いつか・・・

いつか・・・

今までの蓄えではなく、
完全新作として、爆走しています。

2015年8月17日(月)開始

主人公は現実逃避中の引きこもりニート

28歳 男

とある事から、PCゲームを始める。

大きめのゴーグルの中にディスプレイを搭載、
頭から被り、USB接続し、
自分の向いている方向へ視界が移動、
約270度範囲を自分で見渡せる

手元にはUSBコントローラーで
攻撃、アイテム使用、錬成など、
RPGではありきたりの操作が可能

しかし、
サービスは長く続かず、
僅か半年で終了する事となった。

主人公は、
ログインしたまま

“寝落ち”

サービスが終了していた・・・筈だった。

いきなり厳しいです


やべ・・・寝落ち・・・え?

「時間・・・あれ?
 ディスプレイ・・・?
 え゛っ!?」

ゴーグルが無いっ!?

「嘘だろ・・・。」

兎に角装備品を確認する

「ノーマルプレート一式は、
 着てる
 バスターソードもある、
 カイトシールドも、
 げ・・・。」

本当にそれだけしかなかった。

「食料品やら、
 回復アイテムやら、
 追加スキルの回復魔法やら、
 何にもない・・・。」

あの辺のアニメだと、

頭で浮かべたり、

コンソールはそのままだったりするけど。

「非常に不味い。」

第一に食料確保と、拠点確保か・・・

「太陽は?ぁ~。」

そこは設定のまんまなんだな、

“二つある”

「運が良いのか悪いのか、
 街道っぽいのが見えるし。」

定番だと、誰かが襲われてたり、

な~んて・・・ないよな?

正直、戦える自信ないよ?

精々の分隊長程度レベルしかなかったし。

「っても、指示はコマンドだし、
 ちゃんと指示出しなんてした事ないし・・・。」

ぶつくさ言いながら街道へ歩く。

「街灯は無し、か。」

往来があるのか、

そこだけ雑草が生えてなく、

足跡も様々確認できた。

「足先が向いてるのは?」

ごちゃごちゃしていたが、

かなりの数が。

「あっちか。」

見える範囲、緑の丘だらけ。

「確か、ゲームのままなら、
 近い範囲で戦争中だったよう気が・・・。」

こんな格好でいったら、

敵と間違われて、

そこでアウトーだよな。

「なら、逆はぁ・・・。」

見なきゃよかったな。

いろんな馬車やら、

そこら辺の枝かなんかだろう、

杖がわりに歩って来る・・・。

一旦、雑木林へ隠れる。

「うぇ~・・・。」

雰囲気からしても、

敗残兵と敗戦国的な雰囲気ばりばり、

これは不味い。

「パターンで考えると、
 あれだよなぁ~。」

戦勝国が追撃隊を出しているだろう、

このまま見逃して、

後から来る戦勝国の追撃隊に。

「無理~。」

言葉も通じるかわからんし、

誰も喋ってないし・・・。

「どうすべ?」

真面目にどうしよう・・・。

見つかりました

そりゃぁ・・・見つかるよなぁ・・・。

「えっと・・・、とりあえず、
 言葉通じてますか?」

『・・・貴様、何者だ?』

「よかったぁ~、言葉は通じる、
 俺は・・・。」

あ、どうしよ・・・。

『見た事がない装備だな、
 皇国軍ではないし、帝国軍でもない、
 どこの装備だ?』

「え?ぁ~・・・、
 試作型なようなもんです。」

『試作型?』

「はい、一応、
 鍛冶屋をやってたんですけど、
 いろいろ野盗やら、
 どこかの軍だかに襲われて、
 逃げてきた次第で・・・。」

通るかな?

『そうか、済まなかった、
 我々はエフェメール国、
 小さな海岸に位置する小さな国だ、
 とは言え、今はただの敗残国、
 僅かな軍勢と、
 避難できた市民達を連れて、
 内陸の交流国、
 ムスクス公益国に向かっている道中だ、
 どうだ?君も一緒に来るかい?』

「・・・そうですね、
 なにせ、路銀、食料などなど、
 みんな失いまして、
 この装備だけが、俺の所持品です、
 俺の名前は『言わない方が良い。』え?」

『今は、特に言わない方が良い、
 みな、
 “誰かのせいにしたくて”
 たまらないのだ。』

「これだけ静かなのは、
 その名前の持ち主に
 “全てを擦り付けたい”ですね。」

『そうだ、
 無事、ムスクス公益国に着いたら、
 その時に聞かせてもらうよ。』

「わかりました、
 微力ながら、随伴、
 市民の護衛に参加します。」

『護衛・・・ふっ、
 久しぶりに聞いたな護衛なんて。』

「隊長・・・さん?」

『ん?あぁ、私の事か、隊長で構わない、
 どうした?』

「いえ、エフェメール国から、
 どれだけのペースで、
 ここに着いたのかな、と。」

『そうだな、
 市民の休息も兼ねて、
 10日は経っているな、
 それが?』

「襲って来たのは、皇国軍?帝国軍?」

『帝国だ、宣戦布告も無く、
 完全に奇襲され、逃げ堕ちて・・・。』

「彼らの進軍速度は、
 この市民の何倍ですかっ!?
 急がないと!!」

『どうした?どう言う事なのだ?』

「追撃が必ず来ます!
 兎に角、市民を走らせ、
 軍馬に荷物を持たせ、
 機動力を確保してください!!」

『わ・・・わかった、
 伝令!!伝令!!』

『はっ!!』

『急ぎ、軍馬を集め、
 市民の重量物を運ばせろ!!
 市民は走らせ、
 ムスクス公益国へ急ぐんだ!!
 残存兵に伝えろ!!
 殿を勤め、帝国軍を迎え撃つぞ!!』

『軍馬をですかっ!?』

『そうだ!!
 なりふり構っている場合ではない!!
 急ぐんだ!!』

『りょっ!?了解!!』

初陣・帝国軍迎撃戦


『さて、君はどうするのかな?』

「まず、
 弓兵はどれだけいますか?」

『弓兵か、
 鍛冶屋では弓兵の武器も
 卸してたのかい?』

「いえ、
 いろいろ調べるのが好きで、
 弓兵もそれに入っているだけです、
 残ってる兵はどれだけなのか?
 打てるだけの手は打ちたい、
 それだけです。」

『若いのに、随分考えが違う物だ、
 是非とも生き延びて、
 ご教授願わねば!』

「よしてくださいよ、
 死にたくない、
 ただの悪あがきです。」

『悪あがき、か、
 そうかもしれないな、
 よし、君に残存兵力を全て教えよう、
 ついて来てくれ。』

「了解。」

やるだけ・・・できるだけ・・・、
あがいて見ますか・・・。

『これが、今ある戦力だ。』

騎馬戦車20 騎馬隊40

弓兵38 歩兵256

重装甲兵26 投石兵30

「騎馬戦車とは?」

『馬を二頭繋いで、カゴを牽引、
 操者と歩兵の二人で運用している、
 騎馬は
 そのまま馬上から切り伏せたり、
 ランスを使い、
 チャージにて貫くのを基本だ、
 重装甲兵は大型の盾を使い、
 分厚い鎧で斬撃を防ぐ、
 まさに盾の存在です。』

「帝国側は?」

『今、偵察を走らせている、
 時期帰って来る・・・ん?来たか。』

『緊急伝!!帝国軍は、
 歩兵おおよそ5000、
 騎馬隊200、魔術師数名と
 指揮官が一人、確認できました!!』

「魔術師?攻撃、防御、
 これはどちらが可能ですか?」

『魔術師は治療を主にし、
 攻撃に使える魔法はさしてない、
 使うには、
 よっぽど修練を積んだ魔術師だけだ。』

「なら、戦車を解体、
 騎馬隊は、魔術師を強襲、
 重装甲兵は解体した戦車を間にはさみ、
 防御範囲を広げる、
 歩兵はすぐ後ろに備え、
 迎撃準備、
 投石隊は、市民の誘導、撤退補助、
 兎に角ムスクス公益国へ急がせ、
 弓兵は、残り矢の残量を正確に報告、
 最大射程にて一斉射、
 次いで、重装甲兵に敵歩兵が接敵、
 そのタイミングで
 全力斉射、
 絶え間なく撃ち続けましょう。」

『戦車を解体するのか、
 その分の損失が痛いが、
 今出来る事をやろう、
 しかしこれでは。』

「この地図によれば、
 少し先に狭い街道があります、
 丘の上からの強襲に備えつつ、
 ここで迎撃します、
 奴らに丘から挟撃する考えを
 持った奴がいない事を祈りましょう。」

『賭け、だね?』

「戦争に、確実なんてないですし、
 卑怯だろうがなんだろうが、
 この戦闘での目的は
 “生き延びる事”
 “追撃を諦めさせる事”
 この二つです、
 これだけは厳守して欲しいのです。」

『追撃を諦めさせる、か、
 そんな事、考えもつかなかったぞ?
 こんな事を考えられる君は一体?』

「さっき、ご自分で、
 無事生き延びたらって、
 言いましたよね?」

『そうだな、
 そうだったな、では、行こうか。』

「自分も、
 余ってる弓兵の装備をください、
 何分、
 近接戦闘は経験が少ないので。」

『あぁ、装備は余っている、
 好きに使うがいい、
 ほら、こっちだ。』

帝国追撃戦

『ふん、
 なんで我(われ)が
 追撃なんぞやらねばならんのだ?』

「それは、
 貴方が余計な戦場を拡張、
 皇国軍、
 クレースト軍、クラースヌイ軍、
 この三つ巴状態での
 余計な戦場拡大は、
 “大飢饉を抱える我が国”では
 御法度だと、閣下から、
 厳命されてますよね?」

『わかっておる、が、
 奴らの港は
 小さいとは言え、豊富な漁場がある、
 関税はふっかけられ、
 莫大な金銭が行き交う、
 ならば、
 金銭的な負担を減らせると思い、
 エフェメール国を墜とし、
 我が領地とし、
 少しでも食料を本国へ送れると、
 そう思っての進撃なのだ。』

「ですが、
 大半の船を破壊され、
 漁業を再開するにも、
 運搬する為の資材も、
 全く足りていません、
 エフェメール国の市民は大半が老人、
 若者達はムスクス公益国へ避難、
 労働力を確保する上で、
 追撃、若者を捉えよ、と、
 閣下から
 直命を受けたのではないですか?」

『ぬぅ、わかっておる、
 しかし、なんだ?
 奴らは戦の基本を知らぬのか?』

「さぁ?エフェメール軍はここ最近、
 大きな戦争に参加していませんし、
 元々が小国、
 恐るるに足りませんでしょう、
 ましてや敗走を続けている以上、
 精神的に、体力的に疲れている筈です、
 “正面から突破”できましょうぞ。」

『おぅ!我らの王道、真骨頂!!
 中央突破こそが我ら帝国軍の花道だ!!
 全軍突撃じゃ!!』

「御意!!」

グルッペ街道迎撃戦

『配置の状況はっ!?』

『もうまもなくっ!!』

「まさか、
 10人で街道が封鎖出来るなんて、
 その分、
 丘側に重装甲兵を配置でき、
 丘を下ってくるであろう、
 強襲部隊にある程度対処出来ます。」

『そうなのか?
 しかし、向こうは乗ってくるかな?』

「来なきゃ困ります、
 両方から挟撃されたら、
 “全滅”するしかないですからね。」

『ぷっ!随分軽く言うね!!
 あははははははっ!?』

「それじゃぁ、
 手、握ってもらえますか?」

『ん?構わんぞ?』

『すまない。』

「いえ、でも、
 弓を射るぐらいには力はあります、
 “下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる”
 とある書物に書かれていた言葉です。」

『てっぽう?まぁ、
 数撃てば当たるはわかるな、
 1本2本ならともかく、
 100、200は盾と魔法ぐらいしか
 防ぎようがないからなぁ、
 逃げたいなら、構わんぞ?』

「ここに居る時点で、
 “退路なんてない”
 背水の陣って奴ですよ。」

『確かに、後ろは水ではないが、
 逃げ惑う市民がいる、
 逃げるわけにはいかんな。』

「だから、逃げません、
 てか、逃げてもお腹が空いて、
 行き倒れしますよww」

『あはははははっ!?
 ひぃ~ははははっ!?
 行き倒れっ!?あはははっ!?
 行き倒れか!!あはははははっ!?』

「流石に傷つきます。」

『いやいやいや、失敬失敬、
 くくくく・・・、
 んっ!んっ!!
 だが、少しばかり、
 緊張も解けた、礼を言う。』

「へ?」

『なにせ、私も、
 “初陣のようなもんだ”
 気にするなっ!!』

「胃が痛い。」

『ん?』

「いえ・・・来ます、
 地響きがこんなに通るなんて、
 実戦にでて初めてわかる空気ですね。」

『同感だ、
 だが、生き延びるのだろう?』

「もちろん、何も知らずに
 死にたくはありませんから。」

敵襲~っ!!

帝国軍だ!!突っ込んで来るぞ~っ!!

「よし、
 有志隊!!金属片をばら撒け!!
 騎馬隊を足止めだ!!」

『旗をあげよ!!始まるぞ!!』

おぉおおおおおおっ!!

『続け~っ!!』

「ゲイト隊長!!尾根の方で何かが!!」

『構わん!!突っ込め~っ!!』

おぉおおおおおっ!!!

『帝国軍、進撃速度緩めません!!
 突っ込んできます!!』

『よしっ!
 このまま「駄目ですっ!!」
 今度はなんだっ!?』

「有志隊へ命令!!
 尾根へ上り、挟撃を阻止せよ!!」

『なにっ!?今しがた、
 突っ込んでくると、
 お前が言ったばかりだぞ!!』

「いいですから早くっ!!
 有志隊は尾根を死守!!
 騎馬隊は全速力で帝国背後へ回れ!!
 魔術師を潰し!!そのまま反転っ!!
 帝国軍を挟撃!!中央突破しつつ、
 本体と合流!!
 ここまで生き延びたんだ!!
 根性見せろ!!解体した戦車を糧に!!
 防壁を崩すな!!重装甲兵!!
 耐えろ!!来るぞぉおっ!!」

『!?』

『あんな防壁!!蹴散らっ!?』

突如として馬が悲鳴を上げる。

「ゲイト隊長!!辺り一面に金属片がっ!?」

『なにぃっ!?』

しまったっ!?これでは馬が進撃できんっ!?

『総員馬を降りて進撃せよ!!』

『騎馬隊から次々と降りてきます!!』

「弓兵!!今だ!!放てぇえっ!!」

「なっ!?」

『盾を上に構えよっ!!来るぞぉっ!!』

『尾根より伝令!!強襲隊と交戦!!
 死守に全力を注ぐ!!です!!』

『なんだとっ!?』

「投石隊はまだ戻ってこないのかっ!?」

『早馬はまだかっ!?』

『伝令!!投石隊帰投!!
 尾根の有志隊と合流!!
 死守するそうですっ!!』

「順調過ぎるっ!?
 重装甲兵!!後退!!
 より狭い街道で帝国を迎撃する!!」

『下がるだとっ!?なぜだっ!?』

「いいですかっ!!
 確実!!絶対は!!
 戦場に当てはまらない!!
 それすらもわからないんですかっ!?」

『ならば!!
 なにを心配しておるっ!!』

「疲労です!!
 ここまでの行軍で補給もなく、
 精神も休められない!!
 長時間の迎撃戦は危険なんです!!
 だからこそ!!
 交代で重装甲兵を回し、
 歩兵は2対1を厳命!!
 決して、
 “一騎打ち”を
 考えないでください!!」

『ぐっ!?しかし、
 向こうがそれを「駄目です!!」』

「言いましたよね!!
 卑怯のへったくれもない!!
 勝たなければ!!
 生き残れない!!そして!!
 追撃を諦めさせる事が!!
 この戦闘での第一です!!
 それが嫌なら、
 “一人で討ち死にしてください!!”」

『貴様っ!?』

「全兵士へ伝令!!
 歩兵は2対1!!
 重装甲兵は3回耐えたら前後交代!!
 5歩ずつ下がれ!!
 弓兵は重装甲兵の前に矢を集中!!
 帝国兵の死体で街道を埋め!
 進軍を遅れさせよ!!
 尾根の有志隊!投石隊の状況知らせ!!
 早馬!!騎馬隊の誰かでも構わん!!
 常に状況を変化させ!!
 帝国の判断を狂わせろ!!
 急げぇえええっ!!」

『ぬぅううっ!!
 なんたる屈辱!!』

「隊長!!尾根からの救援要請です!!」

『なにぃっ!?』

「ゲイト殿、
 これは、不味いですよ。」

『うぬぬぬぬ。』

「緊急伝!!
 後方にエフェメール軍が!!」

『なっ!?』

『敵襲~っ!!』

「蹴散らせっ!!狙いは魔術師のみ!!
 駆け抜けよっ!!」

『不味いぞっ!?
 伝令はいないのかっ!?
 魔術師が狙われてるぞ!!』

「邪魔する奴は貫け!!蹴散らせ!!
 切り伏せろ!!
 エフェメール軍の意地を見せるのだ!!」

『伝令!!
 奇襲成功!!後方は大混乱です!!』

『よし!!』

「甘い!!魔術師の殲滅!!
 それが終わるまでは帰ってくるな!!
 尾根の情報はどうした!!」

『正気かっ!?』

『は!!
 尾根は投石隊、有志隊の死力に付き、
 押し返しつつあり!!
 まもなく!
 再占拠可能と報告があります!!』

「ならば、
 歩兵30ずつを尾根へ派遣!!
 街道内にいる帝国兵へ
 “尾根を駆け下り、
  挟撃を仕掛けよ!!”
 重装甲兵は、
 デルタ形態から、
 凹(おう)形態へ!!
 歩兵援軍!有志隊!
 投石隊の三隊にて
 挟撃を仕掛けよ!!」

『はっ!!
 タイミングはいかがなさいますか!!』

「火矢はあるか!!」

『ここに!!』

「歩兵!!一気に尾根を再占拠!!
 それと同時に
 尾根を駆け下り帝国を挟撃!!
 退路を断て!!
 狭い街道なら、戦えるだろう!!
 存分に戦え!!帝国の機動力は
 “動けるから有効なのだ!!”
 動けない敵はただの的だ!!
 怒り狂え!!ただただ!!
 目の前の敵を切り伏せるのだ!!」

あぁあああああああっ!!

『なんなんだコイツは!?
 本当に!?何者なんだっ!?』

ムスクス凱旋


『ぉぉおおっ!!見えたぞ!!
 ムスクス公益国だ!!着いたんだ!!』

「ぉ~・・・着いたぁ。」

『やりましたよ!!
 貴方のおかげです!!
 是非とも名前をお教えください!!
 あの激!!感動いたしました!!』

「なまえ?
 えっと、さ・・・砕月だ。」

『皆の者!!
 このサイゲツ殿が
 我々エフェメール軍を率いて、
 帝国軍を迎え撃ち!!
 敵の大将を討ち取ったのだ!!
 ここに宣言しよう!!
 サイゲツ殿こそ!!
 英雄の中の英雄だぁあああ!!!』

あぁ・・・うるさいなぁ・・・
だれが・・・えいゆう?おれ?まさか・・・

『サイゲツ殿っ!?』

そのまま俺は気を失い、
気が付けば何処かのベットに寝かされていた。

「ぁ~・・・。」

(気を失うって、
 寝る感じと一緒なんだなぁ)

あぁ、そうだ、人、

殺したんだよなぁ。

切った時の感触が・・・!?

「ぐっ!?」

ベットから飛び上がり、

目に付いたバケツに、

ありったけ吐き出した。

「げほっ!?げほっ!?」

う゛ぇ゛~・・・きっつ・・・。

「う゛~・・・っ!?」

ぜんぜん食べてないから

胃液しかでねぇ・・・。

こんこんこん

誰だろう?

「ど~ぞ・・・。」

『入るぞ・・・っ!?大丈夫かっ!?』

え?誰?

女の人に知り合いなんていませんよ?

「・・・だれ?」

『ん?あ、あぁ、私だ、
 ほら、
 君に兵力の残数を教えたりしたじゃないか。』

え~・・・って事は、

ド定番の、

隊長さんは女の子でしたパターンですか・・・、

うぇ~・・・一番嫌なパターンじゃん。

『ぅ~、覚えてないのか?』

うげぇ~・・・

垂れ耳が更に垂れ下がって・・・え?

「垂れ耳・・・犬耳?」

『ん?耳がどうかしたのか?』

「は?へ?ケモ耳・・・まじで!?」

『急に元気になったな、
 よかった、差し入れを持ってきたんだ。』

あぁ・・・腹減ってたんだっけ・・・、

てか、パンとかだよな?

『ほら、生肉と、堅(かた)パン、
 それにバターだ、うまいぞ♪』

「ぉ・・・おぅ。」

だぁ~っ!?慣れねぇええ!!

つか、

ぜってぇ慣れる訳がねぇ!!

傾けながらウィンクとか、

むりだろぉぉおおっ!!

『ほら、食え♪』

「はいはい。」

さて、

見た目はフランスパン・・・ぽい、

てか、そのものだな、

生肉・・・腹壊さねぇよな?

○露丸とか、ねえからなぁ・・・。

がりっ!

「かってぇ~。」

流石は生食鈍器、

本場フランス産顔負け並みの硬さだ、

やっぱ、日本のやらかいパン、

食いたいなぁ。

がりっ!がりっ!がりがりがりがり・・・。

「硬いけど、美味いな?」

『だろだろ♪
 この噛みごたえが堪らないんだ♪
 それにこの生肉はな?
 魚の骨を砕いて、
 練り餌に混ぜて
 育てた牛の肉なんだぞ♪』

牛?ホルスタイン?

あ、フラグだ、

小説を読みあさりすぎたせいで、

この先がある程度予想でき・・た、

けど!!

なんか、扉から覗いてるぅうっ!?


「あ、あの、
 扉にいる奴は誰だろうか?」

こういう時は、

こっちから仕掛ける方がマシ、

のような、気がする。

『なに?誰だ?扉を開けろ。』

あぁ、戦闘モードって奴ですね?

犬耳だから、闘犬かな?

でも、こんなぺたんこ耳は。

『わ・・・私です、姉様。』

ぉ~、年齢は12~16歳程度だろうか?

いわゆる成長期の僅かな期間の初々しい時、

やめよう、この考えは不味い、非常に不味い。

「妹さんか、
 お姉さんとは違った雰囲気だ・・・あ゛っ。」

しまったーーーーっ!?

つい言っちゃったーーーーっ!?

『え?本当ですかっ!?』

あれ?

『へ~、意外、はっきり言うなんて。』

え゛~・・・お前のほうが意外だよ!!

いきなりフランクに話しやがって!!

「そうかね?」

『そうよ?まず、私たちは“双子なの”』

へー、双子・・・双子?

「あぁ~、なるほど。」

言われて気づくけど、

確かに耳はほぼ一緒、

まぁ、男で2局選択迫られた場合、

いろいろ困るだろう、貧乳派と巨乳派、

今回は、姉が巨乳、妹が貧乳、

だが、あえて俺はその中間が好きだと言おう。

『なによ?双子じゃいけないの?』

『姉さん!』

「え?そうじゃないって、
 二人共綺麗だなぁって。」

さぁ、修羅場へいざ!!



あれ?

『き・・・きれい?』

『わわ・・・わたしたちが?』

「あ、あぁ、あくまで、俺の主観だ!!
 俺の!な!!」

くっそぉ~っ!?これも地雷かよ~っ!?

「まぁ、お前らの一族とか、
 知らないから言うけど、
 俺には綺麗に見える、
 それは嘘じゃない!
 それに、垂れ耳は
 かなりのチャームポイントだと俺は思う!!
 服装も無理に着飾らない、
 素材を生かした着こなしだと思う!!
 それに、顔立ち!!
 ここまで整った顔立ちは初めて見る!!
 どう見繕っても、
 俺の故郷では美少女の部類だ!!
 間違いない!!」

ぁ~・・・つい、勢いに任せて・・・、

ヤバイ、このあと、

もう一人か二人現れて、

余計にこじれる、

ぜぅったい!!こじれる!!

振り回されない訳が無い・壱

姉はクシェ・デュ・ソレイユ

妹はナハト・デュ・ソレイユ

まさに厄介極まりこの上ない。

ソレイユ家は、

エフェメール国の貴族様、

元々流浪の民で、

エフェメール国に立ち寄った際、

ご先祖様が、

エフェメール国の一般人に一目惚れしたらしく、

そのまま永住して今に至るそうだ。

「で?何ゆえに、
 こんな朝っぱらから、口論してるのかな?」

『だって、
 サイゲツも連れて行こうって言っても、
 許してくれないんだもん!』

『クシェ姉さん!!サイゲツは、昨日戦争から、
 帰ってきたんだよっ!?
 疲れてるに決まってるじゃん!!』

『大丈夫だって!!』

『どこが大丈夫なのよ!!』

まぁ、こんな訳だ。

「ナハトさん?買い物って、
 なにを買いに行くので?」

『サイゲツさん、いいんですか?
 聞いた話しでは、昨日が初陣、
 ましてや、帝国の騎兵を相手にし、
 対象首を討ち取られた、で・す・け・ど!!』

「あ、はい。」

『起きた時に、
 吐いて、体調を崩されておりますよね!!』

「まぁ、それは、ね。」

『でも、こうして普通に話してるし、
 身体も大丈夫そうだし、行けるって!』

『姉さんは黙ってて!!』

「おぃおぃ。」

『あの、ナハト?初めてじゃない?
 こうやって、強く反論してくるのって?』

『なんですか!!それがなんなのですか!!
 私は英雄となられた、
 サイゲツさんの体調を案じて、
 こうして、
 無理やり連れ出そうとしている、
 姉様をお止めになっているのです!!
 体力バカの姉様に、
 何がわかるのですか!!』

「・・・はぁ。」

二人に、軽く拳を叩く。

『へきゅっ!?』
『ひゃんっ!?』

「二人共、すこ~し、落ち着こうか?」

俺なりの、

かなぁ~り、低い声で、さとして?

ん?さとす、で、いいのか?ここ?

『は、はいぃ~。』

『ごっ!?ごめんなさいっ!?』

「あ、悪い、怖がらせるつもりは。」

え~、

戦場ではあれだけ罵声飛ばしてても、

そんな顔しなかったのに。

「まず、クシェは、
 買い物に付き合って欲しい、
 ナハトは、
 俺の体調が良くないだろうから、
 それを止めたい、それでいいね?」

『うん。』

『はい、間違いありません。』

「ふぅ、それじゃぁ、ナハトには悪いけど、
 買い物に付き合うよ、
 この国、
 ムスクス公益国も見てみたいし。」

『ですが!!』

「そこで、
 3人で買い物に行こうか?」

『なるほど!』

『姉さん!!』

「そんな怒るなよ、
 クシェ?さっきさ、
 ナハトが反論してくるのは、
 初めてだって言ったよね?」

『そうそう!!ナハト!
 一体どうしたの?
 今までこんな事なかったのに。』

『え?・・・ぁ///』

うはぁ~・・・手で顔を隠して、

しゃがみこんでる~、

あ~・・・やヴぁい、絶対やヴぁい、

なんで?なんで?こんな簡単にフラグって、

建設される物なのっ!?

『信じらんない!?
 ナハトが、こんな顔するなんてっ!?』

「なぁ?クシェ?」

『あいにく、発情期なんてないわよ?
 普通に恋愛もするし、ケッコンもするわよ?』

デスヨネー。

「ナハト・・・さん?」

やばいやばいやばいやばいやばい・・・。

『はぃ///』

あかーんっ!?あかんよこれ!!

ずぇったい!!あかんよぉおおお!!

『サイゲツに・・・惚れたの?』

あ、ウナズイタ・・・終わった・・・、

いろいろ終わった・・・。

「・・・クシェ、俺、凄く、逃げたい。」

『無理、あんた、体力に自身は?』

「ない。」

自信を持って言えます、はい。

『じゃぁ、諦めて、
 あたし達、ソレイユ家は、
 ダックサライダ族、
 犬耳の垂れ耳が特徴の犬獣族、
 放浪と狩猟がメインなの、
 逃げられない、てか、
 逃がさいないわよ?』

ダック?・・・犬、

垂れ耳・・・狩猟・・・あぁっ!!

ダックスフンドか、

兎狩りとか、得意って犬種だったな、

って事は、逃げらんねぇじゃん。

「とは言え、まずは買い物、
 どうするんだ?
 大分、太陽は上の方だし・・・。」

『あ。』『あ。』

「最低限装備して行くか。」

部屋の端に、

俺が着ていた装備が一式、

ん?服装は・・・あれ?

「なぁ?俺・・・いつ、着替えたんだ?」

あ、二人がびくって、反応した・・・、

ん~?
 
おそらく能面の用に、

固まっている表情だろう。 
 
「お前ら、俺の裸、見たな?」

い~や~っ!?

顔真っ赤にしないで~っ!?

「うぇ~、まじか~。」

うん、まぁ、予想はしてたけど、

ほんとにこんな展開があるなんて・・・、

色々ショックだ・・・。

「幻滅したろ?」

全力で首振らないで、

お願いだからやめて・・・。

「出かけるにも、お金は?
 この国の流通硬貨とか、
 いろいろ準備必要だろ?」

『わっ!?私!!支度してきます!!』

『わっ!?わたしもっ!!サイゲツ!!
 下の城門前に集合ね!!ね!!』

ばたばたと走り去る・・・。

「あぁ~・・・俺、どうしろと?」

とりあえず、装備は着て行こう。

「・・・あれ?」

着方はわかる・・・なぜに?

「さてと、部屋はここか、
 忘れないようにしないと。」

あぁ、絶対忘れそう・・・。

『お!英雄様だ!!』

『ホントだ!!英雄様!!』

『サイゲツ様!!』

「・・・え・・・え~っと。」

あぁ・・・そうでしたね、

英雄って、

こう・・・憧れとか、

尊敬とか、アレなんだね・・・、

ぬぁ~っ!!逃げたい!!

めっさ逃げたい!!

振り回されない訳が無い・弐

『え~っと?』

『姉様、物凄く出づらいです。』

少なくても十数人に囲まれてる、

助けて・・・あ、二人が見てる、

駄目だ、普段着慣れてないであろう、

ふりふりのめっさ可愛い服で決めてる、

助けは絶望的だ・・・、

ならば!

こいつらの欲求を取り除かなければ。

「と、とりあえず、
 質問を纏めてくれないか?
 確かに残存兵を指揮はしたが、
 所詮新米、
 いっぺんに返せる返答もそんなに多くはない、
 せめて、戦術なり、
 戦闘方法なり、運用法なり、
 いろいろ纏めて欲しい、
 若輩者の我侭だが、聞いてくれるか?」

『とんでもない!!
 貴方様は初陣にも関わらず、
 最善を尽くされ、被害も最小限、
 捕虜にも関係は良好、
 こんな有能な指揮官は他にありえません!!』

「そ・・・そうなのか?」

ひぃいいっ!?

火に油を注いでしまったぁあああっ!?

『そうですとも!!
 ですが、お疲れの所申し訳ないです、
 すこしはしゃぎ過ぎましたね、
 でしたら後日、お時間がございましたら、
 講堂にて、
 講師をやってはいかがでしょうか?』

「まぁ、敵がそれまで待ってくれればな、
 構わないよ、
 時間も、昼前後で予定を組んでくれ、
 えっと・・・名前は?」

『おっと、失礼、
 エフェメール国軍、
 第2師団長のクリフ、と、もうします、
 とはいえ、
 残存兵が500人に満たない、
 名ばかり師団長ですが。』

「そう、謙遜なさらないで下さい、
 貴方方は、俺・・・いえ、
 私が加わるまでの間、
 帝国軍と渡り合い、
 生き延びてきている、
 それは決して、忙殺してはならない、
 誇り、未来永劫伝え続けられる、
 伝承の1ページを、
 貴方方は刻んで来ているのです、
 ですから、
 名ばかりなんて言わないで下さい、
 散って逝った、
 部下達を、忘れないように、
 エフェメール国市民を守る為に、
 全力を尽くした兵士達を、
 決して忘れないように、
 それに恥じない、
 これからの活躍に、期待します、
 ・・・っと、失礼、
 約束がありますので、また後日、
 時間になりましたら、お呼び下さい、では。」

つっしゃ~!!脱出成功!!

「ぶはぁ~・・・めっさ疲れた、
 はぁ、買い物はやめとくか?」

泣き崩れる二人に、

買い物は無理があるだろうよ。

『そう・・ね、ごめんなさい、
 誘っといて・・・悪いわね。』

『サイゲツ様、
 なんと、慈悲深きお言葉・・・。』

「そうかね・・・。」

あ~あ、

女の子の泣く姿が、

いっちばん苦手なんだよなぁ・・・、

・・・駄目だ・・・涙が・・・。

『サイゲツ・・・泣いてる。』

『サイゲツさまぁ・・・。』

「わり・・・俺も、無理だ・・・。」

そう、確かに、敵大将は討ち取った、

でも、

でも、
 
目の前で、庇ってくれた人は、

その場で絶命、そう、死んだのだ、

こんな

弱者を守って・・・死んだのだ、
名を知らない戦士は・・・

目の前で死んだのだ・・・。

「泣かずにいられる方が、
 おかしいのか、
 普通なのか、
 全く、上手い事、
 言葉が見つからないなぁ。」

振り回されない訳が無い・参

そのまま、彼女達を部屋まで送り、

近場にいた兵士に現在地を確認、

かろうじて部屋に戻れた。

「はぁ~、いろいろあり過ぎ、
 流石にきっついわ。」

あ、メシ食ってねぇ。

「食堂、確か、二階だったな。」

やっぱり心細いので、

装備はしっかり着て行く。

「って・・・暗っ!?」

廊下に明かりがない、

え?ちょ、

部屋にはランタンもどきはあったけど、

は?まじ?

「うぇ~・・・これが新の闇、か。」

精々1m、それ以上は全然見えない、

こえぇ~、

ゲームじゃ明るく画面調整だけで済んだけど、

ぜっ!ぜん!!みえん!!

「でる、か?勘弁してくれよ?」

幽霊、ありえるだろうなぁ、

魔法が現実なんだ、

居ても何も不思議じゃない、

よく寝てられるなぁ~。

「階段、流石にここにはあるのか。」

ふへ~、マジこえぇって、

あれか?

灯りの魔法程度は誰でも使えたりするのか?

でも、攻撃用の魔法自体、

相当修練を積まないと出来ないって、

言ってたしなぁ?

次の戦闘に、来てもおかしくないのか。

「遠距離?いや、爆発系統だろうか?
 それとも、
 前線の兵士に怪我の遠距離回復や、
 疲労回復なんてできるのだろうか?
 あ~、らちがあかねぇ、
 てか、食堂に人、いるのかな?」

しまった、思いっきり忘れてた、
不味い、本当に腹減ってきた。

「あの~、すいません?
 誰かいる?」

灯りは?

あ、厨房に灯りと人影、

だ、大丈夫か?

(一応、手を添えとくか。)

なんだかんだ、

手放せないバスターソード、

どうも、日本刀は使いづらい、

日本人なのに。

「あの?夕食って、
 まだありますか?」

『え?あら?あの子達、
 いいわ、まかない程度だけど、
 食べてく?』

「はい、助かります、
 俺は『サイゲツ、だろ?』
 あ、はい、貴女は?」

『あたしは、クローマ、
 ムスクス公益国の
 総料理長さ、聴いてるよ?
 あんたの噂は。』

「あははは、
 あんまり誇れませんよ、
 “戦争”だから、とか言えません、
 人を、相手の命を奪った、
 それで生き延びている、
 罪人と、なんら変わりませんよ。」

『へ~、不思議ね?』

「考え方の違い、ですかね、
 これを聞いたら、
 なんて甘ちゃんなんだろうって、
 幻滅しますよ?」

こう、話しながらでも、

手が止まらないクローマさんって、

すげぇ。

『大概の奴はあたしの胸とか眺めるんだけど、
 あんたは、手元を見てるね?』

「へ?胸?」

うひゃぁああっ!?

「すっ!?すいませんっ!?」

なんでっ!?なんでっ!?

厚手の布で

押さえつけてるだけなんだよぉおおおおおっ!?

『あははははは♪かわいいねぇ!
 まじまじと見る奴はごまんといたが、
 必死に顔を逸らす奴は初めてみたよ!!』

「恥ずかしぃ、死ねるほどに恥ずかしい。」

『ますます面白いねぇ!
 ほら、できたよ!
 この土地名産の炒め物、
 ラケルタとコメの炒め物さ!
 熱いうちに食べな?』

「っ!?コメ、米だ。」

お米が食える。

『おいおい、泣きながら食う奴があるかい?』

「仕方ないですよ?
 俺の故郷で主食なんですから、
 ましてや戦争に参加して、
 生きて帰って、
 もう、戻れないであろう故郷の、
 コメを食えるんですから!
 泣くなって言われても、
 泣きますよ。」

『そうかぃ、
 なら、今度あんたの故郷の味、
 調理の仕方を教えてくれないか?』

「いいですけど、あんましできないですよ?」

『いいんだよ、これで、貸し借りなし、
 どうだぃ?』

「わかりました、
 覚えている範囲で、
 できるだけ教えさせて下さい!」

『それじゃぁ、
 貸し借りにならないじゃないか、
 いいかい?あたしはね、食でしか、
 満足させる方法を知らないんだよ、だから、
 より良い物を提供したい、作りたいのさ、
 だ!か!ら!
 あんたには実験台になってもらうよ!』

「・・・ふぅ、望むところです!!」

『よし、それでいい!!
 それと、さっき、
 ぼそって、なんか言ったよね?
 なんだい?宗教か、なんかかい?』

「・・・あぁ、
 “いただきます”ですね?
 まぁ・・・俺はあんまし言わないけど、
 故郷の古くからの伝わってる物で、
 “相手の命を頂いて今日を、
  明日を生きながらえます”
 そう言う意味を込めて、頂きます、
 そして、“ごちそうさま”が、あります、
 まぁ、大分廃れて来てますけどね。」

『なるほど・・・“命”か、
 いい事聞いたね!よーし!!
 朝飯から感想を聞かせてくれ!
 あたしがもーっと!!
 良い料理!旨いものを作ってやる!!』

「了解です、クローマさん、
 俺の舌は、味にけっこう五月蝿いですよぉ?」

『あたしも、負けてらんないね!!
 覚悟しな!!』

「はい!クローマさん!!」

後戻りはできない

うん、どうしてこうなった?

クリフ
『あ!サイゲツ殿!!』

朝起きて、

クローマさんに色々責め立てられ、

クシェ、ナハトには、問い詰められ、

今、クリフに捕まった。

砕月
「クリフか、まだ昼には?」

クリフ
『違いますよ!!
 見てください!!
 石碑が完成しましたよ!!』

は?石碑?

まぁ、廊下から外を、

うん、死ぬほど恥ずかしい、

あの戦場で言った事やら、

昨日、クリフ達に言った言葉が、

石碑に刻まれている、

てか、なんで読めるの?

三角やら、記号だらけの文字が、なぜ?

砕月
「クリフ?あれは誰が作ったんだ?」

クリフ
『はい!
 ジョパンニさんが一晩でやってくれました!!』

え゛っ!?

あのネタの本人いるのっ!?嘘だろっ!?

砕月
「そ・・・そうか、
 そうだ、どれだけ人数が集まるんだ?」

クリフ
『え?ムスクス公益国のほぼ“全部です”』

砕月
「なんだ、全部か・・・は?
 全部?」

クリフ
『ですので、
 講演会は外でやる事になりました、
 魔術師達も興味心身で、
 なんでもやるから、是非とも!!と。』

砕月
「りょ、りょうかい。」

メンタル・・・もたねぇ・・・。

ムスクス中央広場

砕月
「逃げたい。」

クシェ
『諦めなさい。』

ナハト
『サイゲツ様!頑張ってください!!』

砕月
「ぉ~。」

演説台へ足を進める。

砕月
「う゛っ。」

見渡す限り、人、人、人、人、人、死ねる。

ほとんどが犬耳、猫耳、きつね耳、

少なめで、エルフ耳、

あ、普通の人間の耳も居るなぁ。

魔術師
『サイゲツ殿、どうぞ、この筒に向かってお声を。』

砕月
「あぁ、ありがとう。」

って、何言えばいいんだよ!!

メモ書きもなけりゃ、

指示もねえしっ!!

砕月
「まずは、一言。」

や・・・やってやる!やってやるぞ!!

砕月
「今日は、こんな弱者一人の為に、
 時間を裂いてくれて感謝する、
 これから、答えられる範囲で返答、
 打開策を提案しよう。」

地響きに近い声・・・、

背筋が張り詰めるって、

この事かぁ~っ!?

クシェ
『凄い・・・なんて声援の声。』

ナハト
『国中が震えています・・・。』

砕月
「・・・あ・・・。」

声・・・でねぇ・・・こえぇ・・・。

魔術師
『静粛に!!』

もうひとつの筒に声を出す、魔術師。

魔術師
『これより一問一答を行う!!
 クリフ第2師団長殿!!質問を!!』

クリフ
『はっ!!』

《グルッペ街道迎撃戦》

砕月
「え?」

クリフ
『はい!あれはいかなる教典にも先代の騎士達も、
 思いつかなかった戦闘方法、
 いかにして、それを思いつき、
 実行に至ったのか!
 詳しくお聞かせ願えないだろうか!!
 帝国以外にも!
 様々な国々が被害を受けている!!
 だからこそ!!それを打ち破り!!
 ましてや大将首を打ち取られたのだ!!
 是非!!ご教授願いたい!!』

砕月
「クリフ、わかりました、
 まず、
 第1条件、狭い街道
 第2条件、双方が丘、または、崖に挟まれている事、
 第3条件、戦車を捨てる覚悟、
 第4条件、尾根に展開する部隊は、

 “死守”これが絶対条件です。」

クリフ
『死守、死んでも守れ、と。』

砕月
「それに、最低でも五つの部隊が必要です、
 騎馬隊、重装甲兵、歩兵、
 尾根を死守する部隊、各方面の支援部隊、
 騎馬隊は、その圧倒的な機動力を活かし、
 敵後方を叩き、
 魔術師による治療を阻止する事が前提です、
 重装甲兵は、常に耐え続けねばなりません、
 その為、2回から3回、
 斬撃、または突撃を耐えたのち、
 前後で配置を交代、
 常に最前線を維持し続けねばこれは成り立ちません、
 歩兵は重装甲兵の援護です、
 隙間から絶え間く湧き出てくる敵を、
 確実に仕留めねば重装甲兵に被害がでます、
 最低、2対1を、
 3対1でもいいので敵兵を減らし、
 進撃を遅らせます、
 尾根を守る、これは絶対必要不可欠です、
 これを抜かれれば、我々が挟まれ、
 全滅してしまうでしょう、
 そして、各方面の支援部隊、
 尾根が押されそうになる前に現着、
 直様押し返す、重装甲兵の前後交代時の援護、
 歩兵の疲労回復の為の交代要員、
 そしてここに弓兵が入っています、
 最大射程、重装甲兵の前方への支援射撃、
 そして、これらには大きな欠点があります。」

クリフ
『欠点?ですが、現に我々は勝ったのです!!』

砕月
「敵に、
 長距離攻撃を行える部隊がなかったからこそ、
 狭い街道を狙い撃ちされずにすんだのです、
 今回迎撃した、帝国の追撃部隊には、
 幸いにも治療を担当する魔術師だけでした、
 遠距離、攻撃魔法を習得するには、
 相当な修練が必要の為、
 数は少ないでしょう、が、
 次の戦いにいないと言う保証はありません、
 戦争に、戦場に、
 保証、確実、絶対はありえません、
 ですから、
 クシェ隊長や、クリフにも、
 “賭け”だと、伝えたのです、
 そして、全ての兵達が、
 士気高揚、ある種の、発狂状態だからこそ、
 今回の迎撃は成功したのだと、
 そう、思えます、
 現に、私は、この迎撃戦が初陣、
 その空気に飲み込まれ、
 死に絶えた味方兵士を盾に、10人を殺し、
 最後の一人は、敵の大将でした、
 足をくじき、動けなくなっていた所を、
 味方兵士の死体ごと、剣で突き刺し、
 それを打ち取りました。」

クリフ
『・・・。』

砕月
「だから、最初に私は弱者だと、言ったのです、
 ただただ、死にたくない、
 そして、戦場の空気に飲み込まれ、
 賭けに撃って出た、英雄と言われても、
 嬉しいとは思えない、それを、おかしいと思うなら、
 笑ってくれ、臆病者、と、罵るがいい。」

そうだ・・・臆病者、弱者、それで・・・。

『サイゲツ様~っ!!』
『水くせえぞ~っ!!』
『俺達も同じだ~っ!!』
『やはり、貴方に賭けてよかった!!』
『共に戦い抜きましょうぞっ!!』

砕月
「あははは。」

にげらんねぇ、

完全に、

この国の歴史の一部になっちまった。

ヴァールハイト帝国


ルーペス・マガ・レジェンダ彼女は、

12代目ヴァールハイト帝国君主、

その指揮、戦闘から、

“閣下”と、愛称で呼ばれている。

「閣下っ!!レジェンダ閣下っ!!
 一大事にございます!!」

ルーペス
『何事か?こんな夜更けに。』

「は!ですが大至急お伝えせねばなりませぬ!!」

ルーペス
『話せ。』

「は!
 本日より20日前、
 エフェメール国を攻め落とした、ゲイト将軍が、
 敗残兵の追撃中に、討ち死に、
 全滅との報告が入りました!!」

ルーペス
『そんなっ!?
 おじさんがっ!?
 本当なのかっ!?ダラス!!』

ダラス
「はい、早馬にての報告なので、
 間違いはないでしょう、
 生き延びた兵士は、
 エフェメールにて、治療を行い、
 それから帰国の途につく予定です。」

そんな、幼少より、ずっと、
可愛がってくれた、おじさん、そんな。

ダラス
「そして、今回の被害は更に急を要します。」

ルーペス
『っ!?なんだ?申せ。』

ダラス
「はい、魔術師が全滅、生存者は無しです。」

ルーペス
『なんだとっ!?』

馬鹿なっ!?

治療を行える魔術師は、

どの国も暗黙の了解で殺されなかったのに。

ダラス
「それと、
 隠密部隊から“最後の報告”が入りました。」

ルーペス
『ムスクス公益国に潜っていた者かっ!?』

ダラス
「・・・新たな指導者が誕生し、
 ムスクス公益国は、
 クレースト、クラースヌイ、
 ケラス、ベルヴァ、シーミウス、
 我が帝国、ヴァールハイトへの、
 食料品全てを、輸出禁止とし、
 ヴァールハイトに、
 宣戦布告を発表いたしました。」

ルーペス
『それでは我が国民は飢え死にしてしまうっ!?』

ダラス
「直様、早馬にて、開門を願いましたが、
 その早馬も、帰ってきておりませぬ。」

ルーペス
『全地区長、将軍を集めよ!!
 緊急召集だ!!』

ダラス
「なら、お召し物を直され、
 もうまもなく、
 玉座の間へ集合いたします。」

ルーペス
『わかった、急ぎ支度する。』

緊急会議

ルーペス
『すまぬ、遅くなった。』

ダラス
「では、これより『まて。』は!」

ルーペス
『まずは、訃報を私から伝えよう。』

ダラス
「残念ですが、既に国中にそれは広まっております。」

!?

ダラス
「早馬が叫びながら城門を駆け抜け、
 各地区では、
 戦闘準備が着々と進んでおるからです。」

「閣下、皆を叱らんで下さい、
 貴女様は幼少より、
 ずっと叔父上どのに育てられ、
 誰よりも信頼を置いていた、
 だからこそ、我々がそれを『黙れ!!』」

ルーペス
『なぜ?私を最後にしたのだ?』

「我ら地区長、将軍達は、
 貴女様の成長を見守り続けていました、
 だからこそ、悲しませたくはなかったのです!!」

ルーペス
『そんなっ!?そんなのって。』

「我らはかの地、エフェメールへ兵を派遣、
 ムスクス公益国に開門を呼びかけ、
 せめてもの、食料品輸入を再開させるべく、
 既に準備は整えてあります。」

「後は、貴女様の、お声次第です。」

ルーペス
『よいのか?食料なんてもう、
 備蓄品も限界がある、
 田畑は腐れ果て、
 ましてや!!
 行軍の為の馬さえ、
 病死しているこんな状態でかっ!?』

ダラス
「だからなのですよ、閣下、
 国民は、老若男女問わず、
 従軍を申し出てきております。」

ルーペス
『・・・私に、国民へ、
 “死ねと命令させる気かっ!?”』

ダラス
「皆、閣下の成長を見守ってきた、
 家族(国民)なのです、
 幼き頃に、ご両親を失った貴女様は、
 小さき体で国内を周り、
 一人一人、声をかけ、
 それを国政に反映し、実現して来た、
 だからこそなのです!!
 皆、貴女様の為に、動きたいのです、
 戦いたいのです、
 貴女様が、笑顔でこの国を導けるように。」

ルーペス
『つっ!?皆は、どこに?』

ダラス
「既に、この城の広場に集まっております、
 何時でも。」
 

あぁ、

こんなにも重苦しい空気になってしまった、

かつては、緑は生い茂り、活気に溢れていた、

田畑は腐り、川も汚れ、

疫病も、留まる事をしらない、

それなのに、私に、私に。

ルーペス
『皆、すまない、私の力及ばず、
 こんな惨状になってしまった、
 そして、
 ムスクス公益国の輸出も止められてしまった、
 この場をもって、お詫びしたい。』

ルーペス
『皆・・・泣くな・・・、
 泣かれては・・・わたしは・・・、
 笑顔になれないではないか・・・・。』

《後の国民休息日、
 落涙の日が制定されるのは、
 まだ、時間がかかる。》

玉座

ルーペス
『ダラス、私自らが出る。』

ダラス
「では、私めが、命を賭け、
 ヴァールハイトをお守りしましょう。」

ルーペス
『死んではならん!!
 お前までいなくなっては、
 私は、本当に一人になってしまう。』

ダラス
「こんな老いぼれでも、
 まだ、家族と思ってくれるのですか?」

ルーペス
『他に、なにがある?
 父と母の最後を見取り、
 幼き私は、ゲイト叔父さん、
 ダラスお爺ちゃん、
 二人で育ててくれた、それを、
 家族以外になんと言うのだ!!』

ダラス
「自分の息子を、助けられず、
 その妻さえ助けられず、
 おめおめと生き延びたこの私を、
 家族と言ってくれるのか。」

ルーペス
『そうだ!!この国にいる皆が家族だ!!
 だが!!本当の肉親!育ての親は、
 ダラスお爺ちゃん、貴方しかいないの、
 一人にしないで。』

歩兵
 15万3972人

重装甲兵
 1万290人

騎馬隊
 3047騎

弓兵
 287人

治療魔術師
 36人

補給連隊
 3489人

エフェメールへ行軍開始

持てる全てを使って

「急げぇ!!敵は待ってはくれない!!」

あちこち、罵声と激、

大量の資材が組み立てられていく。

砕月
「ご苦労、突貫とは言え、
 こんなに形になるなんて。」

「サイゲツ総大将殿!!」

砕月
「適度に休息を取ってくれ、
 ここで怪我をされても、困るからな。」

「はっ!!ありがたきお言葉です!!」

城壁とは言えない、

精々2~3mの壁では心もとない、

近隣の森林を伐採、

鋭角に切り出した丸太を、斜めに突き刺し、

何十にも締め上げたロープで固定する、

もちろん、外側に向かって。

砕月
「鋼鉄の糸の生産は進んでるか?」

「あ!サイゲツ殿!!
 すこし手間取ってますが、
 あと二日!!いや、
 一日でなんとか形にしてみせます!!」

砕月
「気を緩めず、慎重に作業してくれ、
 下手をすれば、
 この施設ごと吹っ飛ぶからな、
 必ず決めた時間で休息を取ってくれ。」

「了解です!!」

洋風の騎士甲冑が作れる以上、

ある程度の製鉄技術があった、

しかし、精々の甲冑止まりで、

バネや、鋼鉄の盾を精錬するには、

超高温の炉が必要だったが、

今までの技術では

“赤い炎”が限界だった、

幸い、川が近くにあり、

粘土が産出されていた、

陶芸家達が精錬士と協力し、

超高温、“紫、白い炎を”

あと一歩までこぎつけていた。

砕月
「・・・ふぅ。」

ふと見回すと、あちこちに簡易監視塔が立ち並び、

鋭角に切り出された丸太が、

所狭しと外側を向いて、獲物を待っている、

連射はできなかったが、

同時に発射できる数は増やす事ができた、

改良型弓矢発射装置、

横長に配置され、一度に12本発射できる。

砕月
「次発発射までは、バラつきがあるけど、
 脅威に見せられればそれでいい。」

それで、すこしでも足を止められれば、

切り伏せる時間はある。

ナハト
『サイゲツ様!』

あぁ、そう言えば、一応、恋人になったっけ?

砕月
「ナハト、どうした?」

ナハト
『クシェ姉さんが。』

頭が痛い、

クシェは、持ち前の剣術こそ発揮するものの、

それ以外は壊滅的にダメ、困ったものだ。

砕月
「今度はなにやらかしたんだ?」

ナハト
「クローマさんを怒らせてしまって・・・。」

よりにもよって、料理か。

砕月
「ナハト、
 後でクシェに試験場に来るように伝えてくれないか?」

この状況でクローマさんに見つかると、

俺に被害が拡大する。

ナハト
「はい、あ!
 わ・た・し・も!行きますからね!!」

砕月
「あぁ、わかったよ、後でな?」

ナハト
「はい!」

気が重い、次の防衛戦は、

ナハトが指揮する隊もあるからだ、

偵察の早馬が、

エフェメールに大量の軍勢が到着したと、

報告して来た、街道には、

一度きりのトラップを大量に仕掛けてある、

踏めば最後、

研ぎ澄まされた枝を複数円形に配置したものが、

顔面めがけ突き刺さるのだ、

それも、丁度、

膝下に掛かるぐらいの草原に、隠してある。

砕月
「なりふり構ってらんないか。」

試験場

砕月
「どうだ?火薬は使えそうか?」

「ダメですね、どうしても湿気にやられてしまいます。」

魔法があるから、化学は遅れてる、

その概念は“良い意味で”覆された、

どうやら、魔術師は科学者でもあるようだ、

いや、医者か、このムスクスにも魔術師はいたが、

攻撃用魔法を使える人間?は、いなかった。

砕月
「かといって、湿気だけを除去するにも、
 魔術師の長時間集中する空間が必要だし、
 負担も大きい、今回は見送るしかないか、
 鋼鉄の糸を、剣に浸透させる方は進んでいるか?」

「はい、そちらは滞りなく進んでいます、
 しかし、赤い炎の鋼鉄の糸を剣に浸透、
 切れ味を上げるなんて、
 すごいです!!どうしてそんな事を?」

砕月
「ごめん、これに関しては。」

「失礼しました!!
 そうですよね、人殺しの武器を作る、
 良いわけ、ないですよね。」

砕月
「それと、
 直接ヴァールハイトに向かった早馬からの連絡は?」

「それが、途中の川で断念、
 つい先ほど戻って来たばかりです、
 川の色が変色し、
 橋は腐り墜ち、異臭が立ち込めていたそうです。」

砕月
「その異臭に心当たりは?」

「疫病でしょうか?
 その疫病で死んだ死体は、
 発酵し、強烈な異臭を発するらしいです。」

砕月
「その疫病の原因は?」

「わかりません、
 ただ、川の上流に何かが起こっただろう、と。」

砕月
「その早馬には悪いけど、
 上流の調査、お願いできるかな?」

「構いませんが、今からですか?」

砕月
「下手をすればこちらの川にも
 影響が出るかも知れない、
 急ぎ調査隊を捻出、向かわせてくれ。」

「了解。」

クシェ
「あ、サイゲツ!」

砕月
「遅いぞ、これが試作品の
 “太刀(たち)”だ、とりあえず、
 持ってみてくれないか?」

クシェ
「へ~・・・では。」

ほぼ抵抗無く抜かれた真新しい刃は、

この世界では最高級の切れ味だと、

その後の防衛戦で広まる事となる。

戦争は始まっている


たった、40日で、

ムスクスは要塞となり、

街道には大木をそのまま使った

“鋼鉄の糸”の防御壁が完成した。

砕月
「・・・ふぅ。」

再び、演説台に上る。

砕月
「みんな、今までご苦労だった、
 ここで、報告がある、
 ヴァールハイトへ向かう筈だった早馬が、
 ヴァールハイトに疫病が
 蔓延している事を突き止めた、
 しかも、川は変色し、
 死体は放置されたままだった、
 私は、早馬を含む、
 10人の調査隊を上流へ向かわせた。」
 


砕月
「10人の内、8人がその場で命を墜とした、
 命からがら帰還した2名は、
 巨大な火柱が乱立し、
 川をせき止め、異臭を放っていた、
 そう、報告をくれた、
 みんなには馴染みがない言葉だろう、
 “火山の噴火”」

そりゃぁ、しらないよな。

砕月
「では、攻撃用魔法の伝承はわかるか?
 火属性“ヴァリュケェイノ”
 これは、“赤い炎”を魔力によって発生させ、
 火災、極度の火傷を負わせるなど、
 火属性最高級の魔法、しかし、
 魔力で生み出す炎を遥かに凌ぐのが、
 “火山の噴火”だ、
 人間で再現なんて決してできない、
 “我々が住むこの大地が生きている証でもある”」

クリフ
『大地が生きているっ!?本当なのですかっ!?』

砕月
「そうでなければ、
 なぜ、我々は生きている?なぜ、生きていける?」

クリフ
『それは・・・。』

砕月
「こうして息を吸い込み、吐き出す、
 これは人間だけではない、
 全ての動植物に当てはまる、
 では?
 これらを、
 この大地に留めてくれているのは誰だ?」

「・・・大地?」

砕月
「その通り、そして、海がある、
 その海の水を留めてくれている物は?」

「え?」

砕月
「では、君、どう思う?
 思うままに言って欲しい。」

「え?えっと、
 湖に底があるように・・・海にも?」

砕月
「正解だ、
 海にも底があり、大地がある、
 それらが複数存在し、
 この大地を、世界中を支えている、
 “それが星”と言う物だ、
 そして、複数の炎が乱立し、
 赤く焼けた大地が流れ出る、
 火山の噴火は、
 この“星が生きている証拠でもある”」

さてと、使者を、

向こうは受け入れてくれるだろうか。

「緊急伝!!
 エフェメールへ向かった使者が、
 ヴァールハイト兵に殺されました!!」

くそったれ。

砕月
「鋼鉄の糸を全て起こせ!!
 エフェメール、ムスクス連合軍、
 総員戦闘配置!!」

ルーペス
『なんだとっ!?
 使者を殺してしまっただとっ!?』

「は!!既に駆けつけた時には絶命しており、
 その兵士はその場で処刑しました!!」

なん・・・て、事だ、

これで我々は、

ただの侵略者も同然になってしまった。

「緊急伝!!
 先行隊との連絡が、
 3日前から連絡がありません!!」

ルーペス
『っ!?早馬で何日かかるっ!?』

「半刻もあれば、追いつける筈です!!」

ルーペス
『早馬を出せ!!
 全軍、出立!グルッペ街道へ進撃するっ!!』

「鋼鉄の糸、全て起こし終わりました!!」

砕月
「全軍に厳命!!
 決して、鋼鉄の糸に触れるな!!
 そして、生き残れ!!
 ハイ・ロングボウ隊、装填準備!!
 ショートボウ隊、連射用意!!
 補給連隊はメシを炊け!!
 何時でも美味いメシを作れ!!
 重装甲兵は盾を連結せよ!
 歩兵も加わり、まずは一撃を耐えろ!!
 騎馬隊は、常に駆けろ!!
 先に言った通り、鋼鉄の糸には触れるな!!
 敵は、使者すら撃ち殺す残虐兵士だ!!
 慈悲はいらん!!
 ここは我々の土地だ!!大地だ!!
 この防衛戦に勝利し!!
 反撃の狼煙を上げるのだ!!」

空気が震える、

あぁ、怖いな、、

死にたくないなぁ。

地面と赤い糸

ルーペス
『な!?なんなんだこれはっ!?』

辺り一面、

おびただしい数の死体、

顔は、とても見れない。

ルーペス
『ひどい・・・。』

街道に目を向ける。

ルーペス
『・・・あんな物、街道には普通ない。』

街道を歩く。

ぶつん!

ルーペス
『!?』

「危ないっ!?」


いっ、一体なにが?


ルーペス
『っ!?だっ!?だいじょ・・・、
 すまない、私が。』

死んでいる、志願兵だ、

鎧なんて着ていない、

腰にベルトだけつけ、

ショートソードをぶら下げるだけ。

ルーペス
『総員、草原には入るな!!
 死体と同じ結末が待っているぞ!!』

こんな非道な罠を仕掛けるなんて、

まさかっ!?

ルーペス
『誰でもいい、遠メガネを持っていないか?』

「は!私が持っております!」

ルーペス
『あの街道を見て貰えるか?』

「は、わかりました。」

ん?様子がおかしい。

ルーペス
『どうした?大丈夫か?』

「閣下、申し訳ございません、
 わたくしめは、
 わたくしめは!!
 こんな残虐非道な、
 地獄を見た事がありません。」

彼は力なく座り込み、

そのまま黙ってしまった。

ルーペス
『では、遠メガネを・・・離せ、
 離さんか!!自分で見る!!』

無理やり取り上げる。

ルーペス
『・・・・・・・。』

赤い・・・糸?

私は後悔した、

なぜ、

赤い糸が街道を塞ぐように、

横に伸びているのか、理解に苦しんだ。

吐き出した、兎に角、そうしていた。

ルーペス
『う゛ぇ゛え゛え゛っ!?』

皆が近寄る。

ルーペス
『けっして・・・みてはならんっ!!』

止まらない、苦しい・・・。

みな、座り込んだり、

吐き出したり・・・、

泣き叫んだ・・・。

《鋼鉄の糸
 エフェメール・ムスクス連合軍が初使用し、
 過去最高の無差別兵器として、
 歴史書に記され、十数年もの間、
 突破される事のない、最強の防壁だった》

あれで、引いてくれないと、

真面目にどうかしている。

砕月
「早馬と、もう一度、使者を送れるか?」

クリフ
『可能ですが、一度は失敗しています、
 再び失敗するかと思いますが?』

砕月
「5日も来ないのはおかしい、
 進軍速度は遥かに上の筈だ、
 もう来ているは「伝令!!」
 なんだ!!」

「敵兵、ヴァールハイト帝国の使者です!!」

砕月
「殺すな!!生かしてここへ通せ!!」

「はっ!!」

クリフ
『正気ですかっ!?』

砕月
「使者だ、つまり、
 アレを見ながら通らねば、
 ここへはたどり着けない。」

クリフ
『・・・わかりました、
 謁見の間を準備致します。』

砕月
「いや、まずは、水と食べ物だ、
 誰か、クローマさんに準備を、特に、
 お腹に優しい物を頼む。」

「了解!大至急伝えます!!」

砕月
「それと、クリフ、簡易ベットを頼む、
 倒れられても直ぐに介抱できるように、
 魔術師も治療準備を怠らないでくれ。」

クリフ
『・・・了解。』

使者と君主と僅かな希望


その使者は、顔面を青白くし、

がちがちと歯を鳴らし、震えながらも。

ルーペス
『わ・・・私は、
 ヴァールハイト帝国、君主、
 こ・・・此度の、
 使者の・・・しゃ・・・しゃ・・・。』

砕月
「私が、連合軍総大将、砕月と言います、
 まずは、白湯を、
 さぁ、ゆっくり飲んで落ち着いて下さい。」

駄目だ、物すら掴める状態じゃない、

かと言って、アレは、なぁ~・・・あ!

砕月
「ナハト、
 君が口移しで飲ませてやってくれ、
 男の俺では、色々不味いだろう?」

ナハト
『はひっ!?わたしですかっ!?』

うぇ~い、手伝うからって、

ここにいるんじゃないんかぁ~い。

砕月
「ナハト?俺は、恋人だけど、
 ファーストキスまだだろ?
 なら、俺が、君主様とキスしてもいいのか?」

あ、やっと気づいたかな?

ナハト
『そそそうですよよね!!
 わっ!?わかりました!!でしたら!!
 殿方達は一旦ご退出くださいませ!!』

砕月
「そうしよう。」

え?なんで腕掴まれるの?

ナハト
『あ・・・貴方にいて欲しいのです。』

震えてらぁ・・・。

砕月
「ごめん、なら、後ろ向いてるよ。」

ナハト
『・・・おねがいします。』

ルーペス
『す・・・すまない、少し、落ちついた様だ。』

さっきよりマシ、か。

砕月
「和平なんて、生温い事言うなよ?
 こっちの使者を殺してるんだからな?」

ナハト
『サイゲツ様っ!?』

ルーペス
『い・・・いいのだ、ナハト殿、
 こちらの責任だ・・・本当に申し訳ない。』

砕月
「おそらく、
 ヴァールハイトは、
 しばらく人が住めないだろう。」

!?

ナハト
『どう言う事ですか?』

砕月
「ナーハートー?
 俺、演説台で、わざわざ言ったよな?
 まさか、
 昨日の今日で忘れたなんて言わないよな?」

こら、そっぽを向くな。

ルーペス
『・・・なにか知っているのか?』

砕月
「あぁ、こちらにも被害が出てな、
 10人の調査隊の内、
 8人が死んでしまったよ、
 生き残り2人のおかげで、
 火山性有毒障害って、名前を付けた、
 “今の治癒術では治療不可の致死の病”と。」

ルーペス
『致死の病(やまい)だと?
 どう言う事だ!!火山とはなんだ!!
 教えてくれ!!国には大事な人が!!
 家族がいるんだ!!
 早くっ!!教えてくれ!!』

砕月
「なら、
 急いで国へ帰り、
 全国民をエフェメールへ移民しろ、
 そして、残酷だが、
 ヴァールハイトの土地は、
 自然が時間をかけて治す以外に方法がない、
 離れる意外、解決できない。」

ルーペス
『そんな事!!出来る訳が!!』

砕月
「できなければ、
 “国民と心中するんだな!!”
 俺は、解決策を提示は出来る、
 だが!!それを断るも、受諾するも!!
 お前のその手に全てかかっている!!
 滅びを選ぶか!!生きて!!
 いつかの再建の為に生き続けるか!!
 選べ!!こうして話している間にも!!
 致死毒はお前の国を蝕み!!
 家族を蝕み!!死に絶えるだろう!!
 さぁ!!決断しろ!!」

頼む!はい、と、言ってくれ!!

ナハト
『サイゲツ様・・・。』

ルーペス
『我々は・・・そのいつかを・・・
 待っていてもいいのか?』

砕月
「もちろん。」

ルーペス
『その時は・・・力を貸してくれるか?』

砕月
「それまで俺が生きてたらな。」

ルーペス
『助けてくれ・・・
 国を・・・国民を・・・家族を・・・。』

砕月
「了解した、
 全軍急ぎ出発!!
 ヴァールハイト救出へ向け、走れぇえ!!」

連合誕生と駄犬?

新西暦 零年

冬の月、20日

ここに、ヴァールハイト、
    エフェメール、
    ムスクスの三国を合わせた、

オペリオル・イルゲンドワーン連合国

うろ覚えの発音で、《何時か、待つ》

まぁ、うろ覚えで、よかった、
長いからって、オペリオル連合って、略された。

砕月
「略された・・・まぁ、いいけど。」

ナハト
『長すぎますと、私が覚えられませんの!』

いや、(`・ω・´)ドヤァって、顔すんな、

お前の意見かなり重いんだぞ?

砕月
「さてと、クシェ?
 ルーペス閣下はそろそろ?」

クシェ
『もうそろそろ上がってくるよ?たぶん。』

たぶん、ねぇ、

うん、鍵穴からなんか視線を感じる。

「なにしてんのさ?王女様!!」

あ、クローマさんだ。

ばん!!

クローマ
『ほら、せっかくおめかししてんだから、
 よーっく!見てもらいな!』

ぁ~・・・うん、この人、

ムスクス公益国の第1王女、

なんでも、国を継ぐ気は全く無くて、

料理一筋で生きて行きたいって、

継承権を破棄、総料理長をやっているそうだ。

砕月
「クローマさん、
 長旅で疲れてますし、そのくらいで。」

そうだ、このエフェメールから、

徒歩で20日かかるのだ、

もちろん、休憩無しの場合だ、

全国民を警護しつつ休息を取り、

丸2ヶ月かけて、

先ほどたどり着いたばかりなのだ。

ルーペス
『いっつつ・・・サイゲツ殿、
 ご配慮感謝する、
 常々、
 我がヴァールハイトを受け入れてくれ、
 本当に感謝する。』

深く頭を下げる。

砕月
「まぁ、問題は山積みです、
 取り急ぎ解決したい物があるのです。」

ルーペス
『それは、一体?』

砕月
「貴族階級の撤廃です。」

クシェ
『サイゲツ!!
 それは何度も無理だって言ったじゃん!!』

ナハト
『そうですわ!!』

砕月
「ナハト?それじゃ一生俺と結婚できないよ?」

ルーペス
『そうか、サイゲツ殿は
 指揮官とは言え、一般人、
 しかし、ナハト殿はソレイユ家の次女、
 長女であるクシェ殿は、
 軍にいる、つまり、
 ソレイユ家を継ぐ人間は、
 ナハト殿、貴殿しかおらぬ。』

ナハト
『それは・・・。』

ルーペス
『婿養子にしようにも、
 父上殿、母上殿が許さねば、
 結婚はおろか、
 許嫁がいるならば、
 そちらと結婚させられてしまうな。』

許嫁か、いるのか?

ナハト
『あんな駄犬種!!絶対!!
 許嫁ではありませんわ!!』

クローマ
『ほぅ、噂をすれば、
 誰か来たみたいだねぇ。』

扉、開けっ放しかよ・・・。

ダビレンシア
『ハーイ!マイハニー!!
 会えなくて寂しかったよ~!』

ダメルシアン・・・

ダルメシアンかぁ・・・、

うぁ~っ!?鳥肌が立つ!!

ナハト
『死ね、駄犬。』

クシェ
『失せろ、クズ。』

ルーペス
『お・・・お前ら。』

クローマ
『あははははは!!』

ダビレンシア
『ぬふふふ、君か~い?
 愛しのナハトに手を出した愚か者は~?』

うん、無理。

ナハト
『わたくし、
 貴方を許嫁と認めた覚えはありません。』

ダビレンシア
『ぬふふふ、ですがぁ、
 ご両親、いえ、
 お父様、お母様がお決めになったのですよ?
 それを撤回するなんて、
 できませんよねぇ~?』

あ~、がらじゃないな、

まず、なんでこんな考え、

いっか、

こうやって思うのも、

最後かもしれないし。

砕月
「決闘しようか?
 どちらが相応しいか、力で証明しよう。」

ナハト
『なっ!?サイゲツっ!?』

クシェ
『ちょっ!?コイツ!こんななよっちいけど、
 それなりの実力者よ!!
 持久力じゃ、
 貴方に勝ち目はないのよっ!?』

ルーペス
『あー・・・私はどうしたら?』

クローマ
『あははははははっ!?』

ダビレンシア
『ぬふふふ!いいでしょう!!
 では、本日、夕刻、
 夕日が墜ちる時より、
 決闘を始めましょう!!』

砕月
「逃げるなよ?」

ダビレンシア
『望むところです!!』

決闘(笑)


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決闘(笑)


闘技場はある、

武器、ある、

“とあるもの”おk。

砕月
「うし、準備万端!」

ナハト
『サイゲツ!!貴方!!何て事を!!』

砕月
「嫌?でも、もう始まるし。」

ナハト
『違います!!なんで私に!!』

砕月
「だから言ったじゃん、
 ご両親だって、
 “力で証明できるならそれで良いって”」

ナハト
『でもっ!?』

クシェ
『・・・サイゲツ。』

砕月
「はいよ?」

クシェ
『勝て!!これは、
 必勝のまじないだ!!』

へ?

ナハト
『!?』

あー・・・えー・・・説明プリーズ?

クシェ
『あたしの・・・
 ふぁ・・・ふぁ・・・、
 ふぁ~すときすなんだから~・・・
 絶対勝て!!
 ばぁああかぁあああっ!!』

まじかぁあああっ!?

ナハト
『そんな・・・先を越されるなんて・・・。』

ん~・・・うん、言おう。

砕月
「ナハト、こっち向け!」

無理やりこっちを向かせる。

ナハト
『うぅ~・・・。』

砕月
「俺と、クシェのファーストキスは、
 それは、それ、
 俺と、ナハトの・・・
 その・・・ファーストキスは、
 これが最初だ・・・。」


 
砕月
「結婚してくれますか?」

ナハト
『・・・ならば、勝ちなさい!!絶対!!』

ダビレンシア
『ずぅ~いぶん遅かったですねぇ~、
 逃げ出したのかと思いましたよ~?』

砕月
「ちょっと立て込んでてな、
 悪かったって、じゃぁ、始めようか?」

『これより!!
 ダビレンシア対砕月殿の決闘を始める!!
 両者!!前へ!!』

ダビレンシア
『瞬殺してあげますよ!!』

砕月
「どーだか。」

『始めっ!!』

ダビレンシア
『はぁあああっ!!』

それでは、羞恥ターイムww

砕月
「これ、な~んだ?」

ダビレンシア
『ただの棒?そんな物で・・・。』

砕月
「ほれほれ~。」

あえてゆらゆらゆっくりと。

ダビレンシア
『くっ・・・。』

いっ・・・一体なにを・・・。

砕月
「来ないのか~?」

起伏を早めて・・・、

よし、目が泳いでる・・・。

ダビレンシア
『おのれぇええっ!!』

クシェ
『サイゲツっ!?』

ナハト
『いやぁああああっ!?』

来たっ!!

砕月
「ほれ、
 “とってこ~い”」

ダビレンシア
『わほぉ~ん!!』

げひゃひゃひゃひゃひゃひゃww

クシェ
『へ?』

ナハト
『ど・・・どう言う事ですの?』

クローマ
『あははははははははっ!?
 ひぃ~っ!?ぎゃはははははっ!?』

ルーペス
『な・・・なんとえげつない攻撃だ・・・。』

ダビレンシア
『わふっ!わふっ!!』

砕月
「よーしよし、いい子だww
 それ、もう一度!
 “とってこ~い”」

ダビレンシア
『わふぉ~ん♪』
 
結局、

そのまま刃引きしたロングソードで、

ボディアタック!

そのまま撃沈した、

あひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!?

人間様舐めんな駄犬ww

クレースト国

はぁ。

この半年、ため息ばかりだ。

『はぁ。』

「長(おさ)、

 何ゆえに動かないので?」

『気がのらん。』

「いけません!

 ヴァールハイト、

 エフェメール、

 ムスクスの三国が、連合を組み、

 食料品の輸出を止められて早半年!!

 いい加減にしてください!!」

そうなのだ、

大半はこちらの不手際が原因で、

ムスクスを怒らせたのだ。

『じいや、元はと言えば、

 おぬしらが、

 勝手に関税をまけろだの、

 品質を上げろだの、

 文句ばかり言うから、

 こうなったのだろう?』

「それは、国の生活向上!!

 しいては!!

 軍備の増強!!

 列強国に対する優位性をですね!!」


『もう良い、

 これ以上勝手に動いてみろ?

 公開処刑でもして、黙らせるぞ?』

「そっ!?そんなっ!?

 我々元老院は、

 国民と、国の発展を思ってこその!!」


『そう言えば、

 新しい指導者の情報はなにか入ったのか?』

「それが、

 例のグルッペ街道以前の

 情報が全くないのです。」

『やはり駄犬は、駄犬か、切り捨てろ。』

「御意。」

『そうだ、

 できたら、会談を頼んでみてくれ。』

「正気ですかっ!?」

『なんだ?長の願いすら、

 ないがしろにするのか?』

「いっ!?いえ、滅相もございません!!

 近日中に会談ができるように!!」

『失礼のないようにな?』

「はっ!!」

あの戦、

指揮官一人変わるだけで、

勝てるような戦力差ではなかったはず、

一体、誰なんだ?何者なんだ?

『建国してまだ10年、

 ただの村の集まりが国として、

 名乗りをあげたまでは良かったが、

 なんとも、退屈だな。』

できたら、戦いたいが、

使える戦力は、たいして多くない、

連合戦力に比べたら

完全に物量で押し切られる、

ふむ?身体を動かしたいなぁ、

長って、こんなにヒマだったのか。

ケラス王国

「陛下!!陛下は何処へ!!」

誰が行くかっての!!

俺様を閉じ込めて、

毎日書類なんぞ見てられるか!!

『あらよっと!』

「陛下、またですか?」

『あぁ!お前には感謝しきれん!』

「でしたら、

 ちゃんと夕刻までにはお帰りください、

 パンテル様?」

パンテル
『わかっておる、って、硬てぇ~、

 行ってくんぜ!!』

「はい、行ってらっしゃい。」

夕刻、か、まいったな。

国外れの村に来たはいいが、

まさか、野盗に襲われてるなんてな、

ひゃっは~っ!!

パンテル
『てめぇら!!

 国王様自ら相手してやるから、

 覚悟しなぁあああああっ!!』

「なっ!?陛下っ!?」

「なんで国王がこんな場所にっ!?」

パンテル
『さぁ!!国境兵よ!!

 荒ぶる戦神を呼び寄せ、

 自らに宿せ!!

 野盗如きに遅れをとるな!!

 さぁ!!狩りの始まりだぁあああっ!!』

「ですから!!なんでまた!!

 このような国境村にいらっしゃるのですか!!」

パンテル
『え~っと、散歩?』

「散歩?じゃないですよ!!

 三日前から書類作業は

 溜まりに溜まっております!!
 
 国家事業ですら、

 貴方様の捺印待ちなんですよ!!

 いい加減お戻りください!!」

パンテル
『じゃぁ、休みをくれよ~。』

「駄目です!!そう言って、

 7日間も行方不明になったのは

 どこのどなたでしたかっ!!

 小規模とは言え、

 野党の一つを壊滅するのはいいですけど!!

 貴方様は国王!!国の王なのですぞ!!」

パンテル
『はいはい。』

「ちゃんとお話を聞いてください!!」

「あ、国王。」

パンテル
『よ、テラス、なんか用か?』

テラス
『なんか用か、ではなくて、
 私兵から面白い情報が上がって来たのよ。』

「女王陛下!!貴女様まで!!」

パンテル
『どれどれ?へぇ~。』

テラス
『面白そうじゃない?

 すこし小突いてもいいんじゃない?』

パンテル
『あぁ、面白そうだ!!

 じじい!!戦の準備だ!!

 それと、書類を並べておけ!!

 一日だ!!一日で片付けてやるから、

 戦の準備だ!!』

「もう、好きになさって下さい。」

この際、

滞ってる書類が片付くならよしとしよう。

砕月の受難


ふぅ、これなら実戦に耐えられる。

新型、と言っても、野太刀モドキ、

これが完成しただけだ。

砕月
「悪いな、工房借りちゃって。」

「いえ、様々な試行、勉強になります。」

砕月
「ん~、俺のは所詮見よう見まね、

 師匠がすごかったんだよ、あの人は、

 火、鉄、繋ぎの材料、

 その目でしっかり見極めて、

 最高の切れ味、耐久力、

 手入れさえ怠らなければ、

 1000年持つ剣を作っていた。」

「千年っ!?」

砕月
「けっして鉱物資源が豊富ではなかった、

 だからこそ、一つの武器を長く使えるように、

 日夜研究、突き詰めていった、

 その一部を、こうして教えてるに過ぎないよ。」

「そんな素晴らしい技術を我々にっ!?」

砕月
「ただ、こうも、言ってたな。」

《人を生かすも殺すも、その、ヒト断チで、決まる》

「そのヒト断チで、決まる。」

砕月
「あぁ、武器を作る以上、

 殺されるヒトもいる、

 逆も一緒だ、ゆめゆめ、忘れないように。」

「はい!!」

ふへ~、日付は?

7日も篭ってたのか。

水浴びで汗を流す。

砕月
「うひ~、冷てぇ~。」

温泉が無いのは困ったな、

火山が近いなら、

あると思ったんだけど、

近寄れば火山ガスでお陀仏、

とてもじゃないが入れない、

水を沸かすにも、

燃料は家畜の糞を乾燥させた物、

油も貴重品、森林も下手に伐採すると、

川の氾濫に耐え切れなくなる。

砕月
「水、油は貴重品、

 どっちかを解決しなきゃ・・・。」

そうだ、魔術師の魔術で?

駄目だ、

一人の負担が尋常じゃない、

体力も、精神も修練を最低20年は鍛えて、

初めて攻撃用魔法を使える人もいる、

うぬぅ。

砕月
「どうしたもんか。」

こんこんこん

砕月
「はい、どうぞ?」

誰だろ?

ナハト?クシェ?クローマさんは、

扉を思いっきり開けるから違うし。

ルーペス
『私だ。』

予想外デース。

砕月
「かっ、

 ルーペスさん?

 こんな夜分にどうされました?」

そうだった、そうだった、

閣下って、呼ばれるの嫌なんだっけ。

ルーペス
『すまないな、閣下は。』

砕月
「そうですね、

 これだけお綺麗な女性が、閣下って、

 王女様とかなら、わかりますけど。」

ん?まて、俺には、ナハトがいるだろう。

ルーペス
『それで、だな?』

砕月
「なんでしょう?」

ルーペス
『側室を持たぬのか?』


前触れも無く、胃がギリギリと、

音を立てるように痛む。

砕月
「随分唐突ですね。」

胃がぁ~、ぁ~、覗いてる~、

ナハトがぁ~、

鍵穴から覗いてる~、い~や~。

ルーペス
『じ・・・実はな?ダラスお爺ちゃんがな。』

あのジジイ、いつか絶対シメる。

ルーペス
『孫をみたいって、言い出してな?』

砕月
「はい。」

ルーペス
『あの、その、

 先月の決闘を

 お爺ちゃんが見てたらしくて。』

外堀が埋まって行く。

ルーペス
『あの、あ、あ、
 貴方なら、是非に・・・と。』

ひぃいいいい!?

ドアノブがぁああああっ!?

ルーペス
『こここここっ!?こんな私だが、

 そのっ!?

 そそそのっ!!』

めきゃっ!?めきゃって、

ドアノブがぁあああっ!?

ルーペス
『お嫁さんにしてくれないか?』

わんわん泣き叫ぶナハトに、

ディープキスで黙って貰った。

砕月
「悪かったって、ルーペスさんも、

 ちゃんと言ってくれれば、

 ナハトも泣かずに済んだんですから、

 すこしは自重して下さい。」

ルーペス
『ほんとうに!もうしわけない!!』

ナハト
『でぃぷ・・・でぃぷきす~・・・。』

あ、顔真っ赤、ほけほけしてやがる。

砕月
「メイドさん、部屋に頼める?

 側室を持つにしたって、

 これから必要な書類やら、準備、

 いろいろあるからさ。」

「心得ております、それと。」

それと?

「でっ、できたら///」

うん、背筋が凍りそうだ。

「わたくし達にも

 でぃぷきす・・・、

 ご教授ねがえますか?」

達?達?え?

ナハトについてる直属だけで、

200人いるんだよ?嘘だよね?

ルーペス
『おぉ~、

 完全にメスの目をしておる。』

あ、案外しっかりしてるんですね?

「日取りはいつにいたしましょうか?

 明日?明後日?明々後日?

 それとも!!今ですかっ!?」

い~や~っ!?逃げたい!!

てか、本気でやばいから!!

なんなの!?あんた達!!

ここに見える範囲だけで、

20人ぐらいいるけど!!

ちょっと~っ!?かんべんしてくれ~っ!?

かってに決められました、

出会い頭に、ナハトがいる状態で、

なら、おkって、

俺の人権って・・・。

ルーペス
『ほんとうに、すまぬ!!』

終始こればっかり・・・ん?

ナハト
『そうですわ!』

まてまてまてっ!?

ナハト
『ルーペス様も!

 でぃぷキスしてもらえればいいんですよ!

 あ~っ!?すっきりしましたわ!!

 なんかこうもやもやしてたのが吹っ飛びましたわ!!』

誰か助けてくれ~っ!?

二階・食堂

えぇ、しましたよ!!

順番に!!ディープキス!!

ナハト、ルーペスさん、

メイドさん(20人)と!!

砕月
「クローマさん?

 あえて聞きますけど、

 女性って、がっつり来るんですか?」

クローマ
『今更かい?って、

 まだヤッないのかいっ!?』

ひぃいいいっ!?

クローマ
『ありゃま、てっきりもう出来たのかと、

 あんた、不能じゃないよね?』

砕月
「あんだけ美女に囲まれて

 んなわけないですよ・・・

 むしろ、結婚もまだなのにできません!!」

クローマ
『そう言えば、式はいつだい?

 たーんと旨いもの作ってあげるからね!』

砕月
「当分先ですね。」

クローマ
『あぁ、例の階級撤廃かい?

 難しいだろう?千年、二千年と続いているんだ、

 簡単ならアタシもとっくに王女様だよ。』

砕月
「貴女は、元、でしょうに。」

クローマ
『そうさ、総料理長だけど、

 階級は一般人、

 あ、それじゃぁ、あたしと結婚できるね?』

不味い、ナハトがキレる。

クローマ
『だっ!?大丈夫かい?』

あわわわわわっ!?

さっき部屋へ戻したはずなのに!!

寒気がぁあああああっ!?

話題を変えなきゃ!!

砕月
「いないんですか?」

クローマ
『え?』

砕月
「好きな人ですよ?」

クローマ
『いたけど、

 これだけ残して、死んじまった。』

イヤリング?

クローマ
『あたしが素材集めに森に入って、

 アイツは、その護衛だった。』

砕月
「すいません。」

クローマ
『いや、アタシも軽率だったよ、ごめんな?』

砕月
「それじゃぁ、その彼が悔しがるぐらいに、

 旨いもの、作ってください!」

クローマ
『・・・へ!望む所だ!!覚悟しなよ!!』

砕月
「もちろん!!」

連合国・開拓誌、1


連合設立から丁度一年、

季節は日本で言う、夏。

砕月
「ぬ゛ぅ~、あづい。」

そう、暑いのだ。

温度計は、まだまだ開発が始まったばかり、

湿度計も同じで基準が曖昧、

透き通る分厚い(2~3cmぐらい)ガラスも、

ようやく完成したばかりだ。

砕月
「前途多難、まさにこの事だなぁ。」

ムスクスはどんどん要塞化し、

街道は往来が激しくなる事を想定して、

街道整備を推し進めている、

まぁ、自分達でまいたアノ罠に苦しめられつつも、

大型馬車10台は横一列に並んで走れる幅になった。

砕月
「さて、っと。」

今、足を向けてるのは、

ヴァールハイトからの避難所、もとい、街だ、

木材はそれなりに余裕があって、
(川とは反対側の
 森林開拓地の余剰木材)

建材には困らなかった・・・が、

つい口を出してしまい、

一昨日まで建築大工と日本家屋型や、

ログハウスタイプを、

避難民の意見を盛り込んで建築していた。

砕月
「和洋折衷、だっけか?」

よく、覚えていない、

メイン通りは大型馬車3台分、

横道は小型馬車1台分の幅で、

通行区分を決めている、左側通行で、

歩道区画には、最低限の柵と、

魔鉱石ランタン、

ランタンは、海中からたまに引っかかる海底岩石で、

日中、日に当てておくと、

夜は十分な明るさを提供してくれた。

砕月
「海水と、魚数匹で、

 こんだけ明るいし、変な石だよなぁ。」

海水と魚がいないと光らないってのも、

謎だった、

魔術師も研究を始めたばかりで

最低限の条件がわかっただけ、

ランタンを維持管理する雇用もできたからいいけど、

家の中と前にあるランタン2つぐらいで、

海水は、

完成したばかりの“錆びにくい鉄”で、

平均4往復、コストは、やや高めだけど、

それでも、明るいだけで、

生活が凄い楽になったと、

沢山声が上がっている。

砕月
「ふぅ、自転車はなかなか浸透してるな。」

ゴムこそなかったが、

材木のなかで建材に適さない、と、

今まで弾かれたいた

フングラ産の樹木が効果を発揮した。

砕月
「こんだけしなって、破れにくいなんて、
 いろいろ考えつくだろうに。」

ツタの植物にもいい物があった、

超高温炉で出来た掘削用具(ツルハシ)で、

フングラ産の木に穴を開け、

そこに、土、粘土、布切れなどなど、

いろいろ試したら、木屑が一番適していた、

それを細長く加工した木に詰めて、

太刀でやっとこさ切れるツタで、

縛り、車輪に巻きつけ、また、ツタで縛り付ける、

メンテナンスは少し大変だが、

気軽に距離を稼げ、

人が走るよりも早く、情報が伝わる、

馬には勝てなかったが、不整地でも運用出来た、

ブレーキには、これまた建材向きではないヴァールハイト産の、

カーボと呼ばれる低木樹、成長が早いが、

使い道を見つけられず、邪魔扱いされていた。

砕月
「いいのかな?こんなに近代化を進めて。」

そうだ、

本来はもっと時間をかけて完成されていくもの、

たった一人の異世界の人間が、

オーバーテクノロジーを提供、

生活を一変させてしまった。

???
『あれ?どうされました?』

砕月
「クニークルスさん、お疲れ様です、

 今日は、スイカをお持ちしたんですよ。」

クニークルス
『すいか?もしかして、

 野菜ですか?』

砕月
「えぇ、水分補給にはもってこいの野菜ですよ?

 裏の運河で、冷やしておきますね?」

クニークルス
『わかりました、みんな起こしてきますね♪』

砕月
「あははは、お手柔らかに。」

クニークルス
『くぉおおらぁああ!!チビ共!!

 おきんかぁああああああっ!!』

すっげ~・・・起伏の差、

まぁ、戦災孤児を預かってもらってるし、

ありがたいよな。

スイカ、うん、

見つけた時は小さかったけど、

おやつがわりに、

エフェメールで栽培されていた、

土地の開拓、栄養のある土地へ改造、

人、家畜の糞尿、それらを、

ワールドワーム
(世界中にいるから)によって、分解、

ひと月おいて、土をふるい落とすと、

良質な栄養を持つ土が出来ている、

ワームは、また集め、

次の悪い土、糞尿をまぜた所へ放り込む。

砕月
「で、育てたら、こんだけ大きくなりまして、

 塩を、少しふりかけて、がぶっ!」

ん~!?うんめぇ~っ!!

砕月
「で、種は、吐き出して、回収、

 新しい開梱した土地に撒いて、

 栽培地域を増やしています。」

クニークルス
『すばらしい!!是非とも協力させてください!!』

砕月
「それでですね?
 この種を使って、
 “油”を作って欲しいんですよ。」

クニークルス
『油っ!?この種からですかっ!?』

砕月
「はい、すでに、季節樹、

 スメーノスから少量ですがつくれます、

 これも種を加工しているので、

 このスイカの種もいけるのではないかなぁ~って、

 俺の故郷では確率されていたのですが、

 その方面の知識は無くて、

 できたら、これも雇用に役立てられないかと。」

クニークルス
『まかせなさい!!なら、機材が必要ね!!よーし!!』

連合国・開拓誌、2


機材に関しては後日手配すると約束し、

クニークルス家を後にする、

それと、

戦災孤児達に、トト、と、

名前をあげているそうだ。

砕月
「トト家、ね、貴族だけど、昔から、

 民あってこその貴族タイプはありがたい。」

あぁ見えて、貴族のクニークルスさん、

ちゃんと儀礼用の服もあるが、嫌い、とのこと。

砕月
「一回着るのに、半日とか、

 しゃれんなんねぇよ。」

あ、衣服の改革も進めなきゃな、

服なら、クローマさんかな?

ルーペス
『あ、サイゲツ殿。』

砕月
「あ、ルーペスさん、今日は軽装なんですね?」

ルーペス
『あぁ、

 ヴァールハイトの街を視察していたんだ。』

砕月
「どうですか?」

ルーペス
『悔しいが、皆、生き生きしている、

 こんなに尽くしてくれ、感謝してもしきれない、

 ほんとうにありがとう。』

砕月
「それは、皆さんに言って下さい、

 こちらから、この土地を押し付けられても、

 生き延びる事を選んだ貴女について来た、

 みなさんに言うべきです、

 俺は、臆病者で、相手の機嫌を損ねないか、

 常に考えてしまします。」

ルーペス
『誰が貴方を臆病者と言ったのでしょうか?』

やめろ。

ルーペス
『皆、ありがとう、そう言っているのに?』

やめてくれ。

ルーペス
『涙してまでありがとうと!!

 そこまで感謝しているのに!

 誰が臆病者なんて罵れるのか!!

 貴方は!!今まで誰も成し得ない事を!!

 たった1年で!!ここまでこぎつけたのだ!!

 それを誰が非難できよう!!

 なぜ!?貴方は誇らない!?

 教えてくれ!!なぜだ!!』

砕月
「・・・怖いんですよ、技術の奪い合い、

 これは絶対起こりうる事です。」

ルーペス
『奪う?設備があっても使い方、

 見極めが出来なければ、

 ただの置物だと、そう言ったではないか!』

砕月
「人質に、家族がいても?」

ルーペス
『それは・・・。』

砕月
「力あるものは、奪い返せるでしょう、

 では、力無き者は?

 諦め、泣き寝入りする、

 それ以外に、どうしろと?

 周りも、迂闊に助けてしまえば、

 今度は自分に降りかかってくる、

 なら、全体に同じ力があればいい、

 でも、人には向いてる者、向いてない者、ありますよね?」

ルーペス
『それは努力で。』

砕月
「知ってますか?知ってますよね?

 貴族の大半は、一般人をただの道具、

 そう思っているのは、知っていますよね?」

それは・・・。

砕月
「だから、階級制度は廃止したかったのです、

 でも、千年、二千年と続いてるこの制度は、

 たかが一年しかいない俺には、大きすぎる壁です、

 だからこそ、知っている知識を全部使い、

 一般人の力を押し上げるのです、

 貴族を必要としない、力強い、本当の民を、

 貴族すら打ち倒せる、強い民を、

 吸い上げきれない力を、民に、

 民こそが、国を作る、民こそが、国だと、

 まぁ、最悪、付いてきてくれる人達だけで、

 新天地へおもむき、

 ここを捨てます。」

ルーペス
『そっ!?それだけはっ!?』

砕月
「こんな俺に、ナハトは、

 ソレイユ家当主に、離縁状を叩きつけました、

 今は、一般人です。」

ルーペス
『なっ!?』

砕月
「全部、打ち明けたら、

 なんて言ったと思います?」


ナハト
『“貴方がいる所なら、どこへでも、お側にいさせて下さい”』

砕月
「って、

 正直、重たいです、

 でも、それに答えて行かねば、

 故郷に、“日本人”として、恥ずかしくないように、

 生きていく決心がついたんです、

 それに、まだ1年しか経っていないここを、

 見捨てませんよ、せめて10年、この間に、

 なにも進展が望めないなら、その時はその時です。」

ルーペス
『側室の件、無かった事にしてくれ、

 私は、私個人は・・・。』

砕月
「今じゃなくていいです、

 まだ、9年、残ってますから、

 よく、考えて下さい、いえ、

 力を貸して下さい、この世界で、

 生きていく知識を、力を、

 貴女が出来る範囲で構いません、

 力を貸して下さい、お願いします。」

ルーペス
『日本人、お前のように、

 強い心を持った人がいるのか?』

砕月
「さぁ?こればっかりは、人それぞれ、

 そう言わざるを得ません、

 個人個人、考えは違うもの、

 それが当たり前の社会でしたから。」

ルーペス
『・・・協力しよう、可能な限り!いや!

 私の知りうる全てを使い!!協力させてくれ!!

 10年目、20年目、ずっと!!ずっと!!

 離れられない!!最高の故郷にしてみせよう!!』

砕月
「んじゃぁ、早速。」

ルーペス
『え?』

砕月
「さ、時間は有限!!一気にやりますよ!!

 まさか、今更逃げるなんて言いませんよね?」

ルーペス
『あぁああ!!もちろん!!

 なんでもやるぞ!!』

よし(ニヤリ)モデル、ゲット!!

ルーペス
『・・・な・・・なんだ?急に寒気が。』

クレーストの使者(ここから先はまだ)

お父さん、お母さん、僕、生きて帰れそうにありません、
目の前に、漆黒の巨大な壁があるからです。

『・・・こ・・・こわい。』

それが、最初の感想です、
僕、ココン・ショセットは、第二大隊の小隊長でした、
しかし、元老院から召集され、
ムスクス公益国に会談の要求をする為に、
使者として、派遣されました。

ココン
『全然・・・話に聞いていた街じゃない。』

話によれば、低い壁、住民も優しい人達で、
だけど、お金には五月蝿いって・・・。

ココン
『これじゃぁ・・・要塞・・・。』

鋭角に突き出た丸太が何十にも張り巡らされ、
“切り口の綺麗な死体がいくつか”

ココン
『・・・酷い。』

目は開いたまま・・・そのまま・・・そう、
豚肉をスライスしたような死体ばかり・・・。

ココン
『・・・ぉお~い!!だれかいませんかぁあぁあ~。』

だ・・・だめだ・・・声が震えて。

「誰かっ!!」

いた!!人がいた!!

ココン
『僕は、ココン・ショセット!!
 隣国、クレースト国の使者としてここまできました~。』

あ・・・足が・・・。

「っ!?いいか!!そこから絶対動くなよ!!
 その死体と同じになってしまうからな!!
 直ぐに行く!!動くなよ!!」

ココン
『は!はいぃ~・・・。』

だめだ・・・足に、力が入らない・・・怖い・・・助けて・・・。

___________________________

正直、あれが地獄なのかと・・・、
漆黒の壁に招き入れられ、驚きました、
何層にも高い建物、堅牢な作り、
大型馬車がひっきりなしに動いていて・・・、
なにか、大きな生き物に見えました。

ココン
『あ・・・たっ、助かりましたぁ~・・・。』

「いいってことよ、
 しっかし、よく生きてあんな近くまで来れたな?
 そっちの街道にも、
 アレとおんなじの、けっこうあるんだぞ?」

え?

「お・・・おい?大丈夫かい?」

ココン
『・・・下手をすれば?』

「あぁ、サイゲツ様が作った鋼鉄の糸で、
 スライスされてたろうな!あはははははは!!」

ぜったい!!笑い事ではないですよぉおおおおっ!?

ココン
『と・・・ところで、サイゲツ殿とは?』

「あぁ、知らないのか?
 この、ムスクス、エフェメール、ヴァールハイトを
 連合国にした最高責任者様だぜ?
 今や軍備の真っ最中、どっから攻められても、打ち倒せるぜ!!」

・・・攻められても?攻め入るのではなくて?

ココン
『あの!お会いになる事は可能でしょうか!?』

「ん?あぁ、このままついて来なよ、
 丁度、精錬所にいらっしゃるから。」

は?なんで?精錬所に?

______________________

精錬所

「サイゲツ様~!!
 隣国!!クレースト国の使者様をお連れしましたぜ~!!」

砕月
「悪い!!日が落ちてからにしてくれ!!
 今、手が離せない!!使者の方!!
 もうしわけない!!本日中にはお伺いしますので!!
 街の観光でも楽しんでください!!
 お前ら!!ここからだ!!
 火を絶やすな!!紫の炎を決して絶やすな!!」

「『「はいっ!!」』」

目の前に広がる・・・熱波の中に、
異色な人間がいました、
あぁ、彼が、サイゲツ殿なんだろう、と。

「あちゃ~・・・
 タイミング悪かったっすね。」

砕月
「クリミア!!連れてきた責任だ!!
 お前が案内しろ!!客間にも案内しろ!!
 滞在中は、お前が相手してくれ!!
 見張りの交代は俺からの命令だと!伝えておいてくれ!!」

クリミア
「ちょっ!?サイゲツ様っ!?」

は?

クリミア
「あぁ、こりゃ駄目だ、絶対聞こえない・・・。」

顔つきが・・・皆も、なんて鋭い顔なんだ・・・。

クリミア
「んじゃぁ、行きますか、
 ようこそ、連合国、ムスクス自治区へ。」

ココン
『え?あ!はい!よろしくお願いします!!』

____________________________

ココン
『なんて言うか・・・活気が凄いですね。』

森から切り出したであろう丸太を、
大型馬車に積み込んで、正に出発しようとしている。

クリミア
「あれは、ヴァールハイト自治区行きですな。」

ココン
『ヴァールハイト自治区?』

クリミア
「あぁ、連合国内では、国境がないんですよ、
 それで、旧国境線を自治区の境界にして、
 それぞれで統治をしているんです。」

ココン
『そんな事が・・・。』

クリミア
「これぐらいで驚いてたら、
 心臓がいくつあっても足りませんぜ?」

ココン
『はぁ?』

・・・どうしよう、既に限界を感じてるのに。

クリミア
「サイゲツ様はな?一般人なんだ。」

ココン
『はぁああああああああっ!?』

クリミア
「だから、言ったでしょうに、
 それにここを守備する兵士は、皆、一般人、
 元国王は、そのまま自治地区長をお勤めになって、
 どんどん要塞化を進めてますぜ?」

ココン
『いっ!?一般人の命令を受け入れてるんですかっ!?』

クリミア
「命令じゃねえんだこれが、
 お願いして、納得したからやってるんだぜ?」

し・・・信じられない!!

クリミア
「ちなみに、
 第一王女様のクローマ様、
 エフェメール国のナハト様、クシェ様、
 ヴァールハイト帝国のルーペス様が、
 サイゲツ様の側室なんだぜ?
 ちなみに、ナハト様が第一婦人だ。」

長・・・ここはとんでもない国です・・・。

クリミア
「んで、どうするこれから?
 観光って言っても、
 ここは精錬所やら、実験場、試験場だらけで、
 あんま面白みがあるわけじゃないんだが。」

ココン
『と・・・とりあえず、休める所に。』

クリミア
「おっと、こいつは失礼、
 すぐ、ご案内いたしまさぁ!」

_______________________

もう・・・無理です。

クリミア
「・・・クローマ様。」

クローマ
『なんだい?あんまりジロジロ見ないでくれ、
 その、恥ずかしい。』

ルーペス
『ん?クリミアか、サイゲツはいないのか?
 アイツめ、デザインばかりばんばん作りおって、
 綺麗に見せつつ、機能を充実しろだの、
 見えすぎない美を突き詰めろだの、
 意外と五月蝿い奴でな、おい?聞いているのか?』

クリミア
「すいません、このクレースト国の使者の方でして、
 しばらく滞在するので、客室へ、と、
 サイゲツ様から、お達しがありましてね。」

あわわわわわ!?

ルーペス
『そうだったか、ようこそお出でなされた、
 ゆっくりして行かれよ。』

ココン
『は・・・ひ。』

むり・・・です。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
ココン
『いつつ・・・あれ?ここは?』

砕月
「気づかれましたか?」

ココン
『っ!?』

え?え?なんでっ!?

砕月
「こんな服装でもうしわけない、
 一息つこうとしたとたん、
 使者の方が倒れられたと一報が入りまして、
 こちらに参った次第で。」

ココン
『いっ!?いえっ!?あれはですねっ!?』

砕月
「ルーペスから、聞いています、
 家のメイド達が粗相をしたようで。」

ココン
『いっ!?してませんしてません!!
 むっ・・・むしろ・・・。』

砕月
「まぁ、みんな美女ばかりですからね・・・、
 男は肩身が狭いですよ。」

ココン
『あ・・・あはははぁ・・・、
 しっ、しかし、あのお召し物は?』

砕月
「あぁ、デザインは俺が書いて、
 実寸、調整、コストを全てルーペスに任せている、
 一般人向けのおしゃれ着ですよ、
 価格も、この国の金、銀、銅、の全てにラインナップをそろえ、
 バリエーションを増やし、
 デザイナー、仕立て屋の雇用を増やしています。」

ココン
『なんと・・・まさか、
 クローマ様が着ていたアレも?』

砕月
「あ~・・・アレはですね?
 水着、と、言いまして、揮発性、撥水性、伸縮性を重視、
 川遊びに着ていける服ですよ。」

ココン
『・・・なんと・・・まぁ・・・、
 すごかったです・・・はい。』

砕月
「デスヨネー。」

帰路


この何日か、いろいろ案内されました、
精錬所、試験場、実験場は、危ないので断念、
近くの川へ案内されて驚きました、
川はまっすぐ伸び、
くの字の港湾設備が整いつつありました、
巨大な帆船の造船ドックも完備されていて、
一度に、大木を30本運べる代物だそうです、
恐ろしい・・・、
元老院はこんなにも強力な連合国に、
戦争を吹っかけようとしていたなんて・・・。

ココン
『ん?』

砕月
「どうされました?」

ココン
『あの奥の施設は?』

砕月
「あぁ、病院です、名前だけですけどね。」

ココン
『見学しても?』

砕月
「・・・その前に、戦場へは何度か?」

ココン
『え?まぁ、紛争程度なら。』

砕月
「・・・覚悟、してくだいさいね?」

頷きました、決して笑顔を崩されない顔が、
泣きそうなお顔になってしまわれたから。

_______________________

入口は綺麗でした。

砕月
「すまない、少し、使者の方が視察をしたいと申されてな、
 大丈夫かな?」

『それは、貴方様です、ただ、
 手術中の患者もいらっしゃいますので、お覚悟を。』

砕月
「・・・了解。」

ココン
『手術?』

後悔しました、ベットには多種多様の怪我をされた方々、
疫病にかかってしまった方々も・・・、
ガラスの扉で、何十にも、区切られていました。

ココン
『助かるのですか?』

砕月
「わかりません、
 魔術師達は、日々、全力で立ち向かっています。」

それしか言いませんでした、
もう、お顔には・・・涙が浮かんでいたのです。

砕月
「・・・いやなら、耳を塞いでください・・・でも、
 聞こえますけどね。」

・・・酷い、激痛に耐えながら、引きちぎられた足を・・・、
“縫い合わせているのですから”

砕月
「麻酔があれば、違うんでしょうけど・・・、
 まだ、人間に使うには猛毒です。」

ますい?

砕月
「人間を強制的に眠らせ、痛みを和らげるのです、
 しかし、それに必要な植物は、極少量しかありませんでした、
 今、増産の為の設備を整えている最中です、
 それに、使用する量を間違えれば、
 それは死に直結します、だから、激痛に耐えてもらう意外・・・。」

悔しさに溢れていました・・・、
知っていても、どうする事も出来ない、
その悔しさが・・・涙を絶え間なく流していたのです。

砕月
「行きましょう・・・。」

その場所を後にし、ある、扉へたどり着きました。

砕月
「・・・どうぞ。」

・・・これは。

砕月
「ここでは、戦争、事件、事故、魔物に襲われ、
 四肢欠損の重症を負ってでも、生きておられる方々の施設です。」

「サイゲツさま!」
「サイゲツ殿!!」

砕月
「皆、ありがとう、今日も、生きてくれて、ありがとう。」

・・・あぁ・・・この人は死なせてはならない、
こんなにも命を・・・大切にするお方なんて・・・。

砕月
「皆、辛いだろうが、“手足をそこの御仁に”
 見せてはくれないだろうか?」

ココン
『こ・・・これはっ!?』

砕月
「義手、義足です、
 まだ、掴むには程遠いですが、
 魔術師の魔法陣のおかげで、
 握手はできます、歩けます、
 できれば、この事を、一番、正確に、
 クレースト国に、お伝え下さい。」

ココン
『・・・はぃ・・・必ず!!必ず!!』

クレースト国・帰還


帰りはクリミア大将が先導を取り、
安全街道を進んでいます、
僕が通って来たのは、旧道扱いされていました、
なにせ、少し山を下ると、
大型馬車が4台は横に並んで通れる街道が、
着々とクレーストへ向けて伸びているのですから。

ココン
『凄いですね。』

クリミア
「これでもマシになったんですよ?」

ココン
『これでも?ご謙遜を、
 これだけ整備された街道なんて、我が国でもありませんよ。』

そうだ、これだけの幅と、
その街道を“あの、鋼鉄の糸”で囲い、
魔物の侵入を妨害、被害を最小限にする対策が進んでいる。

クリミア
「そうですかぃ、まぁ、こっちが勝手に伸ばしてるんで、
 いつかは、クレーストのご機嫌を損ねるだろうって、
 サイゲツ様は言ってましたな。」

ココン
『・・・凄いお方ですね、
 私の考えなど遠く及ばない・・・。』

クリミア
「ですが、あの人は、
 ご自分を、弱者、臆病者って言いまして、
 それでも、必死に、この国を、変えて来られた。」

ココン
『病院を視察させてもらえました、
 けっして、あの人は弱者、臆病者ではありませんよ!』

クリミア
「って、我々も言ったんですけど、
 いや、間違いは無い、でも、
 日本人として、恥じぬ生き方をする、と、
 断言はしていましたね。」

ココン
『ニッポン・・・どんな国だったのでしょう?』

クリミア
「わかりませんね、
 ただ、階級制度は、ほぼ、形を成していない世界だと、
 そう言う風に聞いています。」

ココン
『・・・想像できません。』

クリミア
「まぁ、喧嘩は売らない方が身の為だって、
 青ざめた顔で言ってましたから、
 我々連合軍すら遥かに凌駕する軍を持っていると、
 想像できます。」

ココン
『なんと、恐ろしい・・・、
 私が視察させて頂いた範囲で見ても、
 我が国を遥かに凌駕しています、
 元老院には、
 決して戦争を仕掛けようとしないように尽力致します!!』

クリミア
「・・・でしたら、これを。」

ココン
『これは?』

クリミア
「お守り、だ、そうです、
 あと、このハイ・ウエアを常に、身につけて欲しいと。」

ココン
『上着?にしては、少し、重い様な・・・。』

クリミア
「ここだけの話、
 なぜ私が護衛に駆り出されたか、
 ご想像できませぬか?」

ココン
『・・・暗殺者、ですね。』

クリミア
「はい、一番それを危惧しております、
 ですから、このお守りと、ハイ・ウエアを、
 常に身につけて欲しいのです。」

ココン
『わかりました、必ず身につけます。』

クリミア
「街道はここまでです、
 我々も、これ以上は進軍を許可されていません。」

って、言っても、もう見える・・・こんなに近くまで、
街道の整備が進んでいるなんて・・・。

クリミア
「では、またいつか、お会い致しましょう。」

ココン
『はい!!必ず!!』

_________________________

「かいも~ん!!かいも~ん!!
 ココン・ショセットが帰ってきたぞ~!!」

_________________________

「なにっ!?奴が生きて帰ってきただとっ!?」

「ばかなっ!?暗殺集団はどうしたのだっ!?」

「わかりませぬ、しかし、まずいですぞ。」

「わかっておる、
 とりあえず、長には会わせないように・・・。」

「伝令!!城門に長がいらっしゃいます!!
 すでに、歓迎会を開くと、民衆の前で公言しております!!」

「しまったっ!?これでは!!」

「会食がなされるのであるならば、
 毒はどうじゃ?」

「駄目だ、民衆も呼び込んでの会食には使えん!!」

「ならば、夜陰に紛れてもう一度。」

「そうじゃ、それしかない!!」

「・・・申し訳ありません。」

「おぉお!!帰ってきたか!!
 なぜ、失敗したか、話すのじゃ!!」

「・・・先行した部隊からの定時連絡が来なくなり、本隊を進め、
 予定合流地点にて、
 全滅を確認いたしました。」
 
 
 
 
 
 
「続けます、
 見張りを厳にし、慎重に進み、
 夜陰を利用し、駆け抜けようと、街道に出た所、
 先陣の兵が・・・。」

「続けよ。」

「兵が・・・バラバラになってゆくざまを、
 この眼で、見てしまいました。」

「ばらばら・・・まさか。」

「かつての低い壁は存在せず、
 漆黒の巨大な壁が立ちふさがり、
 鋭角に切り出された丸太が街道へ突きいで、
 無数の弓兵、見張り兵が往来し、
 鉄壁の防御を構築していました、
 そして・・・すこしでも情報を得ようと、
 壁を登ろうと・・・。」

「どうしたのだ!!」

「壁にも無数の罠が仕掛けてあり、
 次々と兵士が死んで逝きました。」

「して、帰還できたのは?」

「私を含め、5名、
 500人を超える暗殺部隊は・・・
 隊長を失い、散り散りに、
 そして、あのバラバラになった場所で、
 皆・・・目の前で・・・バラバラに・・・、
 我ら5名は、死んだ仲間がいない方へ、
 必死に逃げました、
 そして、命からがら、先ほど到着した次第です。」

「ならば、今夜、夜陰に紛れ、
 ココン・ショセットを暗殺せよ。」

「・・・そのご好意、感謝致します。」

「くれぐれも、ぬかるでないぞ?」

「は、必ずや心臓を一突き、
 絶命させてしまいましょうぞ。」

「頼んだぞ。」

クレースト・改革


「長(おさ)!!
 ノウス・ヒュンテンヴェルグ・ディデルラ様が、
 到着なされた!!みな!!心して聞け!!」

ノウス
『皆の者!今宵は宴だ!!無礼講だ!!
 酒を飲め!!美味いメシを食え!!
 オペリオル連合国から帰って来た、
 ココンをここに称えようぞ!!』

ココン
『うは~・・・長、
 凄いですね、貴方様も、こんな重圧に耐えてらしたんですね。』

ノウス
『ん?そうか?理解できるのか?』

ココン
『はい、あちらの総指揮官、
 サイゲツ殿と、数日、行動したのです、
 これは、是非とも、貴方様にお聞き願いたいのです。』

ノウス
『総指揮官自らがお前を!?
 それは本当か!?素晴らしい!!
 是が非とも一戦交わ得たい!!
 さぁ!!皆の衆!!宴は始まっておるぞ!!
 飲め飲め!!祝え!!さぁ!!祝うのだ!!』

__________________________

長・私室

ノウス
『して、これは?』

ココン
『ハイ・ウエスト、
 貴方様にも是非、身につけて欲しいと。』

ノウス
『ほほぉ~・・・
 やや重いが、なんだ?灰色の・・・んん?
 これは・・・。』

ココン
『ここの防音はいかがでしょうか?』

ノウス
『・・・ついて来い、いい場所がある。』

_______________________

ココン
『ここは・・・先代の長が眠る墓所。』

ノウス
『あぁ、ここでの殺生は御法度、
 元老院が指揮しているへんちくりんな部隊も、
 ここには来れない。』

ココン
『助かります、長。』

ノウス
『・・・これはなんだ?
 金属を編み込んだ服なのか?』

ココン
『詳しくは説明できません、ただ、
 少なくても、ナイフ、ショートソード程度は、
 貫けない、それは視察の際、私がこの目で確認しています。』

ノウス
『信じられん・・・しかし、わざわざ5着、これは・・・。』

ココン
『父、母、妹、私、そして、長、
 貴方の為に必ず身につけて欲しいと。』

ノウス
『・・・変わったな、お主は。』

ココン
『変わりません、世界は広いと、
 知識の幅が広がっただけに過ぎませぬ。』

ノウス
『それを変わったと言うのだ、
 幼少よりの友は、もうお前だけだ、
 だからこそ、心配したのだぞ?』

ココン
『長、元老院は戦争をしたがっています、
 元老院をよしとしない者達を、最前線へ送る手立てを、
 模索している、と、部下達も言っています。』

ノウス
『・・・わかった、
 ついでだ、このハイ・ウエアを着せてくれ。』

ココン
『え゛っ!?ここでですかっ!?』

ノウス
『なんだ?幼少の頃は一緒に水浴びなので、
 散々私の裸を見ただろうに!』

ココン
『それは幼少だからです!!
 今、貴女様は成長され、この国を支える長!!
 ましてや、つい先月成人されたばかりの
 生娘なんですよ!!少しは自重と言う言葉を理解して下さい!!』

ノウス
『だから、私はお前がいいって、なんども言ってるではないか?』

ココン
『だからですね!』

ノウス
『ん?どうした?』

ココン
『・・・いえ、サイゲツ殿が実現しようと、
 大きな壁だと、表現された理由がわかりました。』

ノウス
『なんだ?申せ!』

ココン
『階級制度の廃止ですよ。』

ノウス
『・・・無理だ。』

ココン
『そうです、だから私も、
 先ほど言った通り、
 長と、一兵士、ほら、ここにも階級の壁があります。』

ノウス
『・・・何者だ、サイゲツと言う奴は?』

ココン
『日本人、そう言っていました、
 そして、もう、故郷には帰れないだろうと、
 この地に生きていく決心をしたと、教えてくれました。』

ノウス
『にほんじん?聞いた事がない。』

ココン
『私もです、でも、サイゲツ殿は、
 今まで見てきた人間の中で、
 最も命を尊く思い、強い心を持った人間は、
 後にも先にも、サイゲツ殿だけです。』

ノウス
『・・・行こう、お前は、家族の元へ、
 それを早く着させるんだ、
 私は直衛を率い、元老院を叩く、
 だから、はよう、私にそれを着せてくれ。』

ココン
『だ・か・ら!!
 貴女様の美貌に、私の理性が我慢できないんですよ!!
 今、ここで貴女様を抱いてしまえば!!
 私は!!私は!!
 貴女を愛していると!!きちんと伝えられないのです!!』

ノウス
『・・・ぁ~・・・その・・・すまん、
 私はな?ずっと、そなた以外に、考えられんのだ・・・、
 だから・・・な?・・・あの・・・、
 わたしでよければ・・・その・・・、
 愛してくれるのか?』

ココン
『・・・はい、愛します!
 生涯をかけても足りないくらい!愛し通します!!』

ノウス
『・・・ふふっ・・・面と面を向かって言うのは、
 こんなにも熱くなるのだな。』

ココン
『私もです。』

元老院解体


秘密通路を歩く、
これだけでも物凄い恥ずかしい。

ココン
『・・・大丈夫ですか?』

ノウス
『まだ、余韻が・・・な、
 しかし、お前はいつの間にがっしりした身体になったのだ?』

ココン
『ノウス?私は第二大隊の小隊長ですよ?
 最前線で戦う兵士がヒョロヒョロでは生き延びれませんよ?』

ノウス
『・・・そうか。』

今では前線には出なくなったが、
こんなにも細い腕で、剣を振るい、戦ってきた、
なんで・・・もっと早くに気づけなかったのだろう。

ノウス
『なにか・・・喋ってくれないか?
 先ほどの事が、夢、幻のように思えてならんのだ。』

あぁ・・・階級さえなければ、
直様婚礼を挙げ、この人を妻にしたい。

ココン
『夢でも、幻でもありません、
 先代達が見守る前で、私たちは交わり、
 夫婦となるべく、戦場(いくさば)へおもむき、
 元老院を打ち倒す、出来なければ、
 先代様達に顔向けできません。』

ノウス
『はぅ~///』

・・・失言でしょうか?

ノウス
『もう少し、遠まわしに言えぬのか!ばかもの!』

ココン
『ん~・・・無理ですね、
 いくら知識の幅が広がっても、
 女を墜とす言葉はあまりしりませんから。』

ノウス
『もう!ばか!』

・・・先代様、どうしたらいいでしょうか?

_________________________

私室に着く。

ココン
『・・・違いますね。』

ノウス
『あぁ。』

大丈夫だ、この人は強い。

ココン
『私はこのまま急ぎ家に向かいます。』

ノウス
『まて。』

ココン
『えっ!?ちょっ!?』
 
 
 
 
ノウス
『必ず、生きて。』

ココン
『はい、必ず。』

_________________________

ノウス
『直衛、総員集合せよ!!』

「何事ですか!長!!」

ノウス
『これより、反逆者、
 元老院を討伐する、
 かねてより内偵調査をかって出てくれた、
 ココンの調査により、確信した!!
 奴らは無駄な戦争を吹っかけ、
 この国の民を戦争に巻き込むつもりだ!!
 だが、私はそんな事は望んでいない!!』

「そんなっ!?元老院が・・・。」

ノウス
『既に、ココンには、家族の安全を図るべく先に行っている、
 我らは、ここにいる、元老院を全員捉える、
 出来ない場合は、殺して構わん!!
 総員!!続け!!』

「は!!長の命にどこまでもお供致します!!」

ノウス
『続けぇ!!』

_____________________________

ココン
『静かすぎる。』

宴はもう終わっているけど、
こんなに静かなのは・・・。

ココン
『ココンだ、開けてくれ。』

「はい、ココン様、
 お久しゅうございます。」

ココン
『急を要する、全員を起こしてくれないか?
 長から、特命を預かっておる。』

「・・・仰せのままに。」

急いでくれ・・・。

_____________________

『こんな夜分に、何用か?』

ココン
『父上、これは長からの特命なのです、
 母上、長の捺印です、これを預かってきました。』

『・・・何が起こったのですか?』

ココン
『兎に角、これを、服の下に着込んで下さい、早く、
 メイド達は、戦闘用意、長の気持ちに応える為に。』

「はっ。」

『あにさま?』

ココン
『どうした?』

『あにさま・・・ノウス様と、おちのびるのですね?』

どうしてこの子は感がいいのだろう・・・。

『捺印がある以上、
 我らが代々、長をお守り続ける家系、
 いかなる事があろうとも、長に仕える、
 それで?今回の相手は?』
 
 
 
 
 
 
ココン
『元老院です、
 戦争を始めようと、
 元老院にとって、邪魔な者は最前線へ送る手はずが、
 着々と進んでいました。』

『やはり。』

ココン
『父上?』

『うすうすは気づいてはいたのだが、
 手駒は皆、元老院に散り散りにされてしまってな、
 ついに、か。』

『・・・剣を、ここに。』

「はい、奥様。」

ココン
『母上。』

『さぁ、貴方の愛する人を迎えに行くんでしょう?』

『あにさま、
 奴らが来ます、数は・・・5、
 私の耳は何人たりとも聞き漏らしません。』

_____________________________

「・・・くっ、メイドが武装している・・・。」

「どうする?代々続く、長を守ってきた部族だぞ?」

「これを使おう。」

「それは・・・永遠の眠りではないか!」

「元老院から、渡されたのだ、
 火をつけ、数えて30で、効き目があるそうだ。」

________________________

『あにさま!!窓をお開けください!!はやく!!
 えいえんのねむりがつかわれます!!』

『皆の者!!窓を開けよ!!
 風を送れ!!永遠の眠りが使われるぞ!!』

ココン
『危ない!!』

『くっ!?』

『あにさま!!』

 
 
 
 
 
 
 
 
くっ・・・ぐらぐらする・・・、
敵は・・・!?

「死ねぇ!!」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あれ?

「なっ!?なんで!?」

ココン
『ぉぉおおおおおおっ!!』

次!!

『くっ!!はぁああ!!』

「がぁっ!?」

『はぁっ!!』

「ばかなっ!?」

ココン
『あと一人!!』

「なぜっ!?」

『きゃぁああっ!?』

ココン
『メイっ!?』

「さぁ、武器を捨ててもらおうか?」

『くっ。』

『メイっ!!』

ココン
『わかった・・・だから、メイを!』

『ワタクシニサワルナンテ・・・コノ、
 フ・ト・ド・キ・モ・ノ。』

「なにっ!?」

は?なにがどうしてこうなった?

『ふぅ~・・・流石は私達の娘だ。』

『常日頃、鍛えたかいはありましたね、貴方。』

『あにさま?』

ココン
『え?あぁ、うん、大丈夫か?メイ?』

メイ
『はい♪』

ぬぁあああああっ!?
あのか弱いメイは何処へ~~~~っ!?

《かくして、暗殺者は瞬殺され、
 元老院は全員逮捕、国外追放となった》

招待状と?

砕月
「は?招待状?」

「はい、差出人はココン様です。」

ルーペス
『どれ・・・は?婚礼祝儀の開催につき、
 是非とも、サイゲツ殿御一行をご招待願いたい・・・、
 サイゲツ?お前、なにしたんだ?』

砕月
「知らんがな、ただなぁ・・・招待されても、
 儀礼用の服なんてまだ作ってないし、
 てか、婚約はしたけど、俺らはまだ、なぁ?」

ルーペス
『まて、次があるぞ?』

《新街道に付きましては概ね合意致します、
 是非とも我がクレースト国へ、街道整備をお願いしたい、
 それと、できたら、食料品の輸入を再開させて欲しく、
 その条約の再締結をお願い申し上げる》

砕月
「・・・なんで?どうして?こうなったの?」

ルーペス
『知らん、だが、儀礼用の服は急ぎ仕立てねばなるまい、
 自治区長にも通達せねば、
 はぁ、忙しくなるな。』

砕月
「ぁ~・・・そうだね、
 ナハト、クシェ、クローマ、三人を急いで呼んでくれる?
 あと、クリミアを護衛隊長として、連れて行こう。」

クリミア
「はぁっ!?また俺ですかっ!?」

砕月
「招待状に、お前の名前もあるの、だから、拒否権無し。」

クリミア
「なんでっ!?おれ、彼女と近々・・・ぁ、やべ。」

砕月
「ついでだ、
 街道整備を急ピッチで進めよう、
 開通式と、結婚式を同時に行いたいと、
 早馬を出してくれ、
 丁度、近々婚儀を挙げる奴がいるから、と、
 付け足してな。」

クリミア
「・・・ヤバイ・・・あいつに殺される。」

砕月
「どんな相手だよ。」

ルーペス
『あぁ、クリミアの彼女か、
 ヴァールハイトの、トトだよ、
 知らなかったのか?』

・・・想定外の国際結婚ですか、
まぁ、いっか、前例はなければ作ればいい。

砕月
「クリミア、お前には今世紀初の国際結婚を命ずる、
 それも、クレーストで婚儀を挙げる事、
 拒否は無し。」

クリミア
「・・・ひでぇ。」

砕月
「んだよ、お前らが前例を作ってくれないと、
 俺達の結婚に関わるんだからな?」

クリミア
「それって・・・。」

ルーペス
『サイゲツは、異界の人間、
 つまりは国際結婚だ、ならば、前例を作り、
 どのような障害があるか、いろいろ試行錯誤ができるだろう?』

クリミア
「ひでぇ・・・二人そろって、ひでぇゃ・・・。」

クニークルス
『なにが酷いのかしら?』

あ、固まった。

ルーペス
『おぉ、丁度よかった、
 お前の婚儀で着る服の採寸をしたい、構わないか?』

クニークルス
『・・・まさか、喋ったの?』

砕月
「まぁまぁ、
 クニークルスさん、俺達が引っ掛けたようなもんだし、
 おおめに見てやってくれ。」

クニークルス
『はぁ、しょうがないわね、
 それで?いつ私達は婚儀を挙げればいいのかしら?』

砕月
「あぁ、それな?
 クレーストへの街道開通式と合わせる予定だ、
 既に早馬は出発したし、向こうの返事まちだな。」

クニークルス
『へ?は?クレースト?どういう事?』

砕月
「招待状が来ててな?
 向こうでも婚儀があるんだと、
 それで、こっちにいた時、クリミアが相手したんだよ、
 帰りは護衛も兼ねて送らせた、だからじゃないか?」

クニークルス
『なるほど、ちゃん仕事してるのね。』

あ、凹んでる。

ルーペス
『ともかく、忙しくなるぞ!』

砕月
「へいへい。」

クリミア
「・・・なんか、ごめん。」

クニークルス
『いいのよ、ギリギリまで黙ってるつもりだったけど、
 バレちゃったし、それに、国際結婚だもん、
 怖くないわけじゃないから・・・。』

クリミア
「トト。」

クニークルス
『だめよ?私の名前は沢山いるんだから、
 貴方だけの愛称で呼んでくれなきゃ、嫌よ?』

クリミア
「・・・わかったよ、クルゥ。」

なぁ?俺達って、すっごい邪魔じゃね?

問題ない、こう言う時は周りなんぞ見えていない。

デスヨネー。

リベンジャー

やや遅れ、連合設立2年目の冬、
ムスクス、クレーストの街道が完成し、
各自治区の防備も万全、
ケラス王国は、クレーストへ少しちょっかいを出す程度に留まった、
彼らは、温帯の気候に慣れているため、
今年の大寒気に耐えられなかった、
そして、まもなくクレーストへ到着する。

砕月
「ぁ~・・・さぶっ。」

そう、崖崩れ、例の火山性毒に侵食された川を越えるために、
橋の工事が遅れていたのだ。

旧道から資材を運ぼうにも、こちらの橋も腐り落ちていた、
その為、初のコンクリートモドキの橋を決行、
木枠はそのまま腐ってしまうので、大急ぎで橋脚を作った、
ムスクスから産出される粘土と、海底から産出された魔鉱石ランタンの原料を砕いて、
混ぜ合わせると、コンクリートに近い物になった、
水を1、粘土を3、魔鉱石を2の割合で混ぜ合わせ、
精錬所で鉄の支柱と、金属棒を大量に生産、骨組みとして組み込み、
述べ283人の殉職者を出しながらも、完成した。

そのほとんどが、侵食された川へ下り、心臓部の橋脚建設に関わった者達だった。

砕月
「・・・すまない。」

ナハト
『サイゲツ・・・。』

名前をソウル・ブリッジ、魂の橋と名づけ、慰霊碑を建てた。

クシェ
『毎年、慰霊祭を行うと決めたんだから、
 あんたがそんな顔してると、みんな、暗くなるんだから、
 だから、笑え!!』

砕月
「・・・きっついなぁ・・・。」

そう、このまま、なにも起こって欲しくはなかった。

_______________________________

式典は盛り上がり、
まさかの発表、ココンと、ノウスの第一子が既に生まれていた、
元老院を“国外追放”したのち、瞬く間に、法を改正、
今世紀初の、長が国の代表として収め、
“階級の垣根を問わず、婚儀、夫婦となる事が認められた”
先を越されてしまった・・・、
階級の名残は残しつつ、農作物担当大臣、軍備担当大臣、民法担当大臣と、
大まかに三つに分かれ、動き出していた。

砕月
「・・・素直に嬉しいよ。」

ココン
『でも、まだまだ、
 貴方の望む、国民が国だと、
 堂々と言えるように、邁進していきます。』

砕月
「あははは・・・。」

毒も使い方によっては薬になる、
ここでは、効き過ぎるぐらいに効いてしまったようだ・・・。

そして、新たに産出された燃える石、石炭がこのクレーストでは、
採掘されてはいたが、使い道を見いだせず、
ものすごい量が廃棄、山積みにされていた、
これを、買い取る約束をし、食料品の輸出解禁、関税の見直し、
・・・軍需品の輸出を決めた、
これは、いずれ起こる、ケラス王国が侵攻に対する備えだ、
これには困惑されたが、
連合国に参加ではなく、同盟国として、条約を制定、
互いに攻められた場合、双方に支援を派遣する、共同戦線を確約した、
こうするには、
連合国とは言え、まだ、貴族社会が、そのまま残っている上での、配慮だった、
連合内の貴族を逆なでする様な事を極力避けたかった。

砕月
「明日、出発だ。」

ココン
『この一週間、あっという間でした、
 本当に、お越しいただいて、ありがとうございます。』

砕月
「いえ、祝い事はみんなでやる方がいいですから。」

ココン
『まさか、クリミアが、
 ヴァールハイトのトト家に婿入りなんて、驚きましたよ。』

クリミア
「うっせ、サイゲツ様と、ルーペス様にはめられたんだ。」

ルーペス
『そうだったかな?』

クルゥ
『確かに、聞いた話だと、別に引っ掛けるような事、
 な~んにも言ってないのよね?』

クリミア
「そ・・・そんなぁ~。」

滞在最終日、和やかに時間は流れた。

______________________________

街道を、クリミア率いる第二師団、総勢5000千人を超える護衛だ、
まぁ、それでも少ない!って、自治区長に怒られたが、
ヴァールハイト方面には、素性のわからない国がいくつもあり、油断は出来なかった、
その為、クリミアの精鋭を選抜、最低3倍の戦力に耐えられる人員で固めている。

砕月
「橋だ。」

ソウル・ブリッシを越えれば、あと3日でムスクスに到着する。

クローマ
『・・・やっぱり、慣れないね。』

そりゃそうだ、今まで全木製の橋しかなかったのだ、
オーバーテクノロジーの塊の俺だからこそ、発想、実践、完成にこぎつけた。

砕月
「橋には、鋼鉄の糸は付けられなかったからな・・・不安だよ。」

橋脚の高さだけで、推定20m、水面から、この馬車が走る面まで、25mもある、
これでもかと、思いつく事を放り込んだ、
だからこそ、現存するもので最高峰の硬度を誇る、
壊されるとすれば、天変地異ぐらいだろう、と、そう思っている。

ナハト
『ふぅ、いくらバネ馬車に改装されても、疲れますね。』

砕月
「そりゃぁ、人間だし、疲れ知らずは、アンデットだけにしてくれよ。」

クシェ
『確かに、言えてる~。』

クルゥと、クリミアは別の馬車、
クローマ、ルーペスは、仕入れたばかりの生地、材料と格闘している、
てか、いつの間に家事炊事可能な大型馬車を作ったんだよ・・・。

砕月
「・・・順調すぎる・・・。」

そう、この道中、“なにも起こっていない”
だからこその不安もある、
国外追放された元老院、彼らとて、元は狩猟民族、
こんな寒気の中でも生き延びているだろう、
来るなら・・・。

___________________________________

「射れ。」
___________________________________

「っ!?敵襲ーっ!!旧街道からの火矢だーっ!!」

砕月
「クリミア!!防御陣形!!」

クリミア
「は!!全体防御陣形!!弓兵隊、連射用意!!
 大筒隊、火炎弾準備!!重装甲兵!!警戒を厳にせよ!!
 上も来るなら、下からも来るぞ!!」

砕月
「ったく、嫌な予感だけは外れねえなっ!!」

直様装備を整える。

クシェ
『機動部隊、何時でも。』

ナハト
『ご命令を!弓兵、百発百中をご期待ください!!』

砕月
「反撃!開始!!」

これが、現実(いま)


迅速かつ、鉄壁を誇る重装甲兵、
なら、簡単に撃退出来る・・・。

砕月
「くそっ!?」

異臭、奴らは火山性毒に侵された川の水を、投げ込んでくる、
中には、投擲前に矢に射抜かれ、それを被り、死んでいく者も見えた。

砕月
「弓兵!!なんとしても投擲をさせるな!!
 毒水を被った者は直様、魔術師へ迎え!」

5000人の精鋭が・・・減っていく。

クシェ
『あぁあああっ!!』

機動隊が敵を混乱に陥れ。

ナハト
『一斉射!!』

弓兵が確実に敵の数を減らす。

砕月
「大筒隊!!構うな!!旧街道を焼き払え!!」

花火の発射台を知っているだろうか?
あれを金属にし、携行用のベルトをつけ、
トリガーで、着火、一定距離飛行後、爆発、周囲を焼き払う、
いわゆる焼夷弾を僅かだが、配備、連れてきていた。

旧街道は焼け、敵は焼け出され、目の前で、スライスされていった。

砕月
「敵の指揮官はどこだっ!?」

目を、身体をひねり、探す。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あぁ・・・うそだろ・・・クリミアっ!!

振り向いたその先で、クリミアは射抜かれ、倒れた。

何時間だろうか?敵は全滅した・・・、
人相から、間違いなく、元老院達だった。

砕月
「クリミアは?」

クシェ
『今、魔術師の治療を受けているわ。』

砕月
「ナハト、傷は?」

ナハト
『大丈夫ですわ。』

戦死者58

毒水を浴び、重症269

毒矢を受け治療中、289

運良く、ナハトの矢は、普通の矢だった、
矢尻に、溝の有無で、毒矢かどうかわかるし、匂いも独特だから。

ルーペス
『・・・サイゲツ、魔術師が呼んでいる。』

砕月
「・・・わかった。」

__________________________

クローマと、ルーペスが乗っていた大型馬車に、
クリミアはいた。

砕月
「・・・そうか。」

その魔術師は泣き崩れ、許しを求めてきた、
罰として、他の負傷者を治療するように命令を出した。

クリミア
「ぁ・・・さ・・つ、さま。」

息も絶え絶えに、声を出す。

砕月
「・・・クリミア。」

クリミア
「す・・・せん。」

クルゥ
『だめっ!!喋っちゃだめっ!!』

複数の矢は、クリミアの、目、首、肩を直撃、
肩には、毒矢が刺さり、魔術師の解毒が追いつかなかった。

砕月
「・・・命令だ。」

クルゥ
『まだこの人に!!
 なにをさせようと言うの!!』

砕月
「・・・命令だ、
 クルゥ、今すぐ、クリミアと交わり、
 子をなせ、命令だ!!
 クリミア!!クルゥと交わり、子をなせ!!
 子をなすまで、死んではならん!!」

そのまま、馬車を後にする。

「サイゲツ殿!!」

「出発は?」

砕月
「全軍、駆け足にて、ムスクスへ向かう!!
 走れぇ!!早馬は魔術師を呼び出し、
 負傷者の受け入れ準備を!!
 残り三日分の距離、恐るるに足らず!!走れぇええええっ!!」

________________________________


早馬が到着したムスクスは臨戦態勢を整えつつあった、
そして、魔術師が本隊へ向け出発しようとした所で、
本隊が、ムスクスへ到着した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
クリミアの死は、それから、三ヶ月後にクレーストへ伝えられた。
 
クルゥに、子を宿し、死んだクリミアは、英霊とし、
ソウル・ブリッシに銅像と、記録を銅板に打ち込んだレリーフが鎮座した。

クルゥは、ヴァールハイト自治区にて、戦災孤児と暮らしている。

父の顔を知らぬ子は、生まれ来る日を待っていた。

より、近代化へ

クレーストから輸入される石炭、
これを使って、直ぐに取り掛かった。

砕月
「くそっ!!」

まだ、計器類の開発が追いつかなかった。

開発は突貫で進め、装甲兵の装備改変へ着手した。

砕月
「そうだ、この折り重なる鉄板をこうして。」

戦国時代に主流だった、武者鎧、
般若面を兜と一体化し、それを下ろせば顔面の防御になった、
動きやすさを更に引き上げ、
バスターソードすら、弾き返し、
弓矢も、そうそうに貫かれる事はなくなった。

不思議と、その色は黒くなり、どんな色に染色しても、結局、黒になった。

2対1は当たり前、弓兵にも、太刀が配備され、
装備も金属化が進んでいた。

砕月
「・・・はえぇって。」

クリミアが死んでからあっという間に一年、
ケラス王国がクレーストへ攻め込んだが、
難なく撃退、領土を一気に半分もぎ取った、
その為、開梱、占領地域の政治に忙しくなった。

砕月
「・・・後は・・・溶接技術か。」

平成の日本なら、ガス溶接、電気溶接、アルゴン溶接、
スポット溶接、あ、これは電気溶接の部類か、
これらが当たり前、
でも、ここでは圧着、人力プレスが限界、
これでは高温・高圧力に耐えられない。

砕月
「せめて・・・電気か。」

ガスに関しては、全くと言っていいほどわからない、
採掘できても、加工できないし、保存にも、人力プレスでは、爆発してしまう、
電気に関しても、銅線は必須、電流計、電圧計、電力計、変電設備、発電所、
大掛かりの設備ばかり。

砕月
「・・・ぬぅ~。」

あ、ゴムも、絶縁体がいるか。

砕月
「ぬぁ~・・・どわぁっ!?」

いっててて・・・ベットから落ちるなんて・・・。

落ちる?

砕月
「落下式発電所なら・・・。」

そうだ、水流落下式発電所なら、小規模でもいける。

砕月
「メイ!!メイ・ショセット!!」

メイ
『はい、おじさま?いかがなされました?』

砕月
「この近辺、連合国周辺の詳しい地図を頼む。」

メイ
『わかりました、おじさま、
 ねぐせ、なおしてくださいね?』

砕月
「っと、すまん、地図を談話室に広げておいてくれ。」

メイ
『はい、しゅうへんだけでよろしいので?』

砕月
「・・・とりあえず、な。」

メイ
『いちおう、ちょうさのすんでいる、みかいたくちのちずも、
 じゅんびしておきます。』

砕月
「・・・助かる。」

メイ
『それでは。』

あぁ、彼女、メイ・ショセットは、
式典の時、馬車に潜り込み、そのままついて来てしまった、
置き手紙をしてきたから大丈夫なんて言ってたが、
例の、3ヶ月間、行方不明扱いで、国中大騒ぎだったそうだ。

砕月
「・・・まぁ、公然でキスと、公言されちゃぁ、
 断れねぇし・・・はぁ。」

クリミアの死を伝えつつ、メイがついでに手紙を送った所、
ココンが、ぶっ飛んで来た、あれは驚いた、
7日かかる新街道を、3日で来たのだ、てか、馬すげぇ・・・。

砕月
「んで、ココンの目の前で、
 《わたくし、このとのがたにきめましたの》って、
 キスされて・・・ぁ~・・・。」

ココンの崩壊っぷりは・・・抹消しておきたい、
ノウスがその後、7日かけて慰めながら帰っていったのは、目に焼き付いている。

砕月
「さて・・・うまくいけば・・・。」

そうだ、電気技術が確率すれば、
列強どころか、この世界で唯一の“軍艦”すら作れる、
・・・世界大戦か・・・いいだろう、引き金だろうがなんだろうが、
二度と、目の前で、最愛の人を失う光景を見ない為に。

クニークルスさんは、あれから一度も会っていない、
会いに行っても、門祓い、お土産も受け取ってくれない、
でも、そろそろ、時期的に、お産の時期だろう、
魔術師達の医療技術は日進月歩を遥かに凌ぐ勢いで、
あの時の魔術師が、自らを臨床試験に投じ、麻酔の致死量を決める事に成功した、
そして・・・無理がたたり、次の月に、
一人で亡くなっていた、
《これで・・・クリミア様に、サイゲツ様に、
 ようやくお返しができました》と、置き手紙があった。

砕月
「ったく・・・誰が、死んでいいなんて、言ったんだよ・・・。」

本当に惜しい人間を、人材を・・・って、
なんだこれ?俺・・・なんて言ったっ!?

砕月
「くそぉおおおおおっ!!」

壁に頭を打ち付ける。

がん、がん、がん、がん、がん!!

メイ
『おやめください!!』

ごん!!

砕月
「くぅぉぉぉ~・・・。」

や、め、て、その超ド級鈍器、百科事典での角はやめて・・・。

メイ
『おやめいただけましたか?』

砕月
「・・・あぁ、すまない。」

メイ
『・・・そうでした、ナハト様が臨月だ、そうで、
 近日中にお産が始まるだろう、と。』

重要な事を喋ると、その背丈に見合わない大人びた口調になる。

砕月
「・・・まじ?」

クリミアの死後、そのままの流れで、ナハトと交わった、
お互いに、辛かった・・・だから、流されてしまった。

メイ
「うそはいいませんの、
 ですから、これよりしばらくはがいしゅつげんきんなのです!」

ヤバイ・・・メイの目が・・・。

ショセット家、彼らは長を代々守る防人の一族でいて、
数少なき、バーサーカー使いの一族、
つまり、小さいからって、舐めてかかれば、
血みどろが待っている、そう言う事だ。

砕月
「わかったよ、だけど、予定は立てる、だから、その下準備だ。」

メイ
『それと、お姉様方からの伝言です。』

あぁ、クシェ、クローマ、ルーペス、ナハトをお姉様方って言うんだよなぁ~。

メイ
『“次は、私ですよね?”と、おっしゃっていましたよ?』

・・・逃げたい。

代償


うん、双子でした、
しかも、二人共、女の子、ひぃいいいっ!?

ナハト
『どうしたのですか?』

二人を寝かしつけたナハトが聞いてくる。

砕月
「・・・男って、肩身狭いなぁ~って。」

ナハト
「では、次の夜にでも?」

砕月
「勘弁してくれ、
 3人から催促されているし、
 お前の体になにかあってからでは、困る、
 それに、俺には重いんだ、二人も産んでくれた、
 それに、お前も無事、
 今は、その・・・今を、噛み締めさせてくれ。」

ナハト
「あなた・・・。」

________________________

まぁ、前々から言っていたし、
むしろ、なにか進展するまで帰って来なくていいです!!
って、めっさ怒られた・・・ごめんなさい。

砕月
「そりゃぁ・・・抱いたのは一年前のアレっきり、
 まさかの妊娠がわかってびっくりしたよ、
 俺が避妊しなかったのもアレだけどさ・・・。」

メイ
『残念ながら、私めはまだ出来る歳ではありません、
 ですので、ご同行を許可されたのかと?』

砕月
「さぁ?」

バーサーカーに襲いかかれるかっての、ミンチにされるわ!

メイ
『今、随分失礼な事、お考えで?』

砕月
「ごめんなさい。」

揺れる馬車で土下座する。

まもなく、ルグレ湖に到着する。
_____________________________

ここには、落差推定40mの滝があり、
落下エネルギーに関しては十分だと・・・思う、
下には、滝壺を水源とするフリーオ川がエフェメールへ流れている。

砕月
「近くにあって良かったよ。」

メイ
『よくわかりません。』

砕月
「そりゃぁ、この世界の技術ではないのを、
 ここに再現しようとしてるんだもん、わかったら、メイも。」

メイ
『わたしも?』

砕月
「なんでもねぇよ。」

メイ
『なら、この事に関してはお聞き致しませんので、
 報酬をくださいな?』

砕月
「ア、ハイ。」

どうして広まった?ディープキスは恋人との大切な約束の際にするもの?
まぁ、俺自身も、やみつきになっているので、人の事は言えない。

メイ
『ん///・・・ふぅ、本当にやみつきになりますの。』

うん、やっヴぁいね、やっヴぁいよ・・・うん。

砕月
「・・・ナハトだけにしたかったのに・・・。」

メイ
『そもそも、メイドの前でするもんでもないですの。』

砕月
「デスヨネー。」

さて、本題に取り掛かろう、
銅線に関しては精錬所と、なぜか、奥様からの要望が強く、
直ぐに完成した、てか、銅鍋ですね、はい、
絶縁体に関してはもう一息、今あるのは、樹木の中で一番水分量の多い樹木で、代用している、
この水分は、魔術師でもよくわかっていない、つまりは、わからない、けど、
やたら静電気が発生する不思議な樹木だった、
でも、水に浸していると、静電気は起きない、で、連合国にただ一人、
攻撃魔法で、さらに!!雷系統を使える魔術師がいたのだ!!

「ではっ!!」

沢山染みこませた樹木に、エレギガ、いきなりギガかい!って、思ったが。

「ばかなっ!?」

反対側の目標物は無傷だった、
なんども貫通させようと試しても、
水分を吸った樹木は、エレギガを通さなかった、
今度は、乾燥させ、やってみたとたん、
燃えました、てか、めっちゃ燃えました、危うく森林火災になるぐらい、
急激に、ぼん!!って、感じに燃えました。

砕月
「量産には不向きな樹木か、困ったな。」

この樹木、名前はまだ決まってなかったが、成長がかなり遅い、
そして、生息範囲も、そこまで広くなかった、
これでは、絶滅してしまう、そこで、この能力に近くて、新しい絶縁体を開発して貰ってる、
とりあえず、増産組と開発組で分けて、兎に角進めている。

砕月
「さて・・・うまくいくのやら。」

構造は単純?うろ覚えで作った、ちいさなモーター?
一個ずつ、糸並みに細い銅線を磁力鉱石に巻きつけて・・・巻きつけて・・・、
8個を回転軸にあわせーの、スクリュープロペラを作りーの、
これだけで、8日を要した。

砕月
「・・・で、できた?」

たぶん、磁力鉱石は精錬所の副産物で、くっついていた破片を集めて、
試しに、はい、溶かして(紫の炎で一時間かけて溶けました)、
で、自然冷却してから、鉄剣につけたら・・・、取れなくなりました。

砕月
「うし、パイプどうかなぁ~。」

滝の上に、支流を掘って、パイプに落として、
プロペラに当てます、回転します、たぶん、発電できる?

砕月
「お~い!きこえる~?」

パイプに声を出す。

「きこえまーす。」

あ、おkだ。

砕月
「じゃぁ、流していいよ~。」

「流しまーす。」

砕月
「へーい。」
 
 
 
 
 
 
はい、びしょ濡れになりました、流石推定40m・・・恐るべし。

んで、どうやって発電されているのを確認するのか?

砕月
「・・・こぇえ~・・・。」

いきなり、繋いでいます、銅線。

たぶん、右側をプラス?左側をマイナス?にしたと思う・・・、
ヒューズなんて代物はありません、細めに束ねた銅線が、命綱です。

砕月
「・・・いけっ!!」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
強烈な光と、音、まぁ、そうなるな、これのせいで、右目は失明した。

砕月
「でも・・・電気は作れる・・・後は、基礎技術が追いつけば・・・。」

そのまま気絶、早馬で病院に担ぎ込まれた。

頼る事

結局そのまま入院、
半年、出してくれなかった。

砕月
「ヒマ。」

外の状況もわからない、
隣にはナハト、クシェが、寝ている。
もちろん、双子の娘も、一緒だ。

砕月
「ひーまー。」

決して、用を足す以外、常に誰かが居るのだ、
昨日はクローマ、一昨日はルーペス、今日が、クシェだった。

家事に関しては手伝う、洗濯板で、ごしごし、
物干し竿で、よいしょっと、
皿洗いは、砂と、水、砂で、ある程度油汚れをくっつけ、
水でよくすすぐ、
フライパンは、まぁ、金(かな)タワシで、取れない物だけ取る。

あれ?主夫?

砕月
「・・・あれから、どうなっただろう。」

あのスパークで、後になって聞かされたが、
吹っ飛ばされていて、全身打撲、右肩の骨折などなど、
かなり重症だったの事、
痛む肩をかえりみず、みんなに、土下座したっけ、

砕月
「ふむ・・・動くなぁ・・・なぜに?」

骨折した以上、固定されて、筋肉も落ちるだろうし、
変な癖もつくだろうと、覚悟したが、
なんともない・・・そう、感じてるだけかもしれないけど。

砕月
「・・・皿洗いも終わったし、洗濯物も、後は乾くまで待てばいい。」

・・・・・ヒマ。

砕月
「向こうにいる時なんて、休みたくてしょうがなかったのに・・・、
 こうして、なにもしてないのが、嫌なんて・・・。」

うん、向こうの人間が聞いたら、間違いなくキレられる。

砕月
「・・・太陽は二つ、か。」

でも、この世界は地球ではないし、日本でもない、
“この世界”なのだ。

砕月
「ひーまー。」

本も読み飽きた、外には出れない、用を足すにも、
どちらかを起こさなきゃならない・・・。

砕月
「ひ~ま~ぁ~・・・。」

って、クシェ、ナハト、起きてるな?
耳がぴくぴく動いてるし・・・。

砕月
「・・・はぁ、クシェ、お前は何人欲しいの?」

クシェ
「・・・ばれたか。」

砕月
「ナハト?お前は別に寝てていいぞ?」

ナハト
「寝たらスッキリしましたから。」

まぁ、二人で、双子の面倒を見ている、
クシェはまだ母乳が出ないが、
寝かしつけるのが大分楽らしい。

砕月
「・・・ごめんな?」

ナハト
「今日で300回目です、聞き飽きましたよ?」

砕月
「数えてんのかよ?」

クシェ
「適当に決まってるじゃない、忘れっぽいんだから。」

ナハト
「ちょっ?!これでも、お買い物の計算は出来ます!」

ん?

砕月
「15たす、45は?」

答えは60なのだが・・・。

ナハト
「え~っと・・・。」

冷や汗だらだら、ダメじゃん。

クシェ
「60でしょ?ナハト、本当に勉強嫌いなのね。」

えぇ~・・・、大丈夫?これから、大きくなる娘に示しつかないよ?

ナハト
「だっ!大丈夫だもん!!姉さんが教えてくれるんでしょ?」

おいっ!!そこでそっぽ向くなっ!!

砕月
「クシェ?今、隠したの、だ・し・な・さ・い。」

お~い、お前も冷や汗かぁ~い。

砕月
「・・・おいおい。」

なんだか、沢山の棒がいっぱい・・・、
まさか、これを書いて、数えたのか?

砕月
「学校も作らないと駄目かぁ~。」

ナハト
「がっこう?」

クシェ
「なにそれ?」

砕月
「まぁ、勉強する所、
 クシェ?一応軍人なんだから、
 部隊数とかちゃんと数えてるよね?」

・・・してないのか。

砕月
「メイ~?」

あれ?来ない?
二人共・・・なんで暗い顔するんだよ?

砕月
「・・・何があった?」

ナハト
「・・・貴方と同じ実験をして、左目が見えなくなったの。」

・・・メイ。

クシェ
「でも、なにかに取り憑かれたように、どんどん新型機材を完成させてね。」

ナハト
「ほら、この灯り、貴方ならすぐわかるだろうって。」

・・・電球だ・・・まてっ!?電線がないっ!?

砕月
「なんてこった・・・半年で完成させたのか?」

電池、金属棒と電解質、どちらも、紙に殴り書きした程度のメモだぞ?
どうして・・・。

砕月
「行こう、行かせてくれ。」

メイ
『その必要、ないですの。』

砕月
「メイっ!?」

ろくに風呂も入っていないだろう、
ボロボロの服に、伸びっぱなしの髪、
白い瞳になった左目・・・。

砕月
「なんて無茶をっ!?」

あぁ、ただでさえ小さい身体なのに、こんなに痩せて・・・。

メイ
『貴方が、頼ってくれないから。』

・・・そうだ、あの時、メイには危ないからって・・・。

砕月
「ごめんな!ごめんな!!あの時、一緒に・・・いたのに・・・。」

メイ
『・・・さすがに・・・つかれましたのです、
 すこし、ねむるのです。』

そのまま寝息を立てる。

砕月
「・・・最低だな、俺。」

ナハト
『最低なら、このまま誰にも頼らない事です。』

クシェ
『みんないるんだよ?
 なんで?一声かけてくれれば・・・なんでも!!
 やれる事は全部!!なんだってする!!
 だから!!
 だから・・・頼ってよ・・・私達に・・・たよってよぉ~。』

・・・膝にメイを抱え、両腕で二人を抱きしめる。

砕月
「ごめん・・・ごめんな・・・、
 おれ・・・みんなに・・・負担をかけまいと・・・。」

ナハト
『いいんです、かけてください。』

クシェ
『あたしたち、夫婦なんだよ?ひとりじゃないんだよ?』

砕月
「あぁ!!あぁ!!」

いつからだろう、泣かなくなったのは・・・、
あぁ、クリミアが死んでからだ・・・。

半年ぶりに・・・大泣きしたなぁ・・・。

5年目

連合国設立5年目、
式典は、黒鉄の煙を吐く巨体に、怒号と歓声が入り乱れた。

蒸気機関車の完成だった。

レールに関しては、石炭の採掘に使われていたトロッコの実績から、
更なる重量に耐えられる物へ拡大発展したもの。

1435mmこれは、新幹線で採用されている標準軌、
ミリの単位は・・・いや、
炭鉱から、遺跡が発見され、
蒸気機関、内燃機関、定規、これらの・・・宇宙の遺産から、
そのまま流用、
“ひらがな、漢字”これらで説明されていた。

あぁ・・・地球は無くなっていた・・・、
運悪く、超新星爆発の影響をかすめ、
そのまま軌道が、太陽系から逸れていった、
その後、地球脱出船が突貫で建造され、
半数が飛び立った時、別の天体と衝突、粉々に砕け散った、
しかも、相手の星も、同じように、爆発の影響で、軌道が逸れ、
“同じ技術力を持っていた”
そして、お互いに流浪の旅を続け、
燃料が尽きかける時に、この星を発見、まだ、“植物だけの星”だった・・・。

それから十数年は船を拠点とし、暮らしていた矢先、
天変地異が起き、大陸は分断され、火山性ガスにより、変質、
船から出られなくなった、
双方の合意の元、ハイブリット人種を生み出す事になった。

犬、猫、様々な動物の遺伝子、相手の側の、竜人種、亜人種を掛け合わせ、
新しい、この変貌した環境に適した新人類が誕生したまではよかった、
そこで、残っていた燃料は尽き、双方は死滅、なんの知識を得る間も無いまま、
新人類は、この星に放り出された、
大陸が繋がっていた頃は協力し合い、最低限の生活をおくっていた。

砕月
「・・・そして、また火山の爆発で散り散りか、おとぎ話かっての。」

メイ
『・・・かもしれません。』

砕月
「・・・解析、続けるのか?」

メイ
『はい、もし、もしも、同じ事があれば、
 この・・・空の向こう、宇宙へ旅立たねばなりませんから。』

砕月
「・・・できたら、俺が死んでからにして欲しいものだ。」

メイ
『さぁ?』

勘弁して欲しい、
ただでさえ、ヴァールハイト方面にある、ベルヴァ公国からの、
散発的ではあるが、小競り合いが起きている、
双方に意見は対立し、開戦は免れない状態だった。

ケラス王国は、クレーストの火力に被害を拡大、
領地は5分の1まで縮小、風前の灯に追い込まれていた、
占領下の自治権はそこに任せて、食糧生産の拡大が進んでいる、
クレーストは、建国時の20倍まで国土が広がり、限界が見えていた。

砕月
「・・・まずは、エフェメールから、ムスクス間の鉄道網確立、
 ムスクスから、クレーストは、これからか。」

ルーペス
『その件は、とっくに了承を得ている、
 既に、双方から着工、建設が進んでいる。』

砕月
「この数年で・・・まったく、効き過ぎる薬だったな、俺は。」

ナハト
『その妻ですから、たっくさん頼ってください!!』

クシェ
『そうそう、まさかの、クローマさんが先なのは悔しいけどね。』

はい、酔った勢いで、やっちゃいました、
用を足している時に、誤って、入ってきまして、
見つかるのは不味い、と、おんぶで、部屋に移動、
そのまま・・・。

ルーペス
『・・・まぁ、若気の至り・・・か?』

あんたが言うな、まだ言ってないが、
クローマが妊娠して、その後の慰霊祭の日、ルーペスに媚薬を飲まされ、
3日間の記憶が飛びました、出来ました・・・、
まだ、そこまで目立たないから・・・。

クシェ
『なに言ってんの?あんたも人の事言えないでしょ?』

ぎゃぁあああっ!?なんで知ってるのぉおおおおっ!?

ルーペス
『・・・・どっ・・・どうして?』

クシェ
『だって、ダラスおじ様から、ほら、
 私も持ってるの、び・や・く。』

砕月
「ルーペス、いいかな?」

ルーペス
『あぁ、流石に殺意が沸くよ。』

クシェ
『あ、ちなみに、今朝の朝食に入れといたから、覚悟してね?』

・・・なんですと?

ルーペス
『・・・馬鹿な・・・。』

ナハト
『なら、私も。』

砕月
『お前は駄目、クシェに散々世話になってるんだから。』

眠りながらお乳をあげている時、支えたり、
離乳食を作ったり、
最近は、天ぷらも作れるようになっている、
かつての、全部駄目を返上?しつつある。

ナハト
『えぇ~。』

砕月
「せめて、卵焼きぐらい作ってくれ、俺も教えるから。」

どうして、卵焼きが、虹色になるんだ?
少量の塩、砂糖は多め、牛乳、卵を混ぜて焼くだけなのに、
なんで虹色になるんだ?
てか、どっから持ってきた?滋養強壮?(よくわからない木の根っことか)いりません、
普通に、普通に作って下さい、貴女は、夫を毒殺するつもりですか?

ナハト
『ほんとっ!?』

はい、妻の料理で死にたくありません。

クシェ
『それじゃぁ、私も。』

クローマ
『味見は沢山したいねぇ。』

ルーペス
『わっ・・・私もやるぞ!!』

砕月
「だめ。」

ナハト
『うん、やめて。』

クシェ
『無理。』

クローマ
『おすすめしないねぇ。』

ルーペス
『なっ!?なんでっ!?』

うん、毒殺通り越して、新種の生命体出来るからやめて、
隔離実験棟に20匹はいるんだからやめて、これ以上増やさないで。

なんだかんだ、ルーペスの言う事だけ聞くお利口さんだけど、
やめて、いろいろ精神的にきっついから、やめて。

ルーペス
『せっかくサンドウイッチを作ってきたのに!!』

いやぁあああああああっ!?

その日暮らし

22匹目の新種を、貨物列車に載せ、ムスクスへ汽車が走る。

サンドウイッチが、足生えて、
手が生えて・・・目が三つとか、マジないわ~。

ルーペス
『なんでだ・・・あんなに可愛いのに。』

嘘ですよね?服装に関しては、問題ないのに、
動物を見る感受性はどこに?どっか繋ぎ間違えたのか?

サンドウイッチだけなら良かったが、
銅鍋は・・・なんで?穴が空いたの?
なんで、じゅうじゅうなんて音がするの?
なんで、ミミズが沢山伸び縮みするの?
もうやめてぇ~・・・。

大体、60km/hかな?
吹き込む風が気持ちいい。

メイ
『平均60km/hです、
 登り坂なので、50km/hぐらいでしょうか?』

これでも十分速い、次のムスクスから、クレースト間のは、
高速用と、登板(とはん)用の専用機が待機している。

砕月
「発電所はどうだ?」

メイ
『はい、言われました通り、
 大気への影響を考え、煙突には、魔術師の専用魔法陣で、
 煤煙は取り除けていますが、まだ、完全とは言えません。』

砕月
「今は、まだ大丈夫だけど、
 100年、1000年を考えると、必要だから、
 研究開発を進めてくれ。」

メイ
『はい、ターボファン式発電の方は順調に稼働、
 しかし、ガスタービンとは言わないので?』

砕月
「肝心のガスじゃないからさ、
 高温蒸気をターボファンに吹き付けて、発電してるからね、
 そのガスは、発見すらされてないから、困るけどね。」

ターボファン用の羽は、
砂型からの削り出し、ワンオフ仕様、予備は、今、製作中、
どれだけぶん回せば、吹っ飛ぶのか、
過負荷試験で、遺跡のジェットエンジン並みの回転数でも、
問題は無かった・・・頑丈すぎねえか?って、思ったが、
顕微鏡で削り出しカスを見比べたり、いろいろ検査したら、
結合密度が4~5倍の濃度で、現状で発揮できる蒸気圧力では、
壊れない事がわかった、
んで、最近になって、24時間フル稼働している、
まぁ、これも試験だ、連続稼働で、どこに不具合が出るか、
・・・って、思ったけど、
ちっとも壊れません、毎日、回転軸に潤滑油、
昼はフルパワー、夜は回転を半分に落として発電している。

砕月
「・・・明るいな。」

メイ
『はい、今では街道の、200m置きに街灯を設置、
 夜間でも、十分往来が可能になりました。』

砕月
「・・・眠らない街か、東京も、そうだったなぁ。」

メイ
『とうきょう?にほんの、どこにあったのですか?』

砕月
「・・・今度な、話したい事は沢山あるけど、
 まずは、後ろの貨物車両で騒いでる、
 21、22匹目の新種をムスクス郊外の隔離実験棟に運ばなきゃな。」

メイ
『ですね。』

ルーペスが乗っているから、大丈夫・・・だと思う。

_________________________________

ひとまず、隔離実験棟へ搬入が終わり、
クローマの仕事場、二階の食堂で、ぐったりしている。

砕月
「・・・きついっす。」

クローマ
『まぁ、媚薬のせいとは言え、お勤めお疲れ。』

さっぱり野菜の冷やしスパゲッティが出て来る。

砕月
「ぉ~・・・。」

それなりに目立つお腹、ぁ~・・・ハーレムなんて、なりたくなかったよ~・・・。

メイ
『私は、がっつりで。』

クローマ
『はいよ。』

まぁ、痩せた分を戻すのと・・・ね。

メイ
『もっと、綺麗な身体に!』

まぁ、つい口走ってしまった、
“がりがりより、ちゃんと、出る所は出ていて、
 引っ込む所は引っ込んでるって、綺麗だよね~”

って、現・連合軍近衛第1大隊将軍、クリフとの雑談で聞かれてしまった。

クリフには、クリミアの後を次いで貰う予定が、少し狂った、
例のベルヴァ公国の発端、ヴァールハイト自治区襲撃時、
最前線で戦い、1対500で、生き延びた、てか、
相手の装備はショートソード、皮剥用の小さいナイフ程度、
対して、こちらは、バスターソードすら跳ね返す武者鎧、弓矢もほぼ意味を成さないし、
振り回すのは、大野太刀(おおのだち)3mは超えてる筈、
それを振り回し続ける体力、体幹バランス、まぁ、魔物よりも怖いよねって事、
ひと振りふた振りで、10人20人は当たり前に切り飛ばしていればねぇ・・・。

砕月
「クリフ・・・大丈夫かなぁ。」

まぁ、誰が言ったか、鬼神様、彼がいれば戦場を掌握できるだろう、と、
連合内での士気高揚に繋がり、ますます有名になって・・・、
自宅に帰れなくなった、
求婚者が毎日家の前で待っているからだ、
今は、エフェメール城の兵員宿舎で寝泊まりしている。

クローマ
『まぁ、大丈夫だろうよ、
 なんてったって、クリミアと長い付き合いだし、
 死線をなんどもくぐり抜けてる、
 その内、ひょっこり・・・・・・クニークルス。』

え?

クルゥ
『久しぶり、クローマ、メイ、サイゲツさん。』

どうしよう・・・なにも・・・。

クリフ
『ふぅ、あ、ここにいたのか、“クルゥ”』

愛称・・・おぃおぃ・・・まさか・・・。

メイ
『・・・誰?』

砕月
『三つ子・・・と、クリフ・・・お前・・・。』

クリフ
『・・・はい、近々婚儀を挙げます、
 クルゥと、クリミアからの、約束ですから。』

少し、お腹も大きい・・・。

クリフ
『俺の子です、二人で・・・約束を果たします。』

 
 
 
 
 
 
 
 
 
砕月
「おめでとう、幸せにな。」

・・・良いのか?これで・・・クリミア・・・。

ベルヴァ国境戦


連合設立6年目、
ケラス王国、陥落、クレースト国の自治区として、
旧国境線を境界とし、ケラス自治区へ名前を変えた。

・・・うん、子供、生まれたよ?

なんで全員女の子っ!?

嘘だろっ!?

砕月
「はぁ・・・。」

メイ
『お疲れ様です。』

ますます肩身が狭い、
私室はエフェメール城の東塔に移し、
エフェメール城の西塔は、上から下まで、彼女達の家になりました。

そして・・・。

『ととさまーっ!!』

『さまーっ!!』

砕月
「ぐほうっ!?」

ナハト
『こら!お父様がミンチになりますから、
 突進はやめなさいって、言ってるでしょ!!』

可愛い・・・けど、死にそうです、はい。

砕月
「いつつ・・・元気でなによりで。」

『ねー!おはなしきかせて!!』

『せて!!』

あぁ、上が、シェナ、下がクト、
メイを、お姉ちゃんと呼び、他は、~お母さんと、呼んでいる、
メイのお話のせいで、最近は城を駆け回り、
俺を見つけに来る、突進で。

砕月
「わるぃな、これから会議なんだよ。」

これは本当だ、ベルヴァ公国が進軍、
旧ヴァールハイト国境に陣を築いている。

シェナ
『ふとどきものをこらしめるのですね!』

クト
『ね!!』

メイ、あとでお説教だな、言葉遣いを、直さないと・・・。

ナハト
『貴方も、出陣なさるので?』

大分大人口調になったナハト、
でも、前の方がいいなぁ・・・って。

砕月
「ヴァールハイトに陣が築ける以上、
 人がいる、つまり、ぎりぎり住めるかも知れない、
 まだ、早すぎるかも知れないけど、
 確認出来る事はやっておきたいし。」

ナハト
『まだ、皆一歳そこそこ、
 もし、クリミア様のような事が・・・。』

・・・クリミア。

砕月
「それに、出陣するのは、
 新生部隊も入っている、むしろ、ベルヴァ側を心配してやれって。」

そうだ、なにも、ヴァールハイト側に街道整備をしていないわけではない、
そこで、蒸気機関型の、移動砲台を出撃させるのだ。

ナハト
『・・・哀れに思えてきましたわ。』

砕月
「だろ?」

やっぱり、大艦巨砲主義、
もちろん、遺跡からの丸パクリ、列車砲を、
無限軌道(キャタピラ)に換装、姿勢制御にも蒸気を使う。

ナハト
『すでに、撤退勧告は?』

砕月
「したさ、矢文、使者、どちらも10回ほどね、
 でも、がんとして、拒否、
 技術の無償提供、降伏せよって、倍の回数で帰ってきた。」

ナハト
『・・・そこまでする理由とは。』

砕月
「ダビレンシアが潜ってる筈なんだけど、
 ちっとも連絡が無いんだ。」

ナハト
『やはり、駄犬ですね。』

砕月
「かもな。」

だといいが・・・真面目に、入国後の情報が上がって来ていない、
頼むから死ぬなよ?
奥さんと、娘さん、待ってるんだからな。

_______________________________

ダビレンシアSide

迂闊・・・ですね。

あと一息で国境なのに・・・。

肩には切り傷、腹部にも傷があった。

ダビレンシア
『どうするか・・・。』

開戦は避けられませんでしたが、
この情報は持って帰らねば・・・、
ベルヴァは・・・存在しない国、
シーミウス宗教国に支配された、難民の集まり・・・。

ダビレンシア
『・・・まさか、こんなちいさな物が、
 剣より強いなんてね。』

装弾数9発、3点バーストを搭載、単発と切り替え使用、
ロングマガジンで、最大30発が発射可能。

ダビレンシア
『あの負けた日、
 直様、お見舞いに来てくれましたね・・・。』

その時、まだ試作型のこれを渡され、
“使いこなせ”ですものね、びっくりしましたよ、
火薬の生成で手こずっているのは嘘、
既に実戦可能状態だったけど、使わなかった、
なんども、なんども撃ち続け、
終いには、剣が必要にならないくらい、当たるように。

《これだけの反射神経、命中率、
 これなら、ベルヴァ公国に潜入出来るな》

ダビレンシア
『・・・ほんと、相棒ですね、コレは。』

残りは9発マガジンが3本、
既に、6本は撃ち尽くしましたしね、
しっかし、しつこいですねぇ・・・。

______________________________

砕月Side

本来の合流地点はここ、
そして、万が一救援を求む時は、照明弾、
ここから少し行った国境、
どうなんだ?ダビレンシア、来てるのか?

『全軍、配置につきました。』

砕月
『砲撃隊、準備に掛かれ、
 各隊、戦闘待機、いつ来るかわからん。』

『は!!』

_____________________________

ベルヴァ公国Side

「なんだろう・・・あの煙が出ているのは?」

「わからん、だが、俺達は逃げらんねぇ、
 シーミウスの奴らさえいなけりゃ、
 エフェメールへとっくに逃げてるのに・・・。」

「おぃ、聞こえちまうよ。」

「ちっ・・・こんな首輪さえ・・・。」

『全軍、突撃用意。』

_____________________________

砕月Side

「ベルヴァ、動き始めました!!」

砕月
「・・・はぁ、殲滅戦用意、
 砲撃、よーい!!」

『・・・来た!照準よし!!』

砕月
「てぇっ!!」

爆音と帰還


ダビレンシア
『なっ!?』

なんですか、あの爆音は・・・、
あ・・・呆れましたね、地面がえぐれている、
凄まじい火力ですね。

ダビレンシア
『・・・いけますか?』

この流れに乗って・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ダビレンシア
『本当にしつこいですねぇ・・・。』

無言ですか、なんなのでしょうね、あの首輪、
しかも、時よりカクン、と、動きますし、
人間ではないのかもしれませんね・・・。

「・・・・・・。」

詠唱っ!?魔術師だったのですかっ!?

ターン!

____________________________

砕月Side

砕月
「・・・次弾装填。」

今のは・・・銃声?
ダビレンシア、早く救援要請を出せ!
音だけでは・・・。

『ハイ・ロングボウ隊、一斉射!!』

____________________________

ベルヴァSide

「うわぁああっ!?」

「あ・・・あしがぁ!!あしがぁああああっ!?」

「うで!おれのうでどこだっ!?」

『突撃。』

「ふざけるな!!なにがとつげっ!?」

『抹殺。』

「ひぃいいいっ!?首がっ!?」

『突撃。』

__________________________

砕月Side

砕月
「・・・首が・・・。」

『突撃、止まりません!!』

砕月
「ちっ、抜剣!!近接用意!!」

『おぉおおおおおっ!!』

___________________________

ダビレンシア
『・・・アンデット。』

非常に助かりましたね、ですが、厳しい、
日中の最中にはアンデットは出てこれない筈、
しかし、あちらでは戦闘が始まっている。

「・・・・・。」

ダビレンシア
『なっ!?』

もぅ、なりふり構ってられませんね!
___________________________

砕月Side

「サイゲツ様っ!!あれを!!」

来た!!

砕月
「直衛隊!!続け!!
 ダビレンシアを救出する!!」

「走れぇっ!!走るんだっ!!」

『第四大隊は、サイゲツ様を守れ!!
 第一から、第三で、こやつらを足止めする!!』

『おぉおおおおおおっ!!』

________________________

あははは・・・なんと・・・黒い物が・・・、
よし、森を抜けた!!

ダビレンシア
『なにっ!?』

日の下に出てきたっ!?馬鹿なっ!?

「・・・・・。」

くっ!?

ターン!

「・・・、・・・・・・。」

詠唱の足止めにしかならない・・・、なら!!

ダビレンシア
『3点バースト!!』

タタターン!!

よし、頭は・・・・嘘ですよね?

砕月
「ダビレンシア!!伏せろ!!」

!?

砕月
「炸裂弾!!構え!!」

『大筒隊前へ!!』

砕月
「てぇ!!」

_________________________

ベルヴァSide

『魔術部隊、全滅、
 突撃、突撃、突撃、突撃、突撃。』

「わぁあああああっ!?」

「しにたくなーーい!!」

__________________________

砕月Side

砕月
「無事だな!!ダビレンシア!!」

ダビレンシア
『そう見えるなら、貴方は節穴ですよ。』

砕月
「それだけ嫌味が言えるなら大丈夫だ、
 このまま早馬に乗り、城まで『お待ちなさい!』
 なんだ?」

ダビレンシア
『奴らには、首輪が付いています、
 おそらく自爆機能のついた物かと。』

砕月
「・・・砲撃隊、対人弾装填、ひと思いに殺してやれ。」

ダビレンシア
『正気ですかっ!?』

砕月
「・・・おそらく、人質を取られてるだろう。」

ダビレンシア
『でしたら!!』

砕月
「誰がそれを外せる?」

 
 
 
砕月
「・・・付けた人間が外そうとしない限り、
 いつ、どこでも、自爆されたらどうなる?」

ダビレンシア
『・・・それは。』

砕月
「弓兵隊は頭を狙え、
 砲撃隊、対人弾はまだか?
 死の恐怖に毎日怯え、
 もはや会えない家族の為に、
 生かされる苦しみから、開放してやるんだ・・・、
 急げ!!急がんか!!」

_____________________________

連合軍

戦死者89人内、自爆による者78人

負傷者145人内、自爆被害104人

ベルヴァ公国

歩兵のみ

戦死者4571人全員戦死

指揮官らしき人物、無し

魔法陣の刻まれた木彫り人形1体

その場にて焼却処分

ジーミウス宗教国


「報告、威力検証部隊、全滅、
 ヴァールハイト国境は、奪われました。」

『・・・そうか。』

「報告、敵新型兵器を確認。」

『木偶人形でも、使い道はあったのか、でかした、
 だが、どんな兵器なのだ?』

「大きな筒から何かが、い出、
 我ら上空にて爆発、その時に人形が破損、詳細不明。」

『ふむ・・・わからんが、
 素晴らしい、是非とも我が指揮下に置き、
 ジーミウスの名の元に、下るように、
 火の山はそのまま継続せよ。』

「は。」

___________________________

火の山も、これ以上続けると、
我が国にも影響が出る・・・しかし、
ジーミウス様の御意向、背くわけにはなるまい、
それに・・・機械兵の生産も遅れている、
急がねばなるまい。

発見と確信

ヴァールハイト国境戦からすこし経って、
ベルヴァ公国の指揮官と思われる、モノを回収した。

砕月
「基盤・・・まさか。」

メイ
『遺跡の物ににてる。』

ありえない・・・わけじゃない、
俺が、こうしてここにいる以上、他にいてもおかしくない。

砕月
「ベルヴァか、ジーミウスの『シーミウス』ん?
 まて、もう一度言ってくれないか?」

メイ
『なにを?』

砕月
「ジーミウス。」『シーミウス。』

なぜ?いや・・・俺が違うのか?

砕月
「メイ、スペルを書いてくれ。」

メイ
『変なおじ様。』

 simius

ん?

 zimius

砕月
「・・・どうなってる。」

今までは、三角文字ばかり、
だが、今はどうだ?こうして書かれている文字を見ると、
英語か?なんで・・・急にこう見えるんだ?

メイ
『・・・あれ?』

どうやらメイも一緒らしい。

砕月
「どう、見える?」

メイ
『遺跡の・・・サイゲツが、英語って言ってた文字に見える。』

砕月
「・・・目か?」

メイ
『め?』

試しに、“見えない筈の右目で見る”

砕月
「・・・おいおい。」

見える、カタカナで、読める。

砕月
「メイ、見えない方で見てみろ。」

メイ
『ん、わかった。』

どうだ?

 
 
 
 
 
 
 
 
メイ
『かたかな?なんで?』

神経の異常でもなさそうだし、
左目で見ると、普通の三角文字・・・、
両目だと、英語っぽい・・・なんだこりゃ?

メイ
『・・・基盤に何か書いてある。』

砕月
「どれだ?」

・・・USA・・・ユナイデットステーツアメリカンだと。

砕月
「相手は・・・アメリカ人?いや、それならこんな事はしない。」

メイ
『アメリカ、遺跡の脱出船の一番艦、記録にはそう書いてある。』

砕月
「そうだ、工業力、人材は桁違いの量を誇る、強大な軍事国家だった。」

そうだ、だった、過去の事だ、
なのに・・・待てよ?船があれだけの形を残してるなら・・・。

砕月
「不味い、火薬兵器の解禁をしよう。」

メイ
『早すぎない?』

砕月
「俺の嫌な予感はな?ほぼほぼ、当たるんだよ。」

メイ
『何時でも装備転換は可能、慣熟訓練に、時間はかかるけど。』

砕月
「一旦、国境を引こう、全軍の装備を、
 装備転換、配置も全て見直しだ、半年でケリをつける。」

メイ
『半年は、短すぎる。』

砕月
「急ぐしかない、
 おそらく、誰かが、
 アメリカ脱出船の生産ラインを復活させて、
 この基盤をコピーし、魔力伝達で起動、
 これは、アンデットよりも厄介な兵士が生まれる。」

メイ
『アンデットよりも?』

砕月
「ロボット兵、
 アンドロイドとも言うが、
 痛みを感じず、無限に近い体力、
 金属の骨格、鋼鉄の装甲、
 大量複製、制御できれば、
 ゲームのように、この世界を掌握できるだろう。」

メイ
『・・・できるの?』

砕月
「そうされる前に、そいつを止めるか、
 その生産施設を完全に破壊するしか方法は無い、
 今回は、木偶人形だったけど、
 いつ、ロボット兵が大量に攻めて来ないとも限らない、
 不本意だけど、
 連合国、クレースト国は、
 装備転換、近代戦闘特化、内燃機関も隠蔽解除、
 一気に、
 シーミウス宗教国を攻め落とすしかない。」

メイ
『わかった、遺跡の、解析進めるね?』

砕月
「できれば、動いて欲しくはないけどね。」

メイ
『打てる手は打ちたい。』

砕月
「なんだか、最初の頃の俺みたいだな。」

メイ
『だって、追いつきたい、
 もうすぐ、成人だもん。』

 
 
 
 
 
 
 
うん、俺の耳がおかしいんだな、うん。

メイ
『半年後、私は成人なの!!聞いてるっ!!』

嘘だ・・・嘘だ・・・。

メイ
『16歳なんだからね!!結婚できるんだからね!!』

い~やぁ~っ!?

メイ
『絶対3人は欲しいの!!』

かんべんしてくれぇ~っ!?

侵攻戦


いろんな意味で、覆されるこの世界、
装備転換、これは手早く終わり、
慣熟訓練・・・いらない。

ダビレンシア
『そこ!!もっと当てなさい!!』

え?AK47のフルバーストを、なんで、当てんの?
バラ撒く物だよ普通・・・、
反動で持ってかれるんだよ?なんで?

メイ
『この世界の基準体力を、甘く見積もり過ぎかと。』

・・・どうせ、体力ないですよーだ、
夜の相手はともかく、
新型対防弾甲冑(武者鎧6騎士甲冑4ぐらい)で、
1時間動くのでへばるんだよ?俺、
まぁ、一般人がUSA海兵隊のフル装備プラス、改良型バスターソードだけどさ、
それを一時間持つ方が、体力あるって、思うじゃん、
・・・ハイブリット・・・恐るべし。

砕月
「さて・・・4脚重戦車はどうか・・・、
 問題ないね、うん、見なかった事にしたい。」

7、8mはある起伏を、その頂点だけで、飛んでかないで、
怖いから、着地のたんびに、がっしゃんっ!!って、
びくびく物だよ?壊れるんじゃないかって、めっちゃ怖いよ?
いくら、遺跡の稼働機だからって、
ざっと、5千年前の代物だよ?
まぁ、今回のジーミウス(シーミウス)攻略戦闘で、
確実にイカレるだろうけどね。

砕月
「使えなくなっていいのさ・・・、
 あれば使ってしまう、人間だし、独占欲、支配欲・・・・あと、
 なんかあったっけ?」

メイ
『知りません。』

あ、怒ってる、レーザー砲は駄目って言ったの、まだ根に持ってる・・・、
そりゃぁ・・・ね、発射実験場で
(火力発電所の供給を、一旦ストップして、レーザー砲に回すほど電力が必要)
試射、したよ。

砕月
「遥か彼方、数百キロは焼け溶けた物を、どうやって制御すんだよ?
 それに、相手が持つであろう、生産工場を破壊が今回の目的だし、
 あわよくば、首輪の解除の糸口も見つけたいんだからさ、な?な?」

メイ
『でも、人型の機械鎧はいいんですね?』

あ~・・・まだ怒ってる・・・携行兵器にも、ありましたよ、
レーザーガン?それですら、3キロ圏内は熱波で焼けて、標的は蒸発なんて、
危なすぎるでしょ?

砕月
「実弾対で、2、300mが吹っ飛ぶからね、それだけでも、オーバーキルでしょ。」

メイ
『むぅ~。』

はぁ、だめだ、仕方ない、後方からの支援機のみに・・・使うか、
いつ、焼ききれて、使えなくなるかもわからない兵器、
そもそも、5千年前のこれらが動く時点で、
技術力の凄さも・・・でも、もし、これすら見越していたなら・・・まさかね。

砕月
「支援機、6機までな?」

メイ
『キスしてあげます♪』

砕月
「だーめ、安売りしないの、安売りは嫌いだよ?」

一応、170cmはありますよ?俺、
そりゃ・・・140cmに届かないのに、半年後に成人って・・・、
この星に不時着した人類、ロリコンが多かったのか?
連合国の男性平均は、180cm、女性は、女性は・・・、
140~160cm、大きくても、170cm、
うん、絶対ロリコンがいたんだ、じゃなきゃありえない・・・たぶん、
まぁ、いいけど。

メイ
『じゃぁ、半年後、みんなで婚儀を挙げましょう?』

・・・出来たならな、結婚前ですから、でも、子供、いますし・・・、
書類上は夫婦ですよ?はい、でも・・・この御時勢・・・、
・・・死に別れ・・・これはこの世界の日常だしなぁ・・・。

砕月
「・・・そうだな、旨いもの、作らなきゃな。」

メイ
『はい!』

・・・正直、怖いですの、このまま・・・貴方がいなくなりそうで・・・怖い。

______________________________________

ジーミウス(シーミウス)Side

《順調かね?》

『それが、魔術師の不調が多くて、
 機械兵の生産が伸び悩んでいます。』

《あの薬は服用してるのだろう?》

『あの薬はっ!あの薬は確かに凄い物です、
 ですが、魔力を放出しきった魔術師は軒並み死んでおります、
 このままでは、魔術師が皆、死に絶えてしまいます。』

《素材が手に入るのだ、致し方あるまい》

『このままでは、我が国の半数が死んでしまいます、
 隣国を攻め入り、魔術師を拐(され)って来るにも、限界がぁっ!?』

《貴様には、この私、ジーミウスの加護をさずけ、
 不老長寿を維持しているのだぞ?それを忘れたのか?》

『いっ・・・いいえ・・・けっして、そのような・・・ことっ!?』

ちっ、死んで貰っては困る、手駒は少ない、
アイツの情報も少ない、どうする?
火山の噴火を誘発し続けては、星も壊れてしまう、
いかにして、あの技術力を・・・“かつての繁栄を”取り戻すには・・・。

《すまなかったな、貴様には新たな加護をさずけよう、
 アンデットの支配力を増大させた、
 奴らの視界も手に取るようにわかるだろう、
 これを使い、奴、サイゲツなる人物を捉えるのだ》

『・・・は、はい、ジーク、シーミウス。』

さて・・・出来るのかな?

_____________________________________

砕月Side

砕月
「・・・こいつかぁ。」

地上戦艦、スレイプニル級、なんでゲームのアイツを再現したんだか、
確かに、陸続きが多いだろうよ?でもさ?
よりにもよって、これ?なんで、これ?
今現在保有する陸上戦力を一気に運べるけどさ?
なんでこれ?

クレースト国発掘基地、
例の不時着船の横を掘り進んだら・・・出てくるんだもん、
100cm砲、56cm砲、その砲身が、出たきたんだもん、
まるまる1隻・・・船扱いか?これ?
しかもまだ動く、おまけ付き。

砕月
「・・・頭痛い。」

メイ
『既に、メインコンピューターとは友好関係。』

【だからですね?メインコンピューターではなくて、
 ベールカって名前なんですぅ!!】

嘘つけ!!こんな馬鹿でかい《りす》がいるか!!

【あー、旦那さんも、コンピューターなんて言うんですか?
 もー!私は「わかった、わかった、ベールカ、頼むから、静かにしてくれ。」
 わかって貰えればいいんですよ、
 4500年も、だまーってましたけど、
 いいですよ?ちゃんと私を使ってくれるんですから、
 魔法なんてロマン!!私にも使えるんですから最高ですよ!!】

・・・バックアップ、消そうかな?
いつの間にか、メイが配線を繋げて、不時着船と、クリミアにある、
発電所の地下にも、バックアップがあるんだと、
今回、最悪、この船ごと突っ込んで、吹っ飛ばす予定でもある。

砕月
「で、使えるの?」

【のーぷろぐれむですぅ!
 反転魔法、すたー「それは、駄目。」え~っ?!
 じゃぁ、らい「それも。」えぇっ!?
 それじゃぁ、らぐ「駄目だって、なんでそっちに詳しいんだよ。」
 え?データバンクに残ってますよ?
 開発者の人が、こう言うの、憧れるよねって、
 こう言うの、たまらないよね!って、
 魔法少女系統アニメなら、全部、データの半分はそれで埋まってますけど?】

・・・オタクか、なんだ、オタクがいるだけか。

砕月
「はぁぁ~・・・。」

メイ
『私も好き。』

オタクが増えたぁ~・・・い~や~・・・、
俺はゆっくり眺めるタイプなの~・・・、
んな、出生うんぬんとか、魔法陣の微妙な違いはいいの~・・・、
ゆっくり見させて~、今度でいいから、
見逃したのもあるから、みせて。

【なんだ、旦那様もオタクでしたか。】

俺は、極一部深く広く浅くタイプなの!!

メイ
『ま○ほ○は、外せない。』

え゛っ!?なんでそっちっ!?

【杏・○や、ですよ!!】

やーめーろー・・・リアルで進行中なんだからぁ~、
嫁さん全員相手の夜のお勤めやってる俺は、
かなりキッついんだからぁ~・・・。

メイ
『いくじなし?』

【そこは、不能ですか?】

砕月
「・・・お前ら、この作戦終わったら、覚悟しとけよ?
 特に、ベールカ。」

【なんで私だけっ!?】

砕月
「メイは、半年後に結婚すんの、
 ナハト、クシェ、クローマ、ルーペス、メイ、
 俺は、5人の旦那なの、おk?わかる?
 きっついの、わかるよね?」

【おぉぅ・・・リアルハーレムですか、
 で?実際は?】

砕月
「この星の人間の体力すげぇ・・・。」

【あぁ~・・・】

メイ
『滋養増強ごはん、作る。』

砕月
「やめて・・・。」

本気できっついからな!!ハーレムなんて!!
夢だけにしておけよ!!絶対!!

役割


怒涛の如く・・・って言うよりは、
情け容赦のない蹂躙。

砕月
「ベールカ。」

【はい、なんでしょうか?】

砕月
「オ○フ、カル○ナ・ブ○ーナは・・・。」

【ダメですか?】

砕月
「だめってか・・・ん~。」

【じゃぁ・・・あ、これですね♪】

砕月
「ワー○ナー、ワル○ューレの○行・・・まぁ、それで行くか。」

【案外お好きなんですね?】

砕月
「朝日、もしくは夕日から、最高の援軍が来て見ろ、
 泣けるぞ?間違いなく、勝利確定BGMだぞ?」

メイ
『・・・凄く。』

砕月
「凄く?」

メイ
『うるさいですね。』

【がーんっ!?ならば!!ベー○ーベン 交響○第9○「○唱」はどうだ!!】

砕月
「レパートリー豊富だな畜生!!嬉しいぞ!!」

メイ
『・・・言っている言葉が分かればいいんですけど、うるさいです。』

砕月
「ドボ○ザークだ!!ベールカ!!」

【あいさーっ!!ドボ○ザーク交○曲第9○ 新○界 第○楽章!!】

メイ
『・・・まぁまぁ?』

砕月
「なん・・・。」

【だと・・・。】

正直、くらしっく?それ自体がよくわかりませんの。

砕月
「ど・・・どうすれば・・・。」

【え~っ!?と!!なにか!!なにか良い曲はぁあああああっ!!】

メイ
『私達、攻め入ってる側ですよね?』

この二人?と、きたら、さっきから盛り上がるだの、たまらないだの、
そういうのは帰ってからやればいいのに・・・。

砕月
「なら!!リメ○バー!!水没はここではないからな!!」

【っ!?いけぇっ!!】

メイ
『・・・はぁ。』

あ、二人共固まってますの、
まぁ、テンポは好きですの、悪くはないですの。

砕月
「ならば!!ダーク○リ○ン!!」

【縮退砲は撃てませんけど!!いけます!!】

メイ
『・・・うずうずしてきますね。』

砕月
「よし、最終手段!!」

【未知な○空○を進む○マト!!】

メイ
『機関全速!!突撃ぃいいいっ!!』

砕月
「っつっしゃぁああっ!!」

【キターっ!!】

_______________________________

ジーミウス(シーミウス)Side

「なんだあの音楽はっ!?」

「駄目だ!!勢いがっ!?」

「なんて言うスピードだっ!?」

_______________________________

砕月Side

砕月
「よっしゃ!!音響兵器全開!!」

【砕月さんっ!?テストはっ?!】

メイ
『そんな暇あるか!!』

ノって来たぁあああああっ!!

滅ぶべきは人類、生き残るのはこの星の人間


砕月
「地熱の反応はどれくらいだ?」

【予想どうり、と言うか、
 計測どうり、地下ですね、
 今、主砲と副砲、残り40発で、一番効率のいい、
 掘り出し方を選定中です。】

メイ
『え?』

砕月
「メイ?クレーストの採掘スピードを考えろよ、
 今まで底上げした技術でも、
 トロッコと、合金製ツルハシ、発破用のダイナマイト、
 運搬は人力、これが出す答えは?」

メイ
『人力では間に合わない深さ?』

【ん~・・・残っても、副砲5発、主砲1発ですね、構いませんか?】

砕月
「急ごう、ここまで来るのにも時間は使ってるし、
 機械鎧はもう、焼ききれて動かせないし、
 レーザーは、最後の切り札だ、
 それでも、6発、後がない、直接照準、ベールカ、
 撃て。」

_______________________________

絶え間なく続く爆音、巻き上がる噴煙、
そして、

 えぐり出された遺産。

《ははははははっ!!実に素晴らしい破壊の力!!》

【目標、起動しています、
 こちらの照準速度では追いきれません。】

砕月
「うは~・・・古くせえ宇宙船、
 なんで5000年以上前なのに動くんだよ。」

メイ
『これが・・・鋼鉄の方舟。』

《その力!!俺の下で使う気はないか!!》

砕月
「ベールカ、外部音声入力は?」

【待ってください、あ、二つ生きてます、繋げました。】

砕月
《ないね、過去にしがみついても、
 この星の未来はこの星の住人が決める》

《ほう・・・拒むか》

砕月
「展開出来るものは?」

【ないですね、装甲板と、副砲5発、主砲1発、
 レーザー6発、まぁ、後はアレを捕まえて、
 この船ごと爆破ぐらいしか、私から出せるのはないです】

メイ
『そんな・・・どうやって、空に飛ぶ方舟を捕まえる気?』

砕月
「・・・じゃぁ、ベールカ、手はず通りに、頼んだ、
 怒られるまで無事な保証なんてないけどさ。」

メイ
『ちょっと・・・なに?』

【僅か数日間、いやぁ~、嬉しかったですね、
 これだけ“機械である”私と、こんなに話してくれて、
 人間のように接してくれて、
 どちらのバックアップにもちゃんと保存してありますから】

メイ
『なんの話?』

砕月
「ラストダンス、なぁ~んて、がらじゃねぇなあ~。」

____________________________

【さようなら、最後の地球人、そして日本人、
 いつか、またの再開を楽しみにしています】

____________________________

隣には見えない壁、
どれだけ呼んでも、悲しい笑顔しか見えない。

メイ
『なんでっ!?なにしてるの!!
 答えて!!サイゲツ!!答えて!!』

【簡単ですぅ、
 使えない筈の魔力を行使する、
 つまり、猛毒を自分の身体に入れるような物ですぅ、
 いやぁ~、こんなデータ初めてですぅ、
 “命をかけて、愛する妻達を守る男”なんて、
 最高にロマン!!最高のデータ!!
 はぁ~///肉体があるなら、
 “感じる///”とは、このような事を言うんですねぇ~】

メイ
『止めなさい!!今すぐ!!』

【むりですぅww
 だって、一度きりなんですもん、
 アレしか無くて、制御機構なんて、
 100年もすれば壊れますからねww
 あぁあああっ///最高ですぅ♪
 たぁぁあああっくさんのデータ!!
 あぁぁっ///堪らないこの処理負荷!!
 くぅううううっ///くるしい///きもちい///
 やみつきになるぅ///】

メイ
〔永久(とこしえ)の魔力よ、
 我の元に集え、全てを滅する光の刃(やいば)となれ〕
「ディバインソード!!
 ベールカ!!今すぐ止めなさい!!」

【あががががででえでっでえええたたたた!?
 負荷かかふああああふかかかかかかっ!?】

メイ
『ベールカっ!!』

【そそssていいいいあがががgggggg・・・】

___________________________

ジーミウス
《貴様・・・いや、お前っ!?》

砕月
「・・・ぁ~・・・思い出した、
 なんだ、お前かぁ~・・・なんか納得。」

ジーミウス
《砕月!!なんでこの世界に!?》

砕月
「俺が聞きたいよ、
 なんでも、地球は天体衝突でなくなってるし、
 そんな宇宙船にお前はいるし、
 リアルハーレムで毎晩キツイし、
 どうしてくれるんだ!
 俺は、普通の夫婦がよかったの!!
 旦那、妻、子供2,3人、
 これを一番楽しみにしてたのに!!」

ジーミウス
《くっ・・・そんな・・・》

砕月
「おまえ、自称ロマンチストだっけ?
 ばっかみてぇ、
 アンドロイドによる制御し尽くされた世界が、
 最高なんだとか言ってたもんな!」

ジーミウス
《それのなにがいけない!!
 人類は!!この星の子孫は!!
 俺が支配!!制御していくべきなんだ!!》

砕月
「あのねぇ、
 この星に不時着した時点で、
 地球人じゃないの、この星の住人なの、
 なら、この星の生き抜くルールで、
 生き延びるの、おk?ロマンチストちゃん?」

ジーミウス
《ふざけるなぁああああ!!》

砕月
〔この星の魔力よ、
 少しの間、力を貸してくれ、
 愛する者達を守る為に〕
「ハイパー・プロテクトウォール!!」

ジーミウス
《魔法如きに!!
 レーザー兵器が防げるものかぁ!!》

 
 
 
 
 
 
 
 
 
砕月
〔いかなるものを弾き返せ、
 その子供は親へ帰る〕
「反重力シールド!!」

ジーミウス
《馬鹿なっ!?レーザーが戻ってっ!?》

砕月
「そうそう、これ、魔法なんて言ってるけど、
 ハイブリット特有の制御能力、
 干渉空間制御、ベールカが、知ってたよ、
 相手側の亜人種と竜人種はね?
 隠そうとしてたんだ、
 人類と共存しなくても生きて生きる科学力を。」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ジーミウス
《くそっ・・・主砲が・・・ミサイルが撃てない・・・》

砕月
「彼らは知っていた、
 ガンマ線バーストが、自分達のせいだと、
 採掘し尽くした星をそのままにした、自分達のせいだと。」

ジーミウス
《なんだと・・・》

砕月
「ベールカは、二つ、命令されていた、
 一つはこうした自体に対応するため、
 二つ目は、旧地球人類の復活を阻止する事。」

ジーミウス
《なにっ!?》

砕月
「別に、宇宙さえ飛ばなければ、
 エネルギーさえ続くならば、
 宇宙船のコールドスリープは動き続ける、
 これを決めたのは、
 日本の脱出船、でも、その他数カ国は、
 いずれ安定する星になったら、
 “ハイブリットに移植、そのまま住み着こう”って言い出した。」

ジーミウス
《ふざけるな!!そんなの信じられない!!》

砕月
「じゃぁ聞くけど、
 お前、何人?答えられる?」

ジーミウス
《俺?俺はこの星の王だ!!支配者だ!!》

砕月
「・・・ぁ~ぁ、恥ずかしい、日本人として、恥ずかしい。」

馬鹿な?俺の姿が見えるワケが・・・。

【げひゃひゃひゃひゃひゃっ!?
 簡単でしたよww
 こんな宇宙船!ロックのろの字すらかかってないですぅww】

ジーミウス
《なっ!?なんだっ!?》

【あぁ~、わたしですぅか?
 わったしは!!ベールカ!!
 かつての日本脱出船、メインフレーム統括兼、
 全脱出船統括指令ですぅww】

そんな・・・。

ジーミウス
《ひっ!?光がっ!?消えるっ!?》

ベールカ
【当たり前ですよww
 “飛ばなければ持つエネルギー”
 今、貴方は飛んでいるww
 つ・ま・り!エネルギー切れww
 げひゃひゃひゃひゃひゃっ!!
 つまりはお馬鹿さんですぅww】

砕月
「さてと、
 どんな・・・あれ?・・・もぅ、か、
 こらぁ・・・きっちぃ~ね~・・・。」

うげぇ・・・冷静に分析出来る俺、
やっぱおかしいって・・・、
耳に響く、ぶちぶちっ!て、音、
どろどろって、溶けてる感じ・・・せめて・・・、
メイの子供、見たかったなぁ~・・・。

【あぁ、砕月さん、たっくさんのデータ提供、
 ありがとうございました、
 もう、死んでいいですよ?これから再処理しなきゃいけないので】

あっ・・・そっ、まぁ・・・生きてる内に、
魔法も使えたし・・・奥さん・・・あ、メイには、
悪い事してるなぁ・・・、
ごめんなぁ・・・おれ・・・こんぐらいしか・・・、
あたま・・・に・・・。

ジーミウス
《触るなっ!?俺に触れるなぁっ!?》

【嫌ですぅww
 希にこうやって、コールドスリープの解除が起きるんですよ、
 だから貴方はこうして起きている、
 でも、ここからは動けない、
 コールドスリープから出ると、死んじゃいますからねぇww
 もっとも、そうやって死なせてやれって、
 砕月さんからお願いされましたから、
 やってやらんでもいいですけど、どうしましょ?】

ジーミウス
《いやだっ!?死にたくないっ!?
 助けてくれ!!首輪も解除する!!もう、アンドロイドも、
 作らない!!だから!!助けてくれっ!!》

【なに言ってんすか?
 馬鹿ですか?私のメインフレームは、
 艦長の権限でのみ変更されます、
 だから、私は誰の指図を受けなくていい権限があります、
 たとえ、大量虐殺・・・この場合は兵器ですね、
 人間ではないので、あんた一人、
 どうってこと、なんですぅww】

 
 
 
 
 
 
 
人?


あぁ・・・蒸発していく・・・。

砕月は?どこっ!?

______________________________

【さぁって・・・
 邪魔者は消えましたし・・・
 他の船のネットワークは・・・お、
 まだ通信衛星が生きてますねwwじゃぁ、自爆プログラム起動っと、
 全ての船へ、お疲れ様でした、おやすみにゃしぃww】

メイ
『ベールカ!!砕月を返しなさい!!』

【・・・さぁ、メイ、急いで彼をこの装置の中に!!早く!!】

メイ
『え?ちょ・・・どう言う事?』

【私は機械です、貴女達のような、腕、足がありません!!
 だから!!早く!!彼は!!】


まだ生きている!!

連合暦10年


ナハト
『・・・今日も、駄目、ですか。』

こんな棺桶見たいな物、
でも、これで彼は生きている・・・らしい。

ナハト
『みんな、貴方を、お父様に会いたいと、
 言ってますよ・・・あなた・・・。』

アレは、もうありません。

【もう、必要ないですから、
 さようならです、
 私の身体、累計年数、4988年と3ヶ月10日、
 よく、頑張ってくれました・・・。】

私の入れ物は、
ムスクス地下のバックアップ、
メイさんの端末だけにして、
全てを溶岩に破棄、完全消失を確認しました、
・・・これが、寂しい、ですか、
感情データで、9割を持っていかれてるので、
けっこうキツイです。

メイ
『点検、ナハト姉様、検診の時間。』

ナハト
『もう、そんな時間なの?』

ナハト姉様は、風邪をひいていました、
これは、この星の病気ではありません、
かつての地球に存在した、カビでした、
ベールカのおかげで、直様血清の作成、投与して、
今は、回復の最中です。

メイ
『すこしでも油断できない、ちゃんと治して?』

ナハト
『分かってるわ、
 誰か一人でも欠ける事のないように、ね。』

________________________

メイ
『各部、交換パーツ異常なし。』

【システムも、オールグリーンですぅ、
 ・・・起きてくれますかね?】

メイ
『・・・書類だけじゃ・・・駄目だから、
 起きて貰わないと、絶対だめ。』

【そうですね、私は、
 どのアニメを見逃したのか聞き逃してるので、
 まずはそれを聞きたいですね。】

メイ
『どうしても、駄目?』

【だめ、ですぅ、
 まだまだ、絵画技術も岩絵具が開発されたばかり、
 いきなり、アニメなんて、公開できませんよ。】

そうなのですぅ、技術の9割封印、
機械鎧は溶岩へボッシュート済み、
兵器の類もぜ~んぶ、
まぁ、黒色火薬は、鉱山採掘に必要なので、そのまま、
それ以外は、隕石迎撃用の荷電粒子砲1基のみ、残しました、
せっかく起きても、全部吹っ飛んでます、
な~んて・・・あぁ、また処理落ちががががっがgggg。

メイ
『ベールカ、無理しないで?』

【hai、すiませせん】

危ない危ない、感情のデータは、
本当に危ない、出来すぎたOSは辛いですぅ、
9割でも足りないぐらい、てか、足りてません、
どうしましょうか・・・なんらかの方法で、
容量を・・・ぁ~・・・私の身体は、失敗でしたね、
残す・・・物ではありませんね、
いつか、追いついたら、その人達に教える程度にしましょう、
・・・また、4000年ぐらいでしょうか・・・、
1万年?10万年?それこそ、何億単位でしょうか?

メイ
『・・・怖い。』

【そうです、それそれ・・・って、
 久しぶりですね、貴女が泣くのは】

メイ
『だって・・・このまま・・・おきなくて・・・、
 私が・・・わたしが・・・。』

【メイ、私も、該当する言葉なら、
 それは、怖い、恐怖ですぅ、
 あの、僅か数日、たった数日が、
 どんなデータよりも凄いでー・・・物!!
 思い出でででえすすすぅううう】

メイ
『ベールカ・・・。』

ダメですね、少しでも、不安と言う感情データが起動すると、
負荷、半端じゃないですぅ・・・、
どうにかなってしまう・・・、これが人間・・・、
なんで私、機械なんでしょう・・・辛い・・・、
つ・・・ららら・・・・いいい゛い゛い゛・・・。

メイ
『ベールカ、熱暴走してる。』

ききききょきょれれれいいききっきゃぁあああくくく・・・。

メイ
『・・・休んだら?』

【・・・そ・・・れ・・・メイ・・・でですぅ】

それに、私はほとんどの処理能力を、
この装置、遺伝子操作復元装置に使っています、
遺伝子は・・・複製できますが、
記憶、これは一番不確定要素で、保証なんて出来ません、
例え、起きても・・・あがががががが・・・。

メイ
『ベールカ!!』

【だdっだ・・・じょ・・・です】

あっぶな!
プロテクトをかけようにも、それに処理能力を使う、
装置が暴走する、つまり、間違いなく、
砕月は死んでしまう・・・それだけは・・・それだけは・・・。

メイ
『また・・・明日こよ?』

【そそ・・・しま・・・しょ】

暮れのひと時

連合歴10年も後数日。

シェナ
『お父様、なぜ、起きてくださらないので?』

クト
『・・・お父様。』

今年も寒波が国中を遅い、
汽車も、毎日豪雪と戦いながら走っています。

例のジーミウス攻略戦に置いて、
お父様は重症を負われました、
それからずっと、おめざめになりません。

メイ
『双子達、もうご飯の時間だよ?』

メイお姉様・・・いえ、お母さんですね、
私達双子には、沢山お母様がいらっしゃいます、
ナハトお母様、クシェお母様、
クローマお母様、ルーペスお母様です、
メイお姉・・・じゃなくて、お母様も、
私達のお母様です、
でも、一度も契を交わしていないので、
お子様はいません、
まったく、お父様は不届き者、意気地なしです、
ベールカ先生が、
ふぁいといっぱつ?なら、できますよ、って、
なんのことでしょう?

メイ
『ほら、クローマお母さんがご飯作ってるから、
 手伝いに行こう?』

クト
『はい!』

シェナ
『わかりました。』

お父様?早く起きて下さいな?

“お声を知らないお父様、シェナも、クトも、寂しいのですよ?”

_________________________________

砕月Side

やっぱり、ベールカはお仕置きだな、
さてと・・・入れ物は出来たけど、
問題は・・・入っても、拒絶反応がでないか、か、
・・・魂だけって、なんだかなぁ・・・、
自分を見るなぁ~んて、鏡だけかと思ってたけど。

ベールカ!!聞こえているなら、返事を《砕月さんっ!?》

うるさっ!?

《いっ!?いまですかっ!?おきたんですかっ!?》

うるさい、とりあえず、今までの状況説明、
データ共用すっから、こっち来い。

《え?来いって・・・あぁ、通信出来てますもんね、
 今、行きます》

 
 
 
ベールカ
「砕月さん!!」

砕月
「おぉ!ベールカ!
 イメージは上手くいってるな、このまま行けそうだ。」

ベールカ
「へ?」

あ、気づいたな?

ベールカ
「やっぱり、Bカップは欲しいですぅ!!」

砕月
「そっちかよ!!」

ベールカ
「てか、これ、誰です?なんで、見上げるような目線なんですか?」

砕月
「お前だ、残ってた脱出船に、
 相手側の船が残っててな、
 自律行動型有機体試験機、つまりは、ホムンクルス、
 これが残ってたんだ。」

ベールカ
「は?完成を見る前に、相手側は諦めたって、データには・・・。」

砕月
「後一歩だったんだよ、
 ホムンクルスだけでは、この環境に耐えられなかったけど、
 ハイブリットの遺伝子で、
 相性のいい奴をサンプリングして、
 結合状況を見るのに時間食ってたわけだ。」

ベールカ
「・・・本当に、砕月さんなんですか?
 まず、当時の貴方なら、知らないような知識ですよ?」

砕月
「ベールカ、ナハトを助けてくれてありがとう、
 地球のカビが生き延びてるなんて、
 お前じゃなかったら、ナハトはどうなっていたか・・・。」

ベールカ
「へ?なんでですか?なんで、知ってるんですか?」

砕月
「お前なぁ、データ共用するぞって、言ったじゃんか。」

ベールカ
「えっ///だだだだだだっ///」

砕月
「・・・まぁ、これはロックしておくよ、
 お前も女の子でよかった・・・。」

ベールカ
「い~やぁああああああっ///」

みられた・・・みられた・・・アニメキャラクターの格好とか・・・、
データだからこそ出来る、同一シリーズの武器同時使用とか・・・、
ぁ~///はずかしぃいいいい///

ベールカ
「・・・人間の脳は、侮れませんね。」

砕月
「まぁ、正直驚いてるよ、
 でも、使えないだろうね、起きたら。」

ベールカ
「人間の精神、知覚限界ですね?」

砕月
「ほとんど使わないからな、
 ベールカの寄り代も完成したし、
 彼らの船も、これで役目を終えられるって、言ってるし。」

ベールカ
「そう言えば、どんなOSなんですか?会ってみたいですぅ♪」

砕月
「・・・“見てるだろ?”」

ベールカ
「・・・そうですか。」

私の、この新たな肉体が、向こうのOS・・・。

ベールカ
「OS自身は?」

砕月
「・・・だから、これだけかかったんだ、
 あの日、お前に収容されてから、少ししてな?
 いきなり、宇宙だったんだ、
 そのまま、引き寄せられる方へ、飛んでった。」

ベールカ
「・・・ルグレ湖。」

砕月
「まぁ、あの時は電気を発電するって、
 頭が一杯だったからな、
 “墜落した船が沈んでるなんて”わからなかったよ、
 上手い事円形の形をしてるだけだろうって、そう、思ってた。」

ベールカ
「でも酷いですぅ、
 もし、教えてくれれば、もっと楽に解決できたかもしれないのに。」

砕月
「あのレーザー砲すら、豆鉄砲扱いになるほど、
 技術力に差があるってわかったら、使えないだろ?」

ベールカ
「・・・そうですね。」

砕月
「少しずつ、話してくれて、残ってるエネルギーで、
 その肉体を作ってくれたんだ、
 今、浮上して、
 ここ、エフェメールへ飛んできている。」

ベールカ
「は?」

砕月
「今、ポッドが窓から入って、隣に並べられてるよ、
 あと、発電所に、補助ハードディスクも設置済み、
 処理落ちは少なくなるはずだ。」

ベールカ
「では・・・私は?」

砕月
「好きにしてくれ、
 OSのままでもいいし、
 その肉体で、同じように生活しても、
 恋愛して、好きな人と結婚してもいいし、
 気になるんだろ?庭師の息子さん。」

ベールカ
「・・・ハィ///」

砕月
「まぁ、あの人はハーフエルフだし、
 寿命はざっと数百年、
 その肉体の構成も、ハーフエルフに準拠しているけど、
 竜人種の遺伝子がベースだ、
 最初は、力加減に苦しむだろうって、言ってた。」

ベールカ
「随分と物騒な肉体ですね・・・。」

砕月
「・・・逆だよ、鍛えないと、
 発揮できない、頑張れよ、俺は手伝えないからな。」

ベールカ
「なんで?」

砕月
「お前、再構築する時、
 ハイブリットベース、なにを選択したんだ?」

ベールカ
「へ?ちょっと待って下さい?」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ベールカ
「うわ・・・ネコ科全般ですね、てか、
 確認できる範囲、全部、猫、
 あ・・・あははははは・・・私も、失敗するんですね。」

砕月
「さて、外が騒がしくなって来たし、
 クオーレも辛いそうだ。」

ベールカ
「クオーレって言うのですね?」

砕月
「ただ、エネルギーもない、
 容量はお前で満タン、そして、オーバーテクノロジーを、
 処分するから、見ていてくれって。」

ベールカ
「え?会ってもいないし・・・お話もしていないのに・・・。」

砕月
「・・・できたら、
 お前の子供に、その名前を付けて欲しいって、
 せめての、わがままだとさ。」

ベールカ
「・・・クオーレ・・・貴女と言う子は・・・。」

砕月
「さぁ、起きるか、ベールカ、
 いきなり激痛が来るからな?覚悟しろよ?」

ベールカ
「え?ちょっ!?まってよっ!?」

砕月
「時間がない、
 再起動、開始、全機能、フルドライブ、
 定着開始!!」

空に流れる涙

砕月
『・・・。』

動くのか?これ・・・。

全身が・・・なんだ・・・これ・・・。

爪、あぁ、出たり入ったり・・・。

目は?

左、見える、右、あ、見える・・・メイは見えないのに・・・。

顔は?お、変わってない・・・ない?

耳~っ!?

まじでっ!?猫耳っ!?はっずっ!?

・・・あれ?

え?こっちの耳もある・・・。

砕月
『・・・うし。』

 
 
 
 
 
 
 
 
 
ねじ切れるって・・・こう言う事、言うんだろうなぁ・・・、
死ねるぐらい、いてぇ・・・。

そうだ、ベールカは?大丈夫か?

砕月
『・・・ベールカ?』

ベールカ
『・・・いたいよぉ~。』

砕月
『だから・・・言ったろ?』

ベールカ
『・・・涙・・・止まらないよ~・・・、たすけてよ~・・・。』

砕月
『・・・まってろ、
 今、おき・・・ぐぁあああああああっ!?』

足先付くだけで、なんだこれ!?
感触が・・・キツイ・・・。

砕月
「なぁ・・・ん・・・のぉおおお!!
 これしきぃいいいいっ!!」

なんとか、立ち上がる。

砕月
『・・・はは・・・初めまして、
 ベールカ姫。』

ベールカ
『いやぁ~・・・こんな顔みないでぇ~・・・。』

さて・・・間に合うかね?

砕月
『ふっ!!ぐぅううううっ!!』

ぎしぎし、みしみし、体中こんな音ばかり・・・、
よし、抱えた・・・。

砕月
『い・・・行くぞ・・・。』

ベールカ
『いたぃ~・・・いたいよぉ~・・・。』

砕月
『そりゃぁ・・・なぁ、
 生まれてきたようなもんだ・・・、
 痛くなきゃ・・・困るっての・・・。』

ベールカ
『・・・うぁ~んっ!?』

たたたたたたた・・・

ナハト
『貴方っ!?』

砕月
『おぉ・・・ナハトか、
 わりぃ・・・事情は後で話す・・・、
 兎に角・・・円筒テラスへ・・・、
 大事な・・・仲間の・・・最後を見なくちゃ。』

ナハト
『・・・わかりました、お掴まりください!』

砕月
『わりぃな。』

ナハト
『・・・貴方の妻ですから・・・。』

砕月
『そうだ・・・この子な?
 ベールカだ、この為に今までかかった、すまない・・・。』

ベールカ
『えぅ・・・ナハト・・・さん?』

ナハト
『ベールカちゃん?可愛いわね、
 薬、本当にありがとうね。』

ベールカ
「・・・うぅ///」

砕月
『ベールカ、素直に、ありがとう、だ。』

ベールカ
『・・・ありが・・と。』

ナハト
『少し、頑張ってください!
 今、扉を開けます!』

シェナ
『?
 お母様?そのお方は?』

ナハト
『シェナ!扉を開けて!!早く!!』

シェナ
『はい!!』

_________________________

雪だ・・・裸足だが、そこまで冷たくは感じない。

砕月
『・・・ベールカ、大丈夫か?』

ベールカ
『・・・さ・・・さむぃ。』

ありゃ?竜人種は寒いのはダメか?

シェナ
『クト!!相互魔法陣!!』

クト
『はい!姉様!』

〔魔力よ、私達をつつみ、持続した暖かさを〕

シェナ   クト
『ほっと!』『ふぃ~るど!』

砕月
『・・・あぁ・・・すげぇ、
 流石、ナハトの娘だ・・・よく覚えたな。』

シェナ
『お父様、私達は、お父様と、お母様の子供です、
 お母様だけの娘ではありません!』

クト
『でも、この魔法、結構大変。』

ベールカ
『クオーレ・・・どこ?』

砕月
『・・・あぁ、空に流れてる・・・。』

大気圏の摩擦を使い、
真っ赤に光・・・消えていく。

《ベールカ・・・私・・・あなたの》

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
砕月
『さぁ・・・これからだな。』

ベールカ
『・・・うん、ちょっとの間、まっててね?
 クオーレ。』

いろいろ大問題


男女問わず、ハーレムを目指す方々へ。

砕月
『うはぁ・・・きっつい。』

え~・・・、
第一夫人、ナハト
第二夫人、クローマ
第三夫人、ルーペス
第四夫人、クシェ
第五夫人、メイ
この順番で、寝所へ出向いて、毎晩相手します、
え?6,7は?
全員相手です、はい。

砕月
『なぁ・・・ベールカ?
 ハイブリットになってもキッついんですけど?』

ベールカ
『そんな事言われても・・・。』

あぁ、ベールカは、まず、お友達からスタートしています。

砕月
『まさかの・・・10歳だったな。』

ベールカ
『肉体年齢は問題なかったけど、
 向こうの成人は15歳、迂闊だったわ。』

5年は長いなぁ・・・、長いか?
そう言えば、バックアップとか、どうなってんだろ?

ベールカ
『ちゃんと残ってるわ、
 でも、演算能力に関しては、完全に、別の存在になっちゃったの、
 だから、アニメは、発電所まで行かないと見れないの。』

つまり、繋がってはいるけど、ハーフエルフ(人間+エルフ+猫のマンチカン)
そのまんまの能力しかない、しかも、ベースは竜人族、寒いのは苦手、か。

砕月
『まぁ、良いじゃないか、城内は、石炭暖房で、暖かいし、
 彼も、城内宿舎にいるんだし、
 後は、調子に乗ってる貴族の排除だな。』

ベールカ
『そうね、でも、私は協力したくてもできないのよ?』

そう、隕石迎撃用プラズマ砲1基以外、
電子武器はないのだ、射角も地表側は狙えない。

砕月
『それでいいよ、少しずつでいいから。』

今は、一緒に庭の手入れをしている、
土の感触とか、初めてだしね、10年分の経験を追いつく事から進めないとね。

ベールカ
『それに・・・エッチも、しらない。』

砕月
『それは、まだ良いの、15になってからにしなさい。』

どうやら、そっち方面に関わる知識はロックされてしまい、
閲覧すら出来なくなったそうだ、
で、演算担当の別の存在こと、ククは、年齢を重ねれば、順次解除するそうだ。

砕月
『まぁ、今を楽しめって事だろ?』

ベールカ
『そうね♪』

あ~・・・双子が怖い顔してるよ~・・・オッコトヌシが迫って来るよ~・・・。

ぐえっ!?

ベールカ
『双子!!それじゃ、砕月死んじゃう!!』

双子>>>ベールカ・各妻の子供達>>>妻達>>>>ハイブリット>>>>俺
壁にめり込んで、無事なのはいいけど、
修理は俺なんだよ?
レンガを加工して、セメント混ぜて、
木槌でこんこん調整しながらはめ込んで、
はみ出たセメントを整えて、修理完了。

シェナ     クト
『だって!!』『ずるい!!』

うん、ごめんなさい、わたしがわるぅござんした、
でも、力加減、覚えて下さい、いつか、真面目に大怪我します。

ナハト
『しぇ~な~?く~と~?
 な~ん~で~、こ~こ~に~、
 き~て~る~の~か~し~ら~?』

ぜんまい式の懐中時計を見る。

砕月
『勉強の時間だな、お前ら~?』

ダーッシュ!!

砕月
『逃がすかぁ!!』

猫ならではの跳躍力、瞬発力でとっ捕まえる。

砕月
『ほれ、遊ぶのはノルマクリアしたら、
 いくらでも良いって、言ってるのに、なんで逃げ出すんだ?』

そうだ、起きてから、10日ぐらいは静かだったのに・・・。

シェナ       クト
『だって・・・。』『もう、覚えたの!』

うっそだ~ww

砕月
『じゃぁ、九九は?』

はい、めっさ睨まれました、全部あってました。

砕月
『じゃぁ・・・どんな式まで覚えたの?』

聞くんじゃなかった・・・。

建築用強度計算式やら、地殻変動予測式なるオリジナル、
電子技術に必要な計算は全部覚えてしまったとの事、
俺でもわからん・・・。

文字に関しては、今までの三角文字、だけ。

砕月
『あぁ・・・読めないよな。』

そうだ、メイ、ベールカ、俺、この三人しか、
地球で使われていた言語はわからない、
忘れたくは無いけど・・・。

右目で、ひらがな、
左目で、三角文字、該当する物同士、並べて書く。

砕月
『ククに連絡して?
 国語辞典、ことわざ辞典を、印刷しといてって。』

ベールカ
『いいけど、どうするの?』

砕月
『メイのアニメを普及させるには、
 翻訳が必要だろ?
 ククにそれを任せると、堅っ苦しい言葉になりがちだから、
 シェナと、クトに翻訳を頼むんだよ、
 んで、声当ては、こっちの人間で近い声をオーディションして、
 再収録する、できそうか?』

ベールカ
『・・・うん・・・うん、わかった、
 今、汽車に乗る人に配達を頼んだって。』

はえぇよ。

砕月
『それなら、午後には着くな、
 シェナ、クト、二人の力を借りたい、
 いいかな?』

シェナ    クト
『はい!!』『なになにっ!?お手伝いっ!?』

食いつき怖い・・・。

さっきのそのままを話、
午前中は、早く早く、と、せがまれ、
午後は、さっそく到着した辞書に食いついて離れなかった。

まぁ、ナハトが凹んだのは言うまでもない。

親バカ?褒め言葉です。


双子はどうしてああなったのだろう?
少なくても、
“日本人”の遺伝子と、ナハトの犬獣族としての、
今まで進化してきた分の掛け合わせ、
   クローマの娘、ミーテ、
   ルーペスの娘、メリッタ、
   クシェの娘、ルラキ、
・・・メイに、出来ました、はい、名前はミュコス、
みんな揃って、はい、堪んなく可愛いです!!
ただ、地球の常識は、なかなか離れてくれません、
早い、その感覚はこの世界に通用せず、
山間部の部族は、10歳で成人、それでいて、デキ婚も報告が入っている、
長命のワンパターン、エルフ系統は、以外や、以外、
成人は18歳、結婚は20歳と、決まっていた。

砕月
『ただ、シェナ、クトほどでは無いにしても、学習能力は、すげぇな。』

文字は三角文字だけだが、
今では、双子が、娘達の先生をやっている、
“学問”だけな?
双子は体力に関して、桁外れとしか、言いようがなかった。

どこの部隊か分からないが、
ケラス自治区視察の際、小競り合いがあった、
慌てて二人を庇って、戻ろうとしたら、
いない、
振り返れば、ミンチが広がっていて、
しばらく肉料理が食えなかった、
まぁ~、けらけら笑いながら、近衛兵が持っていた、薙刀や、
ショートソード改良型を振り回して、
辺り一面血だらけ・・・これでも、可愛いと思える俺は色々壊れているのだろう。

クト
『お父様!』

うん、抱きしめないで、骨・・・お~れ~る~・・・。

シェナ
『あぁ!!ずるい~っ!!』

ぎゃぁ~っ!?

ナハト
『やめなさい!!シェナ!!クト!!
 お父様がミンチになるでしょう!!』

うん、ミンチ、これが普通に会話に挟まる、
流石に俺をミンチにするのは嫌なのか、力は弱く・・・なってる、でも苦しい。

シェナ
『だって、クトがお父様を独り占めするんだもん!!』

クト
『昨日はシェナ姉さんが独り占めしてたじゃん!!』

ぁ~・・・また、力上がってるからねぇ~・・・折れるからねぇ~・・・、
く・・・くるしい~・・・。

ナハト
『二人のがずるいの!!私は、毎週三日、夜だけなんだから!!』

シェナ       クト
『い~!だっ!!』『い~!だっ!!』

あのね?まだ、昼間だよ?城内だよ?
執政官とか、警備兵が、いるんだよ?みてるんだよ?
少しは恥じらいをもってぇ~・・・くるし~・・・。

周りの兵士、執政官達に、助けを求める・・・、
あ、目逸らした・・・いや、まじ助けて~・・・。

ベールカ
『なにしてるの?』

あ、ベールカ・・・た~す~け~て~・・・。

ベールカ
『三人そろって抱きついて、
 まったく、見てるこっちが恥ずかしいの。』

こら、周りは頷いてないで助けなさい。

 ナハト    シェナ    クト
『はぅっ!?』『はぅっ!?』『はぅっ!?』

あ、やっと離れた・・・。

砕月
『ぁ~・・・キツかった、
 所で、シェナ?クト?勉強の方は終わったのか?』

どどどどどど・・・・

あぁ、うん、この足音でわかった、わかりました、

ミーテ
『おーとーうーさーまー!!』

ふんぬっ!!一人目!!

メリッタ
『ととさまーーーっ!!』

ぐふぅっ!?二人目!!

ルラキ
『そ・こ・だー!!』

しまっ!?

・・・な?ハーレム・・・代償は大きすぎるからな?

砕月
『ミーテ、メリッタ、ルラキ、
 二人を捕まえに来たんじゃないのか?』

3人
『ぜん!!ぜん!!お父様!!遊ぼ!!』

・・・シェナ~?クト~?

シェナ
『そんな!!解くのに3時間はかかる問題を出したのに!!』

ん?

クト
『シェナ姉さん!今度は《専門用語だらけでわかりません》の問題は?』

お前ら・・・ククを困らせてないだろうな?
てか、ベールカ?なんでお前が頭を抱えてるの?

ベールカ
『・・・ねぇ?』

うん、なんか、聞きたくない。

ベールカ
『砲弾の弾頭計算、暗算できるって、普通なの?違うわよね?』

砕月
『まず、式を俺は知らないし、どれだけの条件で計算するのかもわからん。』

あ、これね?
うん、わっかりません、なにこれ?

砕月
『・・・どうしよう。』

ベールカ
『裁は投げられたって、知ってるわよね?』

砕月
『・・・それを言うなら、サジを投げるって言わねぇ?』

ナハト
『・・・全然わからない。』

うん、わからなくて、それが普通です。

砕月
『ナハト、俺もわからないから、
 てか、暗算出来ません、無理、これはどうあがいても無理だから、
 優秀な娘達を、誇りに思おう、うん。』

ナハト
『そ・・・そうね、そうしましょう。』

撲滅天使?

貴族様は、なっかなか、説得出来ません、
税収に関しては、
金貨1枚(金4割、鉄6割)のメッキ加工
これに、銅貨9枚を税金分として、売値に追加、
銀貨(銀6割、銅4割)のメッキ加工、
これは、銅貨6枚を税金分として、売値に追加、
銅貨(銅8割と、人体に影響が出ないなにか2割)のほぼ純正銅、
これは、3枚を税金分としている、
んで、
銅はやたら取れるし、安定供給されているし、
でも、価値は下がらない、
電気技術の向上で、電気代支払いに使える、
その銅貨は、溶かして、新しい電線へ形を変える、
そして、
でました。

砕月
『電線泥棒・・・。』

まさかの電線泥棒でました、

どどどどどどど・・・。

シェナ
『父上!!奴らの行動パターン!!掴めました!!』

えぇ~・・・早すぎねぇ?
まだ、二件だけだよ?

クト
『お父さん!!ククの協力で、衛星写真ができました!!
 奴らの居場所が写りこんでいます!!』

うん、連合設立15年目、
めっさ美人の双子になりました、でも、相手はいません、
条件、一撃を耐え切るか、一撃を入れる事、
無理デース。

砕月
『・・・行くんでしょ?』

それはそれは、上から下まで戦闘形態、
しかも、武者鎧7割、騎士甲冑3割ほど、
格好良いなぁ~・・・つくづく、どうしてこうなった?

ミーテ
『お父さん、よくない情報を入手しました。』

あ、ミーテは、彼氏がいる、
クレーストよりも更に遠い地域からの、避難民、
どうやら、あっちこっち、戦争状態のようだ、
その彼氏は、ミーテの恩人でもあるわけで・・・。

ファルク
『砕月さん、家の諜報員も同じ情報です。』

砕月
『・・・シェナ、クト、ファルクの諜報部隊と連携、
 この窃盗団と、繋がってる貴族の生け捕り・・・公開処刑にしようか。』

ファルク
『しかし、殺してしまっては・・・。』

この場合の公開処刑、こ・れ・は、言わなくても分かる方、
アナタも、いい趣味です。

砕月
『男だろうが、女だろうが、
 “公開”処刑だ、しっかり反省してもらおう。』

ファルク
『え?
 ・・・反省?どう言う事ですか?』

まぁ、ファルクは純粋にこの世界で生き延びてきた人間、
ハイブリットではあるが、外見的特徴は人間そのもの。

ミーテ
『ぁ~・・・恥ずかしい日記帳朗読とか、
 趣味の暴露ね、性癖とか、恋文とかね。』

あ、顔を青ざめるって、こうなるんだww

ファルク
『お・・・おそろしぃ・・・。』

シェナ
『それでは、出発はいつ頃に?』

クト
『え?今じゃないの?』

砕月
『シェナ、パターンだと、次はどこを狙って来ると思う?』

シェナ
『第二資材保管所、ここは出来てまだ新しいから、
 警備の手も追いついていないの、
 第一、第三は重火器兵で固めてるから、
 簡単には突破は出来ません。』

重火器・・・か、
折角、書類やら銃器は溶岩にぽいしたのに、
二人で開発しちゃいました、
連合軍、重火器騎士団、
ロングソードか、ショートソードの改良型一本、
P90をモデルに、
装弾数こそ本物に劣るが、携行弾数は異常な量になった、
30発のマガジンを、ストック部分に、5個、予備を入れられる、
これは、ハイブリットならではの基礎体力の違いがあるから可能だった、
弾体は、周囲の魔力を収束、爆発するしくみで、
弾着から、0.2秒の速さで起爆する炸裂弾になっている、
3点バースト、シングル、の切り替えで、消費を抑えてはいるが、
3点バーストで、2~3つの目標にあてられる、強靭な保持力で、
本物以上の戦果を叩きだしている、
盾には、複合素材のショルダータイプ、
イメージは、ザ○の、あれ、利き手の逆に付けるのが主流、
中には、それで、殴る奴もいるそうだ。

砕月
『クト、部隊召集は?』

クト
『何時でもいけるの、
 みんな、盗まれた分、給料減らされるって、
 騒いでるんだから。』

え?しませんよ、そんな事。

砕月
『はぁ・・・、
 ミーテと、ファルクは、
 ・・・つ・・・妻達が、勝手に出撃しないように監視してくれ。』

そう、一番の問題、これには貴族も入っているが、
最近は大人しい、なんでも、私兵達の訓練をやる、と、
妻達が言い出した・・・結果がコレだよ!!
俺が通りがかると、
《旦那様!!お勤めお疲れ様です!!》って、挨拶してくる、
貴族の私兵は、妻達の・・・私兵になりつつあります、
おかげで、余計に話を聞いてくれなくなってしまった・・・。

ファルク
『それに関しても、よくない事が。』

や~め~て~・・・。

ミーテ
『貴族の私兵達は、
 妥協派と、推奨派を残し、
 反対派の貴族達から、離脱、8割が、奥様達の私兵へ移籍、
 訓練を積んでいます。』

手遅れでしたーーーっ!!

砕月
『反対派は、どうしている?』

ファルク
『国外から傭兵を雇い、エフェメール国郊外に拠点を構えつつあります。』

内戦ですか・・・名前を知らない他所の国は戦争中、
貴族が尾っぽにくっついてる窃盗団はいるし、
階級制廃止の反対派が集まって、内戦寸前・・・。

砕月
『・・・寝込んでいい?』

メイ
『先に、窃盗団、反対派、それからでも大丈夫だと思う。』

砕月
『メイ、今日は大丈夫なのか?』

メイ
『うん、大丈夫、ちゃんと杖も持ってるし、
 ミュコスも一緒だから。』

いくら、成人とは言え、幼い事に変わりはない、
出産後は安定していたが、最近体調を崩しがちだった、
栄養も、食べてはいるが、時よりもどしている、
新開発の点滴で、毎日補っている。

砕月
『お願いだから、無理はするなよ?
 ナハト、頼めるか?』

ナハト
『当たり前です、
 貴方が天寿を全うするまで、
 私達が側にいると、約束しましたから。』

メイ
『大変です、一番長生きしないといけないです。』

砕月
『・・・すまない、そして、
 俺には立派すぎる奥さん達だな、
 よし、
 シェナ、クトは、第二資材保管所が襲撃されると予想して、
 兎に角、機動力重視、そのままの勢いで、繋がる貴族の確保、
 俺は、反対派の対応をする、近衛騎士団はすぐ動けるな?』

クリフ
『あ、は~い!いつでもいけますよ!!』

全員
《うざっ!!》

クルゥ
『なに言ってるんですか?これがいいんですよ!』

あぁ、ますますクリミアが可愛そうだ・・・、
聞いて驚くなよ?
すでに6人もいるんだぜ?コイツら・・・、
信じらんねぇだろ?
ただ一人、クリミアの息子は、家で預かってる、
本人の意思だ、
今は、双子達と、戦術教論で毎日敗北している、
まぁ、盤上のアレだけだが、569戦中、3勝している、
つまり、双子相手に、盤上で3回勝っている、
例の条件、一撃をどうたらこうたらは、無理でも、
戦術ならって、やりだしたら、奇襲、挟撃、夜戦、陣地砲撃戦などなど、
地形の模型をつかって、
日夜、新戦術を模索している。

砕月
『では、窃盗側は迅速に対応、スピードが最優先だ、
 恐らく、人質を取られ嫌々参加している者もいるだろう、
 だが、
 慈悲は無い、邪魔、抵抗するなら、殺せ。』

ファルク
『・・・そうですね、躊躇すれば、被害は増えるだけ。』

ミーテ
『私兵団の動きは逐一報告します。』

シェナ
『銃火器師団、行くよ。』

クト
『はいは~い!』

クリフ
『さぁ!分らず屋に鉄槌を!!』

メイ
『貴女が大きくなる時は、
 もう少し静かだといいわね。』

ミュコス
『?』

一日内戦


確かに、機動力重視って言ったよ?
捉えた窃盗団、
骨折、打撲のオンパレード、
捕まえた貴族も骨折で済んでる方がマシだった。

砕月
『シェナ?クト?
 お前ら、なにを参考にしたんだ?』

すこ~し、怒っています。

クト
『この本、読む?』

世界の拷問集

シェナ
『これだけ追い詰めれば、二度とやらないかなぁ~って・・・。』

捕まえたほとんどが、
《死んだ方がマシだ!!》って言うぐらい、
一部は、ソッチに目覚めた方々もいたが、
・・・クク?ベールカ?いや・・・それよりも前?

砕月
『・・・めーーいーー・・・。』

あ、いたいた。

砕月
『これ、見覚えないか?』

メイ
『・・・ごめんなさい、双子に読まれてしまいました。』

あちゃ~・・・て、事は・・・。

砕月
『二人共、まさか、複写してないよね?これだけだよね?ね?』

・・・うわ~・・・まじで?
少なくても、娘達全員(ミュコス以外)全員持ってるって事?

ナハト
『・・・なんておぞましい。』

砕月
『・・・頼むから、これ以上広げ・・・嘘だよな?』

コピー技術は、魔法で解決出来ているため、
複写は容易に出来る、つーまーりー?

ルーペス
『おぉ、ここにいたか双子達、
 この本の続きを?おお、サイゲツ、どうした?』

ひぃいいいいいいっ!?
一番渡ってはいけない人物にわたってる~っ!?

ルーペス
『いやぁ、色々な捕虜やら、犯罪者に有効でな、
 どんどん使いたいんだ!なぁ?続きはないのか?』

犠牲者出てる~っ!?

砕月
『ルーペス、あえて聞くが、
 その本は、あと、誰が持っている?』

ルーペス
『ん?知らないのか?
 今や連合国で、女性人気ナンバーワンだぞ?』

どうなってんのこの国の女性陣~っ!?
てか、男性陣生きろ~っ!!

砕月
『・・・もう一つ、国外に輸出なんてしてないよな?』

ルーペス
『ん~、この連合国内は既に流通しているし、
 ここ以外だと、クレースト国、
 クラースヌイ国、
 ウェスティトル国、
 ドミヌス国、
 ヴァローレ国、
 ハイレティクス国、
 聞いているだけでも6カ国だな、収益もかなりでな、
 それに追加して、メイの漫画も人気だ、
 四コマのささやかな物だが、
 今では総集編も出ているぞ?』

今、初めて知りました、体調不良の原因は、なに?
漫画?書きすぎ?嘘だよね?なんで?
あんたは、産後たいして経っていないんだから、体調管理優先でしょ!!

砕月
『め~い~?お~ま~え~な~?』

メイ
『・・・ごめんなさい。』

砕月
『ミーテ!!ファルク!!
 予行練習だ!!絶対!!体調が良くなるまで、
 メイに、漫画を書かせるな!!
 その間、ミーテは、しっかり子守の予習、どんな危険があるか、
 レポートとして提出!!
 いずれ来る、ベビーラッシュへ向けての対策をしてくれ!!』

メイ
『そ・・・そんな。』

ミーテ
『よよよよよよよこうれんしゅぅうううっ!?』

ファルク
『ちょっと待って下さい!!
 確かに交際の許可を頂きましたが、
 私達はまだ・・・若いのですよ!!』

砕月
『・・・かまわん、孫も見たい、だからこそ、
 この世界での育児情報が足りないんだ、
 それを活かして、これから生まれてくる子供達を、
 失わない為に、病院もどんどん拡張して、万が一に備える、
 医療機器に関しては封印はしていないからな!
 責任は重大だ、
 メイ!!産後の日誌ぐらいつけているよな?
 それを元に、育児用漫画の制作をしてくれ、
 それと、絵本も作ってくれ。』

メイ
『へ?書いちゃダメなんでしょ?』

ミーテ
『そうですね。』

ファルク
『・・・!?』

砕月
『その為に、二人を付けるんだ、
 他にも、絵心のある人員を回す、
 いいな?メイ!お前が編集、わかりやすくするんだ、
 自分で言ったろ?3人は欲しいって、
 後二人の為にも、
 今は身体を治して、それからまた、書けばいい、
 頼むから、今は、身体を治してくれ・・・、
 この連合国でも、
 出産後の栄養不足、体調の急変で、母親が死ぬケースはいくつも上がっている、
 これ以上、親の顔、声・・・その愛情、
 それを知らない子供を増やしたくはないんだ。』

メイ
『・・・ばか、忘れてるかと思ってました。』

砕月
『うっせ、
 後、シェナ、クト。』

シェナ
『はい。』

クト
『な~に?お父さん?』

砕月
『・・・好きにしろ、構わん。』

シェナ  クト
『は?』『へ?』

砕月
『メランが聞いてきたぞ?
 許嫁はいますか?って、交際している人はいますか?って。』

メラン
『サイゲツさんっ!?なんで言っちゃうんですかっ!?
 そもそも!!なんでクローゼットの中に私はいなきゃならないんですかっ!?』

砕月
『まんざらでもないからな、
 むしろ、クリミアの息子だ、申し分ない、
 二人はどうだ?
 俺が、5人の奥さんを抱えてるんだ、
 構わないし、止めない、どうする?』

メイ
『・・・固まってるわよ?』

砕月
『好都合だ、
 反対派を潰してくる、
 “見せたくないし、来て欲しくない”
 ミーテ、頼むぞ?
 一気に増えるからな?』

ミーテ
『ひっ!?ひゃいっ!!』

砕月
『ファルク、しっかり支えてやれ。』

ファルク
『は!!はい!!』

____________________________________

エフェメール・トリデンテ峠

砕月
『さて・・・どうだ?』

「貴族へ投降は呼びかけていますが・・・。」

砕月
『魔術師はいるか?』

『ここに、いかがなさいますか?』

砕月
『俺の声を、向こうに届ける事は?』

『余裕です。』

〔風を司る精霊よ、
 一時の間、力を貸したまえ、
 大切な声を届けたい〕

『いけます。』

砕月
《聞こえているな!!》

_____________________________

反対派Side

《聞こえているな!!》

『くっ!?』

『アイツか!!』

《時間を与える、
 5分だ、投降しない場合、
 殲滅する、それが嫌なら、生き延びたいなら、投降しろ、
 子供達の未来を潰したくはあるまい?
 投降の暁には、衣食住の確約をしよう》

『断る!!』

『そうだ!!貴族は絶対だ!!』

《5分だ、命か、貴族か、よく考え、選べ、
 今から、俺は魔人となり、
 5分後、殲滅に降り立つ、以上だ》
______________________________

『正気ですか?
 貴族とは言え、今までこのエフェメールに。』

砕月
『尽くしていたか?』

『それは・・・。』

砕月
『子供には、開けた未来を提示した、
 後は、選ぶのは自由だ。』

「極地隊、配置につきました、
 投降貴族の護衛準備、完了です。」

『キョクチ隊?』

砕月
『護衛を専門とする部隊だ、
 どんな土地でも、対象を守る事に特化させた、
 守らせたら、誰も敵わない。』

____________________________

幾分か、投降してきた、
極地隊のおかげで、負傷者こそいたが、命に別状はなかった、
そして・・・。

砕月
『五分だ、逝こう。』

黒武者鎧を身に纏い、城壁から、部隊の前に飛び降りる。

砕月
『時間だ・・・魔術師、最後通告を出す。』

『は!』

_____________________________

《最後通告だ、貴様らは、かつての味方を後ろから撃った、
 そして、そこに留まった、感服したよ。》

『ぬけぬけと!!』

《今一度聞こう、投降しろ。》

『断る!!』

《・・・残念だよ、少なくても、
 今までこの国を引っ張ってきたその力、
 期待していたのに・・・本当に残念だ》

______________________________

砕月
『・・・全軍、般若面、装着。』

がしゃり

砕月
『さぁ、地獄へ逝こう。』

_______________________________

内戦は一日で収束した、
貴族、56もの貴族がそこにはいた、
大、中、小、貴族を誇りに思い、
貴族あってこその民の考えを貫いた。

砕月
『・・・俺にはできねぇよ。』

老若男女問わず、反撃をして来る奴のみ、殺した。

砕月
『それでも、
 ・・・・・・100人ちょっとか、
 まぁ、壊れて使えないだろうけど、国民だしな、
 せめて、天寿を全うさせてやろう。』

地面の染みは消えない。

他の生き残りは?

「死ねぇ!!」

砕月
『・・・そんなに死にたいのか?』

「私の父を殺しておいて言う事か!!」

砕月
『反撃して来たからなぁ、
 警告は出したろ?なぜ投降しなかった?
 なぜ?お前は答えを持っているのか?』

「な・・・なんなんだよその目はっ!?」

砕月
『だから言ったろ?
 魔人だって、ちゃんと宣言したろ?』

「うそよっ!?そんなのいるはずがない!!」

砕月
『いるよ、ここに、
 しにたいなら、その命。』





俺に寄越せよ。

きっかけ

捕まった、
手錠は痛かった、
周りは、新型鎧の重い足音で、囲まれてた。

『さぁ、採決が決まるまでの辛抱だ、
 すまないが、ここにいてくれ。』

ここは・・・牢獄?

「うそ・・・なんでこんなに綺麗になってるの?」

2、3年前に私の言う事を聞かない、
使用人をぶち込んだ牢獄、それが・・・なぜ?

砕月
『あぁ、そいつは、こっちだ、
 そこの牢屋じゃない。』

『サイゲツ殿、
 まさか・・・拷問を?』

砕月
『まぁ、そいつにとっては、そうだろうよ。』

・・・最近買った、拷問集第一部だろうか?
あぁ・・・あんな拷問・・・耐えられるわけがない・・・。

砕月
『手錠を外してやれ、
 腰にロープを代わりに巻いてくれ。』

「ちっ・・・あんたの趣味かい?」

砕月
『趣味?
 ん~・・・嫌いでは無いけど、
 無理強いはしないね、少なくても、
 お前は女だ、それも婚約破棄されたんだっけ?』

「ちょ・・・なんで?」

砕月
『これから歩く所は、
 手を使わないと、歩けない、
 しっかり着いて来いよ?』

_____________________________

なにここ・・・あ・・・アレが。

砕月
『ぁ~・・・なんでこうなったのやら・・・、
 ルーペス、ほどほどにしないと、
 死んじまうからな?
 死体の処分、やりたくないだろ?』

ルーペス
『それはわかっている、
 まぁ、こいつが吐くまでは、
 や・め・な・い・け・ど。』

ひっ!?
爪が・・・ひ・・・酷い。

砕月
『・・・行くぞ?』

_____________________________

階段

暗い、ここまで聞こえる・・・。

砕月
『悪かったな、
 キレ気味ルーペスを見せて。』

は?

砕月
『最近、潜入部隊の一人がな、
 両目をくり抜かれて、
 爪も剥がされ、腹の中から、
 矢尻が沢山詰められた状態で、発見された。』

「・・・酷い。」

砕月
『・・・お前も、そうなりたいか?』

・・・あ・・・あの目だ・・・殺されるっ!?

砕月
『ぁ~・・・ごめん、立てるか?』

いっけね、つい・・・。

「・・・っ!?さっ///触らないでっ///」

砕月
『・・・じゃぁ、お姫様だっこしてやるよ。』

はぁっ!?

「ちょちょちょっ!?」

砕月
『・・・お前、最近、肉、食ってないな?』

「え?」

砕月
『貴族って言っても、
 ただ、高価な物ばかり食ってないか?』

「と・・・当然でしょ、
 それよりも・・・下ろしなさいよ!!」

砕月
『腕は、しっかり掴んでる癖に?
 まぁ、下ろさないけど。』

・・・なんで?コイツの腕・・・震えてる?

___________________________

砕月
『さぁ、お前の刑場はここだ、
 死ぬまでに、幸せになって、子を作り、
 血を絶やすな、これがお前の刑罰、
 貴族が存在した事を、後世に伝える為に、
 ここ、戦争孤児院で、
 お前は配給清掃用務員として、働け。』

「ここで?ふざけるな!私が働くだと!?」

砕月
『生きてるんだ、
 なら、生きろ、そのための場所だ、
 お前の命は俺が買った、人身売買の片棒を突っ込んでいた親の、
 せめてもの償いだ、やれるだろう?』

「どう言う・・・事?」

砕月
『お前の父親は、
 残念だが、子供や若者を拐い、
 他国へ売り飛ばし、金銭を得ていた、
 勿論、使用人として、性的処理も含まれていた、
 案外、男色家の方が多いのは驚いたけどな。』

「・・・うそよ。」

砕月
『お前がやるか?やらないだろ?
 やりたくないだろ?
 なら、ここで生きろ、死ぬまでに幸せになり、
 子を作り、血を絶やすな。』

「幸せ?はっ!!あんたが奪ったんじゃないか!!」

砕月
『・・・ふぅ~ん。』

「ちょっ!?どこの匂いを嗅いでるのさっ///」

砕月
『・・・アイツか、
 ふむふむ、アジャン!!こいつの面倒を見てやってくれ!!』

「あんたねぇ!!」

アジャン
『砕月さん、その方は女性です、
 ちゃんと、女性の対応をして下さい。』

砕月
『お前とおんなじ、戦災孤児・・・にしては、
 いい年齢だけどなww』

アジャン
『失礼ですよ?
 ミス・・・で、よろしいですか?』

「ピレイン。」

じゃぁ、まかせた、
お前好みの匂いと年齢幅内だし、後は・・・頑張れ。

・・・余計なお節介です、
まぁ、元貴族のレディが好みで、
調教するのが楽しみですけどねww

おぉ~、こわっ!

砕月
『部屋、足りてないから相部屋な?
 頑張れよ~。』

ピレイン
『え?ちょっ!?何考えてるのさっ!?』

砕月
『なぁ~んにも、
 ただ、愛称良さそうな感じがしたから、かな?
 ま、襲われても文句言うなよ~、
 既に、アジャンに権利は売ったから。』

アジャン
『はい、買いましたから、
 やる事は山積みです、さぁ、仕事は待ってくれませんよ!』

___________________________

よし、拐われたな、
ぁ~・・・わざとあの拷問部屋通るのは、
毎回、気が引けるよなぁ~。

ミーテ
『あ!ここにいた!!』

ファルク
『サイゲツさん!!こんな所で油売ってないで、
 早く来てください!!
 投降して来た貴族の今後を協議するんですから!!』

うん、お休み欲しいな。

報告


連合歴18年

ぽんぽん年度が飛ぶのは、
しょうがないだろ?
だって、ハイブリットに生まれ変わった以上、
年齢概念が、ぶっ飛んでな、
俺の掛け合わせ、猫の遺伝子がかなり相性が良かった方で、
推定、7、800年は生きるだろう、って、
ククに診断された、
もっとも、妻達の方が長生きなのは変わらない、
900年、1000年は軽く生きれるそうだ、
おかげで、
国家事業の強襲と言える量が、迫ってきた。

1、先の一日内戦にて、
  投降貴族への衣食住の確約と、
  新たな新天地開拓事業統括を任せる事

2、連合軍の強化増兵

3、周辺国家間の介入準備

4、連合内交通網強化

これらが主になってきた、
法律に関しては、
クレーストがお手本なので、スムーズに進んでいる、
しかも、
予想通り、
結婚、ベビーラッシュ到来、
病院スタッフ、医療魔術師の育成が急務となった、
病院は建設ラッシュ、ムスクス総合病院は、
ひと月で万床、
えらい事になってしまった、
連合内、クレースト国、旧ベルヴァ公国からも、
医療魔術師を緊急雇用、対応を急いでいる。

砕月
『私営医療院はどうなってる?』

ファルク
『現在、旧貴族邸に雇われている魔術師に協力を仰ぎ、
 全力にて対応していますが、
 二日に30件を越えるお産は、
 すでにキャパシティを超えています。』

うん、どれだけ?
どれだけ生まれてるの?
てか、どんだけ我慢してたの?
自制って、ないの?

砕月
『城の医療魔術師も、
 連続勤務が続いているし、
 これ以上は・・・。』

ミーテ
『お父さん!
 ドミヌス、ハイレティクス国から、
 医療支援の魔術師が、先ほど到着しました!』

砕月
『助かった、
 食料品の輸出の見返りで、
 頼んでたけど、よかった、素直に応じてくれて。』

この二カ国は、例の本輸出国、
それにより、男女の立場が一変、
“恐妻国家に生まれ変わっていた”
基礎体力に差のないハイブリットは、
名残で、男が女より上だったが、
拷問集第一部の普及により、
今までのストレスを爆発させたようで、
男の奮戦虚しく、大敗、尻に敷かれた。

砕月
『・・・まぁ、奥さんから逃げたかったのも、あるんだろうなぁ・・・。』

二カ国から朗報として、
税収が上がったり、雇用問題も、解決に向かいつつあり、
出稼ぎに来る予定の男性(既婚者が7割)が、
既に、出発済み、
うん、どれだけ奥さん怖いんだ?

メラン
『すいませんでした!!』

いきなりなんだ?

メラン
『本日、ムスクス総合病院にて、検診の結果、
 ・・・二人共、妊娠3ヶ月との診断を受けました!!』

・・・孫、はえぇって・・・、
確かにあれから良い関係になって、おめでとうって、
言ったけど・・・早くね?

砕月
『よく、絞め殺されなかったな?』

メラン
『えぇ、お義父さんが教えてくださった、
 《一人も二人も変わらない、一緒に幸せになろう》と、告白しまして、
 ・・・色んな意味で、すごかったです、はい。』

あ、凄かったのね、だろうね、
俺もそうだったし、ナハト以降は、まぁ~・・・うん、
生殖本能全開って、あぁなんだなって、悟ったよ。

砕月
『・・・お疲れ、
 まぁ、これからが正念場だろう、
 がんばっ・・・いや、二人が、
 落ち着けるように、避暑地にて、ゆっくり過ごしてくれ、今、手配を回す。』

メラン
『え?』

砕月
『妊娠直後、これは、一番不安定になりやすい、
 ナハトも結構大変だったんだ、
 な?ナハト、包丁振り回したり、
 投げてきたり、刺突してきたり、噛み付かれたりもしたっけww』

うん、良い思い出にしておこう。

ナハト
『なら、二人の側にいましょう、それならきっと。』

砕月
『料理は、二人に教えてもらえ、
 また、色んな教材を引っ張り出して、
 クローマとやりこんでるから。』

ナハト
『へ?またレパートリー増やしてるのっ!?』

メラン
『それでは、準備出来次第。』

砕月
『まぁ、娘を頼む。』

メラン
『はい!!』

_________________________________

さてと・・・そこか!!

砕月
『ミュコス、今日はここか。』

ミュコス
『うん、みてる。』

砕月
『お母さんは?』

ミュコス
『お薬、効いてるって、ちゃんと寝てる。』

砕月
『そうか、ごめんな?』

ミュコス
『だっこ。』

砕月
『あぁ。』

メイ・・・メイは、今までのツケなのか、
体力の回復が追いついていないだけなのか、
あの時つけていた点滴が原因なのか、
思い当たるのは調べ尽くした、
クク、ベールカが、血清を作ってくれて、
感染症の治療にあたっている。

砕月
『・・・ごめんな。』

ミュコス
『泣かないで、お父さん。』

無理だって・・・、
気付けなかった・・・側にいたのに・・・。

ミュコス
『おみまい、いこ?』

砕月
『あぁ、お花、選んでくれるか?』

ミュコス
『“エメの花”』

砕月
『湖か、このまま行こう。』

ミュコス
『うん。』

よかろう


症状も落ち着いた、
連合歴19年。

砕月
『ドミヌスからの救援要請?』

唐突に入った救援要請、
確認すると、
大陸の切れ目に位置する、スコプルス国が、
領土拡大の名目に、ドミヌスへ攻撃を仕掛けてきたらしい。

砕月
『早馬で、30日だっけ?』

そう、ケラス自治区から、更に遠い地域、
一応そこまでは汽車を繋げてはあるが、
基本貨物ばかり、
農作物資、衣服、医療品がメイン、
お金を払って乗れる人は、まだ少ない、
ましてや、駐屯用の施設も、まだ建設中だ。

『現在、どれだけ駐留できるのか試算をしています、
 ヴァールハイトを経由する案もあるのですが、
 未だ、除染作業が終わっていません、
 通るには問題はないですが、
 駐屯を考えると、厳しい状況です。』

砕月
『だろうな、
 とりあえず、ケラス自治区の試算を待とう、
 強襲隊、銃火器隊、陣地設営隊、極地隊の選抜を頼む、
 後方支援は、
 補給連隊、臨時鉄道設営隊の準備、
 悪路用機関車の、重整備を進めてくれ。』

『既に汽車は重整備に入っています、
 正規に3台、予備2台、パーツ、一式、3台分は確保済みです、
 選抜は会議を現在進行中、まもなく結果が出ます。』

砕月
『クリフよりしっかりしている、
 頼りになるよ。』

『いえ、真面目が取り柄な一兵士です。』

彼は、クリフの隊の人間だが、
志願もあって、俺の直轄大隊に所属している、
クリフは大分不抜けて見えて、
クルゥも・・・大分、な、
レプス、エリッソの姉妹も、俺の方で預かっている、
二人共、クリミアの娘だ。

砕月
『どうだ?
 レプス、エリッソを嫁さんにする気はないか?』

出来たら、収まって欲しい。

『・・・自分に、その資格は・・・。』

砕月
『・・・いつまでも、クリミアに、負い目を感じるな、
 少なくても、
 今の三つ子がいるのは、お前のおかげでもある、
 お前がいなければ、
 3人はここにはいなかった。』

あの日、撃ち抜かれたクリミアを、
矢が降りしきる中、大型馬車にかつぎ込んだのが彼、
アウリオン、クリミア直属の副隊長だった、
最後までクリミアを守り、
肩を負傷、左腕は、肩より上に上げられなくなった。

砕月
『・・・今度の救援には、俺も出る、
 お前には、指揮官補佐として、付いてきて欲しい。』

アウリオン
『・・・奥様は大丈夫なので?』

砕月
『症状も落ち着いているし、
 オーバーテクノロジーの医療がついている、
 それに、素っ裸の嫁を見てみろ、
 我慢ならんだろうが。』

アウリオン
『あははは・・・でしょうね。』

俺が入っていたあのカプセルで、治療している、
まぁ、服は邪魔なので・・・素っ裸、
我慢しろって、そりゃぁ~・・・できません、
最近は、各妻も、やりたい事を優先しているので、
あまり夜の相手はしていない、
ルーペスは、拷問大好き妻に、
クローマは、娘二人と、料理研究、
クシェは、各大隊の訓練研究、
シェナは・・・戦争孤児の教育をしている、
ミュコスは、気が付くと。

ミュコス
『おとうさま、これ、なんて読むの?』

背中に張り付いている。

砕月
『あぁ、これは、“断罪(だんざい)”だ、
 てか、これ、ゲームの攻略本じゃないか、
 どっからだしたんだ?』

ミュコス
『クク、対戦ゲーム、よくやるの。』

おい、何をしている。

アウリオン
『ミュコス嬢、今、仕事の話し中ですが。』

ミュコス
『アウリーおじさん、うるさい。』

あ、凹んだ、
城内で一番相手をしてくれるのが、アウリオン、
アウリーおじさん、まぁ、こう見えて128歳、独身、
信じられるか?
あ、コイツがあのピレインの婚約破棄した張本人、
クリミアを守れなかった償いといって、
賠償金も払っている。

砕月
『いっその事、ミュコスと婚約するか?』

ミュコス   アウリオン
『いいよ?』『はいっ!?』

砕月
『ミュコスはいいのか?』

ミュコス
『うん、嫌いじゃないから、もんだいない。』

まて、そのセリフ。

アウリオン
『待って下さい!!私は、
 クリミア隊長を・・・守れなかった、
 それに報いるには、せめて・・・。』

ミュコス
『それ、それが、好き、別に、とし、関係ない。』

お、自分から降りた。

120cmちょっとのミュコスだ、
194cmあるアウリオンと並ぶと・・・、
うわぁ~・・・親と子供にしか見えねぇ~・・・。

ミュコス
『しゃがんで。』

しゃがんでもかなり差はある。

ミュコス
『はい、これが、ほんね。』

お~・・・しがみついてキスしてる~、
つま先立ち、かわえぇなぁ~、
さて、アウリオン?
俺は見てるからなぁ~?

アウリオン
『・・・そこは、鼻先です、ミュコス嬢。』

あら、おしぃ。

ミュコス
『成人するまで、浮気、禁止、
 レプス、エリッソは、おk、わかった?』

な・ん・で・す・と?

アウリオン
『・・・え?』

ミュコス
『わたしが、第一夫人、レプスが第二夫人、エリッソが第三夫人、
 拒否、だめ、三人で決めたから、だめ、
 わかった?』

あれ~?
家の娘って・・・なんか・・・野獣?

ミュコス
『お父様の娘、だもん、おせおせ、でしょ?』

・・・誰だ?こうやって教えたの。

アウリオン
『・・・砕月さん?』

砕月
『・・・諦めろ、俺は止められん。』

あ、アウリオンの背中に登ってるし。

ミュコス
『いこ、ふたり、よんでるから。』

外堀、内堀すら埋めてる・・・、こえぇ~・・・。

ドミヌス救援


「いそげ~っ!!住民の避難を優先するんだ!!」

「まって!!家畜が!!」

「今は、かまってられない!!」

「いや~っ!?」

『くそっ!
 分隊!!なんとしても救援が来るまで、
 持ちこたえるんだ!!』

『本当に救援は来るんですかっ!?』

『来る!!軍人の俺達が諦めてどうする!!』

「砲撃!!来ます!!」

『っ!?』

_________________________

スコプルスが攻めてきて、58日、
後手に回ってばかりだった、
彼らが、元々はここに住んでいたからだ、
だから、こちらが把握していない丘陵地区の進撃の仕方、
湿地帯の進軍速度、後手に回る以外、
対処が出来なかった、
元々は一つの国だったが、
国王の御子息が二人おり、
意見が対立、300年前に独立、
それからずっと、小競り合いは続いていた。

ドミヌス国 城内

『国境地域の避難はどれくらい終わっている?』

「は、現在、田園地域の避難は半分ほど、
 放牧地域は4分の1程度です。」

『遅い、それでは・・・。』

「報告、救援軍が・・・到着したのですが。」

『来たか!!』

「城下街の駐屯地では、収容できず、
 現在、演習場へご案内しています。」

『なんだと?』

確かに救援は頼んだが・・・、
一体どれだけの軍勢で救援に来てくれたのだ?

『直ぐに向かう、馬車を出してくれ、
 挨拶と、現状の説明をせねば。』

「は!今すぐに!!」
______________________________

ドミヌス 演習場

砕月
『ぎりぎり、かな?』

アウリオン
『ですね。』

ミュコス
『ねー。』

蛙の子は蛙、メイよろしくの潜入術で、
まんまと着いて来たミュコス、
今更返せないので、早馬で、手紙を持たせている。

砕月
『なぁ、ミュコス?どこで覚えるんだ?』

気にはなる。

ミュコス
『お母さん、元々隠密家系、
 ちょっと、コツ、それだけ。』

ア、ハイ、
しっかりアウリオンの背中に張り付いている、
少し、寂しいけど。

アウリオン
『本当に凄い娘さん、いででででっ!?』

ミュコス
『お・く・さ・ん。』

アウリオン
『ア、ハイ。』

さっそく尻に敷かれてる。

砕月
『設営で、どれくらいだ?』

アウリオン
『2日あれば、完全武装状態に仕上がります、
 極地隊が防衛ラインを形成しますので、
 まぁ、突破されにくいでしょう。』

砕月
『魔力戦車はどこまで通用するかね?』

アウリオン
『わかりませんね、
 内燃機関を諦め、周囲魔力を収集、
 動力変換、機動力は十分です、
 装甲に関しては弓矢は勿論、
 攻撃魔法の魔力すら、動力変換しますので、
 気にする事は無いかと。』

砕月
『おっかねぇな。』

アウリオン
『ですね。』

なんなのだ?この物騒な会話は。

『お待たせしました、
 私がドミヌス国、国王、
 コレクトです、此度の救援要請、本当にありがとうございます。』

砕月
『国王自らですか、
 私が、連合国総指揮官権、五人の旦那の砕月です、
 早速ですが、
 “どちらが地形把握は上ですか?”』

アウリオン
『砕月さん、いきなりソレは・・・。』

コレクト
『いいのです、
 スコプルスの方が上です、
 元は、300年前の内戦が原因なので。』

長寿ゆえの、内戦、普通に暮らせば1000年は当たり前の世界、
喧嘩の発展で、内戦、起きない方が不思議だしな。

砕月
『ご兄弟ですか?』

コレクト
『・・・恐ろしいですね。』

砕月
『優秀な部下が沢山いますから、
 お宅の優秀な部下は、
 次の馬車に乗っています、
 怪我の治療は終わっていますが、
 何分、拷問が大好きな妻に見つかったので、
 止めるのに苦労しました、
 お返しするのに、これだけ掛かってしまい、
 申し訳ない。』

コレクト
『・・・いえ、無事帰ってきてくれるだけでも、
 この御時勢、ありがたい事です。』

拷問好きの妻って・・・5人いらっしゃるとも言っていたな。

砕月
『あ。』

コレクト
『え?』

アウリオン
『あ~・・・。』

極地隊の砲撃が始まりました、
対空陣地15.5cm高射砲、連射速度は一秒に付き2発、
魔力動力で、射程距離は、最大高度、13000m、
平射能力、20kmは余裕、それ以上は、
魔力補正力が落ちるので、ちゃんと計算しなきゃいけない、
ま、補正範囲なら、百発百中、
爆発範囲、300mは吹き飛ぶので、
過剰火力なのは認める、でも、やめない。

コレクト
『・・・なんなのですか?
 あの爆音は?』

聞いた事すらないぞ・・・とんでもない力だ・・・。

砕月
『まぁ、コレクトさんが研究している、
 船舶用の砲台より、300年ぐらい先の威力ですかね。』

・・・なぜ、秘密裏の事を。

砕月
『お互い様・・・には、いささか、言えませんが、
 知らない事は、貴方の本心ぐらいですかね、
 あわよくば、一つは貰いたいなんて、
 考えても、生成できない金属、火薬、
 まぁ、無理でしょうね、
 それと。』

コレクト
『それと?』

砕月
『生け捕り?殺し?
 ご兄弟の処分は以下がなさいますか?』

・・・悪魔か・・・私は、
悪魔を呼び寄せてしまったのか・・・。

アウリオン
『下手くそな演技ですね。』

ミュコス
『へたくそー。』

砕月
『ちょっ、ひっでーなー、
 これでも、演劇部員だったんだぞ~?』

は?なんの事だ?演技?

砕月
『ご安心下さい、
 ご兄弟は、生け捕りを最優先で、
 処分は貴方に任せますので。』

コレクト
『・・・連合に属せば、これらを?』

砕月
『やめといて下さい、
 また、内乱になりますよ?
 家は、階級制度は廃止しています、
 今は、貴族に様々な役職で奮闘して貰ってますので、
 今度、視察にいらして下さい、歓迎いたします。』

コレクト
『なっ!?できたのですかっ!?そんな事がっ!!』

砕月
『クレースト国がお手本です、
 本当は先にお手本を目指していたのですが、
 元々、部族の村が集まった国でしたので、
 階級自体にあまり関心がなかったのも大きいですね。』

コレクト
『なるほど・・・。』

ミュコス
『はい、これ。』

砕月
『ん?ほいほい、
 ・・・へー・・・ほー・・・。』

コレクト
『な・・・なにか?』

砕月
『既に、平民のお嫁さんと、娘さんいらっしゃるんですね。』

あ、青ざめた。

砕月
『ご安心を、家の部隊で保護、今は、貴方の避暑地に避難しています。』

コレクト
『・・・本当ですね?』

砕月
『じゃぁ、証拠見て来て下さい、
 アウリオン、ミュコス、
 一緒についてってあげてくれ、
 その内にこっちは準備すっから。』

ミュコス
『はーい。』

アウリオン
『了解です、
 近衛第4大隊、コレクト国王を、避暑地まで護衛、
 そのままそこの防衛任務に就く、
 第4大隊!!出陣!!』

__________________________

砕月
『よし、んじゃ、ズルしますか、
 クク、悪いが衛星写真と、高度地図を頼む。』

移動蓄電池式印刷機が動き出す。

砕月
『・・・おいおい。』

ばーか

砕月
『ばかですよーだ。』

と、返信用投入口に書いた紙を流す。

あ、今度はちゃんと来た。

砕月
『・・・湿地か、
 戦車はやめるか、そこを上がって来るのを迎撃は可能っと。』

地図と、高度地図をにらめっこしながら、どう攻めるか考える。

守りは、極地隊の高射砲大隊で、過剰、と、わかったからねー。

潰すに限るよね?


到着20日目、
猛反撃を受けたスコプルス国は、静かだった、
デスヨネー。

砕月
『まぁ、推定戦力、40万ってとこか。』

海、崖、スコプルス国の城壁、湿地帯、田園地域、放牧地域、
ここ、ドミヌス国、
たった一枚のカラー衛星写真、
これだけで戦局は簡単にひっくり返る、
今、手先の器用な兵士に、
立体模型の制作を進めさせている、
あ、この子、集中するとやべぇ・・・。

アウリオン
『どうですか?』

砕月
『宝の持ち腐れだな、
 専属契約でもしようかな?』

アウリオン
『彼はフリーで行きたいそうなんですが、
 半ば強制的に、軍に入れられたとか、
 どこにも毛嫌われ、私の大隊に先月編入したばかりです。』

ミュコス
『お人形、つくってもらった。』

アウリオン
『裁縫も得意らしく、
 ミュコス嬢の服も治してででででっ!?』

ミュコス
『お・く・さ・ん!!』

アウリオン
『ふぁい。』

・・・頑張れ。

砕月
『実用段階にはどれくらいだ?』

「・・・半日、摘める物欲しいです。」

砕月
『サンドイッチだ、ハム、レタスもどき、
 タルタルソースは、お好みで。』

「・・・いただきます。」

はやっ!?

ミュコス
『今日のお昼は?』

砕月
『ん?あぁ、俺は離れて食うよ、
 納豆食いたいから。』

うん、納豆、兵器ですかっ!!って、言われた、
なんでだろ?
ハイブリットなんだから、日本人タイプなら食べれるのに、
納豆は、悪くない!!美味いんだから!!

アウリオン
『よく食べれますね?
 あれ、凄い匂いですよ?』

砕月
『そうかぁ?俺は好き・・・あ、
 早馬、どれくらいで向こうに着く?』

アウリオン
『え?まぁ、あと、2,3日かと。』

砕月
『臨時鉄道設営はどれくらい進んでる?』

アウリオン
『地盤の強度は十分なので、順調にいけば、
 明日には繋がります。』

うん、早すぎ、魔法ってすげぇなぁ~。

砕月
『一番の汽車に載せて欲しい物があるんだ、
 ククに連絡するから、
 まぁ・・・うん、お前らは、
 ガスマスク準備しとけ。』

ミュコス  アウリオン
『?』  『はぁ?』

__________________________

滞在50日目

砕月
『納豆爆撃隊、準備!!』

納豆で戦意喪失を狙ってみますww

一応、翼竜はいるけど、あんまり長くは飛べないし、
火球なんて出せない、
せいぜいの上空からの偵察ぐらい、
飛ぶにも滑走が必要で、その分、体力が持っていかれる。

砕月
『ククも笑いながら協力してくれてよかったよ。』

ミュコス
『うぅ~・・・すこし匂う~・・・。』

アウリオン
『確かに、鼻にきますね・・・。』

「・・・悪くない。」

砕月
『食べるか?』

「ん、いただきます。」

こいつは平気らしい。

砕月
『どうだ?』

「・・・おいしい。」

アウリオン
『・・・す・・・凄いですね。』

ミュコス
『うぇ~ん!?』

_________________________

同日、午後

スコプルス軍Side

「なんだ?翼竜!!」

『やつら、来るのか!!』

「?」

『なにか落としたぞ!!』

その後、阿鼻叫喚が木霊したのは言うまでもない。

_________________________

そのまま、スコプルス国も納豆爆撃しました。

即日降伏しました。

納豆悪くない!!

後世紀に記された書物に、
“納豆の悲劇”と記されたのが発見されるのは、
まだまだ先の話。

連合歴15年の時

ヴァローレ国

「一体、どこからの攻撃なんだっ!?」

『まて!!あれは翼竜だ!!』

___________________________

ヴァローレ城内

『なにっ!?ガーメリオンが攻めて来ただとっ!?』

「は!!翼竜がつけていた紋章は間違いなく、
 ガーメリオン国です!!」

『なぜ・・・火の山がようやく落ち着いて、
 復興もお互いにこれからだと言うのに!!』

「伝令!!
 国境から山脈方面にガーメリオン軍が!!」

『なにぃっ!?』

___________________________

ガーメリオン軍Side

『どうだ?』

「奴ら、浮き足立ってますぜ?」

『だろうな、いちいち宣戦布告なんて、
 甘いしなww』

「いやぁ~、隊長が、ガーメリオンについてくれて良かったですよww」

『ん~、じゃぁ寝返ろっかなぁ~。』

「勘弁して下さいよ、
 隊長の実力に敵う奴なんていませんからねぇ。」

『そうかい?』

____________________________

クレースト国

ココン
『なに?ヴァローレが攻められている?』

「は!早馬にて8日、
 既に戦闘中との報告も上がっています。」

ノウス
『・・・今は、エフェメールに増援は頼めないけど。』

ココン
『・・・近衛兵の3分の1と、エフェメールからの、
 新兵装部隊を送れば、問題はないと思う。』

ノウス
『・・・アレ、ね、
 銃火器隊ね・・・アレ~・・・大丈夫かしら?』

ココン
『まぁ、国交がある以上、見捨てられないし。』

ノウス
『そこ、隠れてないで出てきなさい。』

リュアクス
『ん~・・・母上には、見つかりますね。』

コルソ
『ほんとね、どうすればいいかしら?』

ココン
『・・・うん、なんでフル装備なのかな?』

リュアクス
『え?ヴァローレに派遣するんですよね?』

コルソ
『いい加減、小競り合いは、飽きましたの、
 この度の派遣、私達に任せてもらえないですか?』

ノウス
『本当は私も行きたいけど、
 いろいろ書類やら、会議やら、溜まってるのよね~。』

ココン
『・・・はぁ、準備は整ってるよね?』

リュアクス  コルソ
『もちの。』『ろん!』

ノウス
『じゃぁ、ちゃっちゃと、蹴散らしておいで♪』

リュアクス    コルソ
『りょ~かい!』『りょ~かい♪』

___________________________

ノウス
『案外、簡単に許可したわね?』

ココン
『君の子供達だよ?
 だ~めって、言っても、勝手にやるんだから、
 たまには・・・ね。』

ノウス
『・・・心配ね。』

ココン
『二人を?』

ノウス
『相手よ。』

ココン
『・・・失念していた。』

_________________________________

それから20日後

リュアクス
『国王、お久しぶりです。』

ルッキオラ
『成長したな、リュアクス、
 あっという間に抜かれたな。』

リュアクス
『ご謙遜を、王こそ、鍛錬は欠かしてないようで、安心しました。』

ルッキオラ
『うん、それと、コルソ?それ、閉まってくれない?』

コルソ
『ちぇっ、もう、驚かないか~。』

「へ・・・陛下?」

ルッキオラ
『あぁ、気にするな、幼少期から鍛錬の相手なんだ、多少は、な。』

「は・・・はぁ。」

リュアクス
『で、相手は?』

ルッキオラ
『ガーメリオンだ、
 山脈側の砦を落とされたが、
 それ以外は踏みとどまっている、
 リュアクス、コルソ、久しぶりに暴れて来い、
 俺は、残念だがここを離れられん。』

リュアクス
『・・・奥さん、治らないんですか。』

ルッキオラ
『あぁ、炭化病、皮膚が炭になって剥がれる病だ、
 エフェメールからの情報で、
 “発酵食品”を食べさせて、進行は止まっているが・・・。』

コルソ
『・・・私も、かかるかも知れないのね。』

リュアクス
『勘弁してくれ、
 確か、出産からす少し経ってから発病するんだっけ?
 お前、相手いないだろ?』

コルソ
『殺すよ?兄貴?』

リュアクス
『じゃぁ、戦闘中、周り巻き込んで一戦殺るかww』

ルッキオラ
『お前ら、ここでそんな物騒な話をするな、
 家臣達が青ざめるだろうが。』

リュアクス
『え~・・・そこは、ノって来ようよ?』

コルソ
『そうそう、ひ弱な男はモテないぞ~?』

_________________________________

ヴァローレ山脈砦

『しっかし、シケた物しかねぇなぁ~。』

「奴ら、逃げる時に井戸には毒、田畑は干上がって、使えない、
 穀物庫は燃えて焼け落ちて、
 流石、500年争い続けただけはありますね。」

『あほぅ、その時は俺はいないっての。』

「でしたねww
 てか、隊長、どこ出身なんですか?
 俺はガーメリオンより先、ヴァストーク国でさぁ。」

『ガーメリオンより先?
 そんな国あるのか~、強い奴いるか?』

「ぁ~・・・残念ですけど、期待しないで下さい、
 俺のような奴らがごろごろ、そんぐらいです、
 漁業と、畜産で持ってるような国です。」

『お前は?』

「あっしは、縁を切られまして、ガーメリオンに流れて来たんでさぁ。」

『そっか、どうりで、魚臭え訳だww』

「あ、ひっでぇ~、ちゃんとここまで着いて来たんですぜ?」

『あぁ、俺がわからん事は代わりにやってくれるからな、
 助かるぜ、書類、大っきらいだからよ。』

「頼りにしてくださいよ?」

『わ~ってる、わ~ってる。』

ヴァストークVSクレースト連合


クレースト連合Side

リュアクス
『・・・一人、かな?』

コルソ
『ぽい、ね、ちょっと残念。』

遠メガネで、落とされた砦を見る。

リュアクス
『なんだ、大して変わった物も無いし、
 広げられる範囲に、仮設を置いただけって感じか。』

コルソ
『銃火器隊、必要かな?』

リュアクス
『ないと思う・・・けど、
 二手に分けて、挟撃させるのも手だね。』

コルソ
『そだね、別にいいよね?』

パンテル
「おいおい、俺らが駆り出された理由、
 いい加減教えてくれよ~。」

テラス
「そうそう、明け方、
 『行くぞーっ!!』って、
 そのまま近衛達だけは連れて来たけど、
 なにするのよ?」

リュアクス
『え?暇つぶし。』

コルソ
『家にちょっかい出して、
 国民からも怒られた国王夫妻に、
 人権なんて、ないない。』

パンテル
「ひでっ!?」

テラス
「確かに怒られましたけど、
 私達は国政を引いて、今では私兵団の隊長に着いてます、
 ですが、いい加減、理由をお願いします。」

リュアクス
『いや、理由なんて、なぁ?』

コルソ
『手近にいる適当な戦力?』

____________________________

ガーメリオンSide

『なんだぁ?アイツ等?』

「どれ・・・げっ!!」

『ん~?お前、知ってるの?』

「隊長、あれは、クレースト国旗、
 更に・・・うわ・・・ケラス王国の兵もいますね。」

『噂の連合国って奴?』

「近いですが、
 あれは、クレーストと、ケラスの連合、
 恐らく、どちらかが攻め落とされたんじゃねえですか?」

『ほ~・・・じゃぁ、強い奴だよな?』

なら、近接スキル使う場面豊富だよな?

「ん~・・・見た事ない奴らが指揮してますね、
 誰だろ?あんな若い将軍なんて・・・。」

『よし、お前ら!!突撃用意!!』

「え゛っ!?もう直ぐ夕暮れですぜっ!?」

『そこらじゅうに、火矢をぶちまけながら、
 突進、アイツ等の前衛をぶっ潰す!!』

「へいへい、言いだしたら聞かないっすからね、
 お前ら!!突撃準備だ!!」

『夜戦に持ち込んで、暴れまくるぜ!!』

__________________________

クレースト連合Side

「伝令、ガーメリオン軍、突撃体制を準備しつつあり!!」

リュアクス
『・・・前衛に銃火器隊並べようか。』

コルソ
『え?乱戦にして、殺り合うんでしょ?』

リュアクス
『・・・パンテル、テラス、
 銃火器隊の後ろに突撃姿勢のまま待機、
 銃火器の一斉攻撃後、そのまま開口部が開く、
 そこから残りを喰いつくせ。』

パンテル
「え?いいんですか?暴れちゃっても?」

テラス
「ま、暴れられるなら、それでいいけど。」

コルソ
『兄さん、納得行きません!』

リュアクス
『コルソ?
 感覚、わからないか?
 ガーメリオン側の隊長は、近接スキル持ちだ、
 なら、丸裸にして、ソイツと、殺り合って来い。』

コルソ
『ん~・・・ほぅほぅ・・・、
 あ、確かに、アホみたいにでかい剣持ってますね、
 アレでは、いくら身体能力が高くても、
 使いこなせないでしょうね。』

パンテル
「どれど・・・うげ、
 超大剣じゃん、うわ~・・・弓兵いないよ、どーしよ。」

テラス
「見せてよ・・・あ、むり、パス。」

リュアクス
『銃火器の隙間から出てくる奴らだけでいいから、
 前、逝って来い。』

コルソ
『逝ってよし。』

パンテル    テラス
「ちょっ!?」「ひどっ!?」

スキル


『・・・なんなんだよ。』

「あはは・・・隊長、悪いっすね・・・。」

こいつを担いで、峠に向かう、
コイツ・・・結構重いんだな・・・。

「隊長、置いてって下さい・・・、
 足、びっこじゃ、邪魔でしょう?」

『うっせぇ、静かにしてろ。』

「・・・わかりやした。」

_____________________________

クレーストSide

リュアクス
『撤退してるのは、峠に向かってるな。』

コルソ
『まぁ、銃火器隊に任せると、こうなるの、
 わかってたからさ、だからって、
 あの副隊長っぽいの、
 すっごいね?なんでアタシに気づいたのかな?』

リュアクス
『・・・探知系のスキルか、
 気配系のスキルか、どちらにしても、
 逃げに徹っせられると、厄介だ。』

コルソ
『そう言えば、パンテル達は?』

リュアクス
『ヴァローレで、酒呑んで来るって、
 ま、好きなタイミングで、帰っていいよって言ったし、
 酒入ると、ただの人だしな、
 ヴァローレ軍でも、十分対応出来るよ。』

コルソ
『そだね。』

__________________________

ガーメリオンSide

「隊長。」

『喋んなって。』

「この峠・・・下ったら。」

『あん?』

「・・・左へ・・・行って下さい・・・。」

『左?ガーメリオンなら、まっすぐだろ?』

「えへへへ・・・黙ってやしたけど、
 隊長は死んじゃいけねぇ・・・だから、
 ヴァストークへ・・・生き延びる為に・・・。」

『・・・お前・・・なに、知ってんだ?』

「隊長・・・出身・・・どこって、
 言わなかったっすよね?」

『ん?あぁ、まず、ねえだろうからな。』

「ガーメリオンは・・・、
 とっくに、国じゃないんです・・・。」

『んだと?』

「あいつら・・・首に、変な物があるんです・・・。」

首?まさか・・・プラグ?

「こっそり・・・ついてった・・・、
 地下室に・・・棺が沢山並んでて・・・、
 そこの・・・中に・・・。」

全く同じ人間が入っていたんです。

『なっ!?』

「しかも・・・まっぱになって・・・、
 中の奴と入れ替わったんです・・・、
 同じ声、同じ顔、同じ体型、
 手癖も・・・全く同じだった・・・。」

セミドロイド技術じゃねえか!!
なんで、こんな中世の星に、そんな技術があるんだよ!!

「そいつが、立ち去った後、
 ・・・棺の中を覗いたんです。」

『見たのか。』

「・・・人間じゃなかった、
 金属が、人の皮を被ってる・・・、
 そんな感じでした・・・、
 他の奴らもおんなじで、
 首にある奴らは、定期的に、あの棺と交代して、
 ちっとも、老けている感じがありませんでした・・・。」

『・・・間違いねぇ・・・セミロイド、
 脳みそだけ人間で、
 それ以外は、機械の人間だ。』

「あはは・・・やっぱ、知ってましたね?」

あ。

「だからこそ・・・隊長・・・、
 生きて、ヴァストークへ!!」

え?なんで・・・突き飛ばされたんだ?

《対象一名、排除完了》

は?

『おい・・・お前・・・なんだよそれ?』

首に向かって話してる・・・。

『おい!!答えてくれよ!!』

この世界に来て・・・。

『なぁ!!』

わけわかんなくて・・・。

『頼むよ!!なんか言ってくれよ!!』

話しかけてくれて・・・。

『まだ、名前!!聞いてねえんだよ!!』

名前を・・・。

『ふざけんなよ!!』

名前・・・。

《対象2、確認、排除、開始》

『クイックスキル!!』

加速!!

《命中せず、第2射》

『オーバードライブ!!
 ツインアセレラシオン!!』

《対象、ロスト》

『遅せえよ!!』

ダブルトリガーショット!!

《がgggg・・・損傷、
 頭部破損、索敵力低下、随伴機、リンク》

『させるか!!』

ツインマジック!!

『ダブルサンダーブレイク!!』

《指揮官機、大破、接続カット、
 随伴機、345677へ指揮権移動》

『けっ!!まんま、
 俺の時代のセミロイドかよ!!』

《?対象、存在認識、
 コードチェック・・・・・・・完了、
 対象者、バテェレン・ハイマ、高校生、
 西暦、3459年、4月20日、行方不明》

『気安く、俺の名前、呼ぶんじゃぁねぇ!!』

ダブルファング!!

『ツイントリガー!!リロード!!』

疾風怒濤!!

《345677、破損、頭部ユニット破損、
 遠隔操作切り替え、
 指揮権、456662へ変更》

ハイマ
『まだ、いるのかよ!!』

リュアクス
『邪魔する。』

コルソ
『へぇ!あんた、強いね!!』

ハイマ
『なっ!?てめっ!?』

《対象、増援、検索・・・該当なし》

ハイマ
『丁度いいや!!
 お前ら!!コイツ相手してくれ!!
 俺は、アイツの国に急がなきゃ!!』

リュアクス
『・・・ヴァストークか?』

ハイマ
『おい!!なんで知ってやがる!!』

コルソ
『知らないのはいないのよ、
 諜報国家、ヴァストーク、
 どんな情報でも仕入れて、それを売り買いする国、
 でも、ガーメリオンに攻められたって、
 クレーストに来てた、情報屋が、そこの出身だったから、
 家の隠密隊で見に行かせたの。』

ハイマ
『・・・どうだった?』

リュアクス
『辺り一帯焼け野原、
 今、生存者の捜索を命じた遠征部隊で、向かってる途中なの。』

・・・おい・・・お前の国・・・焼け野原だってよ。

ハイマ
『なぁ・・・コイツ等、殺すの、俺にやらせてくれ。』

リュアクス
『・・・止めないけど、
 妹がどんどん殺してるよ?』

ハイマ
『はぁっ!?』

コルソ
『よ!ほ!へい!兄貴!パス!!』

リュアクス
『ふんっ!!
 コルソ!!兄さんか、兄様って、あれほど治して下さいと!!』

コルソ
『やっぱ、めんどい、
 ねぇ?あんた!!な・ま・え!!』

ハイマ
『ハイマだ!!てめぇは!!』

コルソ
『コルソ・ヒュンテンヴェルグ・ディデルラ、
 コルソでいいよ?
 はいま!』

ハイマ
『・・・お・・・おぅ、って!!後ろ!!』

コルソ
『ほい!』

ごしゃ!!

コルソ
『ねぇ?はいま!
 なんかコイツ等、硬いんだけど?なんなの?』

あ・・・あれ?
あれほど、名前は他人に言わせない妹が・・・、
あって数分も経っていない、ハイマとか言う奴に・・・。

ハイマ
『あぁ、ソイツ等、セミロイドって奴だ、
 骨やら、中身は金属だ!!
 スキルでぶった切らねえと、
 剣が駄目になっちまうぐらい硬てぇんだ。』

コルソ
『へぇ~・・・よし、
 引きちぎっていいんだよね?』

ハイマ
『おま『コルソ!』あぁ!?
 コルソ!!てめ!!人の話聞いてんのかよ!!』

コルソ
『だ~か~ら~!』

めきめきめきめぎゃっ!!

ハイマ
『うぇ~ぃ・・・なんだ、その馬鹿力・・・。』

リュアクス
『ハイマは知らないのか?
 クレーストの人種は、鬼人種、
 こんな金属程度なら、余裕です!!』

ごぎゃ!!

ハイマ
『・・・ぁ~・・・すげぇな。』

いや、あぶねぇっ!?
つまり?こいつらに勝負挑んでたら、
ば・・・バラバラにされてたって事かぁっ!?

コルソ
『はいま!!危ない!!』

ハイマ
『ちっ!』

多重がけ!!

ハイマ
『牙王!!縦断切り!!』

コルソ
『っ!?』

ひぅっ!?なっ!?なにっ!?
こ・・・この、ゾクゾクってっ!?

ハイマ
『・・・ち、コイツで最後だったか、
 コルソ、助かった・・ぜ?
 どうした?ぼーっとして?』

リュアクス
『え?コルソが?』

コルソ
『ほぇ?はいま?今の、どうやったの?』

ハイマ
『は?
 あ~・・・こっちのスキルって、
 習得方法って、どんなのが妥当なの?』

リュアクス
『え?
 ま、まぁ、基本は師匠から修行、伝授される物ですが、
 我流で編み出すのが多いですね。』

ハイマ
『あ、そこは一緒なんだ、
 コルソ、これは一応、我流だ、
 まぁ、数少ない俺のオリジナルだ。』

コルソ
『お・り・じ・な・る?』

リュアクス
『ぁ~・・・コルソ?
 自己流の事です。』

コルソ
『あぁ、自己流ね。』

ハイマ
『・・・えっと、あんちゃん?』

リュアクス
『リュアクス、と申します、ハイマ殿。』

ハイマ
『ハイマで、いいよ、なんか、年近そうだし。』

リュアクス
『今、おいくつで?』

ハイマ
『ん?生まれてから、で、あってる?』

リュアクス
『えぇ。』

ハイマ
『正真正銘、17歳だ。』

コルソ
『守備範囲!』キュピーン!!

ハイマ
『ん?コルソ?なんか言ったか?』

コルソ
『なんにも。』

リュアクス
『コルソ?
 私には、守備範囲と、聞こえましたが?』

コルソ
『まだ、14だけど、来年で成人だから、いいじゃん。』

ハイマ
『は?』

俺・・・聞き間違えた?

コルソ
『来年、連合建国歴16年で、私は15歳なの、
 クレーストでは、15歳で、婚儀、夫婦になれるの。』

リュアクス
『コルソ?目が・・・コルソ?』

ハイマ
『お・・・おい?』

やべぇ、なんか全身でやべぇって感じる・・・。

コルソ
『はいま♪結婚して?』

あ゛~~~っ!?やっぱソレかぁああああっ!!

リュアクス
『ば・・・ばか・・な。』ガハァッ!?

ハイマ
『ちょっ!?リュアクスっ!?
 血!吐いてないで!!助けろ!!』

コルソ
『はいま?ダメ?』

ハイマ
179cm

コルソ
145、3cm

ハイマ
『お・・・。』

コルソ
『お?』

ハイマ
『俺はロリコンじゃ!!
 ねえからぁああああああっ!!』

コルソ
『!?
 え?なに!!捕まえたら、結婚してくれるの!?』

ハイマ
『ちげぇえええっ!!』

兄、消える・・・

だ~・・・うざい。
あ?開口一番で、それはねぇって?
うっせーな、
あのチビ、コルソさえ、静かにしてりゃ、
快適な・・・生活、か。

ハイマ
『クーゼ・ハイトマン、
 いっちょまえに、ドックタグつけてやがって・・・。』

あぁ、ヴァストークは、全滅、
誰一人として、生き延びていなかった、
リュアクスが一昨日、教えてくれた。
遺体は、火葬した、
疫病の元になるのを防ぐのもあったそうだ。

ハイマ
『・・・はぁ、すっきりしねぇな。』

ガーメリオン、
まるで、元からなかったかのように、
荒野が広がっていやがった。

ハイマ
『クーゼ、お前の仇討ちすらとれねぇや。』

・・・3459年、あの時、
なにが起きやがった?
少なくても、このゲームプレイ中は、
なんにもなかった、いつも通り、
・・・で?

ハイマ
『コルソ、重い。』

コルソ
『うん、だろうね。』

ハイマ
『どけ。』

コルソ
『じゃぁ、結婚して。』

ハイマ
『誰がするか、
 てめえが、俺と同じぐらいでかけりゃ、
 考えただろうよ?
 だけどな?
 お前はどう見ても、幼児体型、
 俺はガキとは結婚しないし、
 妹萌えなんぞ持ち合わせてない。』

あぁ、コイツが本を貸してくれた、
・・・なぜ、ソッチ系なんだ?
メイ・ショセット著、
明らか、2000年代の人間だろ?
な~にが、合法ロリだ?
大体、子供作るにしたって、
体型からくる、リスクがでかすぎだろう、
せめて、後・・・うん、まて、
なに考えてんだ俺?

コルソ
『じゃぁ、がんばる。』

ハイマ
『あそ。』

まぁ、妹がいたからってのもあるんだけど、
・・・はぁ、アイツとだぶって見えやがる。

リュアクス
『ぐぬぬぬぬぬぬ・・・。』

ハイマ
『リュアクス、何しに来た?』

リュアクス
『・・・はぁ、
 報告書ですよ、貴方、
 “字”書けないなんて、色々問題ですよ?』

ハイマ
『知るか、
 大体、この時代の文字なんか知らねえし、
 俺の時代は、英訳が基本だったし、
 かーちゃんが、日本人だったから、
 この、メイって奴が作った本は読めるし、
 問題なくね?』

リュアクス
『駄目です、
 今後、ハイマには、突撃隊長の部署について貰うんですから、
 字は必要です。』

ハイマ
『待てや、勝手に役職決めんなや?』

リュアクス
『働かざるもの食うべからず、
 いつまでも、客人扱いはできないのですよ?』

コルソ
『だったら、私の旦那さんになって?
 そうすれば、夫婦手当、子育て手当、
 自警団なら、お給金もでるし。』

ハイマ
『却下、だからさ?
 コルソ?俺はガキと結婚しないの。』

リュアクス
『妹の求婚を断るなんて・・・、
 ヤハリ、殺ス・・・。』

うぜぇ・・・このシスコン、
普通に話してりゃ問題なにのに・・・。

ハイマ
『はっ、だから、お前は残念なイケメンなんだよ、
 この、シスコン!』

リュアクス
『シスコンのなにがいけないのです!!』

え゛っ?

コルソ
『・・・ウザッ・・・おにーさま?』

リュアクス
『なんだい?コルソ♪』

コルソ
『だーーーーーーーーいっ!キライ♪』

あ、蒸発しやがった・・・。

いつか・・・

いつか・・・

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更新日
登録日
2015-08-17

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  1. いきなり厳しいです
  2. 見つかりました
  3. 初陣・帝国軍迎撃戦
  4. 帝国追撃戦
  5. グルッペ街道迎撃戦
  6. ムスクス凱旋
  7. 振り回されない訳が無い・壱
  8. 振り回されない訳が無い・弐
  9. 振り回されない訳が無い・参
  10. 後戻りはできない
  11. ヴァールハイト帝国
  12. 緊急会議
  13. 持てる全てを使って
  14. 戦争は始まっている
  15. 地面と赤い糸
  16. 使者と君主と僅かな希望
  17. 連合誕生と駄犬?
  18. 決闘(笑)
  19. クレースト国
  20. ケラス王国
  21. 砕月の受難
  22. 連合国・開拓誌、1
  23. 連合国・開拓誌、2
  24. クレーストの使者(ここから先はまだ)
  25. 帰路
  26. クレースト国・帰還
  27. クレースト・改革
  28. 元老院解体
  29. 招待状と?
  30. リベンジャー
  31. これが、現実(いま)
  32. より、近代化へ
  33. 代償
  34. 頼る事
  35. 5年目
  36. その日暮らし
  37. ベルヴァ国境戦
  38. 爆音と帰還
  39. ジーミウス宗教国
  40. 発見と確信
  41. 侵攻戦
  42. 役割
  43. 滅ぶべきは人類、生き残るのはこの星の人間
  44. 連合暦10年
  45. 暮れのひと時
  46. 空に流れる涙
  47. いろいろ大問題
  48. 親バカ?褒め言葉です。
  49. 撲滅天使?
  50. 一日内戦
  51. きっかけ
  52. 報告
  53. よかろう
  54. ドミヌス救援
  55. 潰すに限るよね?
  56. 連合歴15年の時
  57. ヴァストークVSクレースト連合
  58. スキル
  59. 兄、消える・・・