梅雨空オバケ

てるてる坊主すら撫で回してびしょびしょにしてしまう問題児は、人の心を憂鬱にさせます。

期間限定の問題児

傘を指して歩く都会の街並み。赤、青、白黒、青、水玉達のいろんな色が雨空の薄暗い空の下で(うごめ)いている。
僕はそんな街を傘も指さずに歩く。人たちの流れに逆らいながら。テンションの低い人たちを嘲笑(あざわら)いながら。

そんな僕に梅雨空オバケが語りかける。
「僕って嫌われてるのかな」
いいやっと、僕は首を振った。
「嫌われてもないし、好かれてもないんじゃないかな」
そこで一回区切る。
「まぁ、僕は好きだけどね」

梅雨の雨は、しつこい。いつになったら晴れ間を見せやがるんだと叱ってやりたいぐらいだ。
でも、久しぶりの太陽が雨空の隙間から顔を出したとき、思うんだよね。
「っち。いい演出しやがって。普段の5000倍綺麗だな」
ってね。

「君は・・・演出家なのかもしれない。梅雨空オバケ。負の要素だけをしばらくの間、色濃く見せて、希望の光が欲しいタイミングで、太陽を覗かせる。それは人にとって、えげつないぐらいの後押しになって、なんでも良くなっちまうんだ。これから頑張っていくかって、そう思わせやがるんだ。悪いことじゃない。君は最高の演出家だ」
そう言うと、梅雨空オバケは微笑んだ。
「また来年も来いよ。僕は待ってるよ」

その声が届いたのか届かなかったかは分からないが、梅雨空オバケは消えていた。
綺麗な太陽を代わりにおいて。

梅雨空オバケ

今年はちっとも晴れ間を見せてくれない。雨雲がちっともその場から動かないから友達になろうと思ったけど、すぐお別れするのは嫌だよね。

梅雨空オバケ

空にかかった大きな傘。

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-09

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