PHANTASY STAR ONLINE 2 時の狭間に 1st

零 プロローグ

六芒均衡の壱、レギアスによる絶対令によってある二名に対する討伐令が発動された。
各アークスは、討伐令の対象である者たちの元へと降り立っていた。

その後、この騒動の元凶が虚空機関の長であったルーサーによって引き起こされたとわかる。

自分の野望を絶たれたルーサーは、
怒りと自分自身の欲望によって
ダークファルス【敗者】と成り代わる。

しかし、六芒均衡の零や
新しく六芒均衡の四となった者、
そして討伐令の目標とされていた二名によって、
ダークファルス【敗者】となったルーサーを退けることが出来た。

しかしその過程において、
マザーシップ・シオンは消滅し、
新たにマザーシップ・シャオが起動する事となった。

あの事件から数日後。
アークスシップ内では混乱状態が続いていた。

壱 ショップエリア

「いったい、なんだったんだ…」
「これからどうなるんだよ…」

「うちらってどうなるんだろうなぁ…」
「アークスっていう組織自体どうなるんだ?」

各それぞれが現実に立ち返り、
今後の見通しや先行きの見えない不安からの
本音や心の声がダダ漏れな状況。

そんな声があちらこちらから聞こえる。

そんなこんなのアークスシップのロビーでの騒ぎの横で
若い二人のアークスが何やら
話をしている。

「ねえ、ティア。いったい何があったかわかる?」
「六芒均衡のレギアスによって絶対令が発動された後からは覚えて無いんだよね…」
「ティアもおぼえてないんだ…。ところで絶対令って何?」

ショップエリアの中央、モニュメントの付近で若く明るい女子の会話が響いている。

「あのね、パティちゃん。それでも情報屋を自称しているつもりなの…」
「アークス1番の情報屋、パティエンティアといえば、この二人!」
「このバカ姉!人の話を聞け!」

どうやら声の主は、アークス情報屋コンビのパティとティアである。それにしても相変わらず賑やかである。

「おっ、実のお姉ちゃんに向かってバカ姉とは…言うね、ティア。」
不敵な笑みを携えて、「バカ姉と呼ばれた」パティーが呼んだ張本人を見る。

「姉妹の縁、本当に切ろうかしら…」

とため息混じりにティアが言う。

「そろそろ、決めポーズとか決めた方がいいのかなー、セリフとか。カッコ良くがいいかなー、それとも可愛くのほうがいいかなー?」

パティは色々なポーズを決めながら、
色々なセリフを繰り出している。

「駄目だ…このバカ姉の相手してるとこっちもバカが伝染るよ…」

とティアは頭を抱えた。

「あれれぇ…ティアどうしたの?頭なんか抱えて。」

頭を抱えて、
しかめっ面しているティアに
パティが声をかけた。

「パティちゃんが実の姉と思ったら、なんだか頭が痛くてね…」

頭痛の種の姉、パティに返答する。

賑やかにやり取りしている姉妹のところにまた若いアークスが声をかけた。

「あのー、パティさん、ティアさん。センパイってどこ行ったか分かります?」

ポーズを決めていた、パティーは振り返ると

「ん?ああ、イオ!で、センパイって?」

と返した。
すかさずティアが

「もう、パティちゃんは喋るな…ええっと、センパイってあの人でしょ?」

と的確な答えを返す。

声をかけてきたのは、オッドアイが特徴的なデューマンのイオである。

「俺、センパイに謝りたくて…」

「俺」って言っているが、イオはれっきとした女の子である。デューマンの特徴でもある角が、しっかり2本ある。

「あの人に謝るって、どうしたの?」

しっかり者のティアが聞き返す。

「なんか、壊したの?それとも、何かやらかした?」

ポーズを止めたパティは自分がいつも怒られて謝る内容を思い出して訊ねる。

「パティちゃんと一緒にしないの。で、何があったの?」

ティアがパティに一喝し、イオに再度訊ねる。

「絶対令だったとは言え、センパイに対して、俺…」

イオが泣きそうな声で続ける。

「センパイに弓を向けてしまった…みんなのために動いていた、センパイに…」

そう言っている途中で
とうとう泣き出してしまう。

「ちょっとちょっと。こんなところで泣かれたら、私たちが泣かしたみたいじゃん!」

泣き出したイオを見て、パティが慌てる。

「パティちゃんは黙る!」

実の姉を一蹴し、ティアは続ける。

「でも、イオ。それは私たちも一緒。あの人に向かって、攻撃を仕掛けようとしたのは、みんな一緒。これは良し悪しでは括れない問題。」

イオの頭を撫でながら、ティアが話しかける。

「絶対令で操られ、本当のことが分かったのはこの騒動のあと。それもつい最近のことなんだし。現にあたし達も、討伐令を受注していたわけだし。」

続けて、一蹴されたパティも一緒に慰める。

「パティちゃん…絶対令、知ってたんじゃん…」
「ふふふ、お姉ちゃんを嘗めるなよって。でも本当に舐めちゃ嫌よ。」

不敵な笑みを浮かべるパティ。

「フィリアさんに、バカ姉の頭をなんとかしてくださいって頼んでおけば良かった…」

またティアは頭を抱える。

「絶対令で、バカ姉との縁切りたい。」
「ティア、なんか言ったぁ?」
「クスクス」

パティとティアのやり取りを聞いて、イオが笑い出した。

「やっとイオ、笑った。」

明るい声でパティが言う。

「イオ。多分あの人はあの子の付き添いで、メディカルセンターにいると思うよ。」
「あの子って、マトイちゃんだっけ?アークスシップ内で、テクニック使えちゃった子だよね?」
「そう。あの人と今回の騒動に巻き込まれて。その後、なんかあったみたい。マトイちゃんがメディカルセンターにいるって話し聞いたから…」

情報屋らしく、パティとティアがイオに告げる。

「メディカルセンターか。ありがとうございます、俺行ってみます。」

元気にイオがパティとティアの二人に手を振って、ゲートエリアに向かって行った。

「人気投票1位のイオちゃんは笑顔が一番だね。」

ティアがイオを見送りながら言う。

「人気投票、上位に入りたかったなぁー」

パティーはそんなこといいつつも

「てか、ティア。騒動の前と後で、シップの中、変わってない?」
「うん。どこって言われるとわからないけど、前と変わった気がする。」

キョロキョロと情報屋の二人は、シップの中を見渡している。

「やっぱり、情報屋を名乗っているだけあって、あの二人は気づくんだね。」

ショップエリアの一番高いところから、少年の姿をした人物が呟く。

「うーん、シオンが作ったのを真似して内部構成したけど、完全には再現するのは、難しいね。」

腕組みしながら少年の姿をした人物がさらに、

「システム・シャオもまだ未完成ってことだね。さて、やることもあるし。」

少年の姿をした人物こそ、失われたシオンの代わり、マザーシップ・シャオの実体である。

(全管制管理・全演算機能、正常作動。システム・シャオ、了。)

「さて、レギアスに呼ばれてるし行こうかね」

シャオはシステム点検を済ませて、レギアスの下へ向かった。

弐 メディカルセンター

「これから、次の検査に入ります。マトイさん、大丈夫ですか?」
「フィリアさん、大丈夫です。」

マトイとフィリアのやり取りがガラスの向こう側で聞こえる。

「ローラ、検査始めるから操作盤の前に行って。」
「はい、はーい。よいしょっと。」

ローラは操作盤の前に座り、レバーやらボタンやらを弄りつつ、画面を確認する。

「フィリア。こっちも準備おっけーだよー。」

ガラスの向こう側にいるフィリアにローラが告げる。
マトイを機器に座らせて、測定器を取り付けると、フィリアもガラスのこちら側へ戻ってくる。

「では、マトイさん。始めますね。」

マイクを通して、フィリアは告げ、

「フォトンの所有量と固有形体、属性値とフォトン係数を計測。」
「はーい。」

フィリアは、画面を見ながら指示を飛ばして行く。

「終わったら、体幹バランスと筋肉バランスを。」
「はーい。」
「次は、神経系伝達を。」
「はーい。」

次々と画面に検査・計測の値が羅列されていく。

画面には、
計測した値が次々に並び、
比較するデーターが同時に並列する。

「フィリア、なんか違和感ある。」

ローラが画面に羅列された値を見て告げる。

「この値って、第三世代アークスじゃなくて第二世代アークスに近いよ…いや、近いだけで一緒では無いよ…」

フィリアも同じことを思った様子で、

「ここの値も不可思議な数値が出てる…何の値なんだろう…第三世代でも第二世代にも無い数値がある…」

フィリアが比較表示されている数値を
指し示しながら呟く。

ローラがそんなフィリアを見て、

「ねえ、フィリア。あの人に相談してみる?あの人なら、何か答え見つけてくれると思うよ。」

と告げた。

「そうねぇ…相談して見ましょうか…一緒に行動していたあの人なら、何か答えなり、分かるかもしれないわね。」

フィリアはそう告げた。

「フィリアさん?」

ガラスの向こう側から
マトイが心配そうに声をかけてきた。

「あっ、ごめんなさい。マトイさん、今日のところは、お終いにしますね。」

フィリアはマトイにそう告げて、
検査室に入り、
検査・計測機器を外していく。

「次回はまた連絡します。通信方法は覚えてますね。」

フィリアはマトイに質問してみる。

「えーとぉー。こうしてこうするんだよね。」

マトイは言いながら
通信システムを立ち上げて
実践してみせる。

「大丈夫ですね。」

フィリアは笑顔で告げて、

「あの杖は、私が預かっておきます。必要なときは私のところに来てくださいね。」

と続けた。

「はーい。フィリアさん、ローラさん、ありがとうございました。」

マトイは頭を下げて、ロビーへと駆けて行った。

「さて、結果を記録してからシステム点検しましょ。」

フィリアは、画面をなぞりながらローラに話しかける。

「ローラ、マトイさんのフォトンって…この波形値だと…」
「えーと、フォース適応だね。エコーさんに似た波形値してる。」

ローラが画面に再度、計測値を出して言う。

「エコーさんに似た波形値かぁ…やっぱり第二世代アークスに類似するんだ…」

フィリアは考え深そうに呟く。

「でも、第三世代アークスとも類似すんだよねー。」

ローラは画面から
フィリアに向き直りながら言った。

「だけど類似してるだけで、一致していないんだよね…どの世代とも…」

フィリア、ローラ二人同時に首を傾げて画面を見比べている。

「画面とにらめっこしててもしょうがないし。入力終わる、ローラ?」

とローラの方を見る。

「終わってるよ。ねえ、フィリア。」

と操作システムを閉じながら
ローラが尋ねる。

「どうしたの?何か疑問?」

フィリアが体の向きを変える。

「これさー、何なんだろうー。」

とローラはマトイのあの杖を持ち確かめている。

「うーん、マトイさんがフォース適応だから…多分、テクニック使用出来る導具だと思うけど…不思議な形なのよね。」

フィリアもあの杖のそばまで行き、確かめている。

「やたらに弄って、壊してしまっては大変ですし、しっかりと預かっておきましょうね。」

そう告げて、フィリアはあの杖を持ち奥へ消えて行った。

「うーん…、あれってクラリッサに似てるんだよなぁ。多分違うと思うけど。」

とローラは呟き、フィリアを追って行った。

参 ゲートエリア


各カウンターは騒動以降、数日経っても休止のままだ。

「これって、今までのとどう違うの?」
「これが、今までの通信装置で、こっちが管理画面です。」

レベッカとコフィーがやり取りをかわしている。

マザーシップ変更によって、システム変更も発生。この機会に改変を行うことなり、さらに混乱が生じていた。

「パスの発券装置って、こっち?」

プリンが叫ぶ。

「発券装置はこれ。あとこれが新しい部分。」

プリンにコフィーが説明する。

「新しい部分って、テストシップ・エスとの連動用でしょ。」
「そう。管理官も任用して運用する。」

コフィーはプリンにそう答えて、

「今回から、シップ11・エスとしての本格運用になるから、今回以降、連動運用する事になる。」

コフィーはプリンに告げ、

「ファイナ、そっちはどう?」

と少し離れたところにいるファイナに声をかけた。

「こっちは通常の依頼画面と連動設定しているだけだから、もうすぐ終わる。」

とファイナは返す。

「レベッカとアンネリーゼは、ファイナと連動設定の試験を行ってください。」
「はい!」

コフィーの指令に、一斉に返事する。
そして、こちらへ向かってくる人物に声をかける。

「セラフィー、待ってたよ。」
「コフィーさん、お久しぶりです。」

こちらへ向かってきた人物こそ、テストシップで、管理官となったセラフィーであった。

「私が管理官のままで大丈夫なんですかね?」

セラフィーが困り顔で、コフィーに話しかける。

「セラフィー、またあなた、そんな顔しないの。」

コフィーがセラフィーのおでこを突っつきながら続ける。

「不安や緊張もあるだろうけど、そんな顔してたら、アークスの皆さんが不安になります。」
「そうですよね、しっかり頑張ります。ところで…」

セラフィーがキョロキョロと辺りを見渡して続ける。

「うちのテストシップでも、優秀な功績をあげている、あの人は…?」
「多分、忙しいと思う。あれだけのことがあったし…」

そういうコフィーは少し憂いを帯びた表情で話を続ける。

「あの時、私達は何も出来なかった。見ていることしか、出来なかった。」

罪悪感に苛まれたような顔で
コフィーは続ける。

「見てるだけでなく、討伐に向かうアークスを送り続けてしまった。」

カウンター内の管理官全員が
痛いところをつつかれた顔に変わる。

そんな雰囲気を変えるように、

「でも、その事があったからこそ今の私達があるのではないでしょうか?」

セラフィーは困り顔ながらもそう告げた。

「例え私たちの行動していたことが間違っていたことだとしても、あの人なら一括一蹴しそうですよ。」

そんなセラフィーの言葉に、
フィリアは

「そうね、落ち込んでいてもしょうがないわね。さあ、再開に向けて一踏ん張り頑張りましょうね。」

そう気合い入れるように言った。

「そういえば、カリンはどうしたのかしら?」

コフィーは辺りを見回して聞く。
エクストリームクエストを管理している
管理官のカリンが見当たらない。

「多量の部品やらパーツやらを抱えて何度も往復して、今さっき奥に入って行きましたよ。『よしよしよしよし、とてもよし』ってとてもご機嫌そうでしたよ。」

レベッカが画面と操作システムを閉じながら、コフィーにそう伝え、

「各連動設定と試験、終わりました。エラーやバクはなく、正常作動しています。」

と報告した。

「ハァ…相変わらずね、カリンは。あの子はどこまであのクエストを自分たち好みにしていくのかしら…」

ガクッと肩を落とすコフィーに対して、

「今も昔も変わらないってカリンのことを言うんですね。カリンだけ、過去も現在も未来も気にしていませんもの。」

とセラフィーは笑う。

「あの子ももう少し、管理官であるなら現在と未来は気にして考えて欲しいんだけども…」

とコフィーは呆れながら言い、

「さあ、カウンター開けて、業務再始動しますよ!皆さん、お待ちかねです。」

気合いを入れた声で、みんなに告げる。

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  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-19

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. 零 プロローグ
  2. 壱 ショップエリア
  3. 弐 メディカルセンター
  4. 参 ゲートエリア