熱中症
リクエスト*一護夢
1
『う…緊張するなぁ…』
付き合って少したったある日、萌恵は一護の通う学校前にいた。
理由は簡単。兄がお弁当を忘れたからだ。
萌恵の学校は建校記念日でお休みだったため、こうして足を運んだ
…のだが。
『(うぅ…高校生って背高いし怖いなぁ…って言うか勝手に入っていいのかな?)』
先ほどからこんな様子で早15分。
そしてその後、覚悟を決めて中に入るまでに10分かかったのだった。
『あ、あの…』
「ん…あれ、キミは確か一護の妹ちゃん?」
『あ……水色くん』
たまたま近くにいた怖くなさそうな人に声を掛けると、彼は一護の友達の水色だった。
驚いた顔でこちらを見遣り、笑顔で話しかけてくれる。
「どうしたの?…あぁ、もしかして一護に忘れ物を届けに来たの?」
『う、うん。水色くんはお兄ちゃんと一緒じゃないの?』
「一護なら今啓吾と一緒に…あ、来た来た。おーい!」
『み、水色くん!声おっきいよ…』
彼の視線の先には、一護と友達の浅野啓吾がいた。
彼らは萌恵の姿に気付き、驚いた様子で走ってくる。
「萌恵!どうしたんだよ、こんなとこまで」
「萌恵ちゃん!今日も相変わらず可愛いΣっ痛い痛い一護折れる!!!」
『お兄ちゃん、お弁当忘れて行ったから…』
「わざわざ持って来てくれたのか?」
『うん、迷惑だったかな?』
「ンな訳あるかよ。サンキュな」
微笑み、大きな手で頭を撫でられる。
慣れたはずの動作が今では特別な物に感じられて、思わず顔に熱が集まってしまう
『あ、あああのっ、そんな!大したことじゃないからっ!!』
「萌恵ちゃん顔赤いよ?熱中症?」
『そ、そんなこと、な…』
ぐらり。
『…あ、れ…?』
唐突に視界が揺れ、目の前が真っ暗になる。
いくら短時間と言えど、季節は7月。しかも日が一番高い時間帯だ。
帽子も何も被らず、水分もとっていなかった萌恵は、そこで意識を失った。
**
『…ん…』
「っ萌恵!大丈夫か?痛い所とか…」
目を覚ますとそこは保健室。
…と言っても、見慣れない保健室だ。
しばらくぼんやりとしていたが、だんだんと頭がはっきりしてきた
あまり見たことのない保健室、目の前には大好きな一護。
ここは、高校の保健室だ。
『私、なんでここに…っていうかお兄ちゃん、授業は…』
「…俺は、その」
少し顔を赤らめ、頬をかく一護。
そして優しい瞳で見つめられ、また頭を撫でられる。
「萌恵の事を放っておいて、勉強なんかできるかよ」
『えっ、お兄ちゃ「一護」…へっ?』
「2人の時は一護って呼ぶって。約束したろ?」
『え…あ、ぅ…その…』
急に一護の顔が近付き、触れそうな距離になる。
しどろもどろと思わず目を逸らすと、体温と触れ合う。
抱き締められた。
『っ!…い、いち、にい…』
「誤魔化しても駄目だ。ちゃんと一護って呼んでみ」
『な、なんか今日のお兄ちゃん意地悪だよっ』
「当たり前だろ?」
声のトーンが低くなり、耳元で囁かれる
「心配させた罰だ」
『っ…い、一護…』
「ん?なんだ萌恵」
『心配、かけちゃって。ごめんなさい』
離された体に少しだけ名残惜しさを感じながらも、目を見てしっかりと謝る。
すると一護は、萌恵の額に口づけを落とした。
「…これでよしっ、さ、帰るか」
『え、あの、学校は…』
「あー…大丈夫だろ。」
そう言って床に置いてあったカバンをおもむろに持ち上げ、萌恵を横抱きに抱える
『っきゃ…ちょ、っと…!恥ずかしいよ!』
「あんま大声出すとみんなに見られて余計恥ずかしくなるぞ?
…教師に見られるくらいならまだいいけど、水色達に見られたらバレるかもな」
『それは…』
「ま、俺はいいけどな」
不思議そうに首を傾げる萌恵に笑いかけ、今度は頬に口づけを落としながら言う。
「そしたらあいつらもお前が誰の物かわかるだろ」
『〜〜〜〜ッ///!?』
熱中症のせいか。
はたまたこの困った恋人のせいなのか。
今年の夏は、暑くなりそうです
End
熱中症