雨つぶ
夏よりも冬にちかい秋の日。
おうちのなかで男の子がつみきをつんでいます。
いつもなら、お母さんといっしょに公園へいくのですが、今日は雨がふったので、おうちであそんでいるのです。
おうちのまどが、かたかたとなりました。
まどが、小さくうごいています。
お外の風がつよくなってきたようです。
男の子は顔をあげてまどをみました。
雨つぶが、風にふきつけられて、まどを、たんたん、たんたん、とたたきはじめました。
男の子はそのようすをじっとながめていました。
そして、しばらくすると、男の子はいいました。
「お母さん、いれてっていっているよ。」
お母さんは台所で夕飯のじゅんびをしています。
「お母さん。ねえ、お母さん。いれてっていっているよ。」
「なあに。ぼうや。」
お母さんは男の子の声が、よくきこえないようです。
「あのね、お外がびゅうびゅうと寒いから、いれてっていっているの。いれてあげてもいいのかな。」
お母さんは男の子の声がよくきこえませんでしたが、「ええ」となまへんじをしました。
男の子は、たちあがってまどの下にいきました。
そして、「それ」と背のびをして、まどのかぎをはずし、「いち、にの、さん」と、まどを大きくひらきました。
とたんに、びゅうびゅうと強い風が大きな雨つぶといっしょにおうちにふきこんできました。
「まあ、まあ、まあ。ぼうや、いけないよ、いけないよ。」
お母さんは台所からとんできて、すぐにまどをしめました。
「ぼうや、こんな日にまどをあけてはいけなよ。ほうら、こんなにぬれてしまって。」
ふきこんだ雨にぬれた男の子は、少し不思議そうな顔をしましたが、だまっていました。
「さあ。ふいてあげるから、ちょっとまっていてね。」
そういって、お母さんは、からだふきをとりにいきました。
男の子は、お母さんがしめたまどをひとめみたあと、じぶんの手のひらを見つめました。
そして、手のひらについた雨つぶに、「さむかったね。でも、もうだいじょうぶ。」といいました。
雨つぶ
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