船出

まだこの世が薄明に包まれていたころ
ひとつの無垢な魂が まぶたをそっとあけた
「おはよう 万象よ」
彼はそう言うと 見渡す限りの「混沌」に 名前を付けていった

神にしてはあまりにも小さな声だったが
人にしてはあまりにも大きな声だった
「おやすみ 万象よ」
彼はすべての名前を付けたあと 静かにそう言ってまぶたをそっととじた

さあ、帆を上げよう! 大海原に漕ぎ出すのだ! 最初の人はそう言った 
我々も後に続かなくてはならない 
遠い過去の先祖の思いを胸に 
遥か彼方の未来へ
今がその時 その時なのだ!

船出

船出

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-22

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted