『悪』と『正義』
『悪』
それは『正義』が決めたモノ。
その『正義』というモノの正反対の位置に値するモノ。
だとすれば
『正義』
は誰が決めたモノだろうか。
正反対の『悪』が決めたモノだろうか。
違うだろう。
『正義』は民衆が決めたモノ。
そうなのだから、『正義』と正反対のモノは、『悪』になるのだ。
。゚プロローグ゚。
何時からだったかな?
『私』がいなくなって、『僕』ができたのは。
『僕』ができて、感情もなくなって、何も感じなくなった。
皆が『僕』から離れていった。
けど、『僕』は何も感じなかった。
それだけじゃなくて、何をされても、何も、何も感じなくなった。
痛みもない。
悲しみもない。
楽しみもない。
でも、『ソレ』に出会ってから、『僕』は徐々に感情を取り戻していったんだ。
『ソレ』とは。
__________暗殺__________
東雲澪亜
「あはっ…みーんな死んじゃった。」
静かに、地下にこだまする声。
その笑い声は、何処か狂気を感じさせる。
声の主が歩く度に、コツコツと靴の音が響く。
殺しをしているときは笑顔だった。
だが、今は殺しが終わってつまらないのか、無表情でアジトに帰るようだ。
「あー、つまらない。イイコトないかな~…。」
少女の呟きは、徐々に消えていった。
――――――――
「ああ、<killer>じゃないか。どうだった?今回の依頼は。」
「いつも言ってるでしょ。今回もつまんなかったよ。」
僕はリーダーにそういう。
僕が入っている団体は<BLACK>という暗殺団体。
リーダーは<black>。僕に今話しかけた人だ。
リーダーと言ってもやることは依頼者の依頼を殺し屋に伝えるだけ。
依頼者はネットで探すらしい。
つまり、ほぼサボっているも同然。
口出ししたら殺されるけどね。
僕はさっき依頼をこなしていたということ。
僕の依頼成功率はこの団体に入った当時から常に1位をキープしている。
つまりは嫉妬する輩も出てくるわけだ。
嫉妬する暇があるなら訓練でもすればいいのに。
まあ、嫉妬した輩は全員リーダーの手によって殺される。
そのときの奴らの顔はいつ見ても最高だったよ……。
人間って哀れだよ。本当に、ね。
依頼
「あぁ、killerじゃないか。」
アジトの廊下を歩いていると、blackに声をかけられた。
コイツはいっつもニコニコしている為、全く考え方読み取れない。
「なんだよ……新しい依頼?」
「お、よく分かったね!」
当てずっぽうで言ってみると、意外にも当たっていたようだ。
いつも暗殺時以外の勘は外れるのだが。
blackはポケットの中に何か入れているようで、何かを探していた。
「依頼主はとある会社の社長さんらしいよ。」
「ふーん、興味無い。」
「ははっ!killerのことだからそう言うと思っていたよ。」
そう思うなら言わなければいいのに。
そう思うが、もし言ったら拘束されて首が跳んでく(物理)。
だから誰もblackに逆らえないのだ。
しかもblackの殺し方のグロいこと。
最低でも胴体と頭が別々になるのは免れない。
度がイっちゃったら微塵切りは絶対だろう。
「依頼内容は…っと……。」
〔『BLACK』様へ。
今回はこちらの依頼を受けて頂き、誠にありがとうございます。
早速ですが、本題に入りたいと思います。
ワタクシの経営している会社は大きい会社です。
が、敵会社の勢力というものが大幅に上がってきたのです。
そこでお願い致します。
敵会社の社長を殺して欲しいのです。
闇討ちでもなんて構いません。
とりあえず、我が社が少しの間でも対策を練られる様な時間が欲しいのです。
どうか、宜しくお願い致します。〕
という内容だった。
結局、コイツは自分のことしか考えてない、ということ。
“我が社”とかなんとか書いてあったけど、どうせ会社の収入が上がればなんでもいい。
そんな奴だろう。
「……あぁ、お前がこれをやることによって、うちの団体の依頼が増えるかもしれないんだよ。
だから、お前の今回の依頼は重要なことだってこと、覚えておけよ。」
僕が答える間をとらせず、あの人は行ってしまった。
あの人が僕らのことを『お前』と呼ぶときは、かなり重要だということ。
失敗は許されない。
いや、その前に、失敗なんてするはずがない。
殺しに行く前に
「おお!貴方が今回の依頼をこなしてくれる殺し屋ですか!」
あの依頼を受けた後、blackは例の社長が『その殺し屋の顔が見たい。』と言ったらしく、半ば強制的に会社の社長室に連れて行かれた。
正直、あまり関わりたくなかったんだけど、blackが『機嫌を損ねるから。』と許してくれなかった。
まさに鬼畜…。
まあ、“自分の快楽”の為だからしょうがない。
「はい。この殺し屋はうちの団体で1番の腕を持っています。
恐らくですが…、今回の依頼の成功率は100%に近いでしょう。」
「おお!これは期待できますなぁ!」
「はい。そうでしょうね。」
「じゃあ、1つ聞こう。」
blackが怒らせない様に、慎重に話し掛けているが、僕には機嫌なんてどうでもいい。
とりあえず、今回の“生贄”を聞くことにした。
「貴方の…、1番大切な人は?」
「私の…1番大切な人?…あぁ、そんなモノ、ありませんよ。」
そう答えることは予測していた。
「では…、1番大切なモノは?」
そう聞いた。
答えは1つだろう。
「金に決まっているじゃありませんか…。」
そう、社長は狂った目で答えた。
-*-
「killer、今回の生贄は?」
会社を出た途端、blackはそう僕に聞いた。
「会社…、だな。」
殺しをする僕には、生贄を決める権利がある。
「じゃあ、もう行くよ。」
「ああ。」
『悪』と『正義』