目を見ては言えないから2(カノ×キド)
カゲプロの二次創作です。
カノ×キドの恋愛物が嫌いな方はご遠慮ください。
1
なんとなく見ていた通販カタログ。
そこにはふわふわの髪の毛に甘いを化粧を施して、頬を少し赤らめ、カメラに笑顔を向けた可愛らしい少女がいた。身にまとう淡い桜色のシホンワンピはその少女にぴったりで。ふわふわで、ひらひら。そんな言葉があってしまう可愛らしいワンピース。
俺は今、近所のスーパーに買い物に来ていた。一人でいける、荷物持ちはいらないとそういったがカノは、しょうがないからついて行ってあげる☆なんてことをへらへらと言いながら俺に結局ついてきた。相変わらず意味がわからない。
買い物も一通り終わり、レジを通すと、袋詰めするところに目がいった。
女性誌の通販カタログ。
いつの間にかどこかへと消えてしまったカノの存在を確認し、俺はそのカタログを見ながら勝ったものを袋詰めしていった。見ながらといっても表紙だけ。中身は見ない。今まで見たこともなかったし、まぁ、興味なかったとはいえないがあまり縁のない代物だった。だけど今回ばかりは少しだけ興味を最も引かれたのだ。
それが淡い桜色のワンピース。
可愛い少女を見て、袋詰めをしながら自分を見る。
いろいろな部分で負けている・・・。
おんなじ女なのにどうしてこんなにも違うのだろう。髪の毛だっておんなじくらい長いのにこの少女はなんでこんなにふわふわなのだろう。
きっと、この少女が着てきるから映えるのだ。このワンピースだって生きるのだ。こんなにも可愛く見えるのだ。あるだろう、意外に実物を見てみたら想像とは違ったとか。そんな言い訳。
自分がはいた長ズボンを見る。この足にあのスカートは映えるか?いいや、まったくそうは思わない。そうは思ってることだし、わかってはいるのだ。
でも。ちょっとだけくすぐられた乙女心。
「俺も似合うようになりたい・・・・。」
呟いたってなれるはずもなく。俺はただ、悲しげにでもちょっとだけの乙女心に心を躍らせた。
「キード!!」
後ろから声をかけられた。振り向くとそこにはへらへらとしたいつもの笑い顔がそこにはあった。
「買い物終わった?」
「あぁ。」
今までの自分を見られてないか不安になった。どうやらからかってこないこの様子からにしてみてはいないようだ。心から安心した。
「帰るか。」
俺は袋詰めを終えた袋を持ち上げてカノの元へと歩いた。
「うん。」
そんな俺の手からカノはひょいと袋を取り上げ、勝手に前に進みだす。
「それ!!」
「僕が持たなかったら、僕が来た意味ないじゃん?」
振り向きざまにまたへらへらの笑顔。
「それもそうだな。」
俺は手ぶらのまま、カノの後をついて行く。
「それ持てるのか?」
「僕だって一様男です(泣)」
「俺より背が小さいくせに」
「それは言わないで!?」
そんな他愛もない話をして二人で家路に着いた。
きっとへらへら笑顔のおかげかもしれない。すこしだけさっきの悲しみがまぎれたような気がした。
夕日に影二つ。
その影のひとつに本のようなものが映し出されていたことを俺は知らない。
2
何気なく店内をうろついているうちにキドを見失った。いつもあること。きっとキドは僕が勝手に放浪していったのだろうと思っているのだろうけど。
でもそれは絶対に言わない。例えわかっていることだとしても、キドはこれを言ってしまったら傷ついてしまうから。近ければわかることだって多い。それがキドにとってどれほどまでにいやなことか。
女の子としてだったらきっと尚更だろう。
僕はキドを探すように、そしてついでに何かないかと店内を見回った。けど、特に何もないただのスーパーなので見回るとまでいかずにキドがすぐに見つかった。もうすでに会計を終えたところだったらしい。袋詰めの作業に入っている。
声をかけようとした。片手を上にあげようとしたそのときだった。
僕の目に移ったキドは紛れもなくいつもとは違っていた。別人とまではいかないが、雰囲気というかなんと言うか。
キドの目にはまぎれもない好奇心と、高揚が映し出されていた。
その姿はいつもの大人ぶったキドとは違う、年相応の女の子。
もちろん、買い物を終え袋詰めをしている姿には違いないのだが。
少し上げた片腕を僕は静かに下ろした。
ちょっとだけ寂しくなった。いつの間にこんなに変わっていたのだろうか。変化は喜ぶべきはずなのになんで僕は素直に喜ぶことができないのだろうか。いつか、勝手にいなくなってしまうように思えてしまって。それがキドだから尚更怖くって、本当に今すぐにでも消えてしまいそうで。隣にいたはずなのに、横でその顔を見せていたはずなのに。
キドをもう一度見た。しかし、その顔はさっきまで見せていた顔とは違う。あれ、どうしたのだろう?
「俺も似合うようになりたい・・・・。」
その瞬間、キドの消えそうな声が騒がしい店内に混じった。聞こえるはずのないその声は、でもそれは小さくもか弱くても、キドの心からの叫びのように聞こえた。それは僕だけだろうか。
いいや、女の子だったら誰だってそうであろう。
キドの手元を見ると女性誌のカタログがそこにおいてあった。今、僕が言ってしまったら気がついたことを話してしまったら、キドは恥ずかしがって心のうちの思いをまた閉じてしまうであろう。
「キード!!」
だから僕は何事もなかったように、今来ましたかというように、いつもどおり見せていたへらへらの笑顔で声をかけた。振り返ったキドの顔は不安の色。僕は首をかしげる。これでいい。
「買い物終わった?」
そういうと、キドは安心したように曇った顔を元に戻した。
「あぁ。」
キドの元へと歩きを進める。
「帰るか。」
僕の歩きと同時にキドは荷物を持って、僕の下へと近づく。きっと、それでも見せたくはなかったのだろう。
「うん。」
少しだけ歩きを早くする。
僕ははひょいと袋を取り上げ、勝手に前に進みだす。その瞬時に、横目でそれを見た。
「それ!!」
僕が持った荷物をキドが追いかける。
「僕が持たなかったら、僕が来た意味ないじゃん?」
振り向きざまにまたへらへらの笑顔。
「それもそうだな。」
僕も後ろをキドは少しだけ笑ってついてきた。そしてすぐに追いついて、僕の隣に並ぶ。
そこはキドの特等席といったところか。
「それ持てるのか?」
「僕だって一様男です(泣)」
「俺より背が小さいくせに」
「それは言わないで!?」
そんな他愛もない話をして二人で家路に着いた。
帰り道僕は変わらずへらへらの笑顔でい続けた。少しだけさっきのキドの悲しみがなくなるように願って。ぼかして、隠れるように。
夕日に影二つ。
横目でみた女性誌のカタログ。
それはさっきなんとなく店内で見つけ、手元に取っておいた本と同じものだった。
長い髪、綺麗な顔、優しい笑み。
桜の季節に合いそうなピンクのワンピース。
キドの心に花が咲くことを僕は心の中で確信していた。
3
あれから数日がたったころ。俺達のアジトへと宅配便が届いた。箱に入って中身は見えなかったが、そのあて先はセトでもなければ俺でもない、へらへら笑いのあいつだった。
物欲なんてなさそうな、という物欲なんてなかったカノが何かを買っていたのだ、さすがに少し驚いた。
宅配便から受け取り、中へ持ってはいったはものの受け取りの、持ち主になるカノはそのときいなかった。なんでこんなときにいないのだろう。いつもはいやでも俺の隣にいるくせに。
勝手に中身を見るのは忍びないので、カノが帰ってくるまでリビングの机においておいた。
ここ最近、カノはアジトにはいない。理由は知らない。聞いても笑ってごまかされる、しかもからかわれてそれどころではなくなるのだ。
この箱の中には何がはいっているのだろうか。何が詰まっているのだろうか。
この箱にはカノがいない理由が記されているのだろうか。
することもない休日。何がはいってるのかわからない箱をただ見つめていた。というよりは睨み付けていたというほうが正しいのかもしれない。
「ただいま~」
のんきな声が聞こえた。俺は睨み付けていた箱から視線をそらして、なんとなく理由もなくテレビをつける。わけのわからないお笑い番組の笑い声がアジトに響いた。
「おかえり、お前宛に届け物が届いているぞ。」
番組なんて見ていないないくせに俺はその顔を見ず、用件だけを言った。
すると、カノがその箱に近づくなり、あぁ、と言って俺の顔を見た。その顔はいつものへらへら笑顔ではない。
「あけていいよ、キド。」
その顔は花が咲いたような優しい笑み。その笑みを俺に向けた。
頬が赤くなるのがいやでもわかった。
「あ、あけていいって・・・これはお前のものだろう?」
俺は目を見ていられなくなって、顔をそらす。
「うーん・・・、でもこれ僕が着たらただの変態だと思うけど。」
「は?」
わけがわからない。
「・・・まあまあ、いいからあけてみなって。」
「で、でも・・・」
しかしいまだに状況を飲み込めていない俺にかまわず、カノはきびすを返す。
「じゃ、僕はまたこれで~」
そうしてカノは片手を挙げてどこかへまた、行ってしまった。
「勝手すぎだろ!!お前!!」
玄関の閉まる音とともにそう投げかけた。
閉まった玄関には小さな花びらが風に混じって入り込んでいた。
目を見ては言えないから2(カノ×キド)