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ここは何処だ?
俺は今何をしてるんだ?
そもそも俺は誰だ?
何処のどいつだ?
考えようとすると頭が割れそうになるほど痛む。
何なんだ・・・。
訳分かんねぇ・・・。
俺は真っ白のベッドに眠るミイラにされていた。
頭や足、腹を重点的に包帯で巻かれている。
体にはたくさんの機械がつけられている
機械音がうるさい・・・。
ピッピ、ピッピ耳障りなんだよ!
だいたいなんだよ。
この機械は俺に何をしたいんだ?
改造か?
それで世界をぶっつぶすつもりか?
やめとけ、無理に決まってんだろ。
近頃は馬鹿な悪の組織もあったもんだ。
うっすら目を開けると、夫婦らしき男女が隣にいた。
女は俺のベッドに顔をうずめて大声で泣いていた。
おいおい、俺のベッドに鼻水でもついたらどうすんだよ。
男の方は声は上げていないが、うつむいて号泣していた。
何なんだよ、男のくせにメソメソしやがって。
男が泣いてんじゃねえよ。
ていうか、何で見ず知らずの中年の男女が俺の隣で泣いてんだ?
縁起でもねぇ。
確かに見た目はミイラみたいだけどよ、死んじゃいねぇよ?
ちょっと開いていた俺の目と男の目が合った。
「おい、颯の目が開いてるぞ!」
はぁ?ハヤテ?誰だそれ?
女がいきなり俺の顔に急接近してきた。
それで俺の目を見て「颯?颯!颯が目を覚ましてくれた・・・良かった・・・。」っと言った。
台詞を言い終わった途端、女は床に崩れ落ちるように倒れた。
多分、安心して倒れたんだろうがそんなことはどうでも良い。
男も女も俺の目を見ながら「颯」って言った。
誰だその颯って?
まさか・・・俺・・・?
もしそうなら自分で分かるだろう。
自分の名前を忘れるなんて馬鹿な話あるかってんだよ。
廊下がバタバタし始めたと思ったら、いきなり部屋の扉が開いた。
白衣を身にまとった長身で筋肉質でいかにも番長っぽい外見の男と、変な形の帽子をちょこんと頭に乗せ白いワンピースのような服を着ている女が入って来た。
両者とも胸にはバッチがつけてあり、共通して「県立桜間病院」っと書いてあった。
そうか、俺は今病院にいるのか。
それでこの二人は医者と看護師か。
まてよ、じゃあ俺は何だ?
ベッドに寝ているとこからして患者じゃねぇかよ!
いったい何をやらかしたんだ、俺は・・・。
まだ意識がもうろうとしている中、医者に外見の番長ぶりとは似つかない柔らかな声で「颯君、私が分かりますか?」っと聞かれた。
「ハヤテ」って言葉がひっかかったけど、流れに流されるように「はい、まぁ・・・。」っと応答した。
「それでは今から検査とリハビリを行いなす。」
そういって、医者と看護師にいろんな検査をやられた。
その間に俺の意識はハッキリしてきて、事の全てを把握した。
医者から聞かされたことは衝撃的で、すげぇショックだった。
医者は真顔で言った。
「前原颯君は今回の事故で、『記憶喪失』になってしまっています。」
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今日の朝、近所のあばさんの世間話を盗み聞きしていました。
話の話題は我が夢岸学園高校2年B組前原颯君。
いかにも真面目そうで、メガネで、ルックスは良いけどおしゃれとに全くもって興味が無い地味地味男子。
連むと意外と面白いから仲良くしてるけど、真面目さは変わらず・・・。
時々「論理的思考で・・・」とか「辞書的に・・・」とか言い出す、いわゆる『変人イケメンメガネ』キャラ(略してHIM)なのです。
そんなHIMな颯がおばさまがたの世間話に登場するのだから、なんかよっぽどのことでもしたんだろーなぁ、なんて軽い気持ちで聴いていた。
そしたら衝撃の事実を聞いてしまった・・・。
「前原さんちの長男の颯君って、最近あったひき逃げ事故で記憶喪失になったのよ。」
「なんだってぇ!?本当か?友喜。」
「確実に本当。だっておばさん断言してたもん。」
「そう言えば、今日の朝に校長室の前通ったら、颯と両親が校長とそんな感じのこと話してたような・・・。」
「まじかよ、倶弥。あのひき逃げ事故ってそんなひどいもんだったのかぁ・・・。」
「おばさん曰く、3日間眠り続けた末目覚めて、それから3日は安静にして、事件からちょうど一週間たった今日学校に来るらしい。」
「颯、復活早!」
「それじゃあ今日、俺と颯と友喜と明の4人で退院パーティーしようぜ!」
「いいねいいね!やろうぜ!」
「ほらほら、席付け!HR始めるぞ。」
「今日はみんなに知らせておきたいことがある。全員が知っての通り、1週間前に前原がひき逃げ事故にあった。それでだな、実はっ・・・」
「俺から話まーす。自分のことなんで。えーっと、俺の名前は多分前原颯。ひき逃げ事故にあったらしく、その後遺症として『記憶喪失』になっちゃいましたぁ!だから、何にも覚えてないから話づらいかもしんないけど、色々ヨロシク☆」
先生の話を遮って入って来てしゃべり出したのは、まぎれもなく前原颯だった。
でも、なにか違う。
いや、何かどころか全部違う。
だって目の前にいる前原颯は、髪が茶髪で格好良くセットしてあって、メガネの代わりに藍色のカラコン入れてて、服装は派手過ぎないおしゃれを決めてて、女子の瞳を一瞬でハート型にしちゃうようなカッコイイオーラむんむん出してる男だった。
おいっ、本当に颯なのか?
颯って地味な格好してたからあんまり分からないけど、カッコイイ顔はしていた。
でもそのルックスを最大限に生かしたおしゃれをしている。
男の俺でも惚れちゃうくらい・・・。
「んで、俺は何処に座ればいいの?」
「あっああ、そこの空いてる席。本多君の隣。」
「りょーかい。」
うわっ、そうだった。
颯の席は俺の隣だったんだ。
颯は一番後ろの窓側だから隣の俺とよく話してたんだっけ。
こんなイケメン颯君とどう話せっていうんだよ・・・。
「本多、ヨロシク。」
「おっおう・・・。」
今まで颯には「本多君」って言われてたから、妙に気持ち悪い。
「本多の下の名前ってなんて言うの?」
いかにも初対面です的な挨拶だったもんだから逆にテンパって、「ゆゆ、友喜君です。」なんて馬鹿なことを言ってしまった。
いくら何でも「キモい」っと思った。
だけど颯は、「本多って面白いね。何テンパっちゃってる上に自分の名前に君付けしてんの。」って言いながら爆笑してた。
颯のその満面の笑みがめちゃくちゃ格好良くてガン見してしまった。
だって、颯は笑うなんて事全然しなかったから・・・。
「何?どうしたの今度は?俺の顔になんかついてる?」
記憶喪失について話してる時もそうだった。
颯は自分のことを「俺」って言っていた。
元の颯は「僕」だったのに・・・。
「いやっ・・・。別についてないよん☆」
とりあえずここは明るく振る舞っておこう。
「そう、それなら問題なし!」
それから授業が始まり、会話は途切れた。
授業中、颯は元の颯のせいか、真面目に授業を受けていた。
小テストも満点だった。
もちろん合格。
そんでもってクラス内順位第1位。
100点なんだから当たり前の結果か・・・。
最悪なのは昼休みだ。
弁当の時間は戦争になる。
そう思って戦闘態勢を整えていた。
やっぱり昼休みは最悪。
戦闘態勢に入っておいたのはいいけど、敵の視線が気になる。
「なぁ本多、お前って何処に住んでんの?」
また、初対面です的な質問・・・。
「俺は、西町の4丁目だよん!颯の家の隣の隣の隣の家だよ。」
「それじゃぁ、家近かったんだ。今日一緒に帰えんねぇ?」
「えっ、良いよ。それじゃぁ、明と倶弥も一緒で。」
「アキラ?トモヤ?誰だ、それ。」
「そっか、覚えてないんだっけ。明!倶弥!こっち来て!」
「なんだよ。おっ、もしや颯君の指名?嬉しいねぇ。俺は、永峰明。おかえり、颯。」
「俺は、聖倶弥。生きてて良かったぜ、颯!」
「ナガミネアキラ、ヒジリトモヤ・・・、それとホンダユキ。よっしゃ、覚えた!」
「颯君・・・本当に記憶喪失になっちゃったの?」
でた、女子ども。
こいつらこそ俺達の敵。
いきなり格好良くなった颯に気が向き始めたんだろう。
颯のこと「眼中にない」とか言ってたくせに、いきなり話し掛けてやがる。
しかも、すでに分かりきってること聞いてるし。
今まで、横山響LOVEだったくせに・・・。
「ああ、そうなんだよ。だからお前らの名前も分かんねぇ。でもこれから覚えるから安心しろ。」
颯!何、最後の決め台詞!
けっこう良い声してんのに、さらにそんなこと言ったら、女子の目がハート型に・・・ってもうなっちゃってるよ・・・。
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