見た目

見た目

見た目というものは非常に厄介なものである。なぜなら見た目の違いだけで、同じことをやったとしてもなぜか結果が違ってくる。

見た目に惑わされない人間など、この世に存在するのだろうか。

周囲の目それが私は怖かった・・・。

 私は生まれたときから肌の一部分がアザのように白く変色していた。場所は左頬の一部分と右手の人差し指から親指にかけての部分だった。

脱色素性母斑(だつしきそせいぼはん)という生まれながらの病気。それは健康に影響もなく、感染するものでもないため特になんの問題もない病気なんだけども、周りから見ればそれは薄気味悪いものだったのだろう。よくそのアザのことで周囲からいじめられたり避けられたりすることがよくあった。

そのため、好きな男の子ができてもその子は私を避けていたし、同じ女の子達は話しかけてもどこかよそよそしかった。

学生の頃はそんな周囲の態度に寂しさや悲しさを感じていたけど、時が経つにつれて少しづつそんな扱いにも慣れていく自分が居た。

 高校を卒業して社会人になった私は地元の町のスーパーに勤務することになった。その中で私が一番辛く感じていたのは、スーパーのレジ打ちの仕事だった。買い物かごに入っている食材を触るとき、お釣りを渡すときにお客さんのほとんどが私の右手のアザを見て嫌そうな顔をするからだ。

 そんな思いを感じながら今日もいつものようにスーパーのレジ打ちをしていると、私より2、3歳上ぐらいのお兄さんが買い物かごを持ってレジに来た。いつものようにレジ打ちをして、お釣りを渡すときにお兄さんが私の右手を見て少し驚いた表情をした。「あぁ~この人もか」と私が思っているとお兄さんは右手が触れるように私からお釣りを受け取りニッコリと笑って「ありがとう」と言った。私はそれが凄く嬉しかった。「あ~こんな人もいるんだな~」と思えることができた。

 それから、ときどき来るそのお兄さんを見るたびに「あ、今日も来てる」とか「髪型変えたんだ」とか「なんか、元気なさそう」だとか色々なことを感じていた。

 今でも私はスーパーの仕事を続けている。そのきっかけをくれたのは間違いなくあのお兄さんだった。「あ、いらっしゃいませーこちらで承ります」カレー粉が入ってるどうやらお兄さんの今日の夕食はカレーらしい。

見た目

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-16

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