繋いだ手からわかること
リクエスト*安定夢
1
『安定』
「主、どうしたの?」
『少し後ろ向いて』
「?」
後ろを向くと、髪をいじられる感覚のあと、耳元でしゃらしゃらと音がした。
前を向くと主は嬉しそうに微笑んでいる
『わぁ、やっぱり思ったとおり!』
「…簪?」
『うん、この間見つけてね、安定に似合うだろうなぁって』
「…こういうのは主がつけるものじゃないの…?」
『どうして?安定綺麗だもの』
微笑まれて、心臓が跳ねる。全くこの人は可愛いんだから。
ただ一つ困ることがあるとすれば
「やぁ主、こんなところにいたの」
『光忠、どうしたの?』
「晩ご飯の味見をしてもらおうと思ってね」
『本当?いつも味見すると怒るのに』
「あれは味見じゃなくてつまみ食いって言うんだよ」
にっこりと微笑む伊達男。
燭台切光忠が、主の頭をぽんぽんとなでる。
「ちょっと燭台切ー、僕の主を誑かさないでよね」
「あはは、ごめんごめん。そんなつもりはないよ」
主を引き寄せると、燭台切は困ったように笑って手を離す。
まったく、油断も隙も無いんだから
……簪かぁ。
2
「あーるじっ、買い物行こう?」
『安定から買い物に誘ってくれるなんて、珍しいね』
「買いたいものがあるんだ」
そう言われ、街にでたはいいものの…
『…人多いね、お祭りでもあるのかな』
「わかんない、けど主、僕から離れちゃダメだよ」
そう言って、一回り小さな手を握る。
すると主は少し頬を染め、小さく頷いた
…かわいい。
「主の手は小さくて、あったかいね」
『安定の手はひんやりしてて気持ちいい』
「……あ、ありがと…」
本当にこの人はもう、さらっと人を照れさせるのやめて欲しい
「じ、じゃあ、行こうか」
**
『ねぇ安定っ』
「だから、内緒だってば。本丸に着いたら教えるから」
全部主に内緒で買い物を終え、本丸まで内緒と言うと少しむすっとして了承してくれた。
…それでも手を離さない所が、本当にかわいらしい
『…あ』
「ん?」
『安定の手、私の体温と混ざってあったかくなってるね』
「…ほんとだ」
言われてみれば、繋がれた手だけぽかぽかと暖かい。
こうして誰かの体温を心地いいと思ったのは初めてかもしれないな
3
「はいっ」
『……私が開けていいの?』
「もちろん。主に買ったものだもん」
晩御飯を終えた後、今日買ったものを主の前に置く。
キョトンとしながらも、まずは一番小さな箱を開けた
『かわいい紅!…私にくれるの?』
「僕がつけても意味ないでしょ?さ、つぎつぎ!」
『えーと…簪だ』
「僕にくれたでしょ、お返し」
『最後のは………おっきいとは思ってたけど、着物!?』
「すごく上等なものではないけどね、貰ってくれる?」
『安定…ありがとう…!』
綺麗、と姿見に向かって袖を通す主は、まだきっと気付いてない。
紅、簪、着物。この三つを贈るのがどう言う意味か
「主、その贈り物には意味があるんだよ」
『?そうなの?』
「うん、例えば…」
簪を主の髪につけ、首筋に口付けを落とす
『わぁっ!?』
「簪は、綺麗な髪を乱してみたい」
紅をとり、主の唇にそっと指す。思ったとおり良い色だ
「紅は、その唇を吸うてみたい」
『や、安定…っ』
ちゅ、と軽く触れる口付けをすると、みるみる間に主の頬が赤く染まる
「着物は…」
『っひゃ』
前を少しだけはだけさせ、白い肌に痕をつける。
「その着物を着た貴女を脱がせてみたい」
『ぬ、脱がせ…!?』
「この三つが全部揃うとそれは─」
『っん…』
紅を舐めとるように口付けをすると、腰が抜けたのか主がへたり込んだ。
「…貴女の全てが欲しい、って求婚の意味」
『へ、あの、安定…?』
「何てれてるの、僕が主を…空さんを好きなことなんて知ってるでしょ」
『でも、びっくり、して…』
「かわいいな、空さん。…今日は一緒に寝ようね」
指を絡らめさせ、その指先に口付けをする。
やっぱりこの人の手はあったかくて、幸せな気持ちになる
でも夜はまだまだ長いから。ね?
End
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