ラストゲーム

ラストゲーム

空は雲一つ無い綺麗な水色で、太陽の日差しは今までに感じたことがないくらい強い日差しで、グランドの砂は砂漠のようにカラカラに乾いていた。

意識が無くなりそうになるそれでも投げ続けた

 「ストライク!」9回裏2アウトランナー一塁、2対1で勝ち越していた僕たちのチーム、僕が思いっきり投げたストレートが外角低めいっぱいに決まった。

夏の甲子園予選一回戦勝利まであと少し、息も上がって、体中から大量の汗が噴き出していた。マウンドにあるロージンを何度も何度も手につけてもすぐに噴き出してくる汗でベトベトになってしまう。

白球を握りしめてキャッチャーのサインを見る、高めインコースのストレート・・・。相手は4番打者僕は少し不安になったがキャッチャーを信じて首を縦に振った。

セットアップの状態で、キャッチャーミット目がけて汗のしみ込んだ白球を指先から離れるまでの感触をしっかり感じながら投げた。相手4番打者は待っていたと言わんばかりに腰を鋭く回転させて、今まで見たバッターの中で誰よりも鋭いバットスイングで白球をジャストミートした。

カキーン。レフトに物凄い勢いで打球が飛んで行った・・・。「ファール!」打球はぎりぎりポールを逸れた。心臓の鼓動が今までに感じたことがないほど高鳴っているのを感じた。

 次のキャッチャーのサインは外角低めのストレートだった。ノーボルツーストライクで追い込んでいる状況で三球勝負を要求してきた。

僕は首を縦に振り、これで決めると意気込んだ。一度落ち着くために天を仰いでそれからキャッチャーミットを睨みつけた。

今までで一番速かったと自分でも思うストレートが要求したコース通りに行った。しかし、相手のほうが上だった。4番打者はさっきとは違い上手にタメを作って腰の回転と手の動きをわずかにずらしながらコースに逆らわずにライトスタンドへ打球を運んだ。

一塁審、二塁審、三塁審、そして球審それぞれの手が頭上で回る。逆転サヨナラホームランだ・・・。僕はマウンドでがっくりと膝を落としてしばらく動けずにいた。

 そんな姿の僕を見て、三塁手のチームメイトが僕の肩に手を置いて「いいボールだった。しょうがない」と言ってくれた。僕は重い足取りで整列し、相手チームと挨拶をした。涙でろくに顔も見れなかったけど・・・。

 その試合で肘を壊してしまい野球ができなくなった僕は、今は一人のサラリーマンとして働いている。外で営業をしているときに快晴の空を見るといつもあの時のことを思い出す。あの日のラストゲームのことを。

ラストゲーム

ラストゲーム

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-19

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