無罪の王様

自分はなにもしていない。
自分で勝手に思い込んでるわけじゃあなくて、実際なにもしてない。本当に。
なのになぜだかみんながみんな勘違いをして自分を疑ってくる。
自分は昔からそうだった、学年に一人、もしくはクラスに一人はいる何かと疑いをかけられきっとあいつがやったんだそうに違いない、そうやって無実の罪を着せられる。
基本その位置にいるのは男子だ。

そう、本当はその立場が男子なはず...。
なのだけれど自分のクラスでは違う。そう、あらぬ疑いをかけられる人というのは女子であり、自分のことだ。
自分は蔑圭。ないがしろけい。ないがしろが名字でけいが名前。蔑なんて名字全国どこ探したってないだろう。
現在中学3年生。受験シーズン真っ最中の普通の中学3年生。
この特異体質をのぞけば....。

最初はあまり気にしていなかった。元からあまり自己主張はしない方だったから、疑われてもあまり否定しようとはしなかった。それが裏目に出たのか否か、あらぬ疑いばかりかけられて迷惑である。本当に。

だからと言って友達がいないわけじゃあない。普通にいる。だけどなぜか疑われる。
この前だってそうだ。あれは一週間ほど前の話だ。

「ちょっとーみなさーん。森田さんのペンケース知りませんか?」
クラスメートが全体に声をかける。この言葉に対してほとんどが無視。みんなの思いは『こっちは勉強中なんだよ』『ペンケースがなくなったくらいでいちいち騒いでんじゃねーよ』という感じなんだろう。なんせ受験シーズン。ここは有名私立進学校。ただし中高一貫校ではなく、小中と上がって高校、大学はない。
みんなのピリピリした空気が伝わってくる。
(そろそろかな....)
と私が思う頃に、先ほどのクラスメートが
「蔑さん、あなた森田さんのペンケースとったでしょ」
でた、あらぬ疑い。
「そんなの知らないよ。自分ペンケース持ってるし...。」
あいからわず自己主張のないったらありゃしない。もっと頑張れ自分なんて言い聞かせながら相手の言い分を聞く。
「だってさっき蔑さん机の下を探ってたでしょ!」
「あれは消しゴムがどっかに落ちちゃって....」
「言い訳しない!!!」
言い訳なんかじゃないんだけどなあ。全く物分かりの悪い人、そう思う。
「とにかく!この件は先生に...」
「あ、あのぉ...」
ここで口を割って入ってきたのは森田さん。全体にふっくらしてるけど太ってるわけじゃあないしデブってほどでもない。
「筆箱....あったよ....。」
救われたーとちょっと思った。また疑いが一つでも晴れたのならそれだけで私は一日中ハッピーでいられる感じがするのだ。

無罪の王様

無罪の王様

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-15

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