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リクエスト☆七海夢
1
ピロリン
『哉太、LINEきてるよ』
ピロリン
『ほらまた』
「うわ、通知すげぇ」
パッと携帯を取り、返信する。
しかしまたすぐ通知がなる。
『哉太は人気者だもんねー…』
ポツリと呟いたその言葉は、彼の耳には届かなかった。
**
「おはよー」
「おはよう七海くん!」
「おーす七海」
「よぉ哉太、お前寝癖ひどいな」
「セットしてんだよこれは!」
朝、今日も賑やかな声が教室中に響く。
私の彼氏、七海哉太はとても人気者で…それは大学に入り収まるどころか、もっと人気者になってしまった。
彼を慕う人の中には、私なんかよりもっと素敵な女の子もいる。
私が彼女でいいんだろうか…。
「ほら授業始めるぞ!七海!さっさと席につきなさい!」
ぼんやりしているところに入った先生の声に、ハッとしてノートを開いた。
─お昼休み─
「どうした?有理元気ねーな」
『…なんでもない、ちょっとお手洗い行って来るね』
彼は素敵だと思う。明るいしノリもいい。話していて楽しいし、誰とだって友達になれる。
それに比べて私は…と凹んでしまい、トイレの個室に入ると外から声が聞こえてきた。
「ねー、あの七海くんの彼女さぁ」
「え、彼女いんの!?」
「知らないの!?ほら、あの目立たない子いんじゃん?」
「えマジで?私狙ってたのにー!…でもさぁ、なんであの子なんだろうね?」
「知らないけど、なんか高校一緒だったらしいよ?
ほらあの、ほとんど男子で女子が1人とか2人しかいなかったとこ」
「それってさぁ、アレじゃん?その1人の女子が取られちゃったから付き合ったんじゃない?w」
その言葉を聞いて、私はどうすればよかったんだろう。
個室からでて彼女達に反論する?
『そんなことない。私は私だから哉太の彼女なんだ』と、胸を張って言う?
でも、そんなことできなかった。
自分自身、どうして哉太の彼女なのかわからなかった。
『…やっぱり、私じゃ…』
視界が滲む。
悲しみが、涙が、嗚咽が、溢れて止まらない。
『っう…ひ、っく…』
人の心は、どうしてこんなに弱いんだろう。
始業開始のチャイムがなっても、有理はしばらくそこを動くことができなかった。
2
「有理!よかった。あの後帰ってこねーし教室にもいなくて心配した」
『…ごめん、ちょっと考えごと、してた』
好きな人。
私の一番好きな人。
でも今は、一番会いたくない人。
「なんか目赤いけどどうした?」
『…なんでもないよ、私具合悪いから帰るね』
「おい待てよ!」
彼の顔を見たくない。
彼の目を見たくない。
彼にこんな顔、見られたくない。
「待てって有理!!」
『っ』
手を引っ張られ、壁に押し付けられる。
背中には壁の冷たさが広がり、哉太の顔がやたらと近い
「どうしたんだよ…俺、そんなに頼りないか?」
『そんなこと…』
「じゃあ言ってくれよ。俺は有理の彼氏だろ…?」
悲しそうな目で見つめられ、彼に嘘はつけないと思った。
『だ、って…う”ぅ〜…』
「おわっ!?ちょ、泣くなって!あ、いや、泣いてもいいけど…」
『なんで私が哉太の彼女なのか、わかんないよ』
「は?」
『哉太は人気者で、私はその逆で、可愛くもないし、ノリも良くないしっ、…私なんか、哉太に相応しくないって…』
「誰が言った?そんなこと」
『みんな思ってるよ…さっきもトイレで言ってたもん』
「あのなぁ有理、よく聞け」
頬を優しく掴まれ、顔を逸らさないようにされる。
そして彼は、優しい声で言った
「俺は有理が好きだ。だから有理の彼氏になった。
俺が自分で有理を選んだ。好きだからだ。確かに俺は友達が多いかもしれない、けど…
友達と恋人は、別だろ」
『別?』
「あぁ、…極端に言うと、友達はいなくなってもまぁ、嫌われたかなって思って追いかけはしないけど、有理がいなくなるのは嫌だ」
彼の星のような瞳が、まっすぐにこちらを見る。
「だから有理、俺のそばからいなくならないでくれ」
『…私で、いいなら』
「有理が、いいんだ」
顔が近づいてくる。
顎をすくわれ、反射的に目を瞑ると、喧嘩っ早い彼からは想像もつかないほど優しく口づけをされた。
『私も、哉太がいい』
「あぁ…俺達はずっと一緒だ」
星の導きの元出会ったのだから、その奇跡に感謝しよう
End
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