いまもそうなの?」
「普通より薄い方だが、彩香の方がずっと薄い」
「どっちがいいの?」
「もちろん、彩香の方だ」

 まるで金縛りにでも遭ったように彩香の裸身を目で堪能した
オトコが、彩香の目の前でぱっと浴衣を脱ぎ捨てた。
 彩香の目の前に、怒張した肉棒がそそり立った。
 目の前の若い裸身にあおられてのことに違いないが、それが
娘の裸身であろうと、関係ないのかもしれない。
 もしかしたら、娘の裸身だからこそ、なのかもしれない。

「パパの・・・・すごい!」
 それを見上げた彩香から驚きの声が洩れ、オトコが傍に横に
なろうとすると、からだを起してソレを掴もうとした。
「いいから、横になってなさい」
「だってぇ・・・・」
「いいから・・・・それはあとで・・・・」
「うん、わかった」

 オトコは、未練ありげな彩香を抑え、自分も横になった。
 オトコの手が彩香のからだの隅々まで入念に這い廻った。
 キスやクンニは、男と女が歓びを交わす時に、男がかならず
と言ってもよいほど行う前戯の定番なのだが、いまはオトコの
手が彩香のからだを這い回るだけで、キスさえも、また究極の
前戯であるクンニへと進む気配もまったく見えない。
 父が娘に肉棒を挿し込もうとしているいま、理屈に合わない
ことかもしれないが、心の中でなにかが働いて、キスをしたり
クンニをすることが出来ないのかもしれない。
 かろうじて、可愛い乳首を唇でつまんだだけだ。
 それでも、入念な愛撫の甲斐があって、彩香から軽いため息
ともあえぎ声ともつかないものが洩れはじめた。。
 オトコの手がようやく彩香のクレバスに伸びた。

「もう大丈夫みたいだ。いいか?」
 あいまいだが、すぐに入れたいというオトコの問いかけだ。
「うん、いい・・・・」
「もちろん大丈夫なんだろ」
「うん、大丈夫よ」
「しかし・・・・」
「パパ、心配なの?」
「もちろんだ。持って来たから付けておこう」
「だったら・・・・」

 からだを横たえたまま見上げる彩香の前で、オトコがさっき
ロッカーから持って来たものを手に取った。
 美穂には必要ないスキンを準備していたのは、彩香とふたり
だけの旅行を決めた時から、覚悟を決めていたのだろう。
 彩香はかならずそれを求めるだろう・・・・
 そうなったら自分はそれをこばめないだろう・・・・
 ならば、備えをしておかなければ・・・・

「ちょっと待って!」
「ん? どうするんだ?」
「こうするのよ」
 返事と同時に、彩香の手が肉棒を掴み、それに口を寄せた。
「それはだめだよ」
「だって、さっき、あとで・・・・と言ったでしょ」
「それはそうだが・・・・」
「いいから、パパは横になっていて!」

 しぶるオトコが彩香の頭を抑えた時には、ソレは口の中だ。
 それ以上は逆らえず横になるしかないオトコだ。
 ぎこちない動きだが、半年前は、自分から望んで触れてみて、
さらに秘奥に受け入れた父のモノだけに情が籠ったフェラだ。
 たちまちオトコのお腹のあたりが波打ちはじめた。
 湧き上がってく快感を必死にこらえようとしているようだが、
それも長くは続かない。
 ついにオトコが白旗を掲げた。

「もう・・・・これ以上されたらイッテしまう」
「もう、だめなの?」
「どういうわけか、もうダメだ!」
「それなら、イッテもいいわ」
「いや、どうせイクなら・・・・」
「そうなのね。パパは彩香の中でイキたいのね」
「それは・・・・もちろん、そのほうが・・・・」

 娘にフェラをされて、オトコが長く耐えられるはずがない。
 こうなったら、娘の口の中ではじけるのが父親のせめてもの
取る道だろうが、すでに父親からオトコに変身しているのだ。
 この時になって、たとえスキンを付けるにしても、オトコが
彩香のバギナの中ではじけたいという誘惑には勝てないことを
素直に告白したのは当然のことだろう。
 哀願されて、フェラチオをあきらめた彩香が、横になった。
 しっかり目を開いてオトコを見上げたまま腰を浮かせた。
 その『いつでも来て!』という仕草は立派なオンナだ。
 彩香の視線に自分のそれをからませたオトコに複雑な表情が
浮んだのはほんの一瞬のことだ。
 迷いを振り切るようにスキンを取り上げたオトコが、丁寧に
それをかぶせた肉棒をクレバスのまん中あたりに合わせた。
 にぶい光沢を帯びたモノが上から下、下から上へと滑った。
 にぶい光沢のスキンの表面が艶を増し始めるにつれて、割れ
目を滑る肉棒の動きがスムーズになった。

 陰と陽が十分になじんだと見て、オトコが動いた。
 指先で拡げられたクレバスの奥に可愛いホールが現われた。
 そこが赤味がかったピンク色になっているのは、ひかえめな
前戯ながら、その効き目の現われにちがいない。
 その可愛いホールが、近づいた肉棒の傘で蓋をされた。
 オトコが遠慮気味に腰を進めると、ホールをふさいでいた
傘がしなやかなそれを押し拡げながらめり込んでいった。
 セックス経験の少なさをしなやかさがカバーしたのだ。

 安堵の表情を浮かべたオトコが彩香にからだを寄せた。
 二度目のこと、もう大丈夫だと思ったに違いないオトコの
腰がぐぐーっと彩香に押し出された時・・・・
「痛い!」
 彩香の悲鳴のような声に、オトコの動きが止まった。
「どうしたんだ?」
「痛いのよう!」
「そんなに痛いのか?」
「うん、我慢が出来ないほど痛い!」
「おかしいな。この前はちゃんと・・・・」
「だってぇ・・・・」
「そうか。これのせいかな」

 半年前には、さほどの苦痛もなく受け入れられたモノだ。
 それなのになぜ? そのわけはたった一つ、スキンしかない。

「ほんとうに大丈夫なんだな?」
 オトコの問いかけの意味はもちろん彩香に通じた。
 もちろん、ナマで入れるよ、ということをだ。
「アレが終ったばかりだから」
「そうか。それじゃ、いいんだな」

 スキンの下から現われた太くて長い松茸は、スキンから解き
放たれて、傘がさらに膨らんだ。
 ナマの肉棒がホールに合わされたが、ホールよりもはるかに
大きな傘は、まるで蓋をしたようにホールを覆い隠した。
 さっきよりも慎重に、固い傘が割れ目に沿って上下した。
 光沢を帯びた傘が、可愛いがしなやかさは抜群のぼってりと
膨らんだ陰唇に埋め込まれた。
 視線を彩香に当てたまま、オトコが腰をゆっくり押し出した。
 傘のほとんどクレバスに消えた時、彩香から洩れてきたのは、
大きく吐いた息だけだ。

「もう痛くないんだな」
「うん、痛くないけど・・・・」
「けど? どうしたんだ?」
「なんか、今日のパパ、すごく大きい」
「それは・・・・そうかもしれないな」
「でも、イヤな感じではないのよ」
「そうか・・・・よかった・・・・それなら・・・・」

 オトコから安堵の言葉がとぎれとぎれに洩れた。
 やはりいま、ひとりのオトコとして肉棒を挿し込んでいても、
脳裏では相手が実の娘だという思いが消えてはいないようだ。
 その余韻を含んだやりとりは、いま繋がりはじめたばかりの
処から脳裏に届いた感じを素直に言い表したものだろう。
 オトコがぴったりと彩香にからだを重ねて懐に抱え込んだ。
 さらに、オトコの両脚が横に広がった。
 これは、男が相手のバギナに己の肉棒を送り込む時に必ずと
言ってもよいほど取る動きなのだ。
 ふたりのからだが、繋がっている一点で、隙間なくぴったり
重なったように見えたが・・・・
 オトコの口が彩香の耳元に寄った。
「もうすこし中に入れてもいいか?」
「ぜんぶ入ってないの?」
「まだ先が入っているだけだ」
「いい・・・・ぜんぶ入れていい」
 その返事を待ってオトコの腰がゆっくりしゃくり上がった。
「ああ、いい感じだ!」
「ああーっ・・・・」
「痛いのか?」
「ううん、奥の方がなんか変な感じ・・・・」
「そうか、奥まで届いてるんだな」
「うん、固いモノが奥に当っているみたい」
「そうか・・・・痛くなければいいんだ」

 そうつぶやいたきり、動きを止めたオトコは何も言わない。
 半年ぶりの新鮮な秘貝の味を肉棒で味わっているのだろう。
 ふたりのからだが、それこそ一分の隙もないほどぴったりと
重なっているから、松茸のすべてがしなやかな肉襞を押しひろ
げて収まるべきところに収まっているはずだ。
 オトコの腰はなおも動きを止めたままだ。
 それがもの足らないのか、彩香の腰が突き上げられる。
 それに誘われても、腰がゆっくりしゃくり上げられるだけだ。
 それにもの足らずに浮き上がった腰の下に、オトコの両腕が
差し入れられ、今度は彩香の腰がぐいっと引き寄せられる。
 それからしばらく、いたわりに満ちた動きがつづく。

 オトコが腕をゆるめたり、引き寄せたり・・・・
 彩香がオトコの腕にすがりついて腰を突き上げたり・・・・
 オトコの顔が彩香のふっくらした胸元に寄ったり・・・・
 時おり、可愛い乳首を口に含んだり・・・・

 ふたりの動きのコラボレートが何度となく繰り返される。
 上から容赦なく突き下すのが男の本能とするならば、いまの
オトコには彩香へのいたわりの気持ちが現われているようだ。
 その一方、がっしりした背中を丸めて彩香を抱え込んでいる
姿は、いま肉棒を挿し込んでいる彩香をこれからも決して離さ
ないぞ、という煮えたぎるような執念が感じられる。
 それはともかく、上から突き下すよりもずっと優しく肉棒が
秘奥を突いている、ただそれだけの動きなのに、しだいに吐く
息が荒くなってきたのはオトコの方だ。

「ああ、いい気持ちだ。美穂と同じだ」
「・・・・・・・・」
「ああぁ・・・・イキそうだ」
「パパぁ、なんか変だよう」
「そうか・・・・もう少しでイケるぞ!」
「ああぁ・・・・」
「うーっ、こっちも我慢ができない!」

 とつぜんオトコのうめき声がもれ、次の瞬間、ふたりの腰が
いちど離れたように見えた。
 それは、彩香の腰が逃げたのではなくて腰を抱えあげていた
オトコの腕がゆるめられたからで、そのあとすぐ、今までより
強い力で引き寄せられて動きが止まった。
 まさに弾けようとする時、己の肉棒をより深く押し込もうと
するのは男の、というよりオスの本能なのだ。
 それでも、上から激しく突き下さなかったのは彩香へのいた
わりを忘れていない証なのだろう。
 とは言いながら、秘奥への当り具合はさっきとは比べものに
ならないほど大きかったようで彩香がうめいた。

「ううぅーっ・・・・」
「だすぞーっ・・・・」
「ああぁーっ・・・・」
「あーっ、いくぅーっ・・・・」

 オトコの動きに、半年前のような迷いは見られない。
 それだけでは終わらず、抱えあげた彩香の腰に向けて下から
容赦なくオトコの腰が何度もシャクリあがった。
 そんな動きこそ、子ダネを相手に余すところなく注ぎ込もう
というオスの本能そのものなのだ。
 もちろん、オトコになると決めた時から判っていることだが、
実の娘に対する動きではないことは確かだ。

「ああぁーっ・・・・いっぱい出てるぅ」
 噴射されたエキスを彩香もはっきり捉えたようだ。
 それが判らないほどの高嶺に登りつめてはいなかったのだ。
「また彩香の中に出してしまったよ」
「いいの。いい気持ちだったからでしょ」
「もちろん、そうだよ」
「わたしもいい気持ちだったから・・・・」
「そうか・・・・」
「今度は出てるのがはっきり判ったわ」
「そうだろうな。勢いよく出たからな」
「それに、パパのアレがなんども膨らんで・・・・」
「あれが判ったなら。彩香はいいオンナになれる」
「そういうものなの?」
「まちがいなくそうだ。それが判らない女が多いんだ」
「わたし、なんどでも感じたい」
「わたしだって彩香と同じ気持ちだよ」

        * * * * *

 オトコが離れても、彩香は目をつむって横たわったままだ。
 その始末はオトコに任せきっているようだ。
 もちろん、それが自分の努めと判っているオトコは、ソレを
引き上げる前に、枕元のティッシュを手にしていた。
 洩れでるエキスをそれで拭き取るオトコからつぶやきが・・・・
「小さい頃、おしめを替えたことはあるが・・・・」
 よもや注ぎ込んだエキスをふき取ることになるとは、という
複雑な胸の内を吐露したつぶやきに違いない。
 その後、しばらく寝物語にも似た会話が続いた。
 その時の二人は、オトコとオンナというより、気持ちの上で
父と娘に戻っていたかもしれない。

「どうだ。少しはいい感じなれたか」
「ううん・・・・」
「そうか、まだ判らないだろうな」
「そうじゃなくて、あっという間だったから」
「そうだったか・・・・これは一本取られたな」
「美穂さんの時、パパはいつも中に出してるの?」
「ああ、そうだよ」
「それで赤ちゃんは出来ないの?」
「彩香を産んだ後、手術を受けたからね」
「じゃ、安心して愉しんでいるというわけなのね」
「だから、東京に出てくるのは、美穂が欲しがる時なんだ」
「それって、パパの方はどうなの?」
「美穂の中に直に出すなら、燃え上がってくれる方がいい」
「いつでもいい、というのではないのね」
「若い頃はそうだったが、いまは違うね」

 しばらく考える風だった彩香がつぶやいた。

「それでなのかしら」
「え? なにがだ?」
「パパが来る頃、美穂さんの顔がはっきり上気してくるの」
「そんなにはっきり変わるのか?」
「わたし、美穂さんは嬉しくて仕方がないんだと思っていた」
「そうか。気がつかなかったなぁ」
「当然でしょ。そんな時の美穂さんしか知らないんだから」
「まあ、そういうことか」
「そう言う時だから、だからあんな声が出るのね」
「最初はすぐに弾けてしまうので、本番は二度目だけどね」
「だから、あんなに遅くまで美穂さんの泣き声が・・・・」
 納得顔でつぶやいた彩香がオトコの胸に顔を寄せた。
「わたしにも、もう一度してくれる?」
「ん? もうこれっきりにすると約束するならね」
「うん、約束する」
「よーし、もういちど風呂に入ってからだ」
「わたしも一緒に入りたい」
「じゃ、一緒に入って洗ってやるよ」

        * * * * *

 あとからバスルームに足を踏み入れた彩香が、オトコの前に
惜しげもなく裸身を曝してポーズを作ってみせた。

「どうお。きれいでしょ」
「うん、きれいだ・・・・」
「美穂さんよりきれい?」
「それは・・・・」
「ちゃんと教えて!」
「むかしの美穂と同じだよ」
「むかし、っていつごろなの?」
「もちろん、初めてオンナにしてやった頃だよ」
「むかしの美穂さん、わたしと同じだったの?」
「そうだよ。なにもかも・・・・」

 そうつぶやいたオトコの胸中は複雑に違いない。
 立派な女に成長した娘を愛でる気持ちはもちろんある一方で、
さっき膨れ上がった肉棒を挿し込みエキスを注ぎ込んだ彩香を
ひとりの女として愛でる気持もあるだろう。
 たぶん、二つの思いが複雑に絡み合っているのかもしれない。

「それじゃ、ここに一緒に入るか?」
「うん、入りたい」
 うれしそうにオトコに背中を向けて湯船に入ってきた彩香を、
オトコはしっかりと懐に受け止めた。
「むかしも、こんなふうに抱いてもらっていたわ」
「そういえば、そんなことがあったなあ」
 オトコはしばらく無言で視線を天井に向けた。
「一緒に風呂に入っていたのは小学校に入る前までだったな」
「そうなのね。もう十数年前のことなのね」
「あのころは、大きくなったらどんな女になるのかなぁ、とは
思っていたけど、いまの姿などは思い浮かばなかった」
「そうお?」
「ただ・・・・彩香のすべすべしたオ○○○を見て、ここにアレを
突っ込むのはどんな男だろうか、なんて思っていたよ」
「パパってエッチだったのね」
「だけど、こんなことになるなんて考えてもみなかった」
「それで・・・・いま見ていてどうなの?」
「とても素晴らしい。彩香を妻にする男がうらやましいよ」
「ほんとう?」
「ほんとうだとも」
 そんな話のうちに、彩香がのぼせ気味になったようだ。
「熱いからもう上がる」
「そうか、もうあがるか」
「だから、昔みたいにぜんぶ洗って!」

 彩香がオトコの懐の中でくるっと向きを変え、立ち上がった。
 そんな彩香を複雑な表情で見上げたオトコが、いちど大きく
吸い込んだ息を一気に吐いて立ち上がった。

「よーし、洗ってやろう」
「うん・・・・どこを洗ってくれるの?」
「彩香のぜんぶだよ」
「パパのアレが入ってたところも?」
「もちろん・・・・最後にしっかりとな」
「じゃぁ、きれいに洗って!」

 大きく頷いた彩香が、脚を少し開き、両手を横に上げた。
 小さい頃、洗ってもらう時に取ったポーズなのだ。
 ソープを両手に泡立て、胸元からお腹のあたりまで塗りつけ、
丁寧にくまなく這わせてから、オトコが彩香にうながした。

「もう少し脚を開いてくれないか」
 彩香はしゃがんだオトコの肩に両手を置き脚を大きく開いた。
「よーし、それでいい」
 オトコの指がクレバスを拡げた。
 目の前に現れた小さな蕾とピンク色のホールを下からのぞき
こんだオトコが、中指を少しだけ差し入れた。
「やっぱり、もう濡れている」
「ふーっ・・・・」
 オトコの上からため息が降って、目の前で腰がゆれた。
「ん? どうしたんだ?」
「だってぇ・・・・あちこち触るんだもの」
「そう言ったって、触らなかったら洗えないだろ」
「それはそうだけどぉ・・・・」
「洗ってくれと言ったのは彩香の方だよ」
「もう・・・・今度はわたしが洗ってあげる」
「昔は、彩香にそんなことをして貰った覚えはないよ」
「だから、いましてあげるの」

 いっこうに立ち上がろうとしないオトコに業を煮やしたのか、
彩香がオトコの前に座り込み、股間に手を伸ばした。
 そうまでされたら、オトコもあきらめるしかない。

「わかったよ」
 仕方がないという表情でオトコが彩香の前に立ち上がった。
 彩香の裸身に誘われ、オトコの股間に肉棒がそそり立った。
 オトコが逡巡したのはそれが気恥ずかしかったのだろう。
「まぁ、こんなになってる」
 ていねいに洗い終えた彩香が、ソレに口を寄せた。
「それはあとで・・・・」
「どうしてなの?」
「ここでイキたくはないからな」
 オトコはあわてて彩香の頭を抑え、ソコから引き離した。

        * * * * *

 明るい灯りの下で洗い合ったふたりに薄暗さはそぐわない。

 バスルームを出ると、まだからだを寄せたままでいる彩香と
一緒に壁際に寄ったオトコの手が壁際のスイッチを押した。
 まぶしいほどの明るさの中に、オトコが彩香を横たえた。
 バスローブのひもが解かれ、もうすぐ二十歳になろうという
裸身がバスローブを剥ぎ取られて浮かび上がった。
 眩しそうな素振りを見せた彩香がオトコにからだをよせた。
 それを抱き寄せたオトコの掌が、胸から太ももへと滑り降り、
薄目のヘアを乗せた秘貝に行き着くと、長くそこに留まった。

「小さい時にもこんな風にしてくれたの?」
「布団の中じゃなくて、お風呂の中でだよ」
「その時といまと、どんなふうに違うの?」
「ほとんど変わっていないが、ここにヘアがある処が・・・・でも
美穂よりも薄くて上品だ」
「ヘアの薄いのと濃いの、パパはどっちが好きなの?」
「そりゃ、薄い方がいい」
「どうしてなの?」
「ここを舐めてやる時に邪魔にならない」
「そうなの? 彩香のココ舐めたい?」
「舐めてもかまわないのか?」
「パパがそうしたいのならいいわ」
「よーし、もうたくさん! と言うまで舐めてやる」
「じゃぁ、そうして!」

 オトコにはこの会話がうってつけの切っ掛けになった。

 それが、己の肉棒を挿し込む前にやるべき重要な技だという
ことを、女を知り尽くしたオトコが知らないはずはない。
 しいてこじつければ、いままでそれを逡巡したのは、小さい
頃のソレを知っているだけに、男を知ってしまった今のソレを
間近に見たくない、という気持ちがあったためかもしれない。

 ふたりにとっては、これは初めての聖なる儀式なのだ。
 オトコには、それが娘の秘貝だけに、ことのほか複雑な心境
だろうが、いちどそこまで踏み込んでしまえば熟年のオトコに
手抜きなどあり得ないことだ。

 入念なクンニが彩香の秘貝に加えられ始めた。

 クレバスが指で開かれる・・・・
 オトコの視線がホールにつき刺さり、しばらく留まる・・・・
 頂きにある可愛い突起を舌先が撫でる・・・・
 チロチロと舐め、そして舌先ではじく・・・・
 秘貝のすべてが口いっぱいにほおばられる・・・・
 はげしく音をたててラブジュースを吸い上げられる・・・・

 それが飽くことなく繰り返されるうちに、彩香の腰が揺れ、
あえぎ声らしきものが洩れはじめる。
 それが何のシグナルなのか判らないオトコではない。
 オトコはソレを待っていたのだ。

「もっと続けて欲しいか?」
「もう・・・・いい・・・・」
 少しばかり意味不明な返事だ。
「これはもういいのか? アレがほしいのか?」
「アレがほしい」
「よーし、またコレを入れてほしいのか?」
 彩香の手がオトコのソレに導かれる。
「うん、コレがほしい」
「もちろんナマだぞ。さっきみたいに中に出すぞ」
「いいの、いっぱいほしい!」

 彩香の求めに応じて起き上がったオトコの股間には、すでに
勢いを飲み込んだような肉棒が屹立している。
 ソレをつかんだオトコにさっきのような慎重さは見られない。
 クレバスに合わせて二、三度すべらせただけで、腰が一気に
押し出され、長大な肉棒のすべてがクレバスに消えた。

「ああーっ・・・・」
「大丈夫か?」
「大丈夫・・・・」
「これから、どんどん気持ちよくなるからな」
「うん・・・・」
「我慢しないで、なんでも言っていいからな」

 眉間にしわを寄せながらも、彩香はけなげにうなずいた。
 このあとに、いつも美穂が訴えているのと同じような境地が
あるに違いないことを本能的に感じていたのかもしれない。
 このあとのオトコの動きは、あせらず急がず、慈しみながら
彩香の愉悦を引き出すことに専念しているように見えた。
 おそらく、五十代中ごろという年齢が幸いしたのだろうが、
いちどはじけた肉棒は簡単に弾けるはずもない。
 彩香を胸の中に抱きかかえて、変幻自在に腰をつかいながら、
オトコは彩香の耳元に絶えまなく言葉を吹き込む。
 彩香に、オンナにはもっと高い頂きがあることを教え込もう
としているようだ。
 かたや彩香は、たぐいまれな肉棒で秘奥をかき回され、時に
激しく突き上げられて、これまでに到達したことがない未知の
領域に足を踏み入れつつあることをあえぎ声や言葉やしぐさで
オトコに訴えつづける。

「おぉっ、アソコの締まり具合が美穂と同じになったよ」
「パパ、いいの、いいのよ~っ」
「おう、美穂と同じような声がではじめたぞ」
「どうして、どうしてなのよ~っ」
「彩香のアソコが感じはじめたんだ」
「どうしてこんな感じになるのよう」
「彩香のアソコをアレで突いているからだ」
「パパのアレが奥まで届いてるのよう」
「そうだろ! もっと奥を突いてやるぅ」

 ぶっとい肉棒で娘の秘奥を突きまくる父・・・・
 それを秘奥に受け止めて悦びを訴えつづける娘・・・・
 父が吹き込む言葉など耳に入らず快感を訴える娘・・・・

 お互いに相手を『パパ』と呼び『彩香』と呼び合い、さらに
話の合間にオトコは、自分の愛人である美穂のことを、美穂に
産ませた彩香の耳に吹き込んでいるのだ。

「アソコが美穂と同じようにぴくつきはじめたよ」
「ああぁ・・・・いい・・・・なんか変なのよーッ」
「目を開けてごらん」
「だめーっ、あかないよーっ」
「とろんとした目つきも美穂と同じだよ」
「いいのよーっ、いいのよーっ・・・・」
「もう少しで、どうしようもなくなるからな」
「パパ、ほんとうなのーっ?」
「ほんとうだ!」
 そこにいるのは、ありふれた古めかしい倫理観など入り込む
隙間もなく心を通わせ、素直に悦びを追い求めるふたりだ。
 いまこの時、ふたりは、父と娘であることを無理に意識から
消し去ろうとしているのではないだろう。
 それよりむしろ、父と娘がからだを繋ぎ合ってもかまわない
のだという境地に達したことで、あたり前の男と女よりもはる
かに激しい愉悦のうねりを追い求めるふたりなのだ。

 オトコの懸命な攻めの甲斐があって、ついに彩香はオトコの
予告通りの最高嶺にあと一歩の所に足を踏み入れた。
 それを見て、オトコの腰が彩香の腰をはげしく叩き始めた。
 いまがその時、との思いがいたわりの気持ちに勝ったのだ。
 ついに彩香からどうしようもない訴えが・・・・

「パパ、こわれちゃうーっ!」
 彩香が初めて口にしたその言葉にオトコが激しく反応した。
「よーし、こわしてやるーっ!」
「だめーっ! だめよーっ!」
「大丈夫だ! こわしたりしないから」
「だめーっ! やさしくしてーっ!」
「そんなに簡単にこわれたりしないよ」
 オトコが手を緩めるのは自分が言葉を吐いている時だけだ。
 あとは休む間もない激しい攻めに、彩香が悲鳴をあげる。
「おねがい! たすけて~っ!」
「わかった。やさしくしてやるよ」
「もうだめーっ! パパ、おねがいーっ!」

 彩香があげる泣くような哀願にもかかわらず、オトコの言葉
とは裏腹に、攻めはゆるめられない。
 そればかりか、オトコの腰が彩香の腰の上で何度も跳ねる。
 彩香があと一歩でエクスタシーをきわめようとしているのに、
いまここで攻めを緩めたら、すべてが水泡に帰してしまう・・・・
 オトコにはそれが判っているのだろう。

 怒涛のような攻めが続いて、ついに・・・・
「ああーっ、いくーつ!」
 高嶺をきわめようとしていることを告げる叫びがあがった。
 彩香が初めてもらした叫びが、爆発寸前のオトコの火に油を
注いで、オトコを一気に燃え上がらせたようだ。
 もしかしたら、そこに美穂の姿を見たのかもしれない。

「彩香! いかせてやるぞーつ! あともう少しだ!」
 オトコの腰が激しく叩きつけられ、丸い腰が悲鳴を上げた。
「あっ、あっ、あっ、いやーっ!」
 彩香から大きな叫び声がほとばしり出た。
 それと時を同じくして・・・・
 オトコの腰が寸分の隙間もなく彩香の腰に押しつけられた。
 そして、そのまま秘奥をえぐるように揺れた。

「いやぁーっ!」
「彩香! まただすぞーっ!」
「あうーっ・・・・」

 オトコのさけび声、彩香の悲鳴のようなうめき声・・・・
 おそらく、秘奥をえぐり廻している固い肉棒の先っぽからは
男のエキスがほとばしり出ているに違いない。

 オトコと彩香は、しばらく繋がったまま抱き合っていた。
 やがて、彩香が軽い寝息を洩らしはじめるとオトコはそっと
部屋をあとにして鞠子の部屋に向かった。



     第七章 タチとネコ

 ある週末・・・・
 彩香が帰ると、テーブルには三人分の料理が並んでいる。

「美穂さん、パパは何時ごろ来るの?」
「さっき、急な用事が出来たので行けないと連絡が・・・・」
「それじゃ、ドタキャンじゃないの」
「えぇ、そうなのよ。でも、あの人も忙しいから・・・・」
「わたし、お友達の誘いを断ったのに。それで来週あたり?」
「それがねぇ・・・・」
「そうかぁ、先の予定が立ってないんだ」
「ええ、そうみたい」

 美穂は口ごもったが、顔には落胆の色がありありだ。
 いちばん燃える時なので楽しみにしていたはずの美穂だから、
予定の変更を伝えられたあとの落胆は彩香にも判った。

「せっかく楽しみにしてたのにつまんないわ」
「あら、彩香はあの人となにか約束があったの?」
「いいえ、約束はしてないけどお話しが出来ないから・・・・」
「あら、それだけ?」
「あとは・・・・」
「あとは? なんなの?」
「言ってもいい?」
「何だか知らないけど、言いたかったらどうぞ」
「あとは、美穂さんのいい声が聞かれないことかな」
「まぁ・・・・」
 もちろん、美穂には彩香の言いたいことが判っていたのだが、
大袈裟に驚いて見せた。
「わたしより、美穂さんの方はどうなの?」
「わたし? 別にどうってことは・・・・」
「それって、美穂さんの強がりじゃないの?」
「そんなことないわ。予定が変わることは始終あったから」
「そうだったの? じゃぁ、二人だけで宴会をしましょ」
「そうしましょうね」
 彩香は、ふと思いついたように言った。

「あ、それから今夜は美穂さんの所で寝させてもらえる?」
「えっ、どうして?」
「何となくそうしたい気持ちなの。ダメ!」
「ダメ、ってことはないけど・・・・」
「パパならいいけど彩香はダメなの?」
「うふふふ・・・・おかしな言い方ね」
「じゃ、いいでしょ。その前にお風呂も一緒に・・・・」
「わたしはもうオバサンだから・・・・一人でゆっくり入るわ」
「そうお? パパは美穂さんのことずいぶん褒めてたわよ」
「えっ、どんなふうに?」
「これまで出逢った中で一番のオンナだって」
「そんなこと、いつ彩香に話したのかしら?」
「この前の旅行の時よ」
「まぁ・・・・あの人が・・・・」

 すこし呆れたというような顔をしてみせた美穂だが、それが
どんな雰囲気で出たのかなど、気にしていないようだ。
 そんな話は、自分の前で彩香と*あの人*が出来ないことは
わかりきったこと、美穂にものみ込めたようだ。

「でも、どうしてそんな話になったのかしら?」
「その時の話、もっと詳しく効きたい?」
「なんか、思わせぶりな言い方ね」
「わたしのこと、いろいろパパに話してるでしょう」
「もちろん、彩香のことはいろいろ報告してるわよ」
「わたしの初体験のこともでしょう」
「そんなこと、あったかしら」
「パパが、美穂さんから聞いたと言ってたわ」
「そう言えばそんなことが・・・・」
「パパにアレを挿し込まれている時に言ったんですってね」
「ええっ・・・・そうだったかしら?」
「彩香も男にこんな風にされたみたい、って・・・・」
「そんなこと、良く覚えていないわ」
「そうかぁ。パパにアレを挿し込まれている時のうわ言よね」
「まぁ・・・・」
「それはいいけど、その話から美穂さんのことに・・・・それから
もっとはっきりしたことも教えてくれたわ」
「ええっ、どんなこと?」
「アレを入れた時の締まり具合がとてもいいって」
「まぁ、そんな恥かしいことまで?」
「それから、もっとドキッとすることも言われたわ」
「どんなこと?」
「美穂に似て、彩香の締まり具合もいいだろうなぁって・・・・」
「まぁ、そんなことまで?」
「だから『じゃぁ、わたしのも試してみる?』って言ったの」
「まぁ、呆れた。それ、本気で言ったわけじゃないでしょ」
「当たり前でしょ。冗談で言ったのよ」
「あの人、びっくりしたでしょうね」
「バカ!そんなこと出来るわけないだろ、と叱られちゃった」
「そんなの、当然でしょ」

 そんな話をしているうちに、お休みの時間になった。

        * * * * *

「昔はこんな具合に一緒に寝ていたのね」
「そうよ。あの人と三人で川の字になってね」
「そうだったの? ほとんど覚えていないわ」
「そうでしょうね。まだ小さかったから」
「それより、これ素敵なベッドね。スプリングが良く効いて」
「そうかしら。あの人が選んでくれたのよ」
「そうなんだ。ここで、パパとどんなことしてるの?」

 核心に触れたことをズバリ聞かれた美穂はうろたえ気味だ。

「おかしなこと聞かないで! そんなこと判ってるでしょ」
「パパにココを舐められたり、アレを入れられてるのね」
「彩香、そんな所にさわらないで!」
 話のついでに、彩香の手が『ココ』に伸びたようだ。
「そうなんだ、おかしな気分になっちゃうんだ」
「あたり前でしょ」

 強い調子の美穂の言葉に、彩香が話題を変えた。

「この前は結局、パパも一緒にお風呂に入ったんでしょ」
「あらぁ、判ってた?」
「何となく人の気配で・・・・」
「そうなの。やっぱり一緒に入りたい、って・・・・」
「長いこと入ってたみたいだけど、中でしたんでしょ」
「どういうわけか、めずらしくあそこでしたいって・・・・」
「それってパパが言いだしたことなの?」
「もちろん、そうよ」
「あそこだと、バックからかしら?」
「それがしてみたかったみたい。でも、あっという間に・・・・」
「だから、美穂さんのアノ声が聞こえなかったのね」

 しばらく、美穂から言葉が途切れた。
 おそらく、その時のことを思い出していたのかもしれない。

「その後は静かだったから、もう終りかと思っていたら・・・・」
「・・・・・・・・」
「それが、眠りかけたら、また・・・・」
「あの人、お風呂の中だけではもの足らなかったみたい・・・・」
「美穂さんがでしょ」
「いいえ、どちらもよ」
「でも、後からの美穂さんの声はいつもと違っていたみたい」
「そうだった? そんなこと、自分じゃ判らないわ」
「初めは抑えている風だったけど、途中から急に大きく・・・・」
「彩香があんな話をするから、気になってたのかしら?」
「そんなこと気にしないで思いっきり愉しんだらいいのに」
「あの人も、思いっきりいい声を出せばいいから、って・・・・」
「それでふっきれたというわけなのね」
「あの人もムキになって激しく動いてくれたし・・・・」
「それで、最後はあんな大きな声が出たのね」
「・・・・・・・・」
「嫌らしいなんて思ってないから・・・・たまにのことなんだから、
気にしないで愉しんでね」

        * * * * *

 そんな話の間、美穂はさりげなく触れる彩香の手を拒まなく
なったばかりか、やるせない吐息さえ漏らし始めた。
 今夜の二人の立場は、母と娘というより、対等なオンナ同士、
しかも主導権は彩香に握られている感じなのだ。

 魂胆のある彩香だから、話がだんだん核心に近づいてゆく。

「美穂さん、今日はとってもパパが欲しかった日でしょ」
「ふーっ」
 返事に代えてやるせない吐息がもっと大きくなった。
「もう、ここがびちょびちょになってるわ」
「あーっ・・・・だめよーっ」

 彩香の手と指先がクレバスの周りを這い回っているはずだが、
美穂には彩香の手を振り払う様子もない。
 頃合い良しと見たのか、彩香が布団をはいだ。
 現れたのはネグリジェから下半身がのぞいた半裸の美穂だ。

「彩香、やめて!」
 ネグリジェを下げようとした美穂より彩香が先に動いた。
 ネグリジェの裾が大きく捲りあげられ、露出したクレバスに
彩香の顔がはりついた。
「彩香、何をするのよう!」
「パパがしてあげてることを代わりにしてあげるわ」
「そんなぁ・・・・だめよう!」
「いつもパパに舐めてもらってるんでしょ」
「いやぁーっ・・・・」
「もう、いっぱいラブジュースが出てるわ」
 わざとらしく啜りあげられて、美穂の声があえぎに変わる。
 自分がどんな格好をしているか気にならなくなって、両脚を
拡げて秘貝を彩香にさらして腰を揺らせ始めた。

 美穂を自分のペースに引き込むことができた、そして美穂に
自分をこばむ気持ちがなくなったようだ、と見てとった彩香は
料理を急がないことにしたようだ。
 美穂にからだを寄せ、手をクレバスのまわりに這わせながら、
顔を覗き込むようにして話を続ける。
 もっとも美穂は軽く目をつむったままだが・・・・

「美穂さんのココ、可愛いのね。だから帝王切開を・・・・」
「あの人が話したのね」
「そうじゃないわ。この手術跡を見ればわかるわ」
「・・・・・・・・」
「お医者さんから奨められたのね」
「お医者さんは大丈夫と言ったけど、あの人が・・・・」
「じゃぁ、パパが美穂さんのからだを心配したんだ」
「そうねぇ、心配といえばそうかも・・・・」
「え? どういうこと?」
 奥歯にモノが挟まったような言い方に、彩香が聞き返した。
「いつまでもいまのままでいてほしいと・・・・」
「うふふふ・・・・そう言うことなのね」
「なによ、その笑い方・・・・」
「パパ、わたしを産んで締りが悪くなるのが心配だったんだ」

 美穂が黙ったのは図星を指されたからに違いない。

「こんなかわいいホールにパパのアレが入っているのね」
「そんな判りきったことをいわないでよ」
「そうよね。だからわたしができたのよね」
「あたり前でしょ」
「それで、パパのアレ普通並み? それとも、もっと大きい?」
「そんなの判らないわ」
「二十年にもなるのにまだ判らないの?」
「だって、あの人しか知らないんだから仕方がないでしょ」
「そうかぁ。じゃぁ、これぐらい?」
 彩香が親指と中指で輪を作って見せると、焦点の定まらない
目つきでソレを見た美穂が首をかしげる。

「じぁゃ、こんなに太くはないのね」
「いいえ、それよりもふた回りは太いみたい」
「すごーい! そしたら長さはこれぐらい?」
 彩香が二本の人差し指で二十センチほどの長さを示した。
「そうねぇ。そのぐらいかしら」
「そんなに立派だなんて、美穂さんはしあわせ者ね」
「そうお? でも、こんな話、あの人には言わないでね」
「そんなこと、パパに言えるわけないでしょ」
「そうよね」

 彩香の返事を聞いて、美穂は安心したように目をつむった。
 そんな話よりも・・・・というふうに腰を揺らす美穂に、さらに
意地悪な言葉が追い打ちをかける。

「そんな大きいモノがどうしてココに入るのかしら?」
「どうして、って、あの人が入れてくれるからよ」
「入れらている時、痛くないの? いい気持ちなの?」
「そんなこと、彩香はちゃんと判ってるでしょ」
「そうね。あの泣き声はいい気持ちになってる時なのよね」
「・・・・・・・・」
「今夜、美穂さんの声を楽しみしていたのに残念だわ」
「だって・・・・ほんとはわたしも楽しみにしていたのよ」

 美穂からぽろっと本音が漏れた。
 彩香が待っていたのはこの言葉なのだ。

「それじゃわたしが代わりに・・・・」
「ええっ、どうするの?」
 美穂の言葉が終るか終らないうちに彩香が動いた。
 美穂の両脚の間に腹ばいになり、ソコに顔を近づけたのだ。
 それで、すっかり枯れ葉状態になっている美穂に火がついた。
 あとは、顔をソコに合わせているだけで美穂が腰を揺らせて
ひとりで頂上を目指しはじめた。
 いつも初めに聞こえる声と同じ、鼻にかかったあえぎ声だ。
 まもなく一つの頂きにのぼりつめておねだりをはじめた。

「ねぇ、いいのよう! きて! きて! いれてーっ」
 美穂の脳裏では、そうしているのが*あの人*なのだろう。
「いつも、パパにそう言っておねだりするのね」
「だって・・・・だってぇ・・・・」
「それじゃ、すこし待っていてね」

 美穂にそう声かけておいて自分の部屋に戻った彩香だ。
 戻ってきた彩香が手にしているのは*大人のおもちゃ*だ。
 もちろん*あの人*に可愛がってもらえるのが月に一度ほど
あるかないかの美穂のために買って来たもので、それを手渡す
機会を待っていたものだ。
 ベッドにあがって、ぐったりと大の字になった美穂の両脚の
間に、彩香がふたたび腹ばいになった。

「またするの?」
「そうよ、もう一度、いい気持ちにしてあげるわ」
 いちどは鎮まりかけていた美穂がふたたび燃え上がった。
「ねぇ、どうしよう きて! きて! いれてーっ」
「わかったわ。それじゃぁ・・・・」

 ふたたびその言葉が出ると、起き上がった彩香が取りあげた
のは人肌色をした*大人のおもちゃ*だ。
 スイッチを入れられてクネクネと動く*大人のシンボル*を
手にとってから美穂に声をかける。

「いれてあげるわよ」
「きて! きて! いれてーっ!」 
 太いオモチャがねくねと動いて美穂のクレバスを分け入る。
「ああーっ、いいーっ、いいのよーっ・・・・」
「そんなにいいの?」

 それをゆっくりと出し入れされ、美穂は夢うつつのの世界を
彷徨い続ける。
「あなたぁ・・・・ああーっ、いいのようー あなたぁ・・・・」

 快感にあえぎつづける美穂は、クレバスを出入りして肉襞を
こすりあげ、秘奥でくねくね動き廻っているのを、いつも慣れ
親しんでいるの*あの人*の肉棒だと錯覚しているのだ。
 どんどんヒートアップする美穂に、バイブ責めが加わる。

「あぁ、あなたぁ・・・・なんなのぉー、ああぁ・・・・」
 オモチャに付いた振動する柔らかい小さな舌先でクリトリス
あたりを刺激されはじめたのだ。
 あまりの快感に耐えきれなくなったようで、美穂のからだが
激しく波打ちはじめる。

「もう・・・・もう、だめよーっ」
 のたうちまわる美穂の両脚が彩香の首にまきついて、それで
締め付けられた彩香が、堪え切れなくなって脚を振りほどく。。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 セックスの満足度は両方の動きの相乗効果できまるものだ。
 男は、たとえ相手がお人形のようでも、バギナに肉棒を打ち
込んで動けばある程度の快感が得られ射精できるが、一方の女
が最後に到達できる愉悦の高さは秘奥に感じる快感に比例する。
 しかし、それをもたらす肉棒の動きはただ出入りするだけの
単調なもの、いくら腰の動きを変えてもたかが知れている。
 その高い相乗効果は、ひとえに女の動きしだいなのだ。
 女のカラダが動き始めれば、肉棒の単調な動きにプラスαが
加わって秘奥での快感は飛躍的に増加するし、男は女の動きを
抑えるために力を漲らせ、それが肉棒の威力を増加させる。
 そのことが秘奥での快感を増幅し、さらに・・・・
 それこそ二人の動きの相乗効果なのだ。
 もっとも、女が動きはじめるまで男が辛抱出来ればだが・・・・

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 いつもなら、美穂の上には*あの人*が覆いかぶさっていて、
長くてぶっとい肉棒が楔のように打ち込まれているはずだ。
 たとえ美穂が、どんなに激しくからだを波打たせたところで、
打ち込まれた肉棒が抜けはずれるはずはなく、がっちりと組み
敷かれた美穂が、その力にあらがってのたうちまわることで、
快感も肉棒の威力も加速度的に増加しているはずだ。

 ところがいまは、あるはずの抑えが効いていないのだ。
 せっかく美穂がのたうち廻っているのに横に座って出し入れ
しているだけだから、オモチャがすぐに抜け外れてしまう。

 何度かそれを繰り返しているうちにどうしようもなくなって、
彩香が美穂の上に後ろ向きに馬乗りになった。
 つまり、シックスナインの体勢になって、美穂の動きを抑え
ながら、オモチャを激しくつかいはじめた。

 ついに、美穂が泣きながら最後の出動を訴えはじめた。

「もうだめーっ。あなたぁ・・・・いってーっ、だしてーっ」

 だが所詮ツクリモノの悲しさ、そこまでの仕掛けはないから
美穂の願いはかなえられるわけがない。 
 しかしホンモノなら、美穂の願いはかなえられても、それで
ザ・エンドだが、ツクリモノだからザ・エンドはない。
 ついに美穂が意味不明のうめき声をあげはじめた。

「あっ、あっ、あうーっ、うっ、うっ、うぅーっ・・・・」

 一瞬、のたうちまわっていた美穂が硬直した。
 しかし、美穂が固まっていたのはほんのわずかのこと、美穂
から力が抜けてぐったりしてしまった。
 オモチャをソコからそおっと抜いて振り返った彩香の目には、
白目をむいて失神してしまった美穂の姿が・・・・
 彩香は、美穂に布団をかけて、張型を残して部屋に戻った。

        * * * * *

 翌朝、彩香がダイニングに行くと、美穂が朝食を並べている。

「おはようございます」
 少しばかり丁寧なあいさつをした彩香だ。

「あら、おはよう」 
「美穂さん、昨夜よく眠れました?」
「昨夜、彩香はどうしたのかしら?」
「え? わたし、やっぱり自分の部屋に戻って寝たわ」
「わたし、何も覚えていないのよ」
「美穂さん、すぐ寝ちゃったみたいだから」
「そうだった? でも、ベッドに変なモノが・・・・」
 そうつぶやいた美穂の顔に赤味がさした。
「変なモノ? 何のことかしら?」
「彩香は知らないのね。まぁ、いいわ」

 美穂は、ソレを彩香が残して行ったのは『パパが居ない時は
これで・・・・』という思いやりだと思ったようだ。



     第八章 成人祝い

 風呂からあがった彩香がめずらしく居間に顔を出した。
 それを見た美穂が*あの人*に話しかけた。

「あなた、彩香はもう二十歳なのよ」
「あ、そうか」
「ちゃんと、お祝いをしてあげないと」
「そうだな。彩香は何が欲しい? 海外旅行でも行くか?」
「わたし、飛行機はきらい!」
「それじゃ、どこにも行けないじゃないか」
「国内で十分よ。二年前に行った所でいいわ」
 そんなことは問題じゃないわ、という様子の彩香だ。
「あらぁ、彩香は欲がないのね」
「だって、美穂さんの居候だから、あまり贅沢は・・・・」
「お祝いはわたしが出すわけじゃないのよ」
「そうだよ。お祝いはわたしが出すんだぞ」
「パパと一緒ならいいし、また軽井沢にも行ってみたいし」
「彩香がそう言うんだから、あなた段取りしてあげないと」
「そうだなぁ・・・・じゃぁ、また行ってみるか」

 うわべではあまり気乗りしない様子の*あの人*も、美穂に
押し切られて、という感じで段取りを約束した。

「じゃ、お願いね。人生の一つの節目なんだから」
「ああ、わかった」
「それじゃ、わたし、お風呂に入ってくるわ」

 美穂がバスルームに向ったあと*あの人*が彩香に聞いた。

「それで、彩香はいつ頃が都合がいいんだ?」
「わたし、来週末あたりがいいわ」
「ずいぶん急な話だなぁ」
「だって、その頃が体調がいいの」
「ん? 体調のことなど聞いてないよ」
「でも、これって男と違って女には大事なことよ」
「ふーん、そうなのか?」
「だって、鬱陶しい時に旅行するなんて嫌だから」
「わかったよ。じゃ、その頃にするか」

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 前に泊まった旅館に落ち着いた父と娘はこの前と同じように
芸者を呼んでにぎやかに遊ぶことになった。

「あら、フ―さん、お久しぶりね」
「ん? それ、どっかで聞いたセリフだな」
「そうですよ。有名な歌の中のセリフですよ」
「まぁ、そんな詮索はいいが、たしかに二年ぶりだな」
「でも、今度もお嬢さんと一緒だなんてうらやましいわ」
「今度はわたしが父にせがんだんです」
「それで、今度はなんのお祝いですか」
「成人祝いなんです」
「まぁ、しっかりしてるわ。フーさんのお仕込みですか?」
「どうして、しっかりしてる、って言えるんだ?」
「あらぁフーさん、今どきの女の子の成人記念の旅行はどこに
誰と行くのか、ご存じないんですか?」
「そりゃ。いろいろだろ」
「たいていは、男の子と海外に行くんですよ。ね、お嬢さん」
「そうみたいですけど、わたし、男の子には興味がないの」
「まぁ、良妻賢母型ね。そこいらの女の子に、お嬢さんの爪の
垢でも煎じて飲ませてやりたいですわ」
「そりゃ、ちょっと褒めすぎじゃないか」
「わたし、褒めて頂いてうれしいわ」
「まぁ、話はそれぐらいにして、なにか聞かせてもらおうか」
「はーい、それでは・・・・」

 ひとしきり彩香のことで話がはずんだあと、三味線を爪弾き
ながら小唄を唄って聞かせた後、芸者たちがしっかり心付けを
貰って帰っていった。

        * * * * *

「もういちど風呂に入って寝るか。彩香はどうする?」
「パパはどうしたいの?」
「そんなことは判ってるだろ」
「パパが風呂に入りたいのは判るけど・・・・」
「しかし、ひとりで入るのもなぁ」
「つまり、パパは彩香と一緒に入りたいのね」
「まぁ、そういうことだ」
「わたしも、ひさしぶりにパパと一緒に入りたい」
「じゃ、そうするか。先に入ってるよ」
「ゆっくり入っていてね。カラスの行水はイヤよ」
「ああ、わかった。早くおいで」

 彩香にそう声をかけて*フーさん*は腰を上げた。
 いま交わされている会話の内容と雰囲気では、ふたりはどう
考えても父親と娘という間柄には見えない。
 まさにこれから、風呂の中で、またその後に甘美なひと時を
過ごそうとしている中年の男と若い愛人という感じだ。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 大学入学祝いの旅先で、彩香から求めたことだと言いながら、
ひとの倫に外れて、からだを繋いでしまったふたりだ。
 罪悪感から、その時は、からだを繋いだのはいちどだけだ。
 そして、その時のいちどで終っていたらともかく、それから
半年ぐらいのうちに、また同じことが繰り返されたのだ。
 その二度目に、父親であることをかなぐり捨てオトコになり
きった*フーさん*は、彩香のからだ中に執拗な愛撫を加えて、
さらには秘貝をしゃぶりつくしてもだえさせたあげく、肉棒を
挿し込み、二度もオトコのエキスを注ぎ込んで果てたのだ。
 この旅行を彩香の体調に合わせて決めた時から*フーさん*
がオトコに変身することは暗黙のうちに決まっていたことで、
いまになって念押しなど不要なのだ。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 遅れてバスルームに足を踏み入れた彩香のまぶしいばかりの
裸身を、オトコはひと言も発しないで見つめ続けた。

「パパ、どうしたの? どこか変なの?」
「いいや、彩香がとてもきれいだから・・・・」
「だったら・・・・どうして何もしてくれないの?」
「いや、いろんなことを考えてたんだ」
「いろんなこと? どういうことなの?」
「彩香とこんなことが出来るのは今度が最後だろうなと・・・・」
「彩香はこれから何度でもしたい」
「そういうわけにはいかないよ。これからはだれが彩香を磨き
上げて幸せにしてくれるだろうかと・・・・」
「・・・・・・・・」
「美穂と同じ歳には、どんないい女になってるかと・・・・」
「そんなこと、いま判らないわ」
「そうだな。すべては男しだいだからな」
「それじゃ。パパみたいないい人をさがさくては・・・・」
「大丈夫だ。彩香なら、いい男がきっと現れるよ」
「それだといいけど・・・・」

 そんな話の合間にも、オトコはソープを泡立てた掌を彩香の
胸元からお腹へ、さらに腰まわり、さらにはクレバスのあたり
まで、飽きることなくていねいにすべらせた。
 そこには、予期しないアクシデントから*自分の女*にして
しまった彩香への慈しみさえも感じられた。 

「それにしても・・・・」
「え? なあに?」
「あれから一年の間に、ずいぶん女らしくなったな」
「そうお? わかる?」
「わかるよ。恋人が出来たんだな」
「そんなんじゃないわ」
「ほんとうかな?」
「ほんとうよ」
「そうか・・・・その話は後にして、しっかり洗ってやろう」
「パパ、きれいに洗ってね」
 あまえるそぶりの彩香が、脚を開き、両手を上にあげた。
 小さい頃にいつもしていたように・・・・

「よーし、いい子だ・・・・」
 それが一段落して、ソープが洗い流されると彩香が動いた。
「今度はわたしの番よ」
「え? なにがだ?」
「わたしがパパのを洗ってあげるのよ」
「いいよ、自分で洗えるよ」
「ダメ! これから入れてもらうモノだからきれいに・・・・」

 オトコが腰を引いた時には・・・・
 すでに、ソレは彩香の両手で握り込まれてしまっていた。
 彩香の裸身に触発され、手からその大半がはみ出している。

「まぁ・・・・もう、こんなになってる」
 ていねいに洗い終えた彩香が、ソレを口に含もうとした。
「それはあとで・・・・」
 オトコはあわてて彩香の頭を抑えた。
「こんなに元気になってるのに、あとでなんて可哀そう」
「それじゃ、ここで入れてもいいか?」
「うん・・・・パパがそうしたいなら」
「ここでイッテしまってもいいのか?」
「あとでまたしてくれるんだったら・・・・」
「もちろんだよ」
「だったら、そうして・・・・」

 お尻を突き出し、壁に両手を付いて身構えた彩香・・・・
 迷うこともなく、彩香の後ろに回り込んだオトコ・・・・

 クレバスをさぐったオトコが、反り上がった肉棒を押し下げ、
ピーチのような割れ目にソレをあてがった。
 たくましい腕でつかまれた彩香のくびれた腰が引き寄せられ、
同時にオトコの腰が突き出された。
 その大半が姿を見せていた肉棒がピーチの割れ目に消えた。
 怒張したソレが一気にクレバスに沈んだのだ。
「ああぁーっ・・・・」
「おおーっ、いい・・・・」
 二つの声が絡み合ったあと、オトコの腰が前後しはじめた。
 だが、オトコの動きは数えるほどだった。
「ああーっ、だすぞーっ」
 彩香が身構える間もない、あっという間のことだ。
 オトコのお尻の震えが止むと、オトコからつぶやきが・・・・
「ひとりで先にイッテしまったな」
「パパ、よかったのね。あれがものすごーい勢いで・・・・」
「そうだろうな」

 からだを繋がれたままでからだをひねって振り向いた彩香の
バギナに最後の一滴まで絞り出して、オトコが繋ぎを解いた。
 からだを起そうとした彩香が押し止められ、シャワーが降り
注ぐ中、オトコの中指がなんどもクレバスを出し入れした。
 自分が注ぎ込んだエキスを掻き出そうという動きは、やはり
一抹の不安があるせいかもしれない。
 その間、されるがっままの彩香の腰が揺れ続けた。

        * * * * *

 浴室での余韻に浸るのに、煌々とした灯りはそぐわない。
 ほの暗い中で、彩香のからだに手を這わせながら・・・・
 オトコが思い切った様子で口を開いた。

「最近、付き合っているカレがいるんじゃないか?」
「どうして?」
「一年前よりずいぶん女らしくなったからね」
「そんなこと、どうして判るの?」
「美穂を十七の時からずーっと見ているんだからね」
「それ『入れてみてる』の間違いでしょ」
「まぁ、そう言えばそうだな」
「女のからだって、そんなに変わるものなの?」
「彩香を産んでから二十歳を過ぎる頃までは、外見もそうだが、
アレを入れた時の感じが毎日のように変わっていったよ」
「ええっ、毎日のように?」
「彩香が生まれた後、三人で一緒に暮らしてたからね」
「じゃ、美穂さんに毎日コレを?」
「まぁ、そういうことだな」
「パパも元気だったのね」
「そうだな、まだ若かったからな」

 ちょっとした沈黙の時が過ぎて・・・・

「パパは初めての時の彩香のこと、覚えてる?」
「あの時のことは一生忘れることはないよ」
「どんな感じだったの?」
「あの時の感触や感激は身震いするようだった」
「そうだったのね」
「それに、彩香の涙は絶対忘れないよ」
「それで、あの時、迷いはなかった?」
「コレを入れてやると決めたら、なかったよ」
「そのあとは?」
「後悔の気持が湧いたのは、すべて終わった後だ」
「アレを中に出したから?」
「それよりも、コレを彩香の中に挿し込んだことだよ」
「そのあとや今度のことは?」
「もう後悔などしていないよ」

 それを聞いた彩香は安心した様子でオトコの胸に顔をよせた。

「それで・・・・彩香はどうなんだ?」
「彩香も絶対忘れない。パパの何もかも大好きだから」
「そうか、何もかも・・・・か」
「なかでも、コレが一番かな」
「こいつ・・・・」
 オトコは、手を下に伸ばした彩香のおでこを指で突いた。
「だって、本当なんだもの」
 オトコにしがみついた彩香がソレを握り込んだ。
「それで、彩香の話はどうなんだ?」
「え? なんのこと?」
「彩香の恋人のことだよ」
「パパは本当にいると思ってるの?」
「そう言われると返事に困るが・・・・」
「いたら、パパとこういうことしてないと思うわ」
「それはそうかもしれないなぁ」

 しばらくの沈黙の後、彩香がつぶやいた。

「でも、最近まで一年ぐらいお付き合いした人が・・・・」
「ということは、いまは?」
「九州へ帰ってしまったの」
「遠距離恋愛というわけなのか?」
「そうじゃないの」
「どういうわけなんだ?」
「その人、奥さんがいる、大学病院のお医者さんなの」
「どうしてそんな男と付き合い始めたんだ?」
「アルバイトでコンパニオンした時に出会って、妻とは別れる
つもりだから、付合ってほしいと・・・・」
「それで・・・・その男に抱かれたのか?」
「パパに似て好きなタイプだったから、三度目に」

 一瞬、オトコの顔がゆがんだように見えた。

「だが、妻を捨てられる男は相手が変わっても同じだよ」
「そういうものなの?」
「間違いなくそうだ。それで、その男はどうなんだ?」
「その人、福岡の病院の娘と結婚した婿養子だったの」
「結局、離婚できなかったというわけか?」
「二か月前に奥さんに知られて九州の病院に戻されたの」
「それで、彩香は後悔してないのか?」
「会えるのは月に二回ぐらいだったけれど・・・・いつもホテルで
逢って、そこで別れて・・・・でも、とても優しくしてくれたから
後悔はしてないわ」
「・・・・・・・・」
「パパ、もっとくわしく聞きたくないの?」
「もう済んだことだろ」
「済んだこと、後悔しても仕方がないでしょ」
「そうか、彩香も成長したんだな」
 それからしばらく、沈黙の時がつづいた。

「わたしのことより、パパたちのことをもっと聞きたい」
「どんなことを聞きたいんだ」
「美穂さんの声を録音したことがあるんだって?」
「そんなこと、美穂が言ったのか? どうしてそんな話に?」
「はじめて『美穂さんの声が聞こえたよ』と言った時いろいろ
あって『あの人が録音した声を聞かせてくれた』と言ったの」
「ああ、あれのことか。あれはビデオに撮って見せたんだ」
「ええっ、ビデオに撮ったの?」
「そうだよ。だいぶ前だけどね」
「だいぶ前って、いつごろなの?」
「たしか美穂が三十歳になった記念に撮ったんだ」
「どうしてそれを撮りたかったの?」
「その頃から、美穂の感度がすごく良くなったからだよ」
「そう言うものなの?」
「そう。昔から『三十させごろ、四十しごろ』というからね」
「それじゃ、いまの美穂さんは『させごろ』なのね」
「そういうことだな」
「それで、その時、カメラマンを雇って撮ったの?」
「まさか・・・・アダルトビデオじゃあるまいし」
「それじゃぁ、どうしたの?」
「固定カメラを二台置いて、二つの方向から撮ったんだ」
「あ、そういうことなのね」
「まぁ、アレが出入りしている処をアップで、というわけには
いかないけど、全体の雰囲気はよく判るよ」
「その時、美穂さんはカメラを意識しなかったの?」
「はじめはそれを心配したけど、あとで観たら心配なかった」
「パパがしっかり可愛がってあげたからなのね」
「そうかもしれないな」
「ねぇパパ、そのビデオ観たい。どこに置いてるの?」
「そりゃ、美穂の所にきまってるだろ」
「それ、いまあるかしら?」
「美穂が大切に持ってるはずだよ」
「どこにあるのかしら?」
「すこし前に一緒に見たから、寝室のビデオデッキにあるだろ」
「じゃ、美穂さんに頼んで見せてもらおうかな」
「さぁ、いくら彩香の頼みでもね。なぜそれが見たいんだ?」
「いつも声を聞かされてるから、パパがどんなふうに美穂さん
を攻めて、美穂さんがどうなってあんな声を出すのか・・・・」
「だれに似たのか、彩香も好きだなぁ」
「それは、とうぜんパパと美穂さんに似たのよ」
「そうか。だったら、美穂の留守中に内緒で観るしかないな」

        * * * * *

「あらぁ、パパ、すっかり元気になってる」
「彩香が触りまくってるからだよ」
「パパもさわって!」
「よーし、もういちどオトコに変身するけど、いいか?」
「つよーいオトコに変身して、美穂さんみたいにして!」
「いろいろしてやるけど、泣いても知らないよ」
「いぱい泣かして!」
 しばらく考えている様子のオトコが起き上がった。
「パパ、どうするの?」
「それはすぐに判るよ」

 オトコは隅にある大きな鏡台を布団の横に持ちだしてくると、
引き抜いた鏡を横にして台座に持たせかけた。
 そこではじめて、布団に横になって、彩香を抱き寄せた。
「どうだ。少しは見えるだろ」
「パパ、いろんなことを知ってるのね」
「若いころ、こうやって美穂と愉しんだからね」
「美穂さんもよく見てたの?」
「美穂が見てるのは初めのうちだけで、コレを入れてやったら
鏡どころじゃなくなったよ」
「・・・・・・・・」
「ん? 彩香も感じ始めたのか?」
「うん・・・・だって・・・・」
「彩香は立派なオンナになったからね」

 オトコが、話しかけながらクレバスの周りを丹念に愛撫する
様子を鏡の中に捉えているうちに、彩香に火か点いたようだ。

「そろそろ舐めてやろうか?」
「うん・・・・」
「よーし、悲鳴を上げても知らないぞ」
「いっぱい悲鳴を上げさせて!」
「わかった。今夜は容赦はしないからな」
「わたし、その方がいい」
「よし、わかった。まずよく調べてからだ」
「どこを調べるの?」
「そんなこと判ってるだろ」
「そうなのね。わかってることなのね」

 迎える姿勢になった彩香の秘貝にオトコの顔が近づいた。
 開かれたクレバスの頂きにある蕾をオトコの舌がなでた。
 なんの躊躇いもなくそれが出来るようになったということは、
オトコの心の中では、そこにいるのが娘の彩香ではなく愛人の
彩香に代わってしまったということにほかならない。
 もちろん、そのことで彩香が激しく燃え上がることを知って
しまったからでもあるのだが・・・・

「ここに肉棒を挿し込んでいたのはどんな男だ?」
 それは彩香に言ってるというより呟きなのだ。
「・・・・・・・・」
「あの時よりもずいぶん熟しているのはそのせいだな」
「ねぇ・・・・そんなことより・・・・」
 揺れた腰は、早く舐めてほしいシグナルだ。
「あふーっ・・・・」
「こんな風にしてもらってたのか?」
「ああーっ・・・・」
「どうなんだ? よく見えてるか?」
「うん・・・・」
「もうイキそうなのか?」
「うん・・・・」
「もっと続けてほしいのか?」
「うん・・・・」
「もう入れてほしいのか?」
「うん・・・・」
「もうイッチしまうのか?・・・・」
「うん・・・・」
「もっとはっきり返事をしないと判らないじゃないか」
「うん・・・・」
「しようがない彩香だな」
「だってぇ・・・・」

 そんな戯れを含んだクンニが続くうちに、彩香のあえぎ声が
断続的なものから連続的なものに変わった。
 それでも、切迫して連続したあえぎ声を背景にしてときどき
クンニを中断したオトコの声が断続してながれる。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 生きものはすべて、子孫を残すための力、つまり性欲を獲得
してきたが、人間は子孫を残すためだけでなく性欲そのものを
時期を選ばず満足させる能力を獲得した稀有の存在だ。
 男が、己のモノを相手に挿し込んで弾けることで性欲を満足
させるのは、子孫を残すという力を残しているからだ。
 性欲をまず満たしたいと考えるのか、それとも性欲を楽しみ
たいと考えるかで、その時の振る舞いは変わるものだ。
 相手のことなど考えず、自分さえ良ければという男は前者と
言うことになるだろうが、こういう男が殆んどかもしれない。
 だが、ていねいな前戯を『はやくぅ・・・・いれてーっ』という
言葉が出るまでしんぼう強く続けられる男は後者ということに
なるだろうが、こういう男がいない訳ではない。
 そういう男は、その辛抱が、得られる互いの快感が何倍にも
なることで報われることを知っているのだ。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 彩香の腰が揺れはじめたのを見て、オトコは動きを変えた。
 クレバスに貼り付いていた顔がソコから離れた。
 それからは・・・・
 クレバスの上の可愛い突起に息を吹きかける・・・・
 クレバスを指で軽く拡げ入口のあたりを指先で撫でる・・・・
 小さな突起を指先ではじく・・・・
 突き出した舌先で小さな突起の頂きや周りを撫でる・・・・

 そんな一連の動きは単純な繰り返しに見えてそうではない。
 彩香のあえぎ声が高まり腰が揺れ始めれば緩め、おさまって
くれば強めるという具合に緩急自在なのだ。
 彩香は、絶え間なくあえぎ声を洩らし、小さな突起を舌先で
はじかれるたびにぴくぴくっとからだを震わせる。
 そんな一連の動きの中、オトコはひと言も発しない。
 彩香のあえぎ声に耳を澄まし、小さな突起やその周りだけで
なく、からだのすべての動きを見守っているようだ。

 これからカラダを繋ぎ合って究極の愉悦を目指している男と
女にとっては、オトコのそんな振る舞いは似つかわしくない。
 もちろんオトコの心の中には、男としては当然のことだが、
目のくらむ愉悦をはやく手に入れたいという想いはあるだろう。
 しかしオトコには、彩香に、女にはもっと素晴らしい境地が
あることを教えてやりたい、という想いが強いに違いない。
 さっき『もう一度オトコに変身するけどいいか?』と彩香に
声をかけたオトコだが、やはりというべきか当然というべきか、
いま目の前であえいでいるのが実の娘だということを忘れては
いないようだ。

 オトコの心の内を知ってか知らずか、我慢が出来なくなって
音を上げたのは彩香の方だ。
 ゆるやかな峰々を彷徨うことに飽き足らなくなったようだ。

「いじわるぅー・・・・パパのいじわるぅ」
「ん? どうしてほしいんだ?」

 彩香の願いなど百も承知のオトコの見え透いた問いかけだ。
 言葉もなく、腰を揺らすだけの彩香のクレバスに、ふたたび
オトコの顔がぴったりと張り付いた。
 そればかりなく、張り付いた顔が上下左右にはげしく動いた。
 ぴちゃぴちゃという音、ラブジュースをすする音が鳴った。
 あっという間に彩香のあえぎ声が急を告げ、腰が揺れた。
 そしてついに・・・・
「パパ、おねがーぃ・・・・パパ、入れてーっ」
 彩香が初めてオトコにもらした*あからさまな言葉*だ。
 この一年あまりの彩香の成長の証に、オトコが動いた。

「よーし、欲しいモノを入れてやるぞ」
 もはや、オトコの動きに迷いも無駄もない。
 突き立てられた肉棒がぐぐーっとクレバスに消えた。
「あふーっ・・・・」
「どうだ、いいか?」
「とってもいい気持ち・・・・」

 欲しいモノが手に入って、彩香に落ち着きが出てきたようだ。

「パパのいじわるぅ」
「ん? なんのことだ?」
「はやくこうしてくれないんだもの」
「出来るだけ長くいい気持ちになっていてほしいからだ」
「だってぇ・・・・」
「どうだ、横を向いてみないか?」
「意地悪したから・・・・もういい」
「そんなことを言わずに、さぁ・・・・」
 すねたように見上げる彩香の顔をそーっと鏡の方にむけると、
オトコはゆっくりと腰を遣いはじめた。
「何度でもイケる女もいるけど、彩香は一度イッタら、あとは
入れてやるしかないだろうと思ったからだ」

 彩香から言葉が消えて、ふたたびあえぎ声を洩らし始めた。
 それでも、視線を鏡に当てたままで、とぎれとぎれな言葉を
あえぎ声の中にはさみ込ませた。

「パパの腰が素敵だよう・・・・ああ、いいのよう・・・・いつも美穂
さんにこうしてるのね・・・・ああぁ、奥まではいってるぅ・・・・
入ってる処を見たいよぅ・・・・とってもいい気持ちだよぅ・・・・」
 オトコには、彩香の高まりが限界に近いとわかったはずだ。
 もちろんそのことは、彩香がもらす言葉だけではないはずで、
おそらく肉棒が感じとっている肉襞のうごめきからもだ。

「そんなに見たいか?」
「なにが?」
 彩香は、薄目を開けてオトコを見上げた。
「アレがアソコに入っている処だよ」
「みたい!」
「そうか。それじゃぁ・・・・」
 彩香が肉棒が挿し込まれたままで抱き起こされた。
 さらに、彩香の腰がオトコの太もの上に引き揚げられた。

「これだったら、しっかり見えるだろ」
「うん、みえるよう」
 彩香が両腕を後ろに廻してからだを支えると、彩香の可愛い
腰を大きな手で両側からがしっと掴んで前後にゆり動かした。
「あぁ・・・・いいのよう」
「彩香、しっかり鏡も見るんだ!」
 オトコに励まされ、彩香の顔は、快感にのけぞり、繋がって
いるところに向けられ、そして鏡を向いたりと動いた。
 しかし、そんな動きもながくは続かなかった。
 両手をうしろについて仰け反っているだけになったのだ。
 そんな姿はオトコに、彩香の高まりはもはや限界、いよいよ
止めを刺してやる時だ、と知らせているのだ。

 それでも、言葉でそれを確かめたいのが男と言うものだ。
「彩香、そろそろイキそうか?」
 焦点の定まらない目をオトコに向け、彩香がうなづいた。
 オトコは、からだを繋いだままで、彩香の背中に腕を廻して
そっと横たえた。
 彩香の両脚が抱えあげられ、折り曲げられ、彩香のカラダの
すべてがオトコの懐の中にすっぽりと抱え込まれた。
「大丈夫か? 苦しくないか?」
 彩香は薄目を開けてオトコを見上げ、すぐに目を閉じた。
 さぁ、いつでも来て! というシグナルだ。
「最後までいっきにゆくぞ」
 オトコの念押しに頷いたのを見て、彩香の腰をはさみつけて
いたオトコの両脚が後ろに伸びた。
 彩香の上で、オトコが腕立て伏せの姿勢を取ったのだ。
 肉棒が抜け外れるほど引き上げられた腰がゆっくり沈んだ。
「あうーっ・・・・」
「いたいのか?」
「ううん・・・・」

 彩香の顔がヨコに振られたのを確かめると、オトコが動いた。
 初めはゆっくり大きなストロークで動いていたオトコの腰が
しだいにスピードを上げはじめた。
 彩香が洩らす、悲鳴にも似たあえぎ声が泣き声に変わっても、
オトコはひと言も発しないで動き続けた。
 彩香の顔にしっかり視線を当てたまま・・・・
 彩香の泣き声とオトコの荒い息づかいがコラボレートする中、
彩香の泣き声に叫び声が混じりはじめた。

「あっ、ああーっ・・・・いや、いやあーっ・・・・もうだめーっ・・・・
いっちゃうよーっ・・・・パパ、ゆるしてーっ・・・・」
 最後の叫びがオトコの大砲の引き金を引いたのかもしれない。

「彩香! 鏡を見るんだ! 彩香! 目を開けるんだ!」
 もはや言葉を返すことも出来ずに、ただ口をパクパクさせて
いるだけの彩香をさらに肉棒の突きが襲う。

 ついに・・・・オトコが最後のゴー・サインを出した。
「彩香! いまだ! イクんだ!」
 オトコの腰が彩香の腰の上で二、三度バウンドして止まった。
 押しつけられた腰が秘奥を肉棒でえぐるように動いた。
「うぐーっ・・・・」
「おおっ、しまるーっ」

 これこそ、ふたりがようやく掴んだ禁じられた愉悦の極致だ。
 オトコが繋ぎを解いたのはだいぶ後、肉棒が抜き取られる時、
彩香の腰が浮いて、すべて抜けると彩香がふるえた。
「そのまま動かないで!」
 起き上がろうとした彩香を抑えたオトコが、彩香の腰を持ち
上げて、その下にバスタオルを敷いた。
 そこに彩香の腰が下りると、クレバスからオトコの粘っこい
エキスがじわーと湧き出て、いつまでも続いた。
 その様子を見つめるオトコからつぶやき場もれた。
 ・・・・一度に出ない処は、締りのいい美穂と同じだ

        * * * * *

「彩香、最後のところは見えたか?」
「パパの腰が跳ねるのが見えたけど、気が遠くなって・・・」
「そうだろうね。最後はアソコがぎゅっと締まって・・・・」
「それで・・・・どうしたの?」
「抜こうと腰を上げたら彩香の腰もついて上がった」
「でも、男のアレってすぐ柔らかくなるんでしょ」
「彩香みたいに根元を締め付けられると柔らかくならない」
「美穂さんも?」
「美穂は、入口もだが、中の方もなんだ」
「そうすとどうなるの?」
「入れておくと、柔らかくならず、また元気を取り戻すんだ」
「あ、判ったわ。それでなのね」
「え? なんのことだ?」
「はじめのが終って一時間もしないうちに美穂さんの声が・・・・」

 彩香の言葉をさえぎるように、オトコが彩香を抱き寄せた。
「そろそろ寝ようか。彩香は隣に移るか?」
「いや! パパと一緒に寝ていたい」
「じゃぁ、せまいけど、そうするか」

 せまい布団の中で、ふたりはひと言もなく抱き合っていた。
 やがて軽い寝息を洩らしはじめた彩香を見てオトコが動くと、
寝息がやんで無意識のうちにかオトコにしがみついた。
 そんなことが何度かくり返された後、オトコは、深い眠りに
落ちた彩香を残して部屋をあとにした。



     第九章 三十歳記念ビデオ

 成人記念旅行から帰った後、彩香にいつもの毎日が過ぎた。
 まもなく、週の初めから美穂の顔が紅潮しはじめた。
 そんな美穂を横眼で見ながら、彩香は心の中でつぶやいた。
 ・・・・この週末は、この前に父が来てから四週間目だわ
 ・・・・あの様子だと、週末あたりが高まりのピークかな
 ・・・・そろそろパパが来てもいい頃だけど
 ・・・・美穂さんが何も言わないから、来ないのかも
 ・・・・もし来たら、パパはどんな顔をするかしら?

 ところが、いつもなら美穂がうれしそうに、週末にあの人が
来るのよ、と教えてくれるのに、週末になっても話はないし、
心なしか落胆の気配も見える。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 夕食の後片付けをしている美穂の背中に彩香が話しかけた。

「そろそろ、パパが来てもいい頃ね」
「あの人なら、来週末あたりに来るみたい」
「そうなの? 美穂さん、ちょっと残念だわね」
 意味ありげな言い方に、背を向けたまま美穂が切り返した。
「それ、彩香がでしょ」
「そうよ。この前の旅行から会ってないから。それに・・・・」

 いつもなら彩香の謎かけにぱっと反応するのに無言のまま
というのは、心の中に屈託を抱えているからだろう。
 しかたなく彩香は、ずばり切り込んだ。

「美穂さんのアノ声が聞けないのが残念だわ」
「まぁ、彩香ったら、大人をからかったりして・・・・」
「わたし、子どもじゃないし、ほんとのことだもの」
「・・・・・・・・」
「美穂さんだって同じでしょ」
「同じって、なにが?」
「美穂さんだって、今日あたり会いたかったんでしょ」
「それほどでもないけど・・・・」
「そうお? でも寂しそうだから」
「それはそうよ」

 平静を装っている美穂もとうとう本音をもらした。

「わたし話が出来ればいいけど、美穂さんは別よね」
「いいえ、わたしも話が出来たら、それで満足よ」
「それじゃぁ、パパも美穂さんも可哀そう」
「あら、どうして?」
「だって・・・・この間、パパが面白いことを言ってたわよ」
「え? どんなこと?」
「三十させごろ、四十しごろ、と言う言葉かあるって」
「あらぁ、おかしな言い方があるのね」
「だから、美穂さんは*させごろ*で*しごろ*だって・・・・」
「まぁ、そんなことを・・・・」
「だから、ツキイチぐらいじゃ足らないはずよ」
「まぁ・・・・」
「このごろ、わたしもそういうことがすこしずつ・・・・」
「ええっ、彩香もいいひとが出来たのね」
「ええ、まあ・・・・」
「そのカレとどれぐらい付合ってるの?」
「どれぐらいって、セックスのこと?」
「ええ、それもあるわね」
「まぁ・・・・ツキイチぐらいかな」
「そんなカレだったら、いちど連れて来たら?」
「ええ、考えておくわ」

 あいまいな返事を返した彩香が時計を見上げた。

「あらぁ、もう十一時だわ」
 美穂をからかうつもりたった彩香だが、いつの間にか自分の
方に火の粉が飛んできたので、話を変えたかったようだ。
「え? もうそんな時間?」
 思わず壁の時計を見上げた美穂に追い打ちがかかる。
「いつもなら、もうパパにアレを挿し込まれている頃かな」
「彩香、おかしなこと言わないで!」
「いいや、パパがあっという間に弾けた頃かも・・・・」
「・・・・・・・・」
「そう言えばパパが『美穂はイッタ時にアソコが締まって抜け
なくて、そのままでいると中で元気になる』と言ってたわ」
「もう・・・・そんなことまで?」
「だから、また始まっている頃かも・・・・」

 こういう話は、ダイニングでは相応しくないかもしれないが、
美穂が背を向けているので、彩香も話しやすかったのだ。
 ただ、顔を合わせていたら取り繕えることでも、背を向けて
いるだけに、美穂の揺れ動く心のうちは、むしろ面と向かって
いないだけに隠しようがない、とも言えた。
 実のところ、彩香に『今ごろは、もうパパにアレを挿し込ま
れている頃じゃない?』と言われた時には、腰がぎゅっと引き
締まったように見えた。

        * * * * *

 言いたいことを言った彩香は、すっきりした気持ちで自分の
部屋に引き上げた。
 そろそろ寝ようかと彩香がベッドに入った時、風呂あがりの
美穂が廊下から小さな声をかけてきた。
「彩香、もう寝た?」
「???」
 返事をしようと思った時には足音が去っていった。
 いつもはこんな声をかけてきたことがなかったから、彩香の
返事が一瞬遅れたのだ。

 ・・・・あんなことを言ったので、眠れなくなったのかな?
 彩香が眠りに落ちようとした時、かすかに声が聞こえてきた。
・・・・あの声はなんろう? もしかして・・・・
 彩香がドアをそっと開けると、たしかにあの時の美穂の声だ。
・・・・なんだろう? パパはいないはずなのに
・・・・もしかして*大人のおもちゃ*で一人エッチを?
・・・・でも、声の調子が変だわ

思いきりのいい彩香は廊下に出て居間のドアを開けていた。
そして、寝室のドアを軽くノックした。

「美穂さん、まだ起きてる?」
「あ、待って! 開けちゃだめ!」
 ちょっと間をおいて、うろたえた美穂の返事が返ってきた。
 そう言われたら開けたくなるのが天の邪鬼の真骨頂だ。
「美穂さん、開けるわよ」
 次の瞬間には、ドアが半分ほど空いていた。
 美穂が*あの人*と一緒に居ないことが判っているからだ。

 ところが、ベッドの上の美穂は・・・・
 あわてた様子で座りなおしたものの、ネグリジェの裾がめく
り上がったままのしどけない姿だ。
 そして、布団の下になにかを押し込んだようだ。
 それにもかかわらず、女のあえぎ声がなおも続いている。
「いい声ね。わたしにも聞かせて!」
 彩香は、美穂がテープを聞いているのかと思ったようだ。
 ところが、一歩足を踏み入れた彩香の視線の先のテレビ画面
には男女が絡み合う姿が移っている。
「あらぁ、美穂さん、エッチビデオを見てたんだ」
「ダメ! 見ちゃだめ! だめよう!」
 狼狽している美穂をしり目に、ちゃっかりベッドの端に腰を
おろしてしまった彩香だ。
 ・・・・あ、これが三十歳記念ビデオなんだ
 ・・・・さっきの話で我慢が出来なくなって一人で・・・・
「あらぁ、これ、パパと美穂さんじゃないの。すごーい!」
「だめよう! だめよう! だめよう!」

 哀願しながら、視線をあちこちに送り、手を布団の下に差し
入れて何かを探している様子はすでにパニック状態だ。
 ほんとうは、美穂が探しているビデオのリモコンはベッドの
横に落ちているのに気が付いた彩香がさりげなく脚でベッドの
下に押し込んでいたから見つかるわけがないのだ。 
 ビデを止める方法ならいくらでもあるはずなのに、隠された
リモコンを探しまわっている美穂の狼狽もここにきわまれりと
いう感じだが、ここに至っては無駄なことだ。
 もし美穂が強引に止めても彩香が諦めるはずがないからだ。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 テレビは容赦なく映像を映し続けた。

 股に首を突っ込まれ腰をがっしり抱えられた美穂が、執拗な
クンニを受けてあえいでいる。
 どういうシグナルか判らないが、美穂の右手の指が、自分の
腰を抱えている腕をしきりにさすっている。
 ただ、あえぎ声が高まるのに合わせて指の動きが早まるのを
みると、無意識のうちにも自分の高まりを伝えようとしている
のかもしれない。
 時が過ぎてついに・・・・
 両手や上半身を激しく動かし、時に手を口元に当てた。
 無意識のうちに、声を抑えようとしているのかもしれない。
 とうとう『もうだめーっ』と叫んで上りつめてしまった。
 クンニから解放されて懐に抱かれたが、乳首のあたりを愛撫
されるたびに、からだ全体を震わせた。
 手は怒張した肉棒を握ったまま・・・・。
 乳首のあたりにつよい快感ポイントがあるようだ。

 二人の間に『コレが欲しいか?』『ほしい』『上にのるか?』
という言葉が交わされた後、美穂がまたがろうとしたそこには
長大な肉棒が屹立していた。
「すごーい! パパのアレ、あんなに大きいんだ!」
 彩香は大袈裟に驚いて見せた。
「でしょ。この前、そう教えたでしょ」
 美穂はようやく腹をくくって落ちついたようだ。
「でも、話だけでは・・・・あんなにすごいと思わなかったわ」

 そうしているうちに、美穂がそれを掴むと、からだを傾けて
クレバスに収めにかかったが、すんなりとはいかない。
 宙に目を泳がせながら、腰を前後に揺らせながら、なんとか
それを収めきって、ふーっ、と大きな息を吐いた。

「あんな大きいのをぜんぶ食べたら、どんな感じなの?」
「どんな感じ、って・・・・」
「いちばん奥まで届いてるんでしょ」
「いちばん奥にじわーっと当たってるわ」
「そんなに奥まで入れられて痛くないの?」
「気持ちいい感じよ」
「そうなんだ・・・・」

 下から乳首を摘まれるたびにからだを震わせ、腰をクネクネ
動かしてていた美穂が、とうとう突っ伏してしまった。
 そこそこの頂きに達したようだ。

「美穂さんの腰の動かし方、見ていてそそられるわぁ」
「そうお?」
「パパに教わったのね」
「おそわったというのか・・・・いろいろ試しているうちに」
「そうなんだ」
「あの人、これがたまらない、って・・・・」

 突っ伏していた美穂が起き上がって繋ぎを解いた。
 美穂のラブジュースに濡れた肉棒がそそり立った。

「まぁ、さっきよりも先っぽが膨らんだみたい」
「そうなのよ。奥をこすっているうちにああなるんですって」
「パパが言うのね」
「そうなの。あの人、面白いことを教えてくれたわ」
「え? どんなこと?」
「交尾した犬のオスは先っぽがぐっと膨らんで、人が水を掛け
てもなにをしても、しばらくは抜けないですって」
「じゃぁ、パパのは犬さん並みなのね」
「大昔は、人間の世界も略奪婚だったから、確実に子孫を残す
ためにそうなっていた名残かも知れない、って言ってたわ」
「だから、美穂さんに締め付けられて抜けなくなるのね」
 横たえられた美穂のクレバスに先の膨らんだ肉棒が合わされ、
腰がぐいッと引き寄せられ、美穂が仰け反った。
 しばらく抽挿が続いた後、美穂の両脚が抱えあげられ、折り
まげられて、とどめの動きに入った。
 最後に大きな叫び声を上げた美穂だが、上からかぶさられた
ままでしばらく時が過ぎた。

 繋ぎを解かれても、美穂は大の字になったままだ。
 画面が揺れて、繋ぎが解かれた処がアップで映し出された。
 固定していたカメラが即席のカメラマンの手でとりはずされ、
さっきまで肉棒を受け止めている処に向けられたのだ。
 クレバスからいつまでも湧き続ける、白く濁ったねばっこい
液体はオトコのパワーの強さの裏返しかもしれない。

 刺激的なビデオの映像はそこで終った。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 大きな息を吐いた彩香が、感に堪えないようにつぶやいた。

「パパってエッチね。こんな処をアップで写したりして」
「あの人は『これが男の醍醐味なんだ』っていうのよ」
「これが、ってなにが?」
「自分が出したモノが出てくるのを見ることよ」
「パパはいつも中に出してるの?」
「ええ、そうよ」
「だったら、赤ちゃんが出来ないの?」
「それはちゃんと・・・・」
「そうなんだ。でも、これ二度目なのね」
「えいいえ、これは最初のよ。なぜ?」
「だって、アレが少ないみたいだから・・・・」
「わたし、すぐには出てこないの。あとからじわーっと」
「そうなんだ」
「後で動いてる時に出るから、パットが欠かせないのよ」

        * * * * *

 いつの間にかベッドに上がって美穂と並んで見ていた彩香だ。

「美穂さん、このビデオ、いつごろ撮ったの?」
「ちょうど三十歳の時、記念にと、あの人が・・・・」
「ちょうど十年近く前なのね」
「そうよ」
「美穂さんは少しも変わってないけど、パパはどうなの?」
「どうって、なにが?」
「パワーが弱くなったのかどうかと言うことよ」
「いいえ、あの人、すこしも変わってないわ」
「アレの勢いも?」
「そうよ。いまでも先っぽが膨らんでるわ」
「そうよね。今でもあんなに泣かせているんだものね」
「それに、あの人、最近はテクニックが・・・・」
「え? どういうこと?」
「さんざんイカせておきながら、なかなか入れてくれないの」
「美穂さん、意地悪されてるのね」

 しばらく沈黙の時が過ぎて・・・・

「パパのがあんな凄いモノだったら、あの時・・・・」
「え?」
「わたし、一度でいいから入れてもらえば良かった」
「なにを言ってるの、彩香。あの時っていつなの?」
「入学記念旅行の時よ」
「ああ、あのときね」
「冗談を言って叱られたけど、もっと迫れば良かった」
「まぁ、あきれた子・・・・」
「一度でいいから、って頼んだら、入れてくれたかも・・・・」
「まさか・・・・お父さんですよ」
「父と娘だって、男と女に変わりはないから、パパのアレさえ
元気になったら出来るでしょ」
「それはそうかもしれないけど・・・・」
「だったら、赤ちゃんさえ作らなかったら・・・・」
「彩香ったら・・・・もう、よして!」
「もしかして、パパだって入れてみたかったのかも・・・・」
「そんなはずはないわ」
「そうよね。パパは美穂さんに首ったけだから」

 しんそこあきれたという様子でカラダを逸らせた美穂だ。
 その隙を突いて、彩香に手がネグリジェの裾を分けた。

「あ、美穂さんのココ、ぐちゅぐちゅだ」
「だって、あんなビデオを見たから・・・・」
「あらぁ、美穂さんが初めに見てたのよ」
「・・・・・・・・」
「美穂さん、今日あたりパパが欲しかったんでしょ」
 言葉には出さないが、美穂の顔がはっきりタテに動いた。
「それじゃ、わたしが代わりにしてあげる」
「そんなぁ・・・・彩香に出来るわけないでしょ」
「出来るか出来ないか、やってみなければ判らないでしょ」

 ちょっとためらいの表情を見せる美穂にはかまわず、彩香が
布団が膨らんでいる所をおさえた。
「あ、ここにあったわ」
「えっ、なにが?」
「コレよ。さっき美穂さんが使ってたんでしょ」

 彩香の手が布団の下から*おもちゃ*を引張り出した。
 そこまで見通されてしまっていたら、いくら娘だと言っても、
美穂には彩香をたしなめることはもちろん、逆らうことさえも
出来るはずがない。

「さぁ、ネグリジェなど脱ぎましょうね」
 裾を掴んでひきあげる彩香の言うがまま、両手を上げてネグ
リジェが剥ぎ取られるのを助ける美穂だ。
「ちょっと横になってもらえる?」
 言われる通りに横になった美穂の横で、自分もネグリジェを
脱ぎ捨てると、美穂のクレバスに手を這わせた。
「これだったら、すぐでもいいわね」

 ひとり言のように言うと、美穂に後ろ向きに馬乗りになって
シックスナインの形になった。
 そうでもして押さえつけておかないと、快感にもだえまくる
美穂に跳ね飛ばされることは、この前に経験ずみなのだ。

「パパと同じモノが入るよ」
 声をかけられ、彩香の顔の下で美穂の脚が淫らに開いた。
「こんなモノがちゃんと入るのかしら」
「・・・・・・・・」
「でも、パパのあんな太いものが入るのだから・・・・」
 判っていながら、わざとらしくつぶやいて見せる彩香だ。
 充血して開いたクレバスに張型がつきたてられた。
「あうううーっ
「どう? いい気持ち?」

 それから先、この前と同じような時が過ぎて、美穂はついに
失神してしまった。

        * * * * *

 美穂が失神から覚めたのはしばらくしてからだ。
 その時、彩香が違うビデオを映しはじめていた。

「それはダメ! だめよーっ」
 失神から覚めたばかりの美穂の声は物憂げだが、さっきとは
違って悲鳴に近かった。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 画面に映し出されている女は、明らかに最近の美穂だ。
 だが、美穂に重なって激しく腰を遣っている男は間違いなく
二十歳になるかならないかという若い男なのだ。
 もちろん、彩香が知らない男だ。
 その舞台も、ここのベッドではなく、どこかシティホテルの
ベッドのようだが、あえいでいる美穂の顔、美穂にかさなって
はげしく腰をつかっている男の下半身、さらに肉棒が挿し込ま
れている美穂のクレバス・・・・
 カメラはさまざまなところを舐めるように這い回っているが、
カメラワークをみれば、撮影しているのは素人のようだ。
 あっという間に弾けてしまった若い男が美穂からはなれると、
カメラマンになにか言われて、美穂がしぼみかけた肉棒を口に
含んでファラチオを始めた。
 それはあっという間に美穂の口の中で勢いを取り戻した。
 美穂に、それを秘貝にみちびかれて、若い男はふたたび動き
はじめたが、やはりいくらも持たずに弾けてしまった。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 ビデオテープを片付けている美穂に彩香が話しかけた。

「カメラを廻しているのはパパなのね」
「そうなの」
 美穂は観念したようで、つぶやくように答えた。
「でも、パパはなぜこんなことを?」
「あの人『美穂がおれしか知らないのは可哀そうだ』と・・・・」
「それで、男はパパが探して来たの?」
「そうなの。間違いなく童貞でモチモノに自信がある、という
条件で探して来たらしいの」
「それがあの男なのね」
「そうなの。あの人が、何人かの中から選んだ大学生なの」
「じゃ、二十歳ぐらいなんだ」
「いいえ、入学したばかりらしいの」

 ちょっとの間、彩香は黙り込んでいたが・・・・

「若いけど、モチモノはそれほど大きくはなかったみたい」
「そうなの。あの人みたいな手ごたえはなかったわ」
「それにあっという間にイッタみたいね」
「そうなのよ。三度とも・・・・」
「ええっ、三度も?」
「はじめに、あの人との二度目を観賞してもらったの」
「まぁ・・・・パパと美穂さんのエッチを見せたのね」
「そしたら、顔を真っ赤にして興奮していて・・・・」
「童貞だったら当たり前よ」
「あの人が離れたあとすぐベッドに上がって貰ったら、アソコ
に入れる前に弾けてしまって・・・・」
「パパと美穂さんのを見たら誰だってそうなるわ」
「あとはさっき見た通りよ」
「それで、美穂さん、いい気持ちになれたの?」
「いいえ・・・・でも、その後にあの人が入れてくれて・・・・」
「その方がずっと良かったのね。またしてみたい?」
「一度だけで、もうたくさん・・・・」



     第十章 告 白

「あなた、今日はお出かけじゃないでしょ」
「ああ、ここでゆっくりするつもりだ」
 ナイトガウン姿の*あの人*が言葉を返した。
「それじゃ、お店はチーフに頼んで早く帰りますから、夕食は
みんなで外で食べましょうね」
「ああ、たまにはそれもいいか」
「それじゃ彩香、後を頼むわね」
「わかったわ。三時ごろ帰るのね」
「そのつもりよ。遅くなるようなら電話するわ」
「じゃ、そうしてね。行ってらっしゃい」

        * * * * *

「パパ、コーヒーはもういらない?」
「そうだな、もう一杯貰おうか」
「じゃ、すぐいれてあげるから、待っててね」
「ああ、ありがとう」
「お礼を言うのはわたしの方よ」
 彩香が思わせぶりな視線を*あの人*に向けた。
「ん? どうしてだ?」
「いつも入れてもらってるのはわたしの方だから」
「なんだ、そのことか」
 腑に落ちた顔をした*あの人*が、少し考えるような表情を
見せてからつぶやいた。
「そう言えば、あれからだいぶ経つな」

 コーヒーを持って来た彩香が悪戯っぽい顔を向けた。

「パパ、この間、美穂さんにアレを見せてもらったわ」
「アレを? なんのことだ?」
「アレよ。美穂さんの三十歳記念ビデオよ」
「ほんとに美穂が見せてくれたのか?」
「もちろんよ。美穂さんと一緒に観たのよ」
「そうか。どういう風の吹きまわしかなぁ」
「じつはね・・・・パパが急に来れなくなった時のことよ」
「それが、どうしたんだ?」
「夜中に奥から美穂さんのアノ声が聞こえてきたの」
「わたしが居ないのにか?」
「それで部屋を覗いたら美穂さんがひとりでアレを・・・・」
「だったら、美穂はあわてただろうね」
「でも、すぐあきらめて、一緒に見せてくれたの」
「彩香に見つかったら、美穂も仕方がなかったのだろう」
「でも、あの頃のパパって、すごく元気だったのね」
「そりゃ、だいぶ前だからね」
「だいぶ前って、まだ十年にもならないじゃない」
「そうだよ。彩香が中学に入る頃だったからね」
「青筋が浮き上がって、先がぐーっと膨らんでいて・・・・」
「そんなにはっきり見えたのか?」
「あら、美穂さんにしゃぶらせていたじゃない」
「そうだったかなぁ」
「それも、わざわざカメラの前に来てね」
「そんなシーンもあったかなぁ」

 視線を宙に送ったオトコに、彩香が言葉を継いだ。

「あれだったら、若い頃はもっと元気だったの?」
「まぁな」
「そんなにすごいの、ちゃんと美穂さんに入ったのかしら?」
「だから彩香が出来たんだよ」
「それはそうだけど・・・・美穂さんは驚いたでしょうね」
「そうでもなかったみたいだ」
「あら、どうして?」
「男のモノを見たのも触ったのも初めてみたいだからね」
「そうね。まだ十七だったんだものね」
「そうだったかなぁ」
「美穂さん、男のモノってそういうものだと思ったのね」
「たぶんね。ほかの男のモノを知らないんだから」
「美穂さん、自分から言い出したの?」
「そうだよ。好きなあなたにあげる・・・・と言ってね」
「そうなんだ」
「だけど、初めての夜はとても出来なかったよ」
「あらぁ、パパでも元気にならなかったの?」
「そうじゃないよ。元気すぎたんだ」
「ん? どういうこと?」
「若い時だから、もうカチンカチンに固かったんだ」
「だったら、簡単に入れられたでしょ」
「いや、美穂のアソコが小さすぎて壊れそうだったからね」
「そうだったのね。それでどうしたの?」
「二日ほどは、抱いてやっていただけだ」
「パパ、入れたいのに我慢してたのね」
「本気で入れようとしたのは三日目だけど、それでも痛がって
どうにもならなかった」
「・・・・・・・・」
「ぜんぶ入れられたのはそれから三日経ってからだ」
「そんなにかかったの?」
「すこしずつ慣れさせるしかなかったんだ」
「それ、なんとなく判るような・・・・」
「中まで入れてやった時は、大きな声で泣いたよ」
「彩香に似て美穂さんも小柄だから、わかるわ」
「それは逆だろ。彩香が美穂に似たんだよ」
「それもそうね」

 しばらく、言おうか言うまいか考えていた彩香が思いきった
ように口を開いた。

「あ、それから、ほかにもあったわよ」
「ん? なにが?」
「パパと美穂さんのじゃないのが・・・・」
「ええっ、美穂があれも見せたのか?」
「いいえ、わたし、もう一本あるでしょ、って探したの」
「そうか。彩香もアレを観たんだな?」
「そうよ。でも、あれって最近のことみたいね」
「ん? どうしてだ?」
「だって、写ってるの最近の美穂さんだから」
「そうか・・・・半年ぐらい前だよ」
「パパって、ああいう趣味もあったのね」
「うーん・・・・趣味って言うわけではないんだが・・・・」
「若い男が美穂さんにアレを入れてるの、パパが撮ったのね」
「もちろん、そうだけど・・・・」
「パパ、平気だったの? どうしてあんなことを?」
「うーん・・・・」

 迷っているような雰囲気に、彩香が引いてみせた。
「言いにくいことだったらいいわよ」
「もう見られたら隠しても・・・・最近、ちょっと・・・・」
「ちょっと? どうしたの?」
「美穂としようと思っても、ちょっと元気が出ないんだ」
「あらぁ、パパもトシなのかしら?」
「まだ六十前だから、老けこむ歳でもないはずなんだが」
「そうよね。パパ、いつも元気だったじゃない」
「そうなんだが・・・・」
「男の人って、急にそうなるものなの?」
「急かどうかは別にして、歳とともに弱くなるよ」

 そうつぶやいたオトコの表情は何とも言えないほど複雑だ。

「美穂にアレを入れる時になると、勢いがなくなるんだ」
「昨夜、静かだったのはそのせいなのね」
「そうなんだ。どうしてもできなかった」
「たまにしか来ないのに、どうしてなの?」
「どうして、と聞かれても・・・・」
「もしかして、美穂さんがイヤがるとか・・・・」
「いいや、美穂はものすごくほしがるんだけど・・・・」
「そんなことってあるものなの?」
「そういうことは、最近までは無かったんだが・・・・」
「不思議ねぇ。なにか心当たりはないの?」
「心当たり、というわけではないが・・・・」

 複雑な顔で、しかも奥歯にモノがはさまったような言い方に
彩香が怪訝そうな顔を向けたのは当然だ。
 ただ、どんな原因があるかなど、本人にはある程度わかって
いても、他人には、ことに女の彩香に判る筈がないのだ。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 美穂はまだ四十歳前の旬の女だと言っても、いくら帝王切開
で彩香を産んだと言っても、十七歳の時から二十年以上もの間、
ひと並み外れた肉棒を、挿し込まれ続けてきたのだ。
 若いころよりソコが緩んでくるということがあるだろう。
 なのに、オトコがそれに倦むことがなかったのは、もともと
オトコが褒めるほどの締りがいいことに加えて、一緒に住んで
いるわけではなく、からだを結び合うのもたかだか月に一度か
二度だということによるものだろう。
 一方、五十六歳の男が縁もゆかりもない若い女に肉棒を挿し
込むことなどありふれた話で、その時の男の感想は、たかだか
バギナに新鮮さを感じるぐらいで終るに違いない。
 それが十八歳を過ぎたばかりの彩香に肉棒を挿し込んだのだ。
 一度ならまだしも、半年、一年と間を置いて三度もからだを
結び合ったのだから、縁もゆかりもない若い女にはない、目も
眩むような愉悦を感じたに違いない。
 オトコにとっては、美穂は二十年あまり付き合っている愛人、
彩香はその美穂にうませた実の娘なのだ。
 オトコがつかんだ目の眩むような愉悦は、彩香との交わりが
禁じられたものであることによるもので、ソコの締りが母親に
似ているかどうかとは別の話だろう。
 だが、そうならそれでなおさらのことだろう。
 そんなオトコが、彩香の実の母で自分の愛人でもある美穂と
平静な気持でカラダを結び合えるものだろうか。
 もしそれが出来たとしても、彩香とカラダを結び合った時の
愉悦に比べたら段違いだと気がついてもおかしくはない。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「やはりトシのせいなのかしら」
 男心の機微がわからない彩香が、そう思うのは当然だ。
 彩香にそう言われ。オトコが言葉を絞り出した。
「そうじゃないんだ。美穂にアレを入れようとする時になると、
どういうわけか彩香の顔やアソコが目に浮かんでくるんだ」
「まぁ・・・・」
「それで、アレの勢いがスーッと消えてなくなるんだ」
「それで、ああいうことを試してみたのね」
「あれを観たあとなら出来るんじゃないかと・・・・」
「そうだったのね。それでどうだったの?」
「なにが?」
「効き目はあったの?」
「ああ、あの時だけはね」

 そう打ち明けられ、すべてを察した彩香がからだを寄せた。

「可哀そうなパパ・・・・みんな彩香のせいなのね」
「彩香のせいじゃないよ。自業自得だよ」
「だって、彩香がパパを・・・・」
「いいや、彩香にアレを挿し込んだのはわたしなんだ」
「パパがそうするように仕向けたのは彩香なのよ」
「そうだとしても・・・・」
「パパ、そんなに自分を責めないで!」

 押し問答のあと、二人の間に沈黙の時が流れて・・・・

「ほんとうに元気が出ないのかしら?」
 そうつぶやいた彩香の手が、ナイトガウンの合わせ目をかき
分けて股間に挿し込まれた。
 聞かれるはずの、それを抑えるオトコの言葉はない。
 ところが、彩香の手が挿し込まれてまもなく・・・・

「ううっ・・・・」
「あらぁ、パパ、元気になったじゃない」
「そうみたいだ」
「パパ、これからオトコになってみない?」
「そうなっても、彩香はかまわないのか?」
「いいわ。パパが元気になってくれるなら」
「ほんとうにいいのか?」
「ほんとうにいいのよ。パパ、彩香の部屋に行きましょ」

        * * * * *

 素早く裸になった彩香が、ベッドに上がってオトコを誘った。

「パパ、元気なうちに早く来て!」
「わかった」
 ガウンを脱ぎ捨てたオトコもベッドに上がった。
 彩香の両脚の間に膝をついたオトコの股間に、いつもと同じ
ように怒張した肉棒がそそり立っていた。
 ニンジンを目の前にぶら下げられた馬というより、発情した
牝馬の前に引き出された種馬みたいに・・・・
 それが彩香の手に握り込まれた。

「すごーい! パパ、とても元気じゃないの」 
「今日は大丈夫なんだな?」
「大丈夫よ、そのまま来て!」
「そうか、ほんとにいいんだな」
「いいから、早く入れて!」

 美穂は避妊処置済みなのだから、いくら心配だと言われても
ここにスキンなどあるわけがないのだ。
 さらに悪いことには、いつにない興奮状態にある肉棒だから、
彩香の中に挿し込まれただけで弾けてしまいかねないのだ。
 だからと言って、何もしないで済ませられるはずもないから、
オトコは彩香の言葉を信じて前に進むしかないのだ。

 彩香に促されて、オトコがクレバスを探った。
 話の成り行きでオトコを誘った彩香だが、ソコがこれまでの
ように潤っていないことははっきりしている。
 だからと言って、オトコにいつものような余裕はない。
 オトコがたっぷり唾液を塗りつけた肉棒をホールに合わせた。
 と見るや、いつものような合図もなく腰が押し出された。
 クンニなどをしていたら、ソレを挿し込む時になって萎えて
しまうのを恐れているような焦りが見て取れる慌ただしさだ。
 薄い表皮をめくりあげて、肉棒のすべてが収まった。
「あうーっ・・・・」
 何度か受け入れたことがあるとは言っても、人並みはずれた
肉棒を入念なクンニもなく挿し込まれたのだ。
 その衝撃がいつもと違うのはあたりのことだ。
 だがオトコから洩れたのは彩香へのいたわりの言葉ではない。

「入った!」
「入ってるぅ・・・・パパ、しっかり入ってるよぅ」
「そうか、奥まで入ってるか?」
「うん、奥に当たって突き上げてるぅ」
「そうか・・・・動いてもいいか?」
「いいのよ、しっかり動いて!」
「わかった。それだったら・・・・」

 彩香の返事のあと、それはあっという間のことだ。
 激しく動いていたオトコの腰が、彩香に押しつけられたまま
動きを止めてしまった。
 肉棒を引き抜いて外に出そう、という動きはまったくない。

「おおーっ、だすぞーっ!」
「ああぁーっ・・・・」
 ぴくついていたオトコのお尻の震えが止んだ。
「パパの、いっぱい出たよ」
「昨夜、美穂としなかったからな」
「だったら、美穂さんより先に頂いちゃったのね」

 しばらく時が過ぎて、彩香の耳元にオトコがささやいた。

「シャワーを浴びてからもう一度いいか?」
「大丈夫? 出来そうなの?」
「彩香となら何度でも出来そうだよ」
 彩香はオトコの胸元に顔を寄せてつぶやいた。
「よかった・・・・うれしい・・・・」
「それじゃぁ、いいんだな?」
「パパが出来るんだったらいいわ。彩香も欲しいから・・・・」
「たぶん、もっと出来ると思うよ」

        * * * * *

 バスタブの中で彩香に握り込まれ、口に含まれているうちに、
勢いを失っていた肉棒もさっきの勢いを取り戻していた。

「パパ、ここで美穂さんとする時はどうするの?」 
「やっぱり、後ろからだなぁ」
「彩香にもして!」
「よーし、それじゃ・・・・」
「でも、この前みたいにすぐイカナイでね」
「わかった。ちょっと入れてみるだけだ」

 お尻を突き出した彩香の後ろにオトコが廻り込んだ。
 指先で割れ目を探ったオトコが、勢いをいっぱい飲み込んで
膨れ上がった肉棒をクレバスに突き刺した。

「ああーっ、変な感じ・・・・」
 彩香のからだが大きく仰け反った。
「後ろからの入れ具合も美穂と同じだ」
「どんな具合におなじなの?」
「うーん・・・・それは・・・・」

 オトコが口ごもったのは、彩香を傷つけまいとしてではなく、
それを言葉で言い表せなかったからだろう。
 ソコに肉棒を突っ込んだ感じなど曖昧模糊としたものだ。
 オトコの動きがしだいに忙しくなった。
 すぐにもイッテしまいそうな様子に、彩香が振り向いた。
「パパ、ここでいっちゃうの?」
「いや、この続きは向こうで・・・・」
「わたしも、その方がいい」

        * * * * *

 バスルームを出ると、裸のままの彩香が、ガウンに手を伸ば
したオトコにつぶやいた。

「パパ、すぐ裸になるのに・・・・」
「彩香も裸のままなのか?」
「そうよ。すぐにさっきの続きをするんでしょ」
「もちろんそのつもりだ」
「だったらそのままで・・・・とってもすてきよ」
「そうかなぁ。だいぶ歳だからな」
「そんなことはないわ。なにもかもすてきよ」
「ほんとうか?」
「ほんとうよ。ソレ、とっても元気じゃない」

 それもそのはず、ついさっきまで彩香の秘貝に収まっていた
肉棒は股間に立ちあがったままなのだ。

 だが、彩香の部屋に向かうはずの彩香が電話を取り上げた。

「ん? どこへ電話をするんだ?」
「もちろん、美穂さんのところよ」
「どうして電話なんか? まさか・・・・」
「これからパパと仲良くします、なんて言えないでしょ」
「そんなこと、あたり前だろ」
「美穂さんの予定を聞いてみるのよ」
「それ、美穂が出かける時に言ってたじゃないか」      
「でも、ちょうどいい時に美穂さんが帰って来たら困るでしょ。
これからのパパはしつこいから・・・・」
「うーん・・・・」

        * * * * *

 ベッドに横になっているオトコの傍に彩香が戻ってきた。

「どうだった?」
「少し遅くなるので、六時にいつもの店で会おう、って」
「そうか、それなら、まだたっぷり時間があるな」
「あ、それから『あの人はどうしている?』って」
「それで、どう返事したんだ?」
「昨夜の疲れで、お昼寝をしてるみたい、と言っておいたわ」
「そうか・・・・」
「そのあと、美穂さん、なんと言ったと思う?」
「わからないな。なんて言ったんだ?」
「ゆっくり休ませておいてね、だって」
「ふーん・・・・」
「だから、わたし『今晩のためなのね』と言ったの」
「・・・・・・・・」
「そしたら美穂さん、『もちろん、そうよ』だって・・・・」
「そんなにはっきりと言ったのか?」
「そうよ。パパ、どうする?」
「どうするって、なにがだ?」
「向こうでゆっくりやすむの? それとも・・・・」
「決まってるだろ。このままじゃやすめないよ」
「そうなのね。彩香と仲良くしたいのね」
「もちろんだよ」
「だったら、彩香、お願いがあるの」
「なんだ。なにか欲しいものでもあるのか」
「欲しいものというか・・・・ここにビデオカメラあるの?」
「ビデオカメラ? そんなものはもうないよ」
「それじゃあきらめるしかないわ」
「そんなものがほしいのか? こんど買えばいいだろ」
「いま欲しかったの」
「え? どうするつもりなんだ?」
「パパに攻められてるところを撮りたかったの」
「彩香、本気でそう思ってるのか?」
「ええ、本気よ」
「そんなもの、残せるわけはないだろ」

        * * * * *

 たとえ、彩香に積極的に迎え入れるそぶりがあったとしても、
それに歯止めをかけなければならないのはオトコの方だ。、
 だが、これまで三度にわたり、それについさっきも、彩香に
肉棒を挿し込んでオトコのエキスを注ぎ込んだ快感はしっかり
脳裏に刻み込まれているのだ。
 これは、理性の領域ではなく本能の領域なのだ。
 ここに至って、もはやオトコに理性による抑制を求めるのは
ことは不可能なことに違いない。
 それはいわば木に登って魚を捕る、の類いのことなのだ。

「パパ、まだまだ元気じゃない」
「そうだね。浴室ではイッテないからな」
「じゃ、元気なうちにもういちど入れたい?」
「もちろん入れたいが、彩香はかまわないのか?」
「え? なにが?」
「アソコを舐めてやらなくてもいいのか?」
「舐めてほしいけど・・・・先にほしい」
「そうか。さっきのではもの足らないんだな」
「だってぇ・・・・」
「わかった、先にコレがほしいんだな」
「だって、パパのコレ、とても元気なんだもの」
「元気すぎて、すぐにイッテしまうかもしれないよ」
「さっきイッタんだから、すぐにはイカないでしょ」
「たぶんな」
「ちょっとだけ入れてから舐めて!」
「それだったら・・・・」

 起き上がったオトコを彩香は脚を大きく開いて迎えた。
 反り返った肉棒が押し下げられてホールに合わされた。
 彩香に重なったオトコの腰が前に進み、さっきバスルームで
慣らし運転済みの秘貝にすべてスムーズに収まった。

「どうだ、奥まで当たってるか?」
「当たってるよ。ぜんぶ入ってるの?」
「まだ残ってる。ぜんぶ入れてもいいか?」
「じゃぁ、静かに入れてみて」
「よし、わかった」

 彩香の顔を覗き込みながら、オトコが脚を横に拡げた。
 彩香の脚が拡げられ、畳み込まれて、ソコが密着した。

「ああーっ・・・・」
「痛いか?」
「ううん・・・・いい気持ちよ」
「すこし動いてもいいか?」 
「あ、そのままじっとしていて! そのままがいい」

 上から覗きこむオトコ、下から見上げる彩香・・・・
 彩香の求めにもかかわらず、激しくはないが、オトコの腰が
ゆっくりしゃくり上げるように秘奥を突いている。
 ソノ一点で繋がって、オトコの腰がしゃくり上げている・・・・
 それは間違いなく愉悦の境地を目指している男と女の姿だ。
 彩香を見つめていたオトコが、急にからだを重ねた。
 彩香の首の下に腕を廻してぎゅっと抱きしめると、いままで
よりも激しく腰をしゃくり上げはじめた。

「パパ、急にどうしたのよう!」
 彩香の悲鳴のような声に、オトコは動きを止めた。
 そればかりか、彩香を胸の中にしっかり抱え込んだ。
「もうダメだ! やめられない!」
「なにがどうしたの?」
「この前で終りにしようと思っていたが、また・・・・」
 オトコの顔には愉悦と苦悩がないまぜになっている。
「彩香のココが良すぎる。忘れられないんだ」
「パパは後悔してるの?」
「してないと言ったらウソになるが・・・・彩香は?」
「わたし、後悔なんかしてないわ」
「そうか・・・・」
「大好きなパパだし、パパとだと気持ちいいし・・・・」
「ただ、いつまでも続けるわけにはいかないのだ」
「どうして? 彩香はいつまでもこうしていたい」
「しかし、間違って彩香を妊娠させたら大変だからな」
「じゃ、赤ちゃんが出来ないよう気を付ければいいのね」
「うーん・・・・」
「わたし、美穂さんみたいに手術を受けてもいいわ」
「そういうわけにもいかないだろ」
「それじゃ、彩香が大丈夫な時にパパが来ればいいわ」

 彩香への返事に代え、オトコは愛おしげに、彩香の額の生え
ぎわを指先でそっと撫でた。
 言葉には出さなくても、彩香の提案を受け入れた証だ。
 受け入れられた証に、彩香はからだを震わせて応えた。

「あぁ・・・・すごーい。中でアレがぐーっと膨らんだわ」
「いいゃ、彩香のアソコがぎゅっと締まったからだ」
「ねぇ、もういちどしてみて!」
「こうか?」
「あぁーっ」
「なんか、いい気持ちになってきたよ」
「パパ、いっちゃダメよ! いちど抜いて、よーく見せて」
「わかった」

 言われる通り、オトコは肉棒を抜いて横になった。

「すごーい・・・・青筋が浮いてるわ」
 彩香が先っぽを口に含んだ。
「ちょっとだけだよ。でないと、イッテしまう」
「じゃ、今度は彩香が上に乗ってみたい」
「そんなことも、彩香は誰かに教わったのか?」
「いくらパパでも、それはヒ・ミ・ツ・・・・」
「わかった。だけど、最後のとどめはわたしだよ」

 彩香がオトコの上にいた時間はあっという間のことだ。
 下から突き上げを喰って、たまらずオトコの上に突っ伏して
しまって、あとは大きな息を吐き続けるだけだ。
 それからの時間はオトコの出番だ。
 からだ中に愛撫を加え、秘貝をしゃぶって、しっかり彩香を
慈しんでから、最後はうったえに応えて自慢の肉棒を打ち込み、
彩香を狂わせた。
 そして自分も、彩香の秘貝を味わいつくして果てた。

 愉悦の時が過ぎて・・・・
「パパ、とても元気だったじゃないの」
「それでもなぁ・・・・」
「大丈夫よ。美穂さんにアレを入れる時に、彩香を思い出せば
大丈夫に違いないわ」
「うーん・・・・だが、今夜はもういいよ」
「それはダメよ! せっかく美穂さんが楽しみにしていたのに、
昨夜は出来なかったんだから・・・・」

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 三人一緒の食事から帰って・・・・
 お風呂からまっすぐ部屋にると、彩香はベッドに残る淫靡な
残り香を深く吸い込みながらつぶやいた。
 ・・・・明日はこの残り香を追い出しておかないと
 ・・・・美穂さんにきずかれたら困っちゃう

 しばらくして、奥の寝室から、しばらく聞いていない美穂の
泣き声が聞こえはじめ、いつになったら終るだろう、と思える
ほど長く続く泣き声に誘われ、彩香はそっと廊下に踏み出した。
 そして、居間に続くドアをすこしだけ開けた彩香の耳にはっ
きりした二人の声が・・・・

いいのよ~ いれて~ はやくぅ~ してあげる・・・・
 今日は大丈夫だ! いれるぞ~っ!
 はやくぅ・・・・はやくきてーっ!
 よーし、いれてやるぞーっ!
 あう~っ・・・・いいのよ~っ

 ・・・・今夜はだいじょうみたい
 ・・・・パパ、ちゃんと美穂さんに入れられたんだ
 彩香がつぶやいて間もなく、激しいひと時が過ぎて・・・・

 いいのよ~っ、きて~っ
 まだ、まだ~っ
 おねが~ぃ
 だすぞ~っ
 あっ、ああぁ~っ  お~っ締まる~っ
 いつもの流れるような叫びのあとに静寂がおとずれたたのを、
彩香は複雑な思いでとらえていた。



     第十一章 さらなる深みへ

 #♭#♭#♭・・・・
 学生食堂に向かっている彩香の携帯の着メロが鳴った。

「はい、彩香。パパ、いまどこ?」
「東京駅の近くだ」
「それで、お仕事は済んだの?」
「ああ、大急ぎで片付けたよ」
「それじゃ、もう帰っちゃうの?」
「ああ、今日は寄らないが、あわてて帰ることもない」
「それじゃ、どうするの?」
「そうだなあ。彩香の午後の予定はどうなんだ?」
「大事な授業が休講になったので、皆とどこかに・・・・」
「そうか。どうだ、食事を一緒にするか?」
「うれしい。ぜったいその方がいい」
「じゃ、品川で会おう。何時なら来れるかな?」
「品川なら、一時までには行けるわ」
「わかった。じゃ、品川プリンス本館のロビーにしよう」
「うん、わかった。これからすぐ行く」

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 レストランのテーブルにつくと、彩香の方が先に聞いた。

「パパ、変わりなかった?」
「わたしの方が聞きたいよ。彩香こそどうだったんだ?」
「美穂さんから聞いてない? わたし元気にしてたわよ」
「勉強の方も、真面目にやってるのか?」
「もちろんよ。パパのお仕事のほうは?」
「もちろん、順調だ。なにも問題はない」
「そういえば、パパと食事をするのは一か月ぶりね」
「そうか。もうそんなになるかな」
「あら、それだけ?」
「それだけ? ってどういうことだ?」
「まぁ・・・・パパは忘れてるのね」
 そう言うと、彩香はまわりを見回した。
 周りに客が居ないのを確かめると、それでもからだを乗り
出して、さらに声をひそめた。

「ちょうど、パパがオトコになってもいい時なのよ」
「なんだ、そういうことか」
「あら、パパはうれしくなさそうね」
「それはあたり前だろ。父親なんだから」
「それって、たてまえで言ってるのね」
「たてまえとかじゃなくて・・・・」
「でも、パパはそのつもりで電話をくれたんでしょ」
「うーん・・・・そうじゃないと言えばウソになるかな」

 つい本音が出てしまった、という感じのオトコの言い方だが、
その表情は、すっかり父からオトコに変わっていた。
 さりげなく装っているが、彩香を見つめるまなざしは複雑だ。
 おそらく、眩しそうな眼差しの奥には、つい一ヶ月前に見た
彩香の裸身がうずまいているに違いない。
 たしかに上京した父が娘を食事に誘うのはあたり前のことだ。
 しかし、それに引っかけて、自分から娘をホテルに誘うこと
など出来るはずもないからだ。
 だから、彩香に図星を指されて、しかもさりげなくそちらに
話を持っていった彩香に、むしろほっとした思いだろう。
 
「でしょ。だったら、食事が済んだら・・・・」
「それじゃぁ、ここでゆっくりして帰るか」
「あら、ゆっくりするだけ?」
「そんなこと決まってるだろ」
「どう決まってるの?」
「そんなこと、ここで言えるわけはないだろ」
「そうね。それじゃ、このあとは?」
「部屋が取れたら先にチェックインして連絡する」
「わかったわ。そしたらすぐ上がって行くからね」

        * * * * *

 部屋に招きいれられ、彩香はオトコの懐に飛び込んだ。

「パパ、この間はどうして来なかったの?」
「ああ、いろいろ用事が重なってね」
「ほんとう? 美穂さん、がっかりしてたわ」
「そうかね」
「ほんとは美穂さんと出来る自信がなかったんでしょ」
「いや、そういうわけではないよ」
「でも、たまには来てくれないと美穂さんが可哀そう」
「そうだが、そうたびたび東京に泊まるわけには・・・・」
「あら、パパも向こうの皆に気を使ってるのね」
「それは、美穂や彩香のためでもあるんだ」
「でも、月に一度や二度はかまわないんでしょ」
「まぁ、仕事にひっかければな」
「だったら、そうしたらいいのに」
 オトコはちょっと視線を宙に泳がせてからつぶやいた。
「彩香には辛い思いをさせてしまったからな」
「でも、わたしは慣れっこになってるから・・・・」
「うーん・・・・」

 重苦しい雰囲気をはらうように彩香が周りを見回した。

「パパ、ここ素敵な部屋ね」
「まぁ、いちおう一流ホテルだからね」
「このソファの座り心地がよさそう」
 彩香が勢いを付けて座った横にオトコも座った。
「そうだね。高さもクッションもちょうどいい」
「え? なんのこと?」
「いや、座り心地がいいということだよ」
「そうね」
「さぁ、シャワーをあびてゆっくりしようか」
「わたしもそうしたい。パパ、脱がしてくれる?」
「わかった。昔みたいに裸にしてやるよ」
「おねがい。そうして!」
「うーん・・・・でも、ちょっとみょうな気分だな」
「もう子供じゃないから?」
 オトコの返事を待たず、彩香が両腕をひろげた。

 洋服からパンティまで、ひとつずつ彩香からていねいに剥ぎ
取られてゆく間、オトコに言われるまま、彩香の両手や両脚が
片方ずつ上げ下げされる。
 それで簡単に済むはずなのに、オトコがあちらこちら廻り道
をするため、彩香がすっぽんぽんになるのには時間がかかった。

        * * * * *

「おおっ、いちだんとオンナらしくなったな」
「あらぁ、あれからまだ一ヶ月しか経ってないのよ」
「いや、彩香ぐらいの頃はどんどん変わるものだよ」
「もしかしてパパが入れてくれたアレのせい?」
「それもあるかもしれないな」
「きっとそうよ。たくさん入れてもらったから」」
「そうか。彩香がいい見本というわけか」
「それにいい気持ちだったし」
「うーん・・・・」

 父親としてならそれを認めたくないだろうし、オトコとして
なら認めたいというのが正直なところかもしれない。

「パパもこんなに元気になってる! すぐに出来そう!」
「それはそうだが、彩香の方かどうかな?」
「だったら、パパが確かめてみて!」
「よーし、確かめてやろう」

 シャワーを受け止めながら彩香が両脚を開いた。
 すかさずその狭間に伸びたオトコの手がクレバスを探った。

「ん? 彩香も大丈夫みたいだ」
「だってぇ・・・・さっきあちこち触るんだもの」
「彩香もだんだん感度が良くなってきたな」
「あら、そうなの?」
「そうだよ。ちょっと触っただけで濡れるんだから」
「でも、みんなそうなんじゃないの?」
「いいや、いくら触っても濡れない女もいるよ」
「そうなんだ」
「そういう女を、世間では*不感症の女*というよ」
「そういう女の人って、多いの?」
「まぁ、そんなことはいいからベッドに行こう」
「じゃ、連れてって!」
「わかった。抱いていってやるよ」

 オトコは彩香を軽がると抱きあげてベッドルームに運んだ。

        * * * * *

 後からベッドに上がったオトコが彩香を抱き寄せた。

「さぁ、アソコを舐めてやろうかな」
「それよりも、先にアレを・・・・」
「ん? すぐにか?」
「そうよ。パパもそうしたいんでしょ」
「それはそうだが・・・・」
「パパ、九時ぐらいまで大丈夫なんでしょ」
「そうだけど、彩香はどうなんだ?」
「美穂さんには合コンで遅くなると電話しておくわ」
「そんなに遅くても良ければ、初めはかるく・・・・」
 今日は二回戦を戦わせられるかな、というオトコの気持ちは、
すぐに彩香にも伝わったようだ。
「そうして! 入れてもらってお話しがしたいの」
「わかった。じゃ、まず入れてやろう」

 男がすぐに彩香の両脚の間で身がまえた。
 さっきレストランで、彩香が『オトコになってもいい時』と
言ったのは、もちろんナマでいい、中に出してもいい、という
ことだから、それを信じているオトコに迷いはない。
 拡げられた彩香の両脚の間に居場所を定めたオトコが、怒張
した肉棒をつかんでクレバスに沿って滑らせると、頂点にある
突起に先っぽを擦りつけた。
「ああーっ・・・・」
 ため息と同時に、彩香のからだがふるえた。
「まだいれてないよ」
「だってぇ・・・・なんかぴりっとしたの」 
「もう濡れてるみたいだから入れるよ」
「いい・・・・きて!」

 頭を持ち上げて見上げる彩香に目を合わせながら、オトコが
肉棒をホールに合わせて、腰を一気に前に進めた。

「あふーっ・・・・」
「どうだ、いい気持ちか?」
「いい・・・・パパはどうなの?」
「ひさしぶりの彩香だから、いいに決まってるだろ」
「まだ一ヶ月しか経ってないのに・・・・」
「それはそうだが・・・・」

 この一ヶ月が待ち遠しかった・・・・
 それがオトコの本心に違いないが、それが娘に言うことでは
ないと判っているのだ。
 その思いを振り払うように彩香をのぞき込んだ。

「うごいてもいいか?」
「もうすこし待って!」
「どうしたんだ?」
「しばらくこのままでいたいの」
「そうか。このままでいいのか?」
「はじめは静かな方が気持ちがいいの」
「そうだね。初めからガンガン動いちゃいけないな」
「うん・・・・さっきの続きを聞かせて」
「さっきのつづき? 何だったかな?」
「不感症の女の人がどれぐらいいるかということよ」
「そんな言葉があるのだから、たぶん多いだろうな」
「パパの経験だと、どれぐらいなの?」
「そんなに経験が多いわけではないよ」
「あらそうなの? 美穂さんが言ってたわよ」
「なんて言ってたんだ?」
「美穂さんと会う前はずいぶん遊んでたみたいだと・・・・」
「それだったら当ってるかな」
「パパってずいぶん遊んでたのね」
「親父は愛人が三人いたけど、わたしは美穂だけだよ」
「まぁ、開き直るのね」

 彩香に問い詰められてひるんだオトコがつづけた。
「そんなわけじゃないが、まぁ五十人ぐらいかな」
「ええっ、そんなに?」
「もっと多い男だっているはずだよ」
「ほんとうかしら?」
「だって*千人切り*なんて言う言葉もあるからね」
「まぁ・・・・」
「私の経験では、半分ぐらいは不感症だね」
「そんなに多いの?」
「彩香みたいに感度がいいのは十人に一人もいないよ」

 彩香の言葉が途切れた。
 自分が引き合いに出されて返事に困ったのではないようだ。
 顔を赤らめ、目を閉じて何かをこらえている彩香を見れば、
それがどうしてなのか判らないオトコではない。

「彩香、顔が赤いようだが・・・・」
「・・・・・・・・」
「まだ動いてないのに感じ始めたのか?」
 オトコに問いかけられて彩香が薄目を開けた。
「なんか・・・・パパのアレが中で・・・・」
「中でどうしたって? まだ動いてないんだよ」
「中でぐーっと膨らむの。あ、また・・・・」
「そうか。これが判るんだな」
「あ、また・・・・どうなってるの?」
「アソコに力を入れて膨らませてるんだ」
「あ、また膨らんだ」
「これがわかるのは感度が良くて締りがいい証拠だよ」
「そうなのね。パパ、もっと動いてぇ」
「よーし、出し入れしてやるけどいいんだな?」
「いい・・・・いっぱいうごいてぇ」
「うごき始めたら最後までゆくけど構わないか?」
「いい・・・・最後までいってぇ・・・・」
「よーし、大丈夫なんだな」
「いい・・・・中にいっぱい出してぇ」

 それから先、オトコが一気に走りだした。

「ああーっ・・・・いい・・・・パパ、いいのよーっ」
「もう少しでイクぞーっ!」
「きて! きて! ああーっ」
「おおーっ、出すぞーっ」

 ふたりの言葉もここまでだ。
 走り出したオトコの勢いは最後まで緩められなかった。
 言葉が途絶えた後、彩香のあえぎ声とオトコの荒い息づかい
が交錯して続いたのはほんのわずかの間だ。
 予告通り、一ヶ月ぶりの秘貝にあえなく自爆したのだ。

「ああーっ、よかったぁ」
「あっという間に終わったけど、良かったか?」
「パパのアレ、固い棒みたいだったから・・・・」
「そうだったのか」
「それに、最後はものすごい勢いであれが・・・・」
「そう言えば、彩香のアソコが締まったよ」
「ほんとうなの?」
「この前に気が付いていたが、彩香のは本物だよ」
「これ、パパのおかげなのね」
「いいや、くやしいけど、モチモノがいい男に可愛がられたら、
彩香はまちがいなく素晴らしい女になる」
「いや! 彩香はパパだけのものよ」
「いや、そう言うわけにはいかないよ」
「いや! いや! いや!」
「もういい。もう抜くよ。ゆっくりしよう」
「わかったわ。またあとで可愛がってね」
「こんどは、もっとしかり・・・・天国へ行かせてやるよ」
「うれしい・・・・」
「わたしもこれからが楽しみだよ」

 返事のあと肉棒が抜き取られた処にティッシュが当てられ、
シャワーも浴びずにふたりは抱き合って眠りに落ちた。

        * * * * *

 どちらからともなく、心地よい眠りから目覚めた二人だ。

「いま何時かしら?」
「ちょうど五時になったところだ」
「ほんと、もうネオンが・・・・」
「そうだね。こちらも電気が通ってるよ」
「???」

 言うことが判らず見返した彩香の手が下に導かれた。

「ほんとう! まるで百万ボルトみたいね」
「そうだね。コレを挿し込んだら彩香は感電死するかも・・・・」
「わたし、これで感電死したい!」
「よーし、シャワーを浴びてから二時間ぐらいかけて・・・・」
「ええっ、二時間もかけてなの?」
「そうだ。七時頃ここを出て食事をして帰ればいい」
「二時間も感電しっぱなしだったら、わたし、帰れるかしら?」
「タクシーに乗って帰ればだいじょうぶだろう」
「そうね。帰ったら熟睡すればいいだから・・・・」
「風呂に入らなかったら、美穂が変に思わないか?」
「大丈夫よ。合コンの後で風呂に入ってきたと言うわ」
「それだったら、もっと心配しないか?」
「いや美穂さんは理解があるから・・・・」
「そうか、どう理解があるのかね」
「合コンの後で風呂に入ってきたと言えば、決まりでしょ」
「ん? おしまいってどういうことだ?」
「つまり、それ以上は聞かないということよ」
「そういうものかね」
「だって、美穂さんがいつもパパとしているんだもの」
「ふーん、ボーイフレンドとホテルに行ってきたと・・・・」
 オトコは少しばかり複雑な表情でうなずいた。

        * * * * *

 バスルームに場所を移した彩香とオトコだが・・・・
 さっきの残り香を洗い流したら終わりのはずだが、オトコは
愛おしげにいつまでも彩香を離さない。
 からだをつなぎ合ったのがつい二時間前という余裕のせいか、
シャワーもそこそこにからだ中を愛撫して飽きない様子だ。
 オトコの手があちこちを這い回る。
 その一方、口をふさがれている彩香はからだをよじることで
快感を訴えるしかない。
 まるでタコのように柔らかくなった彩香が、バスタブの縁に
腰を下ろしたオトコの膝から滑り落ちる。
 そのたびに、オトコが彩香を膝の上に引張りあげる。
 そんな繰り返しに耐えられなくなったのは彩香だ。

「もうだめーっ!」
 オトコにすがりついて立ち上がった彩香が向き直る。
 目の前にはパンパンに膨らんだ肉棒がある。
「パパのに触ってもいい?」
「ちょっと触ってみるだけだよ」
「どうして?」
「彩香にしゃぶられたらすぐイッテしまうよ」
「でも、パパもいい気持ちになりたいでしょ」
「そうだが、イクのは彩香を天国にいかせてからだよ」
「最後に、というわけなのね」
「そうだ。しっかりいい気持ちにさせてからだよ」
「だったら、パパのしたいようにして!」
「よーし、向こうに行って彩香のアソコを舐めてからだ」
「いいわ。いっぱい舐めて!」
「じゃ、今度はソファでしてやるよ」
「どんなふうに?」
「まぁ、見ていてごらん」

        * * * * *

 オトコがベッドから持って来た掛け布団をソファから床まで
敷いて、さらにその上にシーツをかけたら出来あがりだ。

「パパ、どうしてそんなことをするの?」
「そりゃ、彩香のラブジュースで汚さないためだよ」
「それより、パパのアレの方が多いわ」
「そんなことはいいから、ここに座りなさい」
 そこに彩香を座らせて、オトコは床に座り込んだ。
「パパ、どうしてここなの?」
「いちど、こういう所でしてみたかったんだ」
「なにか違うの?」
「彩香はきっと天国にイケるはずだ」
「彩香はどうしていたらいいの?」
「ゆったり座っているだけでいい」

 うなずいた彩香が言われた通りソファにからだをあずけた。
 しぜんに開いた両脚をさらに拡げたオトコが、彩香の両手を
つかんで両ひざにのせた。

「ここをしっかり押さえておくんだ」
「どうしてなの?」
「気持ちよくなると閉じたくなるからだ」

 それだけ言うと、オトコはクレバスに顔をよせた。
 ただ、性急にソコに口を寄せたわけではない。
 露出したクレバスを愛おしげに撫でさすることから始めた。
 それに飽くと、少し色づいたビラビラを拡げて、ピンク色の
蕾をむき出しにして、ソコに舌先を這わせた。
 彩香のからだがぴくっと震えた。
 さらには、ソレを指先でかるく摘んだり弾いたりした。
 彩香のからだがその度に震え、ため息がもれた。

「彩香のココはまだまだきれいだな」
「そんなに?」
「ピンク色だし、ハリがあって艶もある」
「そんなにシテないから・・・・」
「そうみたいだな」
「大学に入ってからはパパだけよ」
「もうひとりいたんだろ」
「・・・・・・・・」
「それにホールも小さい」
「どうだ、自分で確かめてみるか?」
「うん、たしかめてみたい」

 オトコに促されて彩香はからだを起した。
 しかし、上半身をすこしソファから起したぐらいでは自分の
秘貝が見えるはずがない。
 そのままソファにからだをあずけ、目を閉じてしまった。
 さらに、先を求めているのか、腰が左右に揺れた。
 話の流れで前向きな返事をしたが、彩香だけでなく、女には
自分のソコを見たいという気持ちは少ないものだ。

「そうか。舐めてほしいのか?」
「うん・・・・」
「わかった。しっかりしゃぶってやる」

 初めのうちは秘貝の周りを舐めまわすだけだったのが、だん
だんとエスカレートして過激なものに変わった。
 むき出しにした可愛い突起をしゃぶる・・・・
 秘貝をほおばってラブジュースを吸い上げる・・・・
 棒のように突き出した舌先をクレバスに挿し込む・・・・
 念入りなおしゃぶりが続いて彩香があえぎ始める。

「パパぁ・・・・いいのよう・・・・ねぇ・・・・」
「ん? どうしたんだ?」
「ねぇ・・・・はやくぅ!」
「いや、まだだ!」
「ねぇ・・・・ほしい・・・・」
「ん? なにがほしいんだ?」
「ねぇ・・・・わかってるくせにぃ!」
「わからないから聞いてるだよ」
「ねぇ・・・・パパのいじわるう!」
 そこまで言われたらオトコも考え直したようだ。
「じゃ、ちょっとだけだよ」
「うん・・・・ちょっとでいいからほしい」
「わかった。入れたらすぐ抜くけどいいな?」

 彩香から返事はなく、ソファの上でからだがゆれた。
 それはどうでもいいからはやく入れて、と訴えているのだ。
 その揺れる腰がフォファを外れるぐらいに引き出された。
 オトコの目の前のクレバスは、露をたっぷりと蓄え、開き
気味になって肉棒を待っている。
 ソレを目にしたら、男ならはやく己の肉棒を挿し込もうと
思わないではおれない、妖しげのホールだ。
 クレバスに沿って滑らせた肉棒が押し下げられた。
 片方の指先でビラビラが器用に開かれて、そこに露をたく
わえたピンク色のホールが現われた。

「こういう格好で見るのは初めてだ」
 つぶやいたオトコが、ソコに肉棒の先を合わせた。
「いいか、入れるよ」
 彩香の返事を待たず、オトコの腰が押し下げられた。
 逡巡することなく、行きつくところまで下りて止まった。
「ああぁーっ」
「どうだ、いい気持ちか?」
「いい・・・・気持ちいい」
「それじゃいちど抜くよ」
「あ、だめよーっ!」
「だって、約束しただろ」
「いや! いやよう!」

 オトコの腰が浮きかけた。
 言葉だけでなく、本気で抜こうとしたようだ。
 ところが、それまでゆったりと肉棒を受け止めていた彩香の
両脚がオトコの腰に巻き付いた。
 それは動物的な感覚に裏打ちされた無意識の行動だろう。
 肉棒を抜き取ろうと腰を上げても、彩香の腰も着いて上がる
だけだから、オトコはいったんそれをギブアップしたようだ。

「わかった。もう少し突いてやるよ」
「おねがい! そうして!」
「あとで彩香が上にのってくれるね」
「うん、そうしてあげる」
「それじゃ・・・・」
「ねぇ、はやくうごいてぇ!」

 オトコの怒涛のような突きが始まった。
 いつもと違って、彩香がたちまち激しくあえぎ始めた。
 秘奥のどこをどのように突いているのか判らない。
 たしかなことは、いつもとラーゲが違っていること、上から
突き下しているせいかもしれない。

「パパぁ、いい、いいのよぅ!」
「・・・・・・・・」
「もう・・・・もう、だめーっ!」
「・・・・・・・・」
「もっとぉ、もっと突いてーっ!」

 彩香は、イキそうだからピッチを上げてと訴えているのだ。
 だが、オトコはひと言も言葉を発しないが、言葉も出せない
ほどに息がはずんでいるわけではない。
 オトコが一気にフィニッシュを迎えるつもりはないはずだ。
 おそらくは、冷静に彩香の様子を見ながら、肉棒を抜き取る
タイミングを計っているにちがいない。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 女を攻める時、自分のパワーに余裕あれば、男はさまざまな
ラーゲで、つまりあの手この手で攻めたいものだ。
 もちろん、そうすることで相手をより高い峰まで持ち上げて
やりたいという想いよりも、相手を様々なやり方で味わいたい
という思いの方が強いのだ。
 そして、相手がより高い峰に到達するとしたら、それはその
結果に過ぎないというのが普通なのだ。
 しかも、相手がどこまで高まっているかには無関心なのだ。
 だから、せっかくあの手この手で攻めても、相手は満足する
どころか、わずらわしいだけで不満が残るのだ。
 女を桃源郷に誘う理想的な攻め方はそうではない。
 いろんなラーゲを楽しみたいなら、相手がまさに登りつめる
寸前まで攻め抜いたところで攻めの*手を替える*ことなのだ。
 相手には、次にさらなる高嶺への期待を持たせるからだ。
 だが、言うには易く行うに難し・・・・
 攻められている相手にとっても可哀そうなことだが、まさに
イク寸前になっている相手を目の前にしていったん鉾を収める
のは男にとっても辛いことなのだ。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 激しく突き下され、彩香は口をパクパクさせるだけだ。
 そんな彩香を見下ろしているオトコはまだ冷静だ。
 あえぎつづける彩香の耳元にオトコの顔が寄る。

「もうイキそうなのか?」
「あぁ・・・・あう、あぅ、あうーっ・・・・」
 オトコに問いかけられても、言葉にならない呻き声だけだ。
「よーし、それじゃぁ・・・・」
「きてぇっ!」

 辛うじて短い言葉でオトコをうながした彩香だが、次の瞬間、
彩香の手がオトコの手をつかんだ。
 おそらく、最後の突き下しを本能的に察して、一緒にのぼり
詰めるために身構えたのかもしれない。
 ところが実際は、勢いよく肉棒が引き抜かれたのだ。

「あぁっ・・・・」
 彩香が我に帰った時には、オトコが離れてしまっていた。
「さぁ、今度は彩香が上だ」
「いやーっ・・・・」
 まだ陶酔から醒めやらない目をオトコに向ける彩香だ。
 差し出されたオトコの手が彩香の手をつかんだ。
 ふたたびまた・・・・という思いでオトコを引き寄せようとした
のかもしれないが、彩香はそれより強い力で引き起こされた。
「さぁ、今度は彩香の番だ」
 彩香の代わりにソファに横になったオトコが彩香を誘った。
 引っ張られて跨った彩香の秘貝に、オトコが肉棒を当てた。
「さぁ、そのまま腰を・・・・」
 
 ソコに立ち上がっているのは・・・・
 ついさっきまでバギナのから精気を吸い上げていた肉棒だ。
 もうこうなったら、彩香に迷いはない。
 いっときも早く、さっきまでさまよっていた高嶺を早く取り
戻したいという彩香の気持ちを映したものだろうが、怒張した
肉棒はあっという間にクレバスに消えた。
 そのあと、しばらく彩香の一人相撲が続いた。
 あっという間にさっきの高嶺まで戻った彩香が、腰を振って
悶える様子をオトコは下から見守りつづけるだけだ。
 両手であちこちを撫でさすりながら・・・・
 しかし、ぎこちない腰の動きでは、たどりついた高嶺を保つ
ことが出来ても、さらなる高嶺に登りつめることは叶わない。
 いっぽうのオトコには、これはまたとない回復の時になる。
 そんなナマ殺しの状態に耐えられなくなったのは彩香だ。

「ねぇ・・・・もっとうごいてぇ」
「ん? うごくのは彩香の方だろ」
「だってぇ・・・・もううごけないよぅ」
「じゃ、どうすればいいんだ?」
「パパが突いてぇーっ!」
「それじゃ、しかたがないな」

 そのあとすぐ、彩香は繋がったままソファから起き上がった
オトコに抱えあげられてベッドに運ばれた。
 そのあと、オトコの一瀉千里の攻めが始まった。
 どのぐらいしてか、うめき、口をパクパクさせる彩香の中に
エキスを送り込むまで休みなく攻めが続いた。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 満ち足りた時を過ごした後のお酒ほど美味しいものはない。
 ホテル最上階のレストランからバーカウンターに席を移した
頃には、彩香は食事の時のワインの酔いでいい雰囲気だ。
 オトコと美穂の血筋を引いて、そこそこ酒には強い彩香だが、
オトコと過ごした時の心地よい疲れが酔いを促したようだ。

「パパ、今日はとってもよかった」
「おい、周りに聞こえるよ」
「あら、聞こえても、なんの事だか判らないでしょ」
「それはそうだが・・・・ここでは親子なんだからな」
「そうなのね」

 彩香は首をすくめて周りを見渡した。
 席はカウンターの隅で、近くに客はいない。
 ふたりの間柄をどう思ったか判らないが、マスターも注文の
飲み物を持ってくるほかは近寄って来ない。

「パパ、またこういう時間がほしいわ」
 彩香は少し声をひそめた。
「まぁ、食事やお酒なら、いつでもいいよ」
「それだけでもうれしいけど・・・・」
 奥歯にモノが挟まった彩香の言葉だが、その裏は判っていて
問い返さないオトコの背中を押すように続けた。
「その前の時間があると、食事やお酒がおいしいわ」
「そうしないとイケナイのか?」
「イケナイ、というわけじゃないけど・・・・」
「だったらいいじゃないか」
「でも・・・・パパだってそうしたいでしょ」
「うーん・・・・」
「それに、結婚するまでいろいろ教えてほしいの」
「それは・・・・」
「もう一つ、もっと素敵なオンナになりたいの」
「それでもなぁ・・・・」
 彩香の顔を見ながらオトコがつぶやいた。
「大丈夫よ。今日みたいな時を選ぶから」
「そんなことを言っても、簡単にスケジュールが・・・・」

 彩香と何時間かをベッドで過ごし、彩香の中にナマの肉棒を
挿し込ではじけるという、愉悦の極致の魅力から抜け出せなく
なっているオトコだから、抵抗も形だけのものだ。
 それに『結婚するまで』という彩香の言葉に背中を押されて
しまえば、形だけの抵抗も雲散霧消してしまう。
 ひそひそ話は、だんだんと彩香のペースに入っていった。

「パパのスケジュール、いつもタイトなの?」
「まぁ、いちおうは詰まっているけどね」
「でも、一週間ぐらい先ならなんとかならないの?」
「どうにもならないわけでは。どうして一週間先なんだ?」
「それは彩香の都合なの」
「???」
「アレは四日ぐらい続くから・・・・」
「・・・・・・・・」
「そのあと五日ぐらいの間なら大丈夫だから・・・・」
「・・・・・・・・」
「私からパパに電話をするの」
「どういう電話をだ?」
「アレが始まった・・・・という電話よ」
「そういうことなら、なんとかなるかな」
「うれしい。来月の今頃になったら電話するわ」
「そうか・・・・」

 オトコのつぶやきは否定とも肯定ともつかないものだ。
 それなのに、オトコの表情ならば、はっきりと彩香の提案を
受け入れているものだ。



     第十二章 運命の三発

 旅行の身支度を整えた美穂が奥から居間に出てきた。
 今朝からブティックの一泊慰安旅行に出かけるのだ。

「あなた、今夜も泊まれるんでしょ」
「ああ、そのつもりでいるよ」
「良かった! 彩香ひとりだと心配だったから・・・・」
「美穂さん、子供あつかいしないで! もう二十二歳よ」
「それはそうだけど。あなた、あまり遅くならないでしょ」
「そうだね。いつもぐらいには・・・・」
「だったら、お夕食は彩香と外で済ませる?」
「それもいいけど、いまから場所や時間は決められないなぁ」
「だったら、帰ってから彩香に簡単なものを作ってもらってね。
冷蔵庫にいろいろ入ってるから」
「だいじょうぶよ、美穂さん。少しはお料理も出来るから」
「それじゃ、彩香、お願いね」
「わかったわ、まかせておいて」
「じゃ、戸締りはしっかりして出かけるのよ」
「ええ、大丈夫よ」
「それじゃ、あなたもおねがいね」
「ああ、わかった。気を付けて行っておいで」

 くどいほどあれこれ言ってから、美穂は彩香と*あの人*の
声を背に受けて、そそくさと出て言った。

        * * * * *

「パパ、本当に今日はお仕事なの?」
「その予定だったけど、昨日、ぜんぶ済ませたよ」
「そんなに簡単なお仕事だったの?」
「ああ、もともとたいした用事ではなかったんだ」
「それならいいけど・・・・」
「それで、彩香の方はどうなんだ?」
「今日の授業は必須科目じゃないから休もうかしら」
「だったら、食事は外でしようか」
「それでもいいけど、お食事だけ?」
「それはきまってるだろ」
「パパ、彩香と仲良くしたいのね」
「うーん・・・・彩香はどうなんだ?」
「もちろん、パパと同じ気持ちよ」
「それだったら、ここでゆっくりするかな」
「そうね。こんな時はめったにないものね」
「時間もなにもかも心配しなくてもいいからな」
「うふふ・・・・そうね」
「じゃ、そうしよう」

 その返事は、*あの人*がオトコに変身する宣言なのだ。
 ほんとうのところ、今回の上京は美穂の慰安旅行に合わせて
決めたわけではなかったが、ふたりのなにげない会話のうちに、
オトコに変身した*あの人*が彩香と愉悦の時を過ごすという
今日の流れがごく自然に出来あがっていたのだ。

        * * * * *

 コーヒーを飲んでいるオトコの横に彩香が席を移した。

「パパ、昨夜はあっさりしてたみたいね」
「ん? わかったのか?」
「わかったわ。それで最後までいけたの?」
「いいや・・・・」
「じゃぁ、ちゃんと入れて上げられなかったのね」
「まぁな・・・・」
 オトコの言い方はどちらにも取れる曖昧なものだ。
「でも、美穂さん、いい声を出してたわよ」
「それは・・・・アソコを舐めてやったからな」
「それでもパパは元気にならなかったの?」
「元気になってたら、最後までしてやってるよ」
「そうよね。パパがしなくても美穂さんが上に乗るわ」
「まぁ、そういうことだ」
「それじゃ、いっぱい残ってるのね」
「それはどうかな?」
「まぁ・・・・パパのいじわるう!」
「まぁ、試してみたら判るよ」
「じゃぁ、パパ、オトコになってくれるのね」
「彩香が、そうなってほしいんだったらね」

 そうしたいというオトコの気持ちも、そうしてほしいという
彩香の気持ちもさっきの会話で確かめ合っていることだから、
このやりとりは言葉の遊びみたいなものだ。

「それじゃぁ、シャワーを浴びてから・・・・」
「そうか。朝からすぐ試してみるのか?」
「そうよ。わたし、早く試してみたい」
「しかし、明日まで時間はたっぷりあるんだよ」
「だって、パパが元気になれたら、いっぱい欲しいから」

        * * * * *

「パパ、どうしたの?」

 バスタブに入って、裸身をさらしてカランを手にした彩香が
なにげない仕草で振り向いた。
 そこに、後から入ってきたオトコが立ちつくしていた。
 もちろんオトコが入ってきたことは気配で判ること、あとの
動きがないことを彩香は不審に思ったのかもしれない。

「ん? いや、どうもしないよ」
「そうお? なんか見つめられているようだったから」
「いや、なんとなく・・・・」
 オトコがめずらしく照れくさそうに口ごもった。
「なんとなく? どうしたの?」
「なんか彩香のからだがずいぶんふっくらしてきたと・・・・」
「わたしには判らないけど、ほんとなの?」
「ほんとうだ。すっかりいいオンナになった」
「パパ、わたしに恋人が出来たと思ってるんでしょ」
「ちがうのかな?」
「この前も美穂さんに言われたけど、ちがうわ」
「そうか。美穂がなにを言ったんだ」
「パパと同じようなことを言われたの」
「えっ、美穂と一緒にお風呂に入っているのか?」
 オトコは驚いた表情を彩香に向けた。
 いくら若い美穂でも、二十歳を過ぎた娘と一緒に風呂に入る
はずがないと思ったからだろう。
「それはないわ。わたしが誘ったけど断られたわ」
「それはそうだろうね」
「風呂あがりのわたしを見ていてそう思ったみたい」
「そうか。それでも判るかもしれないな」
「たぶん、それだったらパパのせいよ」
「そうだろうか?」
「だって、こういうことしてるのはパパとだけだから」
「うーん、だったら、そうかもしれないな」
「そうよ、そうにきまってるわ」

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 なにげない話がきっかけで、彩香が*あの人*から『美穂と
出来なくなった』と打ち明けられたのは一年近く前のことだ。
 結局、その日、*あの人*は彩香の前でオトコに変身できて、
彩香の部屋で愉悦の時を過ごしたのだ。
 そのことでこれまでと違う一線を越えてしまい、それからは
*あの人*が上京するのは美穂がいちばん欲しがる時のほかに、
彩香が安全な時も加わることになった。
 さらにまた、愉悦の時を過ごす所は、最初こそ彩香のベッド
だったのが、二度目からはシティホテルのベッドに変わった。
 もちろん彩香に逢ってオトコに変身した*あの人*は美穂と
彩香が住んでいるマンションには寄らずに東京を離れた。
 ホテルで人の倫に外れた激しい愉悦の時間を彩香と過ごして
帰った後、今度は同じ屋根の下で美穂と歓びを交わすことなど、
体力的にもだが感情的にも辛いものがあったからに違いない。

 それ以来、たとえ月に一度でも、昼から夕方まで密度の濃い
時間を一緒に過ごすようになって一年近くになる。
 オトコの心根にあるのは、たとえ*人の倫に外れた行い*と
言われようと、理由はどうあれ、こうなってしまったからには
彩香が望むかぎり続けたい、という思いだろう。
 たしかに、オトコには、肉棒を挿し込んではじけたら終わり、
という身勝手さはなく、丹精をこめて花を育てるように彩香を
慈しむ、という様子が色濃く見られる。
 しかしその一方、スキンを付けた巨大な肉棒が彩香に苦痛を
もたらすと判っているから、いつもナマで挿し込み、かならず
二度は濃厚なエキスを彩香の秘奥に注ぎ込んできた。

 たしかにオトコは、心に
 確実に安全な時を選んでいるから・・・・
 中に出すことが彩香を深い愉悦の淵に引き込む決め手だ・・・・
 そのことで彩香がいっそうオンナらしく育っている・・・・
 そしてなによりも彩香がそれを望んでいる・・・・
 という隠れ蓑をまとっているにちがいない。

 しかし、そこにいるのは、彩香の中にナマの肉棒を挿し込み、
激しい快感に焼き尽くされて、本能のままに男のエキスを注ぎ
込むという、愉悦のトラウマから逃げられなくなった男だ。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 バスタブに足を踏み入れて彩香を抱きしめたオトコが彩香の
からだ中に手を這わせながらつぶやいた。

「やっぱり、彩香の言う通りかもしれないなぁ」
「え? なにが?」
「彩香がすっかりオンナらしくなったことだよ」
「そうよ。パパのコレのせいよ」
「うっ・・・・」
 お返しに肉棒をぐっと握り込まれてオトコがうめいた。
「パパ、元気になったじゃない」
「うーん、そうみたいだ」
「昨夜、美穂さんに迫られても出来なかったのに・・・・」
「うーん・・・・」
「パパのコレ、どれぐらい入れてもらったかしら?」
「さぁ、両手じゃ足らないかな」
「もちろんよ。いつも二度は入れてくれたじゃない」
「そういえばそうだな」
「それに、いつもたっぷりとアレも・・・・」
「そんなことでいいのかな、といつも思ってるよ」
「いいの。ちゃんとコントロールしてるから大丈夫よ」

        * * * * *

 バスルームの戯れもほどほどに彩香の寝室に移った二人だ。
 ベッドに上がって彩香を抱き寄せたオトコが念を押した。

「ほんとうにオトコになって構わないんだな」
「ダメ!って言ったら、パパは我慢が出来る?」
「もう、彩香の裸を見てしまったからなぁ」
 オトコのつぶやきは、いまとなっては我慢など出来るはずが
ないと告白しているのと同じことだ。
「無理やりでもしたい?」
「うーん・・・・それはどうかなぁ」
「いや! 無理やりでもしたい、と言って!」
「男だからそうしてみたいという気持ちはあるが・・・・」
「じゃぁ、そうして!」
「彩香はほんとうにそうしてほしいのか?」
「彩香が拒んだら、パパがどんなふうになるか見たい」
「彩香は悪い娘だ」
「そうなの。彩香はパパには悪い娘なの」
「でも、こういうことはお互いにその気にならないと・・・・」
「じゃないと、どうなの?」
「いい気持ちでは終わらないし、あとに悔いが残る」

 彩香にオトコをこばむ気持ちなどあろうはずもない。
 そして、前向きで受け止めてくれるから救われているという
オトコの気持ちが彩香には判ったようだ。
 そのあとすぐ、彩香の手がオトコの股間に伸びる。

「やっぱり昨夜は美穂さんの中に出したんでしょ」
「いいや、出来なかったんだよ」
「でも、すこし元気がないみたい」
「彩香がおかしなことを言うからだよ」
「あら、それだけで?」
「そういうものだよ。でも、彩香が握っていてくれたら・・・・」
「それじゃぁ・・・・」

 オトコの求めに、肉棒を握り込みながら彩香がつぶやく。

「パパ、あのビデオが観たい」
「えっ、前に美穂と一緒に見たんじゃないのか?」
「そうだけど・・・・」
「だったら、もういいんじゃないか」
「だけど、パパと一緒に観たい!」
 からだをゆすって駄々をこねる彩香にオトコの表情は複雑だ。
「だったら、リビングに行かないといけないな」
「それより美穂さんの寝室の方がいいわ」
「うーん・・・・それは・・・・」

 オトコが口ごもったのは当然だ。
 あのビデオを彩香と一緒に見て、そのままで済むはずがない。
 まちがいなく彩香に肉棒を挿し込まずには居られないだろう。
 というより、そうすることが決まっているのだ。
 そうなれば、いつも美穂に肉棒を挿し込んでいるベッドで、
美穂に産ませた彩香に同じことをすることになるのだ。
 たしかに退廃的で刺激的な行為には違いないが、如何に愛人
とは言え、美穂に対して、これほどの背信行為はないだろう。
 しかし、いまの彩香の美穂への思いは、実の母と言うよりも、
父を一人占めしているライバルという方が当っているだろう。
 だから、父であるオトコを美穂に代わって一人占めしたいと
いう思いがそう言わせているに違いない。

「パパ、それがイヤなの?」
「うーん・・・・それより、彩香はどうなんだ?」
 それには答えず、オトコが彩香に聞き返した。
「わたし? ぜんぜん気にならないわ」
「そうか。それなら向こうに行こうか」
「うれしい。その方が安心だわ」
「ん? 何が安心なんだ?」
「だって、パパのアレの匂い、相手が誰でも一緒でしょ」
「それは当たり前だろ」
「だったら、わたしの部屋で匂うほうが変だわ」
「うーん、たしかにそうだな」
「だからいいでしょ」
「わかった。そうしよう」

 彩香に背中を押されて、オトコは腰を上げた。
 いつも美穂を抱いているベッドで彩香を抱くことへのわだか
まりを押し殺したようで、しがみついてきた彩香を抱えあげて
美穂の寝室へ運んだ。
 寝室のドアを彩香が開けたことが救いだったかもしれない。
 おそらくオトコの心の中には、ソレを一緒に観たあとにより
深い愉悦の淵が待ち受けていること、そしてそれが美穂と観た
時よりも深いだろうという思いがあったに違いない。
 そしてまた、そこで得られるに違いない愉悦の淵の奥深さは、
美穂を相手にしているベッドで彩香と同じことをすることへの
抵抗感よりも魅力的に違いないと言うことも・・・・

        * * * * *

 秘蔵のテープがビデオデッキにセットされた。

 すぐにディスプレィに淫靡なシーンが映し出された。
 それを観はじめたふたりだが、オトコは何度も見ていること、
彩香もいちど観ているビデオだから、彩香とオトコの間を言葉
が行き来していたのはたかだか二、三分のことだ。
 それから先、ビデオ画面の上とベッドの上の、二組のからみ
絡み合いが渾然一体になったような時が過ぎる。

 からだを寄せた彩香を懐に抱いてクレバスを探るオトコ・・・・
 お返しに肉棒を探る彩香・・・・
 言葉は消えても視線はそのままのふたり・・・・
 映し出される映像と美穂のあえぎ声・・・・
 オトコの指先の愛撫と、ソコに高まりが来たことを知らせる
耳元のつぶやき・・・・
 それに身もだえする彩香・・・・

 そんな時が過ぎて、先に白旗を掲げたのは彩香の方だ。

「パパ、もうだめーっ・・・・ほしい・・・・」
「ん? なにが欲しいんだ?」
「いじわるーっ。コレ、コレなのよーっ!」
 彩香が手を後ろに廻して肉棒をつかんだ。
「そうか、もうコレが欲しくなったのか?」
「ねぇ、はやくーっ」
「ビデオはまだ終わってないよ」
「もういい。いちど見たから」
「見たいと言ったのは彩香の方だぞ」
「だってぇ・・・・」
「なんだ、しかたがない美穂だ」
「だってほしくなったんだもの」
「よーし、それじゃぁ」

 オトコから、それ以上のじらしの言葉はない。
 おそらく、一ヶ月ぶりに抱きとった彩香のからだに高まりを
覚えて、肉棒がさっきとはさま違いになっているのだろう。
 横たえられた彩香のクレバスに、すぐ肉棒が突き刺さった。
 時間もなにもかも心配しなくてもいい、というさっきの言葉
どおり、オトコは欲望を抑えるつもりはないようだ。
 これから明日まで、心ゆくまで彩香を味わえるという思いが、
まず彩香の願いを聞いてやる気持ちにさせたのだろう。

 そのあと、テレビ画面とベッドでは、舞台や脇役は同じでも
主人公が違う競演が繰り広げられたが、その競演は、ベッドの
オトコが弾けるという形で、あっという間に決着がついた。

「また、彩香の中に出してしまった」
 彩香を抱え込んだままオトコが呻くようにつぶやいた。
「いいのよ。大丈夫な時だから・・・・」
「あとでまた、ゆっくりと・・・・」
「うれしい」

 懐にからだを寄せた彩香がオトコを見上げてつぶやいた。

        * * * * *

「あふーっ・・・・」
 心地よい眠りから覚めた彩香が大きく背伸びをした。
 無意識のうちに、彩香の手が布団の中を泳いだ。
「ん?・・・・パパはどうしたのかしら?」
 そこには、さっきまで一緒にいたはずのオトコの姿はない。
 ベッドから下りた彩香が居間へのドアを開けると、オトコは
ソファに座ってテレビを見ている。

「パパ、いつ目が覚めたの?」
「ついさっきだ。良く寝てたからそのままにしておいた」
「いま、何時かしら?」
「もう昼すぎだよ」
「ええっ、そんなになるの?」
「たっぷり二時間は眠っていた」
「今朝と違って、いまはとてもすっきりしてるわ」
「そうみたいだな。いい顔色をしてる」
「ほんと? そんなに顔色がいい?」
「ああ、若いということは素晴らしいことだな」
「それ、顔色だけじゃないかも・・・・」

 彩香が立ちあがってガウンを脱ぎ捨てた。
 オトコの前に立ったのは、昼下がりの陽を受けてピンク色に
かがやく、二十二歳の成熟した裸身だ。

「ほんとだ。からだ中が輝いてるよ」
「ほんとう? うれしい・・・・」
「こんな素晴らしい彩香といつまで・・・・」
「え? なぁに?」
「いつまでこんなことが出来るのかなぁ」

 まぶしそうに見つめるオトコにもう一度ポーズを作ったあと、
彩香は素っ裸のままオトコの後ろに来て抱きついた。

「わたし、あんなにぐっすり眠れたの初めてよ」
「いつもそうじゃないのか」
「いいえ・・・・なぜかいつも寝不足気味なの」
「いつも夜更かしが過ぎるからだろ」
「そうかも・・・・でもわたし、パパが来た翌朝、美穂さんの顔が
輝いているわけが判ったような気がする」
「美穂はいつも輝いてるだろ」
「それはちがうわ。輝いてるのはパパが来た時だけよ」
「それで、なにが判ったんだ?」
「夜は遅くまで泣きどおしだから寝不足じゃないかと・・・・」
「ん? それがどうしたんだ?」
「それが、そうじゃないから不思議だったの」
「・・・・・・・・」
「それなのに、翌朝になって顔色もよく疲れた様子がないのは
パパのアレのせいだと・・・・」
「アレってなんだ?」
「パパが入れてくれるアレよ」
「ふーん・・・・」
「おい、なにをするつもりなんだ?」

 彩香が、後ろから回した手でオトコの前を探ったのだ。
 そうされたオトコは、彩香の手を押しのけないばかりでなく、
彩香の腕を抱え込んだままだ。
 うろたえる男だが、おそらく本心は、もっとそこに留まって
いてほしい、ということに違いない。

「パパの、元気かどうか調べてみるの」
「さっき頑張ったばかりだから、元気なわけはないだろ」
「あらぁ、そんなことない。すごく元気だわ」
「彩香が触るからだよ」
「そんなことないわ。触った時にはこうなってたわ」
「だったら・・・・」
「彩香のヌードを見たからでしょ」
「そうかもしれないなぁ」
「パパ、暑いでしょ。こんなの脱いだら?」
 オトコのガウンを肩から滑らせた彩香が命令口調で言った。
「パパ、ちょっと立ってみて!」
「どうするんだよ」
「いいから、彩香の言う通りにして!」
「わかったよ」

 彩香にせかされて仕方なく立ちあがったオトコからガウンが
落ちて、そこそこに膨らんだ肉棒が現われた。

「これ御覧なさい。元気じゃないの」
「それで、どうするんだ?」
「こうするのよ」
「おい、おい・・・・」
「パパ、うごかないで!」

 不意のことでうろたえるオトコをしり目に、彩香は目の前の
肉棒を掴んで口に含んでしまった。
 それが嫌なら押しのければいいだけのことだが、オトコには
そうする気配はまったくない。
 それでも、うわべでは恰好をつけてみるオトコなのだ。

「あらぁ、こんなに大きくなったわ」
「またコレが欲しくなったのか?」
「そう・・・・コレがほしい」
「さっき、ちゃんとしてやったじゃないか」
「でも、もっときれいに輝きたいの」
「うーん・・・・そういうことなら・・・・」

 オトコには彩香の最後の言葉がダメ押しになった。
 彩香を抱き起こし、ぐいっと抱きしめて耳元にささやいた。

「悲鳴を上げても知らないぞ!」 
「うん、さっきみたいに入れて!」
「わかった」
「さっきより、もっといい気持ちにさせて!」
「二度目だから、さっきみたいに簡単にはイカないぞ」

        * * * * *

 彩香を抱きあげたオトコが、そのまま寝室に入った。
 ところが、彩香をベッドにそーっと置くと、オトコはなにも
しないで彩香の傍に横になってしまった。

「パパ、どうするの?」
「彩香はシックス・ナインを知ってるか?」
「聞いたことはあるけど・・・・」
「じゃ、上に乗ってごらん」
「こうするのね」
 上に乗った彩香が肉棒を握ってフェラをはじめると、秘貝は
自然にオトコに差し出された。
「うん、まだまだきれいだ」
「・・・・・・・・」
「さっきのが軽かったせいかな」

 オトコがソコを観察しながらつぶやいている間、彩香は何も
言わずに肉棒と戯れ続けた。
 何か言おうとしても出来なかったのだ。
 彩香の口には元気を取り戻した肉棒が咥えれられていた。
 しばらく秘貝と戯れていたオトコが彩香の腰を引き寄せた。
 それで、ふたりの体勢は完全なシックス・ナインだ。
 しばらくクンニとフェラの競演が続いて・・・・
 やがて、先に耐えられなくなったのは彩香の方だ。
 肉棒と戯れるどころではなくなって、ついにからだを起して
のけぞったが、オトコの方はまだ冷静だ。

「もう欲しいのか?」
「うん、ほしい」
「じゃぁ、好きなようにしたら」
「パパがしてくれないの?」
「だって、彩香がしたかったんだろ」
「いやだぁ・・・・どうすればいいの?」
「だったら、彩香がこのままで取り込むしかないだろ」
「取り込むだなんて・・・・おかしな言い方ね」
「だってその通りだろ」

 オトコに促されて彩香が動いた。
 オトコに跨ったまま向きを変えた。
 あとは、肉棒をクレバスに当て腰をおろせばいいだけなのに、
簡単にはことが進まない。
 一気に挿し込まれるのと違って、何となく恐るおそるという
感じだからだろうが、眉間にたてしわが寄っている。
 思うように取り込んでくれない彩香に、オトコがじれた。

「さぁ、もっと腰を下ろさないと・・・・」
「だって、奥に当ってるんだもの」
「まだだいぶ残ってるよ」
 ソコを覗き込んだ彩香がどうにかそのほとんどを取り込んだ。
 女の秘奥はそれほどまでに柔軟性に富んでいるのだろう。
「なんか、奥のほうが押されてるみたい」
「そのまま、リズムをとりながら腰を上げ下げするんだ」
「こんなふうでいいの?」
「そうだ。三度に一度は、勢いをつけて腰を下ろすんだ」
「あうーっ・・・・」
 オトコに言われたとおりに動いた彩香が仰け反った。
「それでいい。だんだん良くなってくるから・・・・」
「ほんとにそうなるの?」
「そうだ。いい気持ちになる処を自分で探せばな」

 オトコに言われた通りに腰を動かし始める彩香だ。
 その一方、乳首をつままれたり、挿し入れられた手でお豆を
探られたり、時おり下から突き上げられたりしているうちに、
彩香のからだが燃えはじめた。
 レースのカーテン越しに射し込む朝の陽ざし映えて、見事な
ほどのピンク色に輝き始めたのだ。
 頃合い良しと二、三度つきあげられ、突っ伏してしまった。
「ああーっ、もうだめーっ」
 下から抱きしめたオトコに、額や耳たぶやうなじをなでられ、
さらに耳元に息を吹きかけられ、舌先を耳の穴に挿し込まれて、
彩香はからだを震わせた。

「あぁーっ、アレが膨らんでるぅ!」
「おおっ、アソコが締まった!」
 ふたりがあげる声は表裏一体のものだ。
「さぁ、起きて、今度は腰を揺らせてみたら?」
「うん・・・・」

 言われる通り、素直に腰を動かしてまた登りつめる彩香だ。
 それが何度も繰り返されて、ついに彩香が悲鳴を上げた。

「もうだめ~っ、パパ、おねがい~っ」
「どうしたんだ? もう動けないのか?」
「動きたいけど・・・・腰がしびれて動けないよぅ」
「じゃ、どうして欲しいんだ?」
「おねがい~っ、上から突いて~っ」
「そうしてやってもいいけど、そしたら終わりだよ」
「・・・・・・・・」
「もっといい気持ちになりたいんだろ」
「うん・・・・」
「だったら動いて! もっといい気持ちになれるから」
「だってぇ・・・・」
「さぁ、もう一度だけ頑張って!」
 それからしばらく彩香のひとり相撲が続いて・・・・
 とうとう彩香はオトコの上に突っ伏してしまい、言葉もなく
荒い息を吐き続けるだけになってしまった。
 彩香には、自分で動く力はもうなくなってしまったようだ。

「彩香、だいじょうぶか? もう動けないのか?」
「・・・・・・・・」
「そうか、もうそろそろか」
「・・・・・・・・」
「じゃぁ、上から突いてやるよ」

 言葉を返すことも出来ず、ただ荒い息を吐きつづける彩香に、
彩香には上で動く力はなくなった、これからは自分の出番だと
オトコは思い定めたようだ。
 オトコは、息も絶えだえの彩香を寝かせ、クレバスと肉棒を
濡らしているラブジュースきれいに拭き取った。
 そうしておいて、肉棒を一気に挿し込んだ。
 しかし、オトコの攻めはそれだけでは終わらなかった。
 肉棒のほとんどが挿し込まれたところで、色っぽさを増した
彩香の腰がオトコの両腕で掬いあげられた。
 オトコの腰がしゃくり上げられ、秘奥を突き上げた。

「いやっ、いや~っ!」
 ゆっくり引き上げられた肉棒が一気に挿し込まれた。
「いやっ、いや~っ!」
「なにが、いやなんだ?」
「もう・・・・もう・・・・ああ~っ!」

 ゆっくり引き上げられた肉棒が一気に突き刺さる・・・・
 それが何度も繰り返され、オトコの問いかけにも答えられず、
ひと突きごとに悲鳴を上げる彩香の顔に苦悶の色はない。
 彩香の秘奥でなにが起こっているのか、誰にもわからない。
 やがて、彩香から悲鳴さえも消えて、胸がはげしく上下して、
口をパクパクさせるだけになった。

「もう、そろそろ限界だな」
 つぶやいたオトコが、彩香の耳元に口を寄せた。
「彩香! わかるか?」
 薄目を開けて見上げた彩香だが、目がすぐに閉じられた。
「もうイッテもいいか?」
「うっ・・・・あうーっ・・・・」

 オトコの問いかけと一気の突きが交互に繰り返される。
 いまの彩香にはそれすら耳に入らないようで、返事に代って
口をパクパクさせるだけになった。
 オトコは、これが限界だと見極めを付けたようだ。
 オトコのからだが彩香に重なった。
 オトコの口が彩香の耳元に寄り、大きな言葉を吹き込んだ。

「よ~し、イカせてやるから、しっかりつかまって!」

 その言葉にも動きを示さない彩香に、オトコは彩香の両腕を
自分の首に巻きつかせた。
 朦朧とした意識のなかで、オトコが伝えたいことは彩香にも
判ったようで、オトコにしっかりしがみついた。
 折り曲げられた脚が胸に付くほどになった。
 彩香の脚を抱えあげたオトコが、ピッチを上げはじめた。
 意識が朦朧として半ば夢遊状態になっているのか、彩香から
洩れるのはうめき声だけになった。

「彩香! いくぞ~っ!」
 最後の最後、渾身の力で肉棒が秘奥に打ち込まれた。
 彩香からも渾身の力を振り絞った悲鳴が・・・・
「いやーっ! パパ、こわ~ぃ!」
 自分でオトコの肉棒をクレバスに収めてから一時間余り・・・・
 それは、長く濃密な交合の末にようやく未知の領域に到達し、
深淵の縁から真っ暗闇の底をはじめて目にした彩香が、そこに
引き込まれそうになって恐怖のあまりあげた叫びに違いない。
 いちど飛び込んでしまえば、目もくらむような愉悦の世界が
待ち受けていることが判るはずなのに・・・・
 にもかかわらず、もちろん助けの手は差し伸べられない。
 そればかりか、なおも攻めがつづいて・・・・

「彩香、いまだ! 飛ぶんだ!」
 彩香の腰にオトコの腰が激しくすり合わされた。
「ああぁぁ~っ・・・・」

 その声を最後に、彩香の何もかもが愉悦の淵に沈んだ。
 おそらく、固い肉棒が秘奥をえぐり、その先っぽから子袋を
目がけてエキスが噴射されているに違いない。

        * * * * *

 失神状態から、そのまま深い眠りに落ちてしまった彩香だが、
深い熟睡から目覚めたのはオトコの懐の中だ。
 彩香の視線が、見下ろしているオトコのそれにからんだ。

「やっと目が覚めたようだな」
「パパ、いつ目が覚めたの」
「ああ、一時間ほど前だ」
「ずっと、彩香を見ていてくれたの?」
「そうだ。いっそう可愛くなった彩香をな」
「ずっとこのままだったの?」
「そうだよ。彩香が目を覚まさないようにと思ってね」
「パパ、ありがとう」
「でも、ぐっすり眠っていたからその心配はなかったよ」
「そうお? でも、さっき夢を見ていたような・・・・」
「そうか。それで寝言を言っていたんだな?」
「えぇっ・・・・どんな寝言を言ってたの?」
「それより、彩香はどんな夢をみてたのかな」
「パパ、ずるい。先に教えて!」
「そうか、なんども『もっと突いて!』とか言ってたよ」
「だって、パパが動いてくれないんだもの」
「そうか。そんな夢を見ていたのか」
「夢の中のパパはとっても意地悪だったの」
「それじゃ、いまは?」

 しばらく、彩香から言葉が途切れた。
 顔に赤味が挿したところを見ると、自分の夢とオトコに聞か
れた寝言が気恥ずかしかったのかもしれない。

「それで・・・・いま何時?」
「そろそろ日が沈むころかな」
「パパ、お腹がすいてるでしょ」
「ああ、おなかペコペコという感じだなぁ」
「そうでしょ。だってお昼抜きだったから」
「あ、そうだったか」
「そうよ。昼すぎに、クッキーをつまんだだけよ」
 そういえば、彩香の言う通り、遅い朝食のあとで二人が口に
したのは二時過ぎのコーヒーとクッキーだけだった。
「それじゃぁ、何か簡単なものを作るわ」
「ああ、お酒のつまみになるものだったら何でもいよ」
「まかせておいて」

 裸身を惜しげもなくさらしはずむような足取りでキッチンに
向った彩香が、裸のうえにエプロンをつけた。
 ゆたかな乳房をはみ出させながら、てきぱきと食事の仕度を
はじめた彩香に、オトコからつぶやきがもれた。

 ・・・・アレの後の美穂もこんなだったな
 ・・・・腰つきまでも美穂と同じだな
 ・・・・空腹を満たしてからの美穂は一段と欲張りだったな

 三十分ほどして、テーブルに料理が幾つか並んだ。

「じゃ、乾杯しよう」
「何に乾杯するの?」
「そうだなぁ・・・ひとり前のオンナになった彩香のために」
「ほんとにそうなったのかしら?」
「そうだよ。彩香が最後に何を言ったか覚えてるか?」
「わからないわ。なんか、気が遠くなってたから・・・・」
「彩香は最後に『パパ、こわ~ぃ!』って叫んだんだよ」
「そうだった? わたし、どうしたんだろう」
「いままで以上にいい気持ちになったからだろ」
「あれって、そういうことかしら」
「そうだろうね。女はそういう具合に成長してゆくんだ」
「だれでもそうなの?」
「そうだよ。誰でもだよ」

 宙を見つめて、オトコは昔を思い出している様子だ。

「二十歳を過ぎた頃の美穂もそうだったからね」
「美穂さん、どんなふうだったの?」
「初めて失神してから半年ぐらいは、無意識のうちだと思うが、
いつも『あなた、こわ~ぃ!』と叫んでいたよ」
「どうしてかしら?」
「失神するほど気持ちよくなるのが怖かったみたいだ」
「そういうものかしら?」
「それと言うのも、失神から醒めた後には『あなた、こんなに
良くなってどうしよう』と口癖のように言ってたからな」
「その後はどうなったの?」
「それが当たり前と判ってからは、その言葉は出なくなったが、
そのかわり欲張りになったよ」
「それが今も続いているわけなのね」
「まぁ、そういうことだ」
「失神するようになったきっかけってあるの?」
「はっきり覚えてないが、そうなったのは離れて暮らすように
なって、会うのが月に二度ぐらいになってからだ」
「いまの彩香と同じなのね」
「そう言えばそうだな」
「わたし、もう一度さっきみたいになってみたい」
「明日の朝、元気だったらな」
「じゃぁ、おやすみするのね」
「そうだ。しっかり抱いていてあげるからな」
「パパは起きてるの?」
「いや、彩香が眠ってから眠るよ」

 心地よい疲れの後の、ワインの酔いと満腹感・・・・
 彩香とオトコは抱き合ったまま深い眠りに落ちていた。

        ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 熱い淫靡な闘いの時間から一夜が明けて・・・・

 ベッドに、薄いレースのカーテンを朝陽が挿し込んでいる。
 そんな明るさの中で、二つのからだが絡み合っている。
 それもいま始まったばかりというわけではない。
 目覚めのあとのシャワー・・・・
 シックスナインになってのフェラとクンニ・・・・
 オトコが上になっての挨拶代りのジャブ・・・・
 その後の、彩香が上になった繋ぎ合い・・・・

 そんな一連の時が過ぎてからのことなのだ。
 やがてのこと、上に乗って腰を揺らしていた彩香が、焦点の
定まらない視線をオトコに向けて訴えはじめた。
 顔ばかりか、からだ全体が赤味を増し、レースのカーテンを
通して射し込む朝陽を受けて黄金色にかがやきはじめた。
 それでもオトコは動かない。
 上に乗って腰を揺らせ続ける彩香をみているだけだ。

「パパ、またイキそう! どうしよう!」
「我慢するんだ! もっと良くなるから・・・・」
「だってぇ・・・・もう・・・・」
「あと、もう少しだ!」
「だってぇ・・・・はやくイキたいのよう」
「彩香、パパの顔が見えるか?」
「あぁ・・・・ぼんやりしか見えないよう」
「まだ見えてるか。もう少し我慢するんだ!」
「だって、だってぇ・・・・ねぇ・・・・はやくぅ・・・・」
「いや、もう少しだ!」

 攻守所を変えてはやく上から突いてほしい・・・・
 とぎれとぎれの言葉は言外にそう訴えているが、オトコには
そうする気配がまたく見えない。
 彩香の様子を窺いながら、ひたすらはげまし続けるだけだ。
 彩香にはもっと高い愉悦の境地があるはずだ、そして自分は
彩香をそこまで持ち上げてやれる、という自信があるようだ。

「まだ・・・・まだまだだ!」
「パパぁ・・・・もうだめ~っ、だめよ~っ」
「まだまだ、がまんするんだ!」
 もちろん、オトコは下から見上げているだけではない。
 絶えず言葉をかけて彩香を励ましているのだ。
「もっと動いて! もっといい気持ちになるから」
「もう動けないよう。腰が、腰がぁ・・・・」
「腰がどうしたんだ?」
「腰がしびれて動けないよう」
「それじゃ、下から・・・・」

 両手を動員して、あちこちにあるスウィートスポットを探り
つづけながら、下からはげまし続ける。
 そして、時おり下から強烈な突きをいれる。
 自分の体力を温存し、自分の高まりを抑えながら彩香だけを
目指す所まで押し上げるのには一番いいラーゲなのだ。
 オトコに励まされ、しかたなく腰を動かしつづける彩香だ。
 少しでも動きを止めたら、せっかくあと一歩の所までたどり
着いた高嶺から滑り落ちてしまいそうになるからだ。

 やがて彩香の手が宙を泳いだ。
「パパの・・・・パパの顔が見えないよう!」
 オトコの顔を手探りで探しているその様子には、フリをして
いる気配など少しも見えない。
 オトコの腰が二度、三度と跳ねあがり、秘奥を突き上げた。
「いや、いやーっ!」
 突っ伏してオトコにしがみついた彩香のからだが震えた。

 そこで初めてオトコが動いた。
 そこにいるのはいつもの優しさをかなぐり捨てたオトコだ。
 息も絶え絶えになった彩香が横たえられた。
 まるで骨のないタコのようになった彩香の両脚がいっぱいに
拡げられてクレバスがあからさまになった。
 今まで肉棒を咥え込んでいて開き気味のクレバスが開かれて、
現れたホールを目がけて一気に肉棒がねじり込まれた。

「あううーっ・・・・」
 攻守所を変えて、オトコが彩香を攻め始めた。
 あえぎ声、泣き声、そしてうめき声の合間に彩香が訴える。
「パパ! 真っ暗だよう、何も見えないよう」
 焦点の定まらない目がオトコを探して泳いだ。
「パパ、どうしよう、怖いよう!」
「大丈夫だ! こわくなんかない!」
「だって・・・・なにも・・・・」
「大丈夫! もうすぐ見えるようになる」
「あぁ・・・・いやぁ~っ・・・・」

 悲鳴を上げた彩香の両腕が宙を泳いだ。
 脳裏に刷り込まれた記憶を頼りに何かを探しているのだ。
 その時に備えてしがみつくオトコのからだを・・・・
 返事に代えて、彩香の両腕がオトコの首に巻き付いた。

「彩香、まだ聞こえるか?」
「もう行くぞ! いいか?」
「いい・・・・いい・・・・早くキテぇ!」
「わかった。もう少しで行くぞ!」
「あうぅ・・・・あうぅ・・・・あうぅ・・・・」

 彩香から声は失われたようだ。
 彩香がオトコにしがみついた。
 耳元にその声を吹き込まれ、まもなく訪れるだろうその時を
予感して、それに備えたようだ。
 それなのに、さらにオトコの腰が様々に動きつづけた。

 やさしげな抽挿に変わり・・・・
 かと思うと突然たたきつけられ・・・・
 そして、またまたすり合わされて・・・・
 肉棒を突き挿したまま動きを止められ・・・・
 また、合図もなく突然うごき始めたり・・・・

 オトコは一気にフィニッシュを迎えるつもりはないようだ。
 自分はイカず、そして彩香には醒めさせず、彩香におねだり
を続けさせるつもりのようだ。
 イク寸前までいったのに攻めを緩められ、期待を裏切られた
彩香が、オトコの首に巻き付けていた腕が自然に解け、それが
宙をおよぎ、さらにシーツを掴んでからだをよじらせ、彩香は
なおも訴え続けた。
「パパ、どうしよう」
「大丈夫だ! パパが一緒だ!」
「パパ、こわ~い、こわいよー」
「怖いことなどないんだ!」
「あぁ、ああぁ~っ」
「もうすぐだ!」
「もうだめよ~っ!」

 宙を泳いでいた彩香の両手をオトコがつかんだ。
 組み合わされた両手を梃子にオトコが上半身を仰け反らせた。
 その反動で彩香の腰にオトコの腰が叩きつけられた。
「いまだ! 一緒に飛ぶんだ!」
 うめき声とも荒い息づかいともつかない声のあと、彩香から
言葉も声も消えた。
 もはや、彩香の胸が激しく上下し口がパクパク動くだけだ。
「パパが一緒だから、大丈夫だ!」
 オトコの腰が彩香の腰に軋むように擦り合わされた。
「あぅ、あぅ、あぅ・・・・」

 ただパクパク動くだけの口から洩れる呻き声の後、ふたりが
つながった辺りは静止画像を見るように動きを止めた。
 言葉にもならない声を最後に、彩香から力が抜けた。
 目には見えなくても、おそらくふくれ上がった肉棒が秘奥を
直撃し、オトコのエキスが噴射されたことは間違いない。
 それも、昨日からも含めれば三度目の・・・・

 しかし昨日から今日まで、彩香の脳裏から、オトコの上京が
いつもより一週間ほどずれていたことは消えていた。



     エピローグ

 美穂のブティックの旅行から二ヶ月あまり過ぎたある日・・・・

「あなた、最近、彩香がおかしいと思わなかった?」
「ん? なにも気付かなかったなぁ」
「そうよね。彩香にはたまにしか会わないんだものね」
「それで、どうおかしいんだ?」
「顔色が良くないし、食欲もあまりなさそうだし・・・・」
「そりゃ、年ごろだから、そういうこともあるだろ」
「それが・・・・」
 美穂が口ごもった。
「それが? それがどうしたんだ?」
「どうも、赤ちゃんが出来たみたいなの」
「ええっ・・・・本当か?」
 オトコが絶句した。
「彩香の話を聞いたら、間違いなくつわりだわ」

 しばらく声を失っていたオトコの顔がゆがんだ。

「あなたの気持ちは判るけど、何も言わないでね」
「どうしてなんだ? 父親なんだぞ」
「彩香が『パパにだけは絶対に言わないで』と・・・・」
「それで・・・・相手はだれなんだ?」
「心当たりはあるけど、名前は絶対に言えない、って」
「どういう男かも言わないのか?」
「いつだったか、合コンとかで遅く帰ってきたことが・・・・」
「それじゃ、その時の男なのか?」
「それが、そうじゃなくて奥さんがある男性らしいの」
「それじゃ、どうするつもりなんだ?」
「結婚できない相手だったら、決まってるでしょ」
「うーん・・・・」

             華麗なる近親相姦(終わり)

華麗なる近親相姦の結末

華麗なる近親相姦の結末

  • 小説
  • 長編
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2012-04-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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