ただしいこどものつくりかた
胸糞展開なのでご注意ください。
「触ると弾ける赤い実を250粒、切り口が双子の実を4つ、
尾びれのちぎれた小魚を1匹、誰の目にも触れたことのない白い卵を1つ、
お月さまの名前がついた香りの良い葉を280枚。
あとは、お前の僕に対する愛情。
これは決して疑いなく真摯な同意のもとに行われる必要があるのサ」
「待テ。何ノ話なんダヨ」
「こどものつくりかた、なのサ」
「……。……何デ?」
「“何デ?”、って……。欲しいって言ってたじゃないのサ、こども」
「オマエ時々本当にバカだよナ。会話の流レで起コりウる社交的な嘘ってモノがあるダロ」
「知ってるのサ!それ“社交辞令”っていうんだろ?」
「知ってイるナラ今すぐさっキの気違いじミた提案を破棄しろヨ。
モしくハここカラ出てイけ。ローアの前で下世話な話ヲされルのは不愉快なんだヨネェ!」
「そう焦るなって!卵以外の材料はツテをたどって譲ってもらったし、後はお前の受諾さえ整えば」
「分かっタ、カービィに割らレすぎテ頭が悪くナったんダロ。オマエ。
だカらヤるナらビッグバン起こすクらいにしとケって忠告したンだヨ。
あそコで格好ツけてズレたりスるカラ」
「モトを揃えるまではやったし、お前には魔方陣と練成用の鍋を用意してほしいのサ。
僕は地味で低級な魔法を使わないからな、依り代にする道具を持ってないのサ」
「今自分ガ相当失礼なセリフを使ってルって自覚しテル?
ソレにあの鍋はハルカンドラの塵がツイてるかラ、一度洗浄しなイと」
「それじゃあ傾いたすみれと緑の星が巡る、4週目の夜までによろしくやってちょーよ!」
「聞けヨ!聞けヨォ!そしてソレってイツなんだヨォ!!
待テ!ドアから出てイけって!マルク!ドアー!!」
***
「――触ると弾ける赤い実を250粒、切り口が双子の実を4つ、
尾びれのちぎれた小魚を1匹、誰の目にも触れたことのない白い卵を1つ、
お月さまの名前がついた香りの良い葉を280枚。
あとは、お前の僕に対する愛情。
これは」
「決シて疑いなク真摯な同意のモトに行われる必要があるんダロ。
そんナモノどうやッテ確かメるんダヨ」
「コレ。嘘なら金に染まるし、まことなら銀に染まるのサ」
「……シート?ソレにシてハ繊維が粗いナァ」
「馬鹿じゃねーの。
粗い目の間に魔力を通して、皮膚から放出される微かな熱をふるい分けて光らせてるのサ。
嘘なら魔力がそのまま熱を下に落とすから金に光って、
本当なら対象そのものの色、お前なら銀にピカってなるってわけなのサ」
「ソレ、……使えるノ、オマエくらいだと思うヨォ」
「何のための魔力だと思ってるんだよ。ほら触るのサ、早く」
「待っタ!待っテ!マダ心の準備ガ」
「……」
「……。……。……ナンダヨ」
「いや、……こう、目に見える形で……出てくると、……の……サ」
「……ウルさいナ。単なル好奇心ダヨ。ソレ以外に理由なンか」
「でも、……作れるといいのサ、こども」
「……そうだネェ」
***
「マホロア、魔方陣はもっと左下にずらすのサ。それだと符号が安定しない」
「うるサいナァ、コッチだと天井の印が消えルだロォ!だっタラ印の部分ヲ鍋かラ5センチ」
「だから印と位置を天秤にかけて考えろって言ってるのサ、アホロア!あ!そっち書き足せ!今すぐに!」
「ゴチャゴチャにナって美しくナイ!コんなゴテゴテの魔方陣ナンか発動させてドウするんだヨォ!!」
「こどもつくるって言ってるだろ!ほんっと頭がコチコチカッチンお時計さんなのサお前は!」
「黙れアホマルク!顎カチ割っテ目玉焼きニして食ベテヤル!」
「目玉焼きにピッタリなのはお前の方なのサ!クラウンがないとオニギリひとつ握れないクセに!」
「ジャアもう他のヤツとこどもを作れヨ!!魔方陣と鍋は貸スかラ!」
「……それは嫌なのサ」
「……。……何でダヨ」
「オマエとが、いいのサ」
「……(わけワカんないナァ)」
***
「触ると弾ける赤い実を250粒、切り口が双子の実を4つ、
尾びれのちぎれた小魚を1匹、誰の目にも触れたことのない白い卵を1つ」
「お月サマの名前がつイた香りノ良い葉ヲ280枚」
「あとは、お前の僕に対する愛情」
「……。これハ決して疑いナク真摯な同意のもとニ行わレる必要がアル」
「さあ蓋をするのサ、マホロア。何も残せない僕たちの試みに」
「しっ……失敗スルみたいナ事言うなヨォ!」
「お前こそなのサ!これは呪いサ!お前魔術師なのに呪いも知らないのかよ!」
「ボクはまじナいじゃなクテ魔方陣と構成ガ得意ナノ!
オマエみタいニ無駄でゴチャゴチャした片付かナい魔法ハ嫌いナノ!!」
「……お前サ」
「なんダヨ、急に気持ち悪ク畏まッテ」
「こども、作ったら、なにしたいのサ?」
「ンー。そうだナァ。一般の手引書のヨうニ育ツのかドウか調べたいナァ。海にモ行きタイ。オマエは?」
「僕は、……」
「なんなんダヨ?言えヨォ!別に今更言い淀ムようナ事じゃナいダロ?……まっまサか召喚ノ生贄ニ」
「……お前の作ったおもちゃで、お前と子供と僕、……3人で一緒に遊びたいのサ」
「ヘ?」
「お前の持ってる本に書いてあったのサ。そういうことを、して、みたい」
「……マルク」
「“かぞく”。ほしいだろ?お前も」
***
「モウ落ちつイた?マルク」
「マルク、吐くナら我慢しナいデ全部吐いた方がイいヨォ」
「こうイウのを見るノ、慣れてイなかったンだネェ。
キミってば経験ホーフみタいな会話スるカラ……ちょっト驚イたヨォ!」
「ソレにシても、ナにが足リなかったンだろうネェ?材料も、ボクのやる気ノ確認も、シたんダロ?」
「マルク。マルク。顔色、真っ青だヨォ」
「ボク?……ボクは、コういうの、前ニ見てイるカラ。……ドいて。ボクが、“あのこ”ヲ、片付けルヨ」
「“このこ”は、……ハルカンドラの“海”ニ任せルヨ。
……海?……アるよ。ただ、キミの思っている、海とハ違ウけドネ」
「マルク。ボク、マジナイが得意ジャなイって、言ったカナ?……アレ、嘘なンダ」
「ボク、マジナイが大好き。言葉を使ウ、色んナ魔術が、好きダヨ」
「……キミの思っテいる以上ニ、言葉ハ魔力を持ってイるンダ。望みがスギれバ、それハ返って災イにナル」
「キミはキミの言葉に捕まっタ。“材料が足りナイのデは?”という恐怖かラ逃げルためニネ。
キミは災いノ魅力に負ケタ。……プックク!マルク、キミはホント魔術師にハ向いテないネェ!」
「魔法ハ裏付ケなんか必要ナイんだッケ?ソレが魔法ダもんネェ。
でモ魔術ハ違う。
1ツの術ヲ完成させルためニハ、何万モの裏付ケが必要なンダ。
ソレが例エ、“否定さレたら正気デハいられナくなるヨウなこと”でもネェ。
否定を恐レテ確認を怠れバ、魔術は確実に失敗スるンだヨォ、マルク」
「術の途中デ笑いソうにナるのヲ堪えるノ、大変だったヨォ!
キミってば案外ロマンチストさんなンだネェ!クックック!」
「ああマルク。おバカなマルク!可愛クて可愛くてゾクゾクしチャウ!」
「ボクはキミに愛情なんカ持ってイルと思っタ?」
「……ウソウソ!そんナ顔しないデヨ。ボクたち、たったフタりの“かぞく”ダロ?」
「コォんなニ弱くテ可愛いマルクを、ひとりニするハズないヨォ!ズットズット一緒!大好きだヨ、マルク!」
「ソウだ!さっさとコんナの片付ケて、今度ハ絶対失敗シない方法、教えるヨォ!……約束すルってバ!」
「サァ“海”ヘ行こうヨ、マルク!嬉しいダロ?“かぞく”で行ク、初めテでサイゴのピクニックだヨォ!」
ただしいこどものつくりかた