rank

絶対、玉田(たまだ)にはなにかあるんですよ。

ホイール

レッツ5に乗る男

「タケルさーん」

「みろ?ホイール」

男がホイールを指す

「なんともないっすよ」

「これが?」

「裂けてますね?」

「絶対にいまの仕事がなかったら」

「またまた」

「整備をしてるよ」

「できますよ」

「これが?」

「はい」

「そういう事をいってくれるのは」

「いえ」

「君くらいだ」

「親みたいなものですからね?」

「何年目だろうか?」

「3年目ですね」

「ついてくるのも君くらいだ」

「お世話になってます」

「そうなんだ」

「?…」

「最近の子は」

「そうですね…」

「勤務(きんむ)が終わったら」

「あぁ」

「バイトが終わりとおもう」

「そうですね?」

「ガソリン代を貸してくれたのも君くらいだ」

「ありました?」

「あったよ…」

「そうでした」

「これから」

「?」

「用事は」

「ないです」

「ある?」

「あったとしても」

「じゃあ」

「いいです」

「飲みにいこう」

「お金」

「いいよ」

「ないですよ?」

―居酒屋(いざかや)へ

「ぼくね」

「マジェスティだろ?」

「わかりました?」

「あのバイクなら」

「そうですか」

「部品の一つであっても覚えてる」

「珍しいですね?」

「いいバイクだ」

「もう半分」

「出そうか」

「貯まりました」

「お金?」

「はい」

「オレは」

「えっ」

「社長がダメなんだ」

「いってましたね?」

「なぜかというと」

「なんですか」

「すぐ脱ぐだろう? 」

「酔ってから」

「そうだ」

「ヤバいですよね」

「君のようにバイクとか興味があったら」

「そうですね」

「いいんだが」

「笑ったところを見たことがないですね?」

「ああいう人なんだ」

「なぜですか」

「こき使う」

「そうっすね?」

「壊れてるというか」

「丈夫じゃないですか」

「そうだな?」

「マジェスティ買ったら」

「あぁ」

「一番にみせますね」

「…」

「なにか」

「いいんだ」

「なぜ黙るんです」

「やめようと思ってる」

「えっ?」

「整備の仕事が決まって」

「えー」

「マジェスティが入ったら」

「高いですか?」

「格安でいいよ」

「ありがとうございます」

「来月かな」

「早い」

「そうかな?」

成長

―マジェスティに乗る謙一(けんいち)

「わーピカピカ」

「ホイールが裂けてるなんかないから」

「続きそうっすか」

「70くらいまで」

「そうですか…」

「続けようかと」

「あぁ」

ぼくには、そういった建(たける)さんの後ろ姿が大きく見えたんだ

rank

教えは、乞いかってところなんです。脳裏(のうり)に残ったら残ったでいいじゃないっすか。

rank

安定と幸福外伝 登場人物 玉田 建 飯田 謙一

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-14

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. ホイール
  2. 成長