ベランダの彼女
ほんの少し涼しくなった曇り空の下、彼は雨が降らないことを祈った。駅の近くの雑貨屋は潰れていて、傘は買えなかったし、雨宿りする本屋も潰れていた。地元が廃れていくのは見ていて辛かった。
祈りが通じたのか雨が降ることはなく、無事にこのまま帰れそうだ。
彼女はベランダで空を見ていた。自慢の長い黒髪は風に靡いて美しかった。
自分に気がついたらしく手を振った。手を振って返した。
彼女の笑顔がうれしかった。
もう買い物も、映画も、本も、靴も、雑貨もこの街からはなくなってしまったけど、引っ越すのはもう少し先でもいいかもしれない。
秋が近かった。
ベランダの彼女
実はつながってました。いろんなお話がね。そんなの書けたら面白いなぁーと思って書きました。