Aureate Dawnー金色の夜明けー

第一話 魔神とのケイヤク

時刻はまだ夜明け前。私は歩いていた。見えるのはすべてビルや家の瓦礫の山。だがそんな荒野の中心に一本の剣が突き立っていた。薄暗い中でもまばゆい輝きを放つ銀造りの直剣。私がそれを抜くのを見計らったようなタイミングで朝日がさす。
「この剣を見ると、いつでもあなたのことを思い出す、、、あなたが目指して、見果てた夢は私が、、必ず、、、」
私は剣を携え、また歩く。この剣を、彼の理想を引き継ぐべき人物を捜すために、、、
「金色の朝日なんて縁起いいわねえ」
次の持ち主とはこんな綺麗な景色の時に出会えたらいいな、、、金色の夜明けに、、、、

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2015年福岡ー
場所は変わり、県立天神第一高校、普通科1-5の教室。
「それでは今日はここまで。課題を来週までにやっておくこと」
鐘の音を模したチャイムが午前中の授業の終わりを告げ、教師が教室を立ち去ると、広めの教室には弛緩した空気が漂った。俺は課題となっているプリントを一瞥した。たっぷりと歯応えのありそうな長文の設問にため息をつきながら、筆記用具とともに、バッグに放り込む。周りの生徒はすでに昼休み気分でワイワイしている。普通の光景だが、俺、三輪京介の目には普通に見えない。その、、なんというか、、俺は見てはいけない物というか見たくない物というか、、とにかくそう言う系統の物を見ることができるのだ。まあ俗に言う幽霊とか妖怪とかの類だ。別に特殊な時計の光で見えるようになったわけでも無く、いつの間にか見えるようになっていたのだ。まあ日常生活に支障は、、、無いので気にしないでおく。いつものように、弁当を取り出そうとすると、声がかかる。
「あ、京介、一緒に中庭でたべようぜ」
声をかけたのは俺の少ない親友の一人、もてるメガネの村上伊織だ。この柔らかい笑顔に数多の女子たちは射止められているのだろう。
「ああ。ならさっさと来い」
「はいはいっと」
俺は伊織と肩を並べて中庭に入り、弁当を広げる。弁当を食べながらの会話も忘れない。
「そういえばさ。聞いた?」
「ん?」
「ほら、あの公園の殺人事件」
「ああ、ニュースになってたな」
「あれさ、実は人間の仕業では無いんじゃないか、という考えが浮かんでるんだ」
「は?なんで?」
「公表されてなかったんだけどさあ、惨殺された二つの死体、パズルの名人が組み合わせたんじゃないかって言うくらい〈切り刻まれて〉たんだ」
伊織の両親は警察のなかなか高い地位にいるらしく、いろんな裏情報が入ってくる。
「なるほど。それで俺か?」
「ああ。足跡だけでも見つけてほしいって。護衛はつけるから」
「わかった。今日いく」
「おっサンキュー!」
人間には、必ずなんらかの守護霊がついていて、幽霊の表情を見るだけで、その人の心境、何を考えているのかは予想がつくし自分がみたいと思った幽霊の足跡を見ることができる。以前伊織が親に俺の幽霊の類をみる、それを追跡する力をうっかりはなしたら、バイト代を払うからぜひ協力してくれ、と頼まれ見事事件解決。それからたびたび依頼がくる。(はあ、、、しんど、、、)
放課後ー
事件現場に向かう途中、声をかけられた
「あの、すいません」
「はい?」
後ろを振り返る。そこに立っていたのは黒いロングヘアーに、黒い瞳に、黒いワンピースの文字通り真っ黒な少女がいた。しかし俺はそこから動かない。(見えない、、、)
「あんた、何者?」
「あは、やっぱりばれちゃいましたか」
そうこの少女には守護霊がいない。ということはこの子は、人間じゃないー!?
「そんなに警戒しなくてもいいですよ。危害は加えません。代わりに忠告にきました」
「はあ!?」
「その事件現場、行かない方がいいですよ。危険です」
「いや事件現場が平和なわけないだろ」
「はあ、そこまで行くつもりなら止めませんが、、死なないでくださいね。あなたは貴重な人材ですから」
「は?ちょっとまて!」
一歩踏み出した瞬間、彼女の姿はきえていた。(なんだったんだ、、、少なくとも人間じゃないな、、)更に数分後ー入り口に見知った顔を見つけた。
「おーい伊織~」
「あ、京介。遅いぞ」
「時間ぴったりだろ」
「えー普通十分前に来るのが基本だろ」
「知るか」
そうして二人は一緒にいた警官に連れられて、現場に向かうと恰幅のいい男性が迎えてくれた。伊織の父だ。
「おお、すまんねえ京介君」
「いえいえ」
「そう言ってもらえるとありがたい」
そう言って場所をあけ、まだ血の後がはっきりと残っている現場を見せてくれた。
「指紋も頭髪類も足跡さえ残らずこのざまだ。どうだね」
「もう見つけた。付いてきてください。」
「私が行きます」
事件の時はいつも護衛をしてくれる一人の警官が名乗り出てくれた
「それじゃあ、お願いします」
「分かった」
俺は走り出し、黒い、殺意に染まった足跡を追っていく。数十分ほど走ると、足跡が急に濃くなった。この辺りで減速したのだろう。しばらく歩くと公園の茂みに入った。前に見えたのは事件現場だ。足下にある足跡はかなり色濃く残っている。(これは、、ほんの数時間前まで、ここから様子をうかがっていた!?だとしたら、、、)
「すいません、銃を構えて付いてきてください。犯人は俺たちが常人には見えない足跡を追ってきているのを聞いている」
「なっ!?わ、分かった」
そして、回れ右をして前をみた瞬間、全身が凍り付いた。
『っ、、、!!』
警官は発砲しようとしたが、何か大きな刃物を刺され、その場に崩れ落ちた。
「あ、、、あ、、」
無骨な鎌、骸骨の体に、ぼろぼろの全身を覆う黒いローブ。目の前にいたのは〈死神〉だった。死神は俺を見ると、ためらいもなく鎌を振り下ろす。(し、死ぬっっ!!)だが、鎌が降ってくることは無く、視界に入ったのは鎌を素手で掴んで止めていた黒いワンピースの少女だった。彼女はこちらをみて言う。
「だから言ったでしょ?危険だって」
「な、、お前、、、」
「ふふ、何が何だか分からない顔して、、」
「後ろ!」
「え?ってわっ!」
後ろから一つの鎌が飛んでくるが華麗なジャンプでそれをかわす。なんなんだこいつは、、、
「ふー怖かった。あれは〈暴霊〉といってついていた人間が何かしらの未練を残して死んだ時、それをはらすために何でもする暴走した霊。だから略して暴霊って訳ね」
「説明は後でいいから!!こいつをなんとかしろ!」
「ムリ」
「は!?」
希望が砕け散っていく音がする。
「私はこの世界じゃ無力なの。誰かに協力してもらわなきゃ」
「何をすればいい!?」
こう聞いたことが後に俺の人生に大きな刺激を、歪みを与えることになるとは知るよしも無かった。
「先に名前を聞かせておくね。私は魔神・アスタロト。ラー(太陽)やオーディーン(主神)と並ぶ者。さあ私と契りを結び、力を手に入れるかこのまま死ぬか。あなたに選択権を与えます」
そういった瞬間、彼女の体から凄まじい存在感を感じた。まるで世界から睨まれたようなかんじがした。もう退くことはできない。ならば答えは決まっている。
「いいだろう、、、契りを結んでやるよ。だから、、俺に力をかせっ!」
「わかりました。汝、三輪京介。あなたを新たな主と認め、我が力を与えましょう。」
その言葉と共に、虚空から銀造りのまばゆい輝きを放つ直剣が現れ、俺の手に収まり、アスタロトも剣に吸い込まれる。すると銀の剣が黒色に染まり、力があふれ出てきた。アスタロトに気圧されていた暴霊が再び奇声を上げながら襲いかかってくる。
「うるせえよ」
俺は軽く剣を振り、暴霊をまっぷたつに切り裂いた。ただそれだけなのに周囲はかまいたちが通った後の様に木々は切り倒され、草、花は刈られ中を舞っていた。視界の端で暴霊が消滅するのを見届けると緊張の糸が切れたのか、俺はそのまま倒れ、意識が暗転した。 ー誰かに揺すぶられ、目を覚ます。目の前にはアスタロトの顔があった。
「起きましたか?」
「ん、ああ」
「この警官は治療しておきました」
「ああ、ありがと」
「さあ京介、今日から正式に私はあなたに従うわけですが、、」
「うん」
「わたし、宿がありません」
「馬鹿かお前」
「従ってあなたの家に寄宿させてもらいます」
「はあ、そんなとこだと思った、、、いいよ。家は俺一人しかいないし」
「では、決まりですね。京介これからもよろしくお願いします」
「ん。こちらこそ」
二人は金色の夜明けを背景に固く握手をした。
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暗闇の中、十二ある椅子のうち、十一に何者かがすわっている。
「どうやら、あやつ人間と契りを交わしおったな」
「なんと、、、やつはまた同じことをしでかすつもりか?」
「ならば一刻も早くここに連れ戻さねば、、」
「まあまあ。あの時まで時間はまだあります。ゆっくり策を練りましょう」
「うむ」
そうして十一人の姿が闇に溶けるように消えた。

Aureate Dawnー金色の夜明けー

Aureate Dawnー金色の夜明けー

幽霊が見える主人公三輪京介(みわきょうすけ)となにかと訳ありな魔神アスタロトとの心霊事件解決事件簿!事件を解決していくうちに、お互いはそれぞれの過去を知り、仲間が増え、喧嘩もしながらも世界の浄化ーaureatedawn(金色の夜明け)ーを止めるため、その真相をしるため、剣を振るう!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-10

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