あと一ヶ月

30日

 「別れる別れる詐欺」を繰り返しつつも早一年。正式に別れはしないが、遂に物理的に別れる局面を迎えることとなった。私が仕事で中国へ行くこととなった。
 男が仕事で本国を離れると言うとついていく女は多いが、女が仕事で本国を離れると言ってもついていくと言う男はあまり見たことがない。そいういう意味では、両者の間の価値観は概ね一致している。
 本当はついてきて欲しい。ついてきてくれたところでどうなるのかなんて分からないが、別れの日が設定されたことにより、会っている時間がより愛おしくなったのは事実だ。国を離れることが決まる前から、深く、きちんと愛しているという自覚はあったが、今は所謂「一分一秒が惜しい」。一緒にいると、つい別れの場面を想像してしまう。目が合うだけで愛しさがコップいっぱいになり、ぽろぽろとこぼれてしまう。いつからこんなに感情的になったのだろうか。生理前からだろうか。
 マンネリ化したカップルのどちらかには国外勤務をおすすめする。

あと一ヶ月

あと一ヶ月

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-19

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