證城寺の庭は

リクエスト*同田貫夢

1


「んぁ、あんたこんな所にいたのかよ」

『?』

「いや、特に用があったわけじゃねぇよ。
ただもう夜も遅いし寝てるだろうと思ってたんだが…」

『…月、綺麗』

「あぁ、成る程な」


縁側に座って満月を見上げる主の隣に座る。

「…確かに今日は月見日和だな」

これを見ると、三日月宗近が綺麗だと持て囃されるのも分かる気がする。
人は昔から月を愛でる。
前まではわからなかったが、今では少しだけ分かる気がする


「なぁ、あんたよ。月は好きか?」

こくりと頷く

「じゃあ、狸は?」

こくこくと首を縦に振る。

「…そういや、証城寺の狸囃子って謡があったな」

同田貫と狸をかけて、よく歌われていたのを聞いたものだ。

「おいらの友達ァぽんぽこぽんのポン、ってな」

『ふふ…』

「お、珍しいな、あんたが笑うなんて」


口元を押さえ、くすくすと肩を震わせる。
小さな主は、見た目だけだとこんなにか弱いのに。
こと戦となればまるで顔つきが変わり、纏う雰囲気さえ変わる。

そんな所に俺は惹かれた。
儚げで、危うげで、少し力を入れれば死んでしまうほどなのに
俺の主は、強い。


『!』

「お?なんだなんだ」

くいくいと服を引っ張られ、その細い指は上を指差す。
何事かと上を見上げると、流れ星が次から次へと降り注ぐ。
流星群とかいう奴か


「確かに流れ星に願いを込めると願い事が叶う…だっけか?
あんたもお祈りしてみろよ」

そう言うと、両手を組んで俯く。
なるほど、人間はこうやって願うもんなのか
そういや石切丸の旦那もなんだか同じようにしてたっけな


やがて願い終わったのか、こちらをじぃっとみつめる。
…どうやら俺も願えってことらしい


「わかったよ。………これでいいか?」

『何を…?』

「ん?あぁ……内緒だ」


そう答えると少しだけむすっとした表情になった…気がする。


「そう怒んなよ。ほら、左文字の奴が言ってたろ。
《願い事は口に出すと叶わなくなる》っつってな」


だからこの願いは俺だけのもんだ。
そう言うと、面白くなさそうな顔をして立ち上がる


「あー、オヤスミ」

そう言って手を降ると、手を振りかえし部屋へと帰っていった


「…俺の願いなんざ決まってるだろ」


いつまでも、あんたと共に。


End

證城寺の庭は

證城寺の庭は

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-28

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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