涙、他詩編

君の涙は誰のものなの?
誰を思って、君は泣くの?
暗い空が、この視界を黒く染める
そこに降る雨の
なんと悲しいことだろう
なんとさみしいことだろう

僕は過去を思って泣く
その涙は誰の為でもない
過去の僕を思ってのことだ
過去の自分を思ってのことだ

悲しく涙が出る時は
一人さびしく家に居よう
一人さびしく泣いていよう

過去の自分を思うなら
山の頂上で悲しく涙を流そう
そうして落ちていく陽に
過去の自分をたくしていこう


僕は過去、遠いところへ旅をした
誰とでもなく、たった一人で

それは遠い遠い過去の思い出だ
過去を思うと僕は辛くなってくる
苦しくなってくる

僕の過去には、いい思い出が無い
そこには若者らしい、青春が無い
過去に思ったどんな可愛い子とも
僕は言葉を交わしたことは無い

それでも僕は自然が好きだ
あの過去に、一人で行った河原が好きだ
多摩川に夕日が沈むのを
一人で見ているのが好きだ

僕は過去とほとんど口をきかない
それでもそれは忘れまじと僕の心で戦っている
過去よ、もう忘れるのには十分だ
過去よ、そんなに苦しまないで、僕の悲しみとなれ
僕の力となれ、過去よ
辛い思いをさせてしまって、すまなかった
過去よ、遠い僕の過去よ

涙、他詩編

涙、他詩編

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-05

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