おんなの子としあわせ

おんなの子はつかれていました。
こころもからだもへとへとでした。
ときどき、とてもくるしくなって
こきゅうがむずかしくなりました。
そんなときはゆびをくんで、
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
と、となえました。
ほんとうはだれかの手をにぎりたかった
けれど、おんなの子がにぎることの
できた手はじぶんの手だけでした。

ねむるときは、まいにちお礼をいいました。
そして、おねがいしました。
「かみさま、きょうも1日をおえることが
できました。あしたもちゃんとうごくことが
できますように」
おんなの子はあたたかいおふとんに
つつまれてねむることが
いちばんのしあわせでした。

おんなの子はだれにもつかれている
ことをいいませんでした。
だいすきなおかあさんにも
いいませんでした。
おかあさんにはじぶんしかいない
ということを、おんなの子はよく
わかっていました。
おんなの子はおかあさんがとおくへ
いってしまわないように、
いっしょうけんめいすごしました。
でもだんだんとじぶんはどうして
おかあさんのことがだいすきだったのか
わからなくなってしまいました。
どうしてとおくへいってほしくないのか、
わからなくなっていました。

おんなの子は、ときどきくるしくなりました。
その日はとくにくるしくなりました。
いつものようにゆびをくもうとしても
うまくいきませんでした。
てあしがおもうようにならないのでした。
おんなの子は、もうわたしは
おしまいなのかなとおもいました。
そうしたらとてもきもちがよく
なりました。
おんなの子はなみだをながしましたが
えがおでした。
おもうようにえがおになることは
できなかったけれど、えがおでした。

おんなの子は、しあわせになりました。

おんなの子としあわせ

おんなの子としあわせ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-11-11

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