宇宙戦士ユーボット

一話 破滅への救世主ユーボット

 突然はいつも突然起こるもの。
 どこにでもある街で、佐那川裕翔はその突然と巡り合わせた。
 今日は一月二十二日。その日世界の空は巨大な円盤に覆われた。その円盤からは無数の怪物が現れる。身体が石の様で激しく建物を壊す怪物や、空を飛び人をビル二十階から突き落とす怪物も。
 そして子供の上に割れたガラスの破片が降り注ぐ。
「危ない……!」
 裕翔はそれに気付くと咄嗟に子供を庇い突き刺さり死んだ。はずだった。
「っく……あれ?」
 だが、裕翔はガラスに刺さらず。結果的に生き延びることが出来た。
 そして五つの光が流れ星の様に落ち裕翔は見逃さなかった。その光は世界各地に広がり一度それぞれの方向へ飛んでいく。
「一体何が……っな!」
 裕翔は空を見上げた。すると大きな円盤から巨大な化け物が現れる。
「全世界に次ぐ、我々はコロスロイド。俺はデトロイ将軍だ」
 デトロイは鉄仮面を被り大きなマントを靡かせると大きな声で宣言する。
「この地球を支配するため、人間を殺す! 生かしては置かない!」
 地球の支配を目論むコロスロイドの侵略は始まり。裕翔の見える世界は今変わった。

~~~

 コロスロイド。それは宇宙を旅する殺戮生物。その種類は無数に存在し、コロスロイドを支配する創生者。暗黒破壊生命体デスギャイダーを中心とした大変危険な生物である。デスギャイダーの力は凄まじく地球の前にも幾つもの星を滅ぼしてきたのである。しかしデスギャイダーは前の戦いで傷つき眠りについてしまったのだ。その復活のためには人間の悲しみや憎しみから生まれるマイナスエネルギー。ネガティブレイブが必要だった。
 大きな円盤。デスユーフォーは日本の真上で透明で浮いている。それを人々はもう気付けない。もしかしたら貴方の上にも……

 コロスロイドの侵略が始まり世界は大慌てだった。警察や軍隊ではコロスロイドの圧倒的な力には敵わないのだ。
『ただいま、コロスロイドは全世界各地に支配を広げています。日本では――』
 テレビが乱暴に壊れ、街は火の海に包まれていた。
 その最中、佐那川家には避難者が集まっている。
 佐那川家は古くから続く刀の一族だった。由緒正しき名家であり、現当主は佐那川裕翔である。
 広い屋敷には避難者達を匿えるほどの部屋があり、裕翔は常に警戒を途切れさせず、自分の部屋で精神統一していた。
「……」
 裕翔の部屋に一人の刺客が現れた。年齢は三十代で大きく髭を生やし頭は丸刈りの名前はトラスケ。
「裕翔大将! 大変です!」
「コロスロイドか?」
「違います道場破りです!」
 裕翔は勢いよく立ちあがったがその言葉を聞き減速する。
「何」
「道場破りです」
「……分かった、理由はそいつから訊く」

 道場へ着くと一人の少女が裕翔を待っていた。
 猫耳のフードパーカーと言う異色な服装に対し、質の良い黒髪と紫色の瞳が大和撫子の様であった。
 裕翔は困った顔を浮かべ猫耳パーカーの少女に訊いた。
「君が道場破りか?」
 裕翔はまさかと思ったが、結果少女は頷いた。
「私はコヨイ。佐那川裕翔、貴方と打ち合いを所望します」
「今がどういった状況か分かっているのか? 道場破りなどしている場合じゃないだろうに」
「頭の打ちどころ……悪かったのですか?」
 会話が噛み合ってないと裕翔は感じ、仕舞に面倒になる。こんなところで時間を割いてる場合じゃないと感じ、適当に言葉を並べた。
「少し記憶が欠落した。よく覚えていない。戦えない」
「問答無用です……覚悟」
 コヨイは竹刀を投げると裕翔は受け取り反射的に構える。
「問答無用……おい」
 意味をすぐに察すると、コヨイの方が早く飛び掛かった。
 裕翔は竹刀による一撃を捌く。
「落ち着け、俺はそんなに暇ではない」
 攻撃を捌き続け裕翔は隙を探していた。狙うのは誰にでも一瞬だけある隙だ。コヨイは大きな一撃の予備動作を構えた。
「っはぁ!」
 重たい一撃は裕翔の元には届かずに大きな隙が生まれた。そして裕翔は隙を見逃さない……確実にコヨイの胴に一撃を止めた。
「っく……!」
 勝者は裕翔だった。
「参りました」
 二人は一礼し竹刀を収めた。コヨイは髪をかき上げる。
「それでなんでこんなことを」
「腕は鈍っていないのですね。ばっちりです」
「君はどこかで……?」
 その時トラスケが駆けつけ、二人の時間は普段通りに流れ始めた。
「大変です! コロスロイドがここにぃ!」
「なんだと」
 屋敷の周囲にはコロスロイドの戦闘員コロスローが無数に溢れている。
 コロスローは薄い黄色のタイツに包丁を持ち屋敷の壁を何度も斬りつけていた。
「コロスローコロスロー」
「今すぐ向かう。トラスケお前はこの子と避難した
者達を逃げさせろ」
「分かりました! それではこちらへ」
 トラスケがコヨイを案内しようとしたが首を振った。
「私は大丈夫です。それよりあなたの方こそ、ここを離れたほうがいいです。失礼します」
「どこへ……」
 気が付くとコヨイの姿は消えていた。そう、まるで忍者の様に……

 裕翔は迅速に家宝の刀を取りに行く。金の縁の黒い鞘に収められた千斬幻月刀。裕翔は一度ためらったが刀を持つと鞘を抜き試し斬りをする。
「……流石は人類最強の言われた刀。小さい頃は持つこともできなかったわけだ」
 一度鞘に納めるとコロスローは既に庭まで侵入していた。
 裕翔は火の海に飛び込みコロスローを斬っていく。
 その切れ味は凄まじくコロスローは次々に倒れていく。
「コロスロー……」
「っはぁ!」
 半数のコロスローは裕翔に斬られてしまった。その誰もがもう二度と立ち上がることはない。絶命し壊れた機械の様に動かなくなってしまうのだ。
 しかし裕翔の前にコロスローの二倍の体格もある怪物が現れた。特徴的な部分はペットボトルで作られたような身体で、指の奥にはキャップがついている。ペットボトル怪物だった。
「俺の名はボトルンガー! 早くこの中にある物を殺せ!」
「命を物呼ばわりするな」
 ボトルンガーに一撃を入れると裕翔の存在に気付いた。
「貴様はなんだ!」
 反撃を裕翔は背を向け受け止めると素早く斬り返す。しかしボトルンガーにダメージはなかった。
「腕は確かだ。だが俺の名はボトルンガー! ボトルを武器にするコロスロイドだ!」
「知るか!」
 裕翔は隙を見せずに攻撃をするが苦戦を強いられる。人とコロスロイドではあまりに力の差が歴然だった。
「どうした! さっきまでの威勢は!」
「っく!」
 ボトルンガーの一瞬の隙を見つけ、重たい一撃を叩き付けた。
「っな!」
 しかし大きなことが起こった。一大事。刀の刃が宙へ散る。それは裕翔が信じた刀である。
「折れるだと!」
「隙ありだ。死ねぇ! ボトルミサイル!」
 刀で攻撃を防ごうとするものの、裕翔は道場の壁まで突き飛ばされる。
「うぐぅっ!」
 折れた刃は地面に突き刺さり、裕翔には後が無くなる。
「人間にしては強かったが、武器がまるでだめだった。人曰く。ピンチだ」
「千斬幻月刀が……だが!」
 裕翔は立ち上がり刃の刺さった場所まで飛ぶ。しかしその先には既にコロスローが待ち構え顔に重い拳を受けることになる。その後も何度も踏みつけられ体中から血が出る。
「っく! っぐぁ!」
「はっはっは! こいつからもネガティブレイブを頂く。殺せ!」
「ユーボットチェンジ!」
 しかし黒い謎の影がボトルンガーの殺戮を止めると。コロスローを一掃する。
「なんだ貴様は!」
 仮面を被った黒き戦士。辺りは静まると黒い剣を構える。
「月光に伝う虚無。ブラックボット」
 ブラックボットと名乗る戦士は裕翔を抱えると剣を投げ、腰に掛けてあった銃を放ち、行方を暗ます。
「悪いですが、今貴方の相手はしていられません」
「痛い! あれ……逃げたか。だが今度会った時殺す!」

~~~

 何とか逃げ切るとコロスロイドがいない広場で裕翔は腰を掛ける。
「すまない。俺が力不足だった……」
「馬鹿です。どうして立ち向かったのですか」
 ブラックボットは変身を解除すると見たことのある姿だった。
「まさか君が」
「コヨイ改めブラックボットです」
 裕翔は額の血を拭き取ると起き上がった。
「それでは、どうして俺の元に来た?」
「本当に覚えてないのですか?」
「……あぁ」
 この際仕方なく裕翔は嘘をつく。しかし躊躇いがなかったわけではなかった。その為にコヨイの表情は低くなる。
「……」
「悪い、今はいい……っく」
 傷口が激しく痛む。
「大丈夫ですか」
「あぁ、少し傷が広がっただけだ。痛みには慣れている」
 そして折れた千斬幻月刀を見つめる。
「ですがその刀では。その姿では無理です」
「人類最強の刀で刃が立たないとなれば、本当にお手上げかもしれないな。だからと言って諦めたくはない。親父が言った『不可能と嘆くな。強くなれ』俺は不可能を可能に斬り開いて未来を創りたい」
 その一瞬。裕翔の心が光った。
「……ミラクフューチャー」
 コヨイはぼそりと呟く。
「何か言ったか?」
「いえ、今。この地球には私と同じ力を持った人が、私を入れて四人います。最後の五人目が貴方です」
「俺が……」
 裕翔は戸惑っていたがすぐに納得する。
「分かった。やる」
「今、仲間達が日本へ向かっています。もうじき到着しますから、その御方から変身ツール。ユーボットチェンジャーを受け取ってください」
 頷くとコヨイは自分のユーボットチェンジャーを見せる。スマホ端末によく似たものでアイコンに変身などが映されていた。
「使い方は簡単です。この変身アイコンにタッチして。『ユーボットチェンジ』と叫べば、それぞれの色の戦士に変わります」
「ユーボットチェンジか。分かった、その仲間達と言うのはどういう……っ!」
 ペットボトルのキャップが飛んできた。間違いなくボトルンガーのものである。そしてキャップから液晶の映像が現れる。映像には人質が映し出され中にトラスケもいた。子供は泣き出し、裕翔は居ても立っても居られなかった。
『強き人間! 俺はボトルンガーだ。すぐに採石場に来て殺されろ!』
 映像が途切れると走り出す。
「待ってください。どこへ行くのです」
 コヨイは手を掴むとすぐに振り払う。
「決まってるだろう」
「罠です」
「罠でもいいさ」
 折れた刀を離さずに人質を救うため裕翔は走り去った。コヨイもその後を追い走り出す。


~~~

 ラスベガスではコロスローは全滅した。そこには黄色いコートを羽織り茶髪の青年、アカツキが立っていた。彼こそがイエローボットだった。
「はぁ、まぁ雑魚だな、可愛い娘いないかなー」
「ワーオ、イェェェェイ!」
 アメリカのボディービルダーが走ってくる。
「うわ、男かよ! 専門外だね、ワープシステム作動!」
 アカツキは全力で逃げ、日本へ向かう。

 パリではコロスローを踏み台に綺麗な女性。ヨウコが花を見つめながらケーキを食べていた。華やかなワンピースにデニムジャケットを着て長く明るい髪を靡かす。彼女がピンクボットである。
「ふぅ、怖かった……コロスロー」
 笑顔で食べ終えるとモデル体型だとすぐに分かった。パリの男はヨウコをナンパしにやってきた。
「オーナントビジン!」
「ごめんね? 今はね、相手にしている場合じゃないの。それでは御機嫌よう。ワープシステムっと」
 優雅にヨウコは日本へ向かった。

 そして北極。コロスローは凍死していた。身長の高い熱血な男、ユウヤが立っていた。緑のシャツ一枚で腕を組んでいる。髪は短い。
「……行くか。日本へ」
 シロクマが浮き上がってくる。
「グォォォォォア!」
「我に喧嘩を売るな、痛い目見るぞ! ワープシステム!」
 ユウヤも日本へ向かう。

~~~

 裕翔は言われた通りに採石場へ駆けつけた。
「捕まえたぞ! 子供に女! そしてこの場所で殺すのだ! まずは子供を落とす!」
 ボトルンガーは一ヶ所に集め、ゲーム感覚で殺そうとしていた。
 息が乱れる裕翔は一度呼吸を整えると折れた刀を持った。
「子供にも容赦なしか」
 拳を強く握り裕翔は再び走り出す。
「待ってください。今のあなたが行っても!」
「少しでいい、俺が時間を稼ぐ……子供が殺されかかってるんだ。黙って見ていられるか」
 ボトルンガーは子供を持ち上げると崖から突き落とそうとする。
「貴方が殺されます! それでは犬死です」
 そして子供が落とされる。地面と衝突すれば骨が折れるほどの高さだ。一回で殺す気はないボトルンガーは悪魔であった。
「助けてー!」
「っく!」
 裕翔は間に合った。傷口は開き激しい痛みを堪えると、ボトルンガーは笑った。
「来たか!」
 裕翔は子供の頭を撫でるとそっと笑う。
「あそこにいるお姉さんの元に向かうんだ」
 子供はコヨイの元へ向かうと、ボトルンガーを激しく睨みつける。
「俺が来た、人質は解放しろ」
「お前が死ねば解放してやる」
「ふざけるな……っく!」
 コロスローに囲まれ、裕翔は殴られ蹴られた。折れた刀を盾代わりに防ぐもどうしようもできない。
「勿論お前が死んだとしても解放する気はないが……その折れた棒では何もできない!」
「っくはぁ!」
 必死の抵抗でコロスローを殴り飛ばすが数が全く減ることはなかった。それでも裕翔は必死にあがき突撃する。
 しかし、ボトルンガーは火薬の入ったキャップを裕翔に飛ばし岩盤まで吹き飛ばされる。
「っぐぁあ!」
「諦めろ! 人間ではコロスロイドには勝てない。お前も刀も。力は無力だ!」
 しかし裕翔の瞳は濁っていなかった。強い意思が全ての諦めを殺していた。
「例え、千斬幻月刀が折れても。俺のことまで折ることは出来ない!」
 叫んだ瞬間に折れた刀に光が生まれる。するとなんと恐ろしいことに奇跡の力。刀は元の姿に戻った。
「……戻ってきたか。もう一度戦ってくれるな」
「ミラクフューチャー……貴方の心の強さが招いた力です!」
 コヨイと同時にヨウコ、アカツキ、ユウヤが裕翔の元へ向かった。
「あーあーこんなにやられちまって。男抱える趣味とかないんだが」
 アカツキは裕翔を支えると、ユウヤが思い切り背中を叩いた。
「お前のミラクフューチャー! 我の心に響いた!」
「そうか……仲間か」
 ヨウコが裕翔の前に出ると、ユーボットチェンジャーを渡す。
「はい! あたしはヨウコ。これがユーボットチェンジャーよ」
 裕翔は受け取ると言われた通りに変身のアイコンを押した。
 五人で並び、光が落ちる。
\ユーユーユー……ユーユーユー……/
 ユーボットチェンジャーを高く掲げ、五人同時に叫ぶ。
「ユーボットチェンジ! っは!」
\レッドボット! イエスユーボット!/
\ブラックボット! イエスユーボット!/
\ピンクボット! イエスユーボット!/
\イエローボット! イエスユーボット!/
\グリーンボット! イエスユーボット!/
 五つの光が包み込み。黒い戦士。桃の戦士。黄の戦士。緑の戦士へ。そして今。誰もこの世界で見たことのない赤い戦士が誕生した!
 裕翔は変身した自分に戸惑っていたが、それも気にせず名乗り始めた。
「月光に伝う虚無。ブラックボット」
「美しい夢の守り人! ピンクボット!」
「憂い悲しみ瞬間解決! イエローボット!」
「静かなる……鋼! グリーンボット!」
 流れで裕翔は気付く。
「……火に咲く太陽。レッドボット?」
 これでいいのかと首を傾げるが。裕翔以外の四人はコロスロイドの方を向く。
「五人揃いました。ユーボット!」
 五人の背後は爆発し、裕翔以外の全員はポーズを作る。
「ユーボット……疑問は後だ」
 裕翔は理解を諦めると千斬幻月刀を手に取るとコロスロイドに強く研ぎ澄ます。
「ボトルンガー。お前の働いた悪意。俺は許さない」
「うるさい! 死ねぇ! 連続キャップアタック!」
 キャップが無数に放たれた。だがキャップは総て強化された千斬幻月刀によって捌き落とされる。
「動きやすくなっている、刀の強さも……桁違いだ。これなら負ける気はしない」
 裕翔はボトルンガーの元へ歩き出し、襲い来るコロスローを一撃で葬っていく。
 他の四人もコロスローと戦い、それぞれの武器を取り出す。
 コヨイは黒き両刃剣。ヨウコは桃色の刃が生え近接戦闘にも使える弓。ユウヤには緑色の全ての攻撃を防ぐ盾。アカツキは……素手であった。
「ブラックスラッシャー!」
「ピンクストームアロー!」
「イエロースペシャルファイト!」
「グリーンメタルディフェンダー!」
 コヨイの両刃剣でコロスローを突き刺す。
 ヨウコは弓矢を構え空へ放つと無数の光が雨の様に落ちてきた。その光は躱そうにも付いてくる追跡も備えてあった。
「当たった! 実験成功!」
 アカツキはとにかく殴った。
「おらぁ! これでどうだ!」
 同じくユウヤも盾としての役割は果たさず、殴っていた。
「日本のコロスローはその程度か!」
 裕翔は首を振り向く。
「一人素手か……しかも盾も使ってない。おっと」
 後ろからの不意打ちを刀で捌き、そのままボトルンガーを斬り裂いた。
「どうやら力は同じぐらいになったみたいだ……同じ条件下なら負けない」
 腰に着いてあった赤く輝く銃を掴んだ。
「レッドスピードガン!」
 銃からビームが放たれたが全て命中しなかった。
「当たらない」
「へたくそが!」
 裕翔は諦めレッドガンを仕舞うと、刀を振り回す。
「俺には刀がある」
「ならこっちがビームを! ビームキャップ!」
「撃たせるか」
 刀で腕を斬り裂き、ボトルンガーは悲鳴を上げる。
「痛い! やめて!」
「あぁ、もう終わりにする」
 裕翔は千斬幻月刀に強い意思を込める。
「……佐那川流斬撃奥義!」
 一瞬の光がボトルンガーの懐を通り過ぎた。その技。正しく必殺の一撃であった。
 裕翔はボトルンガーを斬り終えると時間が止まったように音が無くなる。
「真紅一閃斬」
 裕翔は刀を鞘に納める。
 何もない無音の中で唯一聞こえたのがボトルンガーの悲鳴だった。
「馬鹿な! このボトルンガーが! 負けたぁ!」
「斬った……!」
 爆散する。ボトルンガーは木端微塵になりコロスローも全滅した。そして裕翔達ユーボットの勝利に終わった。

~~~

 裕翔はすぐに変身を解除すると捕まっている人の元へ向かう。
「大将うぅ! ご無事でぇぇ!」
 人質を解放していく中、トラスケが感涙極まり裕翔に抱き付いた。
「離してくれ、怪我はないか?」
「怪我なんて大将に比べたら……大将は無事で?」
「あぁ、平気だ。だからとにかく離して」
「良かったぁ!」
「痛いから、……!」
 裕翔はトラスケにデコピンすると解放される。
「俺はちょっと用事があるから、あとの事は任せた」
 そして再びあの四人の元へ向かうと全員が変身を解除していた。
「待たせた……それでだが訊いていいか?」
「はい。待っていましたよ」
 コヨイは後の三人にも事情を話てあり、不思議がるものの口出しはしなかった。
「まずは、俺の変身したこれの事だ」
「それはユーボットチェンジャーにありますよ、ここをタッチすれば」
 コヨイに言われるままにユーボットチェンジャーをいじり莫大な資料が溢れだした。そしてこれを見て後で読もうと裕翔は決める。
「私からも……質問があります。貴方は本当に……」
 コヨイは、裕翔も薄々気づいていた。この食い違いに。
「俺は佐那川裕翔。佐那川家で行方不明の親父の変わりに投手をやっている。年齢は二十二歳」
「やっぱり……貴方は本当に佐那川裕翔」
「そうだ。ならお前達は……?」
 裕翔は根本的な考えが間違っている気がした。そもそもユーボットチェンジャーのようなものを人間が作れるのか、なら彼らは一体何者なのだろうか。
「あたしは」
「俺は」
「我は」
 そして最後にコヨイが言う。
「私達は別の星から来た……宇宙戦士ユーボットです」
 裕翔は動揺が隠せない。普段あまり乱すことのない心が一度だけ大きく揺らいだ。
「それでは……みんな宇宙人なのか?」
 四人は肯定する。
「嘘と信じたい。だが……技術力はとても地球のものとは思えない……悪いな理解が追い付かない。一言だけ……なんだそれ!」

 その日、裕翔と四人の宇宙人は出会った。だけどまだ始まり。裕翔。コヨイ。ヨウコ。アカツキ。ユウヤ五人合わせた『宇宙戦士ユーボット』の戦いはここから始まる!

2話


戦いが終わった後。裕翔達は一先ず話をするため佐那川家の客室に来ていた。
和風の机に香り立つ緑茶とお茶菓子が用意される。空気は重く最初に切りだしたのは裕翔だった。
「まずは自己紹介から始めよう。俺は佐那川裕翔だ説明はさっきしたから省略させてもらう」
続いてコヨイが立ち上がると猫耳のパーカーがゆらりと動いていた。
「私はコヨイです。私達に苗字はありません。惑星クロトプロムに住んでいました。本当の姿は地球上の生物で言いますと……」
コヨイは猫耳パーカーの頭をつんつんと触る。
「ネコみたいなのです……この姿はコロスロイドによって殺された女の子をコピーしたのです。本来の姿だとコロスロイドと勘違いされかねないので……」
コヨイの顔は申し訳なさそうでも堪えている。そんな表情をしていた。
「記憶や知識もある程度は引き継いでいます……」
するとコヨイの顔を伺ったヨウコが立ち上がる。
「あたしはヨウコ。まぁこういう容姿しているから惚れないでね? 惑星ハスログラデで生まれて研究一筋の天才マッドサイエンティストだよ。地球じゃモデルかアイドルやりたいな~」
ヨウコはスタイルが良いので宇宙人男子組の視線を釘付けにしていた。だが裕翔は気にはしていなくヨウコの顔だけを見ていた。
「……ってあれれ~」
「いや、少し考え事をしていてな。悪い」
アカツキは大いに盛り上がらせようとした。
「俺はアカツキ。好きなものは女。惑星ウクロソウヤでは女使いの魔術師と呼ばれていたが魔法は一切使えないがな。まぁレッドをやるんだったらよろしくだぜ」
「あぁ」
裕翔は頷き緑茶を啜る。裕翔の口に薫り高い旨みが広がった。
そして最後のユウヤが立ち上がった。
「我はユウヤ! 特に好きなのは我と同じ熱いやつだ。惑星レダマで受け継いだ心を燃やしてグリーンボットはもっと燃える!」
「そ、そうだな……宜しく頼む」
この時裕翔は心の中で『静かなる鋼』の言葉に果てしない疑問が浮かび上がっていた。
「コヨイにヨウコ。アカツキにユウヤ。覚えた。それでどうしてこの地球に?」
「それは。私達の惑星がコロスロイドによって崩壊に追い込まれたからです」
脚を崩したアカツキが付け足した。
「まぁ、ここにいる四人はそれぞれの故郷をやられちまって、ユーボットチェンジャーでコロスロイドに復讐しようってわけよ」
「そしてそのユーボットチェンジャーを作ったのがあたしよ! あんまり戦いには向かないけど……だから戦闘でピンチの時は守ってね?」
裕翔はヨウコに上目で見つめられるが軽く受け流す。
「あぁ、その言い方からすると。本来なるべきだったレッドも宇宙人……ってことでいいよな?」
コヨイは頷く。
「はい、私と同じ惑星クロトプロム出身です……ですが『佐那川裕翔になった』と言う連絡の後にし、待ち合わせの場所に向かうとユーボットチェンジャーが落ちていたんです。そして私は佐那川家……つまり貴方の元に向かったのですが……」
裕翔は適当に話を並べたことを思い出し酷く後悔をした。
「すまない。記憶がない以前にコヨイの事を知らなかった……やっぱ俺の記憶違いではなかったのか」
「その件に関しては私にも非があります……だけどあなたが彼でないのなら。今頃どこへ……」
しかし次に口を開くものはいなかった。そしてしばらく経ちコヨイが言った。
「誰も……知らないのですね」
コヨイの表情が悲しく曇るとすかさずアカツキとユウヤがフォローに入った。
「いやいや、絶対見つかるから! 困ったことあったら俺に相談してくれよ!」
「大丈夫! この地球の空が青いのはきっと見つかるって意味があるからなんだ! だから負けるな!」
「うん……ありがとう」
この話は終わりとコヨイは微笑みを作り、最後に裕翔が言う。
「それで、これからどうするか……ゆっくり話し合おう」
この後もしばらく話が続いた。

~~~

コロスロイドの円盤基地では幹部達が集まっていた。
その中でも一番の強者と言われるコロスロイドの副リーダーデトロイ将軍が言う。
「宇宙戦士ユーボット……あいつらは一体何者だ! あいつらのせいでキリオリドは死んだ!」
もう一人の幹部キラキルスは映像を見つめる。
「レッドボットね……剣の腕が随分良いものだ。あれは驚いたよ。デトロイよちょっといいかね?」
するとキラキルスは一人の怪物を呼んだ。
「なんだキラキルス……」
「少し気になることがあってね……まずは情報収取を徹底しようじゃないか。こいつがやってくれるよ……マラカース!」
するとマラカスのような頭をした怪物が現れる。手には大きなマラカス二つ持ちカラカラと鳴らしている。
「我が名はマラカース。さーて一体何の御用でしょうか?」
「あぁ、それはだね。現れたユーボットを倒してきてほしいんだよ。まぁ適当に餓鬼女を殺して……いや、待て」
その時キラキルスは気付いた。
「殺すのはよしてくれ。ただ『殺してくれ』って言う恐怖を作るんだ。そうすれば……コロスロイドのリーダー。デスギャイダー様が復活する!」
デスギャイダーとはコロスロイドを統括するボスの名である。その力は凄まじく。いくつもの星を崩壊させた張本人である。ただある事故によりデスギャイダーは眠りについた。
「何?」
デトロイはキラキルスに過敏に反応する。
「生物の恐怖で作った絶望の心はデスギャイダー様の大好物。きっと……喜びで復活すること……はっはっは……」
キラキルスは不気味に笑いマラカースは敬礼する。
「っは! 直ちに恐怖を集めてきます!」
するとマラカースは地上へ降りて行った。

~~~

裕翔達はお茶を飲み終え全員が立ち上がる。裕翔はそれぞれ四人の部屋へ案内する。
「でも、ほんとにいいのですか? こんな凄い部屋を……」
部屋の中は和室である程度の生活用品はある。
「あぁ、ただ。一応掃除はしてくれ。食事はこっちで用意するから必要はない」
佐那川家の御屋敷には何人かお手伝いがいる。料理は絶品で裕翔は作らない。
「飯美味いのか? 地球の飯ってどんなのなんだよ!」
アカツキが反応すると裕翔はやれやれと言う。
「地球にはある言葉があるんだ。それは――」
「働くものは食うべきだ!」
ユウヤは屋敷を響かせる声で言った。
「……まぁ、そういうことだ。掃除をするのは仕事と同じこと……」
「やる! 俺はやるぜ! 飯は女の次に好きだ」
「そ、そうだな……」
「ねぇ、裕翔! カロリーは?」
裕翔にヨウコの言葉が重くのしかかる。
「その辺は料理長の園町さんに訊いてくれ。いや、あの人はだめか……」
裕翔は重い顔を浮かべる。
「どうして?」
ヨウコはきょとんとした。
「無口なんだ。料理で会話する人間なんだ」
「どういうこと?」
更にヨウコは問い詰めてくる。
「俺にも良く分からない。園町さんが新たな珍味を求めて山籠もりの修行に出かけて、クマに襲われそうになった時に親父に助けられたらしくて。そしてお礼に熊の肉を料理した……らしい」
「熊……ですか? あの黒い動物」
コヨイ達宇宙人も人間に化けた時にある程度の知識がある。勿論熊の事もしているのだ。
「そして親父は一言『美味い』それだけで屋敷に連れてきたらしい。実力は言わずとも相当美味い」
「我も熊と手合せ願いたい」
ユウヤが思い切り拳を叩く。
「やめておけ。怪我するからさ」
「その言い方じゃ。お前も戦ったのかよ」
アカツキの素朴な疑問に顔色変えず裕翔は応える。
「あぁ、修行に出かけたときにな」
「……戦ったのかよ」
「まぁ子供の頃親父に鍛えられたからな……」
そして言葉は途切れた。

~~~

公園で子供たちが遊んでいた。
「あははは! マラカス振って楽しいな~」
「ならそのマラカス……ぶっ壊してやる!」
コロスロイドの怪物マラカースは子供からマラカスを取り上げ破壊した。粉々に潰れたマラカスを子供の頭にぱらぱらとかけた。
「うわ~ん僕のマラカス壊された!」
「さぁて、親を呼んで来い~警察も呼んで……マラカスで殴る!」
マラカースは公園の遊具を破壊し逃げ惑う子供たちを見て笑っていた。
「そう、この感覚……快感だ」
警察が駆けつけマラカースへ向け発砲する。しかしマラカースは自分の手に持つ二本のマラカスを凄い速度で回しバリアを作る。
「マラカスバリア!」
「銃弾が届かない!」
そのままマラカスを投げる。
「死ねぇ! マラカス投げ!」
パトカーを爆発させ警察を吹き飛ばした。
「ははは! そうこのマラカスで倒せないものはいない!」
マラカースが高らかに笑いを上げ周囲には火花が散っていた。
「それはどうかな」
裕翔の声にマラカースは振り向いた。五人が駆けつけるとすぐにユーボットチェンジャーを取り出す。
「……お前達は?」
「見れば分かります……」
五人はチェンジボタンを押し一斉に叫ぶ。
「ユーボットチェンジ!」
五人の戦士に変身すると素早く斬りかかる。
「っち、ユーボット! 待っていた! やれコロスロー!」
「コロスローコロスロー」
コロスローが現れると裕翔は刀を使い根こそぎ斬り裂いていく。
「っは!」
コヨイたちもそれぞれの武器を使いコロスローを倒していった。
五人は瞬く間にコロスローを倒すとマラカースを囲んだ。
「追い詰めたぞ……コロスロイド。覚悟しろ」
千斬幻月刀を尖らせるとマラカースは笑っていた。
「その刀と俺のマラカス……どっちが――痛い」
訊く気もなく裕翔は刀を振るう。
「痛い! きたねぇぞ!」
「子供を泣かせるやつとは勝負する気はない」
「こうなれば……マラカスバリア! アンドマラカスブレイク!」
マラカスを素早く防御シールドを張った。
裕翔達もそれぞれの武器で攻撃するが防がれ、ユウヤ以外次の攻撃で吹き飛ばされてしまう。
「うわぁ!」
「悪いが、この技を見切れないんじゃ俺は倒せねぇ! さらばだ!」
マラカースは砂煙を起こしこの場から消えていく。
「大丈夫か! 立ち上がるんだ!」
五人は変身を解除するとユウヤ以外の四人は立ち上がった。
「なんだよあれ、マラカスのくせにさ防御も攻撃もすごかった」
「ですが……どうすれば」
「いたたた……何が足りないんだろうね」
ヨウコは服を叩き埃を取る。
「とにかく突破すればいい。力尽くで」
「そんな無茶な、無理だろあの硬さじゃ」
裕翔の発言にアカツキは諦めていた。
「ならいい、俺一人でやる。皆は傷の手当てをしてくれ」
すると裕翔はマラカースを探しに行こうとした。するとコヨイが裕翔の手を掴んだ。
「待ってください。貴方にだって怪我はあります。っく!」
コヨイは傷口を抑えた。
「俺は平気だ。これ以上あいつに好き勝手はさせたくない」
「どうして貴方はそこまで」
「決まっている。俺がこんなところで止まっていたら地球はコロスロイドに支配される。だから止まらず飛び続けるんだ」
そして裕翔は静かに強く言う。
「俺はこの力を……地球を守るために使いたい。もしそいつを脅かす者がいるなら……俺は戦う」
そして裕翔は走り去っていった。
「……はぁ。まぁ自分の星を守りたいって気持ちは分からなくないけどね。でもあいつ……バカだ。一人じゃ絶対破れないのにさ! 俺は行くよ」
アカツキが走り出した。
「だからさ、あたし達の力を一つにする必要があるのよ。それぞれの武器をね!」
ヨウコはアカツキを追い。コヨイとユウヤも同じく走った。
「ですけど……アカツキさん武器持っていませんよ?」
「大丈夫だ! アカツキの武器はその身体だからな……行くぞ!」

~~~

ショッピングモールでマラカースは市民をマラカスで殴り飛ばしていた。
「殺さずにいてもやはり殺したくなるものだ。一人ぐらいなら殺してもいいだろ」
「させるか」
裕翔が現れ一目散にマラカース斬り込んだ。
「無駄だ」
攻撃を弾かれると素早く裕翔は叫ぶ。
「ユーボットチェンジ!」
\レッドボット!/
レッドボットへと変わった裕翔は千斬幻月刀を振り回す。しかしすぐにマラカースはバリアを張り弾かれてしまう。
「っち! やはりガードが固い」
「俺のバリアを突破することは出来ない。もう一度だ」
「はぁ!」
裕翔は刀を振り続けた。しかし一向にマラカースのバリアを破ることはできないのであった。
「無駄だ! マラカスブレイク!」
マラカースはマラカスを投げると爆発した。
「っく!」
裕翔に直撃すると吹き飛ばされ変身が解除されてしまう。
「はっはっは! 案外大したことない!」
マラカースは高らかに笑い裕翔の元へと歩いてくる。裕翔も起き上がるがダメージで以前より動きが鈍くなっていた。
「はぁ……まだだ」
すると四人が走ってきた。
「そこまでだぜ。コロスロイド」
アカツキが叫ぶと裕翔は驚きを隠せなかった。
「お前らどうして……」
「別に俺は戦うのが怖いわけじゃないんでね。ただ……俺はお前の言った力尽くを……やりたくなったんだ」
アカツキは笑うと裕翔も微笑んだ。そしてユウヤが皆をまとめる。
「五人の力を一つのする時が来たのだ!」
五人はチェンジボタンを押し叫ぶ。
「ユーボットチェンジ!」
\レッドボット! イエスユーボット!/
\ブラックボット! イエスユーボット!/
\ピンクボット! イエスユーボット!/
\イエローボット! イエスユーボット!/
\グリーンボット! イエスユーボット!/
五人の戦士へ変身を遂げると名乗りを始める。
「火に裂く太陽。レッドボット」
裕翔は刀を構えあげ振り払う。
「月光に伝う虚無。ブラックボット」
コヨイは剣を持ち構えた。
「美しい夢の守り人! ピンクボット!」
ヨウコは弓矢を素早く回した。
「憂い悲しみ瞬間解決! イエローボット!」
アカツキは拳を強く握りしめた。
「静かなる鋼。グリーンボット!」
ユウヤも拳を強く握り盾へ殴りつけた。
「五人揃ってユーボット!」
そして裕翔達は顔を合わせた。
「……五つの力を一つに!」
五人のそれぞれの武器を合わせる。
裕翔のレッドガン。コヨイのブラックスラッシャー。ヨウコのピンクストームアロー。アカツキのイエローファイト。ユウヤのグリーンディフェンダー。
その五つが合わさった時巨大な大砲。ミラクフューチャーバスターが生まれアカツキは弾へと変わった。
「ちょっと待て! 待て! やめろ俺は弾じゃない!」
アカツキは必死に言う。
「でも、アカツキさんに武器ないです」
「そうだけど」
「何揉めてる! 何度来ても一緒だ! マラカスバリア!」
マラカースはバリアを張る。
「皆! これ自分の中にあるミラクフューチャーを信じて! 発射よ!」
「おい待てよ! 俺はまだ覚悟が! はい……発射」
アカツキは諦めたように後の四人は力強く言った。
「ミラクフューチャーバスター発射!」
アカツキは爆発的に放たれると今まで破けなかったバリアを通過しマラカースの本体ごと貫いた。
「破られたぁ! っぐえ! 負けたぁ!」
マラカースは爆発すると死んだ。
アカツキも無事に着地し四人の元へ戻ってくる。
「よっし。余裕で倒したぜ!」
全員が変身を解除すると裕翔は言った。
「皆宜しく頼む……五人で力を合わせてコロスロイドを倒そう」
こうして裕翔達五人は宇宙戦士ユーボットは結成された!

そして、未来は

ユーボットは半年以上の間。コロスロイドと闘い続けた。時には強靭な敵の前に何度もくじけそうになったが、自分たちのミラクフューチャーを信じぬき、いかなる苦難も乗り越える。
裕翔達五人はいつしかかけがえのない仲間になっていたのだ。

裕翔は屋敷で素振りをしている。ユーボットたるもの日頃の特訓は欠かせない。半年たっても銃の腕は上がっていないが、剣の腕は格段に上がっている。
岩を真っ二つに割ると使っていた千斬幻月刀を納め裕翔は空を見上げる。
「この空を守っていかないとな」
五人で集まると朝食のうどんを啜り、裕翔は一人町に出る。
暑い真夏日でも裕翔はコロスロイドが隠れてないか探していた。一回りパトロールを終え、山を登る。
裕翔はたまに一人で山に登るのだ。昔父親に何度も連れていかれ、何もない時は山に登りに行く。
「佐那川家の男か」
裕翔の前に突然、骸骨の怪人が現れる。陣羽織を纏い刀を持っていた。
「なんだお前は」
「俺の名前は残骸流。人を斬ることを生き甲斐とする……」
戦闘態勢に入る前に仲間にコロスロイドの出現を通信で送り、ユーボットチェンジャーを取り出す。
「ユーボットチェンジ!」
レッドボットになり千斬幻月刀で切りかかる。残骸流も刀で答えた。
「人を斬るだと? 悪だ」
「一人斬れば悪だ。だけど何百人も斬り続ければ、何になるか」
「罪は罪だ! 悪は悪でしかない! それは数じゃない」
「違う、人を殺すのは罪だ。だが革命のため人を殺すのは誠に大義である」
「勝手に言ってろコロスロイド!」
裕翔の一振りは、虚しく躱され後ろを取られてしまう。
「人の考えを理解できない奴だとは。実に残念だぞ! 期待が外れた!」
残骸流の一撃は確実に裕翔にダメージを与える。裕翔が焦りだしたのは相手の強さではなかった。あまりに自分の戦い方と似ているからだ。まるでコピーされたように剣技が似ているのである。
「人を期待を残念だの、貴様はコロスロイドだろうに、コロスロイドが人を殺して! 殺そうとするから! お前たちは殺される!」
「だれがいつ! 俺がコロスロイドと言った。人を殺すのが必ずしもコロスロイドの犯行ではない」
「なに?」
「俺はコロスロイドではない」
すると、仲間のユーボットが駆けつける。遠距離から支援し、残骸流は距離を取った。
「佐那川家の男は俺が倒す。覚えておけ」
捨て台詞を破棄。残骸流は姿を消した。
「裕翔! 大丈夫ですか」
コヨイが真っ先に立ち寄り、裕翔を抱える。
「すまない。だがあいつは相当の手練れだ。そして俺の剣と気持ち悪いくらい似ている」
ヨウコがレッドボットの戦闘データを解析する。
「確かに似ているね、隙の付き方が気持ち悪いくらいに」
全員うなずく。
「うわ、気持ち悪! 裕翔の剣じゃね」
「人の心に秘める剣を真似るなど無粋極まりないである。コロスロイドはまさかここまで性根が腐っていたとは……」
ユウヤとアカツキはこぶしを強く握った。
「どうやら。違うらしい。あいつはコロスロイドではないといった」
5人険しい思考を巡らせ、考えに至ったのはコヨイだった。
「コロスロイドでないのなら。ただの人殺し……ではないのですか」
「人殺しだとしたら。あの力はどうなるんだ。コヨイ」
対峙した裕翔にしか、彼の強さはわからない。
「おそらくその残骸流という人の純粋な力。なのではないのでしょうか」
「まさか……」

~~~

ため息を吐き捨てた残骸流の背中には、無数の傷が残されていた。これは人を切った証だった。
「……佐那川裕翔。弱すぎる」
このどうしようもない気持ちを、野生のイノシシにぶつけると決意した残骸流は見えぬ剣裁きで解体した。だがむなしい気持ちだけが残る。
残骸流の前にデトロイ将軍が現れる。
「お前はコロスロイドじゃないのに、人を殺しているのか……殺す理由はなんなのだ!」
「急に出てきたと思ったらそれか!」
残骸流は刀でデトロイに切りかかる。デトロイは慌てて戦闘態勢に入る。
「お前こそ、急に切りかかるな!」
「今の一撃を受けれた貴様は強者だ。俺は強いやつを殺す。そしてこいつに殺した血を刻むのだ」
刀を触り残骸流は得意げに語りだす。
「コロスロイドでもないお前にこんな力があるわけがないのだ!」
デトロイが飛ばした暗黒の波動を切り落とし、
「貴様らこそ人間をなめるな。ただ貶めるだけの奴に、人の心理の強さはわかるまい」
デトロイに引け目を取らない戦いをする残骸流は笑い声を小さく出した。彼にとって戦うことが悦びなのだ。
デトロイに浅い一撃を食らわすとデトロイは怒りよりも敬意が勝る。
「やるな、お前のようなやつがいれば……ユーボットを消すことができる。お前が望みさえすれば。今の肉体よりもさらなる力ーー」
残骸流はデトロイの言葉を聞き届けない。
「いらぬ! こいつとともに、貴様を斬るだけだ」
残骸流の意思。デトロイの誘いを断るのに時間はいらないのであった。
「ならお前と戦う必要はない。コロスローあとは任せた」
あきらめたデトロイは逃げる。所詮コロスローは使い捨てにすぎない。
「コロスロー」
「雑魚は斬らない。刀の質が落ちる」
残骸流は剣を納めこぶしで一撃で仕留めた。
「つまらぬ、こわれる」
~~~

裕翔達は一度家に戻り傷の手当てをした。アカツキは雑誌を読んでいる。
「……残骸流。次は来るか……」
「裕翔と剣で渡り合うってことは相当だよな……」
裕翔が考えていることは残骸流の正体についてだった。ある考えに至ったとき背筋が凍りだす。
「っ……次に来たら確実に倒す。お前たちの手を紛らわす必要はないさ」
平気なふりをしているのはだれの目から見ても分かった。裕翔は立ち上がり残骸流を探しに出かけた。
「ったくよ、それじゃあ裕翔、閉ざされるぜ」
「確認したいことがあるだけだ。アカツキ」
裕翔は思い当たる場所へ向かう。そこはある人物とだけが知る。秘境の洞窟へ。
山の奥に、その穴は存在した。普通の人なら見ることすら身震いする洞窟。裕翔は幼いころにこの場所に訪れていた。
だからこそ、ここに残骸流がいるとすれば。コロスロイドでなく、あれほどの力を持つ人物がいるとすれば、彼でしかなかった。
「……やっぱり、それでもあなたはあなたでしかなかった」
裕翔は怒りとも悲しみとも違った感情を向けて、目の前にいる残骸流に言った。
「親父。佐那川天斬」
「正解だ」
「あなたと俺の剣が似ているのではない。同じなんだ」
そして裕翔は自分の千斬幻月刀を見せると、残骸流も自分の刀を見せつけた。
「佐那川天斬の名前はもう捨てた。この刀に魅せられ、人を斬る道を選んだ。それは千斬幻月刀の過去に記されていた……」
「何を言う。千斬幻月刀は……俺が」
「偽物だ」
「っな!」
裕翔は唖然とし、偽物と言われた刀を落としてしまう。
「……俺の持つ刀が本物であり、かつて人斬りの佐那川家が残した呪いの刀だ」
「……どういうことだ」
「この刀は確実に人を千人、いや、万人の命を殺している」
「違う……どういうことだと聞いている! 佐那川家は……」
「殺しの家だ」
残骸流の言葉から迷いはない。冷酷に言葉を叫んでいるだけだ。
「説明なんてない。ただ人を殺すだけ、先祖たちはこの刀で執念深く人を殺した。殺した分だけこの刀には力が溢れる。それに千斬幻月刀が折れるわけがなかろう」
「それは……」
裕翔は言葉が出せない。残骸流の真実に気持ちが激しく揺らいでいた。
「説明は以上だ。帰れ、今のお前は斬る価値がない」
裕翔は言われるままに帰っていく。

~~~

裕翔は家には帰らずに一人になっていた。知ってしまった真実に葛藤していた。
今まで信じてきた家が人殺しの家で、先祖は殺人鬼しかいない。そして昔から伝わる千斬幻月刀は人を殺すためのものに過ぎなかった。
裕翔を支えてきた信念に裏切られてしまった。
夜の森は暗く道は険しい。だがコヨイは裕翔を見つけた。
「裕翔さん、何があったんですか」
「あの時、それでも違うという勇気があれば……俺は少し後悔してなかったのかもな……残骸流は俺の親父だった」
「え」
「俺の家系は人殺しの一族だった。末裔までの呪いなんだ」
「それじゃ……」
「だから俺は……コロスロイドと同じなんだ。俺が人間コロスロイドなんだ!」
「人間コロスロイド? 裕翔さん! あなたは何を言ってるんですか!」
混乱する裕翔を必死に説得するも、裕翔はさらに錯乱するしかない。雨が強く降り出すとコヨイは弱く裕翔を抱きしめる。
「裕翔さんが信じたものに裏切られても。私は見限ったりしません。だからあなたは悩んでいいんです。レッドボッドじゃなくて。一人の人間として、佐那川裕翔であるなら、あなたは今自分と向き合っていいんですよ……」
「それでもコロスロイドは湧いて出る……俺は……どこへ進めばいいかわからないんだ!」
裕翔はコヨイを振りほどき、森の中を一人走り去っていく。追いかけようにも裕翔は崖から転げ落ちてしまい、行方をくらました。
「裕翔さん!」
すでに周囲は暗くコヨイは見つけられなかった。

~~~

キラキルスはついにと、言わんばかりに頭を振り回していた。
「遂に、完成したぞ~! デトロイよ」
「うるせぇ! 何が完成したんだ! こっちはあのへんなどくろを見てイライラしてんだよ!」
「まぁまぁ、君はそういうやつだってのは知ったけど少しは喜んでほしいね。何せもう、勝ったのだよ……」
「それは本当か? 本当に完成したのか! ネガティブレイブ増幅器がか!」
ネガティブレイブ増幅器。それは人の絶望で作ったネガティブレイブを増幅し。一気に膨れ上がらすという恐ろしい平気なのだ。これが完成してしまえばデスギャイダーが復活してしまう。ユーボットがピンチだ。
「急ぎで完成したから、私も自信がない。でも……これでやっとデスギャイダー様が復活するのだ……」
キラキルスは顔をしゃがめる。
「なんでそんな寂しそうなんだ?」
「急ぎで完成だからね、少しエネルギーが足りないんだ。だからなんというか。より強いエネルギーが必要なんだ。大きな強い命が……」
デトロイは無言で考えそして気づいてしまう。
「俺の命か……」
キラキルスは後ろを向き続ける。
「デトロイよ。お前は私の良き友人だった。だけど……デスギャイザー様の復活のためだ許してくれ……」
「……いいさ、俺が殺されれば、殺したデスギャイザー様があいつらを殺してくれる。キラキルス……あとは任せたぞ」
デトロイはしゃがみ自分の死を決意する。キラキルスも彼なりの覚悟を決めた。
ネガティブレイブ増幅器を起動するとレーザーがデトロイのほうへ一直線に飛んでいく。デトロイは激痛に苦しみ出した。
「っぐ……うわああああああ!」
「悪いな、デトロイ……後は……」
キラキルスはデトロイをレーザーから押し出すと、自分自身がレーザーの標的になることにより、デトロイを救った。
「どうして! なぜだキラキルス!」
ダメージを受けたデトロイは咄嗟に動くことができなかった。
「私の命を使うことは最初から決めていた。だから邪魔するお前を動けなくしただけさ。後は任せたぞ……デトロイよ」
キラキルスは消滅し、すさまじい力が沸き上がる。
「任せられたぞ……ユーボットを殺すさ」
地響きが始まり、エネルギー体が地球に降りて行く。
「復活だ。デスギャイダー様……」

~~~

デスギャイダーが降りたのはアメリカだった。アメリカは四十秒で首都にいる人間が全員死んでしまう。
その情報は日本にも送られ、ユーボットの助けを求めてると報道される。
コヨイは裕翔の詮索を一時中断すると。佐那川家へ帰宅すると、裕翔はもちろんいなかった。
「それで、いまどういう状況なのですか……」
「なぜ、裕翔がいない。彼はいまどこで何をしているんだ」
「裕翔さんは……とにかく今は四人で向かいましょう」
「だけど、デスギャイダーが復活したのよ? 裕翔なしの四人でどれだけ持ちこらえられるか……」
いつの間にか裕翔が中心になっていたユーボットは彼がいないとやはり乱れてしまう。コヨイはそのことは改めて知る。
「そうかもしれません。だけど裕翔さんは大きな壁に当たっています。レッドとしてではなく、裕翔さんとして自分と向き合っています」
「……あいつの悩み。そんなのだったのか。まぁ理由は後で聞きまくってやる。俺は行くぜ」
アカツキの覚悟はすでに決まっていた。
「皆で戦ってきたけどさ、あいつは自分だけ一人だと思ってる。だから一人になったら俺たちがいるってこと気付くはずだぜ」
全員も納得するとデスギャイダーは日本に上陸した。
「さぁ、行きましょう」

~~~

裕翔は日が明けても山を彷徨い、そして残骸流を見つける。
「来たか。裕翔。覚悟は……無意識にしているな」
「なぜ、俺はあなたから生まれたかさっきまでずっと考えていた。人殺しの血はいつまでも人殺しの血だ。だから……佐那川家の呪いは、俺が断ち切る」
「俺と戦って、それで何が得られる。お前はレッドだ」
裕翔は少しだけ笑顔を取り戻した。
「……あなたを超えられる。佐那川裕翔にとって、今までずっと目標にしてきたことだ。だからこそ佐那川家の呪縛は俺が断ち切る!」
「……来い!」
両者の言葉は終わり。刀と刀がぶつかり合いひたすら斬撃音が響き渡る。一時間ほどのつばぜり合いが続き裕翔は足を痛め、残骸流は足首を痛めた。
残骸流はふと微笑を漏らすと、もう一度刀を構える。
「腕を上げたか、いや、覚悟か」
「崖から落ちてずぶ濡れになって。頭が冷えたからだ」
「だが、その刀、覚悟で賄える実力はないと判断した」
「ならば!」
残骸流は一瞬で裕翔に接近した。
「っち……っく!」
足に痛みが走る裕翔は反応が置かれ一瞬で距離を詰められる。
「うおおおおお!」
何とか攻撃を捌くも、残骸流に戦いの主導権を握られてしまう。
「覚悟!」
裕翔は残骸流のおお振りを受け止めると強く言った。
「覚悟だけじゃない! 意地があるんだ……俺には!」
裕翔の動きが今までのものとは変わり、粗暴な戦い方となった。今までの美しい佐那川流にはありえない戦い方である
「自分から道を捨てるか!」
「俺の道だ! 俺は勝つ。あなたを負かす!」
裕翔は残骸流の膝を蹴り思い切り足を踏みつける。そのまま全力で剣を振るいダメージを与える。
「こいつが!」
残骸流は距離をとると自分の刀に大きな力を加える。
「次の一撃でお前は斬られる……!」
裕翔もそれに応えるように、刀にミラクフューチャーを集中させた。
「全部だ……全力で!」
両者が飛んだ時、二つの刀が入り混じった。着地した時に裕翔の刀は手元から離れていた。
「……お前の負けだ」
だが裕翔は残骸流の首をつかみ地面にたたきつける。痛む手首を踏みつけ放した刀を蹴り飛ばす。
「終わってないぞ!」
裕翔のこぶしを残骸流は受け止めると全力のカウンターを食らわせる。転がる裕翔は必死に起き上がるが、何度も捕まれ壁にたたきつけられる。
二人の戦いは刀が強いかではなく、どちらが勝つかに変わっていた。
ボロボロになった裕翔は全力で残骸流を押し倒す。そのまま残骸流の千斬幻月刀を拾い、容赦なく突き刺した。
「俺の……勝ちだぁぁ!」
勝利したのは裕翔だった。

~~

首都東京の街。デスギャイダーと戦うユーボット達はピンチに陥っていた。全員が変身解除
そして裕翔は訪れる。裕翔を待っていた全員のため。
「裕翔!」
みんなが声を出すと裕翔はユーボットチェンジャーを構える。
「みんな……悪い。けどありがとう。もうすべての決着はついた。後は……貴様だ。デスギャイダー!」
「一人増えようが同じ。貴様等人類はもう殺される!」
「諦めたら終わりだ。どんなに無様でも……必死に足掻いて遠くに手を伸ばす」
「まったくもー。裕翔くんったら、急にかっこよくなって。こいつ倒したらラーメンおごってよ」
全員が立ち上がり一斉にユーボットチェンジャーを取り出す。
「あぁ、いくらでもな」
「裕翔。男を見せてもらった……我はそばを」
「あー俺はうどんな」
「……焼きそばで」
全員が違う麺類を選び裕翔は少し困った顔を浮かべる。
「みんな違うメニューか……でも、意外といいかもな……行くぞ!」
傷だらけの戦士五人は虚勢ともいえる、ミラクフューチャー。声を全力で上げた。
「月光に伝う虚無。ブラックボット」
「美しい夢の守り人! ピンクボット!」
「憂い悲しみ瞬間解決! イエローボット!」
「静かなる……鋼! グリーンボット!」
「未来に続く明日の刀……レッドボット!」
そして五人はユーボットチェンジャーを起動させ一斉に叫ぶ。
「宇宙戦士ユーボット! ユーボットチェンジ!」
変身した五人はデスギャイダーへ向かう。しかしデスギャイダーの力は圧倒的だった。五人そろったところで五は百には敵わない。裕翔達はそれでも起き上がり戦い続ける。
「俺が時間を稼ぐ! ミラクフューチャーバスターを使え!」
「わかりました!」
「一人で私に立ち向かうか……下に見られたものだ」
デスギャイダーは黒の剣を取り出し裕翔との一騎打ちに応えた。
「力が違う。だが決意がある……私は殺す。貴様の意思を!」
裕翔は壁際まで飛ばされるがすぐに立ち上がる。
「もう慣れたさ! 心を折られるのは!」
そして裕翔は父親の千斬幻月刀を取り出した。二本の千斬幻月刀を構えるとそのまま全力の一振りをデスギャイダーに浴びせる。
「この力……呪い?」
千斬幻月刀には人を斬る呪いがあった。しかし裕翔はその呪いに勝ち、デスギャイダーと戦っている。
「呪いも、悲しみも、殺しも。この刀が斬る最後の相手はお前だ!」
ミラクフューチャーバスターの準備が終わり裕翔は渾身の一振りで足を切断する。
「今です! 裕翔さん」
裕翔は四人のもとに戻り、ミラクフューチャーバスターにミラクフューチャーを送った。
「全力の……ミラクフューチャーバスター!」
最大出力で発射されたミラクフューチャーバスターは無事デスギャイダーに命中する。
すさまじい爆発が起こり。デスギャイダーは死んだかと思った。しかし……デスギャイザーはまだ生きていた。
ミラクフューチャーが切れた5人は変身が強制的に解除される。
「全力か……今のは防がないと危なかった」
「くそ……もう力が残されてねぇよ……」
「ミラクフューチャー……もうすべて使い切ってしまいました……」
「まだだ……まだ!」
裕翔は千斬幻月刀で自分を斬る。沢山の血が溢れ出すが無視した。
「裕翔くん! 何をして」
「……この刀は斬った人間が強ければ強いほど。強くなっていく呪いがある……だから!」
裕翔は意識が飛びそうな中必死に堪え地面に立つ。4人が前に立ちはだかった
「我を斬れ!」
「俺もだ!」
「私もです……」
「私もだよ!」
しかし裕翔は躊躇う。当然である。
「だけど……お前たちを……」
「信じて。一種のミラクフューチャーなのです。その刀もきっと……」
「この程度で俺たちは死なねぇよ!」
「勝つためにはそれしかないのよ!」
「……悪い!」
裕翔は苦渋の決断で優しく四人を斬った。四人は倒れすべての力を刀に託す。
「決して無駄にしない……この力は俺だけの力じゃない。だから……!」
禍々しかった千斬幻月刀はもうこの世に存在しない。裕翔の千斬幻月刀は二刀とも、虹色の輝きを放つ。
「斬った!」
音速を超えるスピードで放たれた一撃はデスギャイダーにも反応できかった。
「……斬られたか!」
デスギャイダーは地面に跪く。裕翔は血だらけになりながらも振り返る。
「コロスロイドが……どうして殺される」
デスギャイダーは裕翔に訊く。
「殺されたくないなら……誰も殺さなければいいだろ」
「そうだな……」
デスギャイダーは砂のように寂しく消えていく。
「……勝っ」
裕翔は倒れる。

~~~

裕翔が目を覚ました場所は、裕翔自身見たことのない真っ白な場所だった。これは夢なのだろうか。幻なのだろうかと疑い続けるも、答えはわからない。そんな時後ろから声が聞こえる。
「裕翔さん……」
「コヨイか……コロスロイドは……」
「大丈夫です。デスギャイダーを失ったコロスロイドは地球の侵略をやめ別の星へ逃げました。創造主を失ったコロスロイドにはもう戦う力は残されていません」
「……そうか、終わったんだな」
「はい、ありがとうございました。裕翔さん」
「……他の奴らは」
「……」
無言は肯定となることをコヨイも知っていた。
「もう帰ったのか、自分たちの星に」
「はい、だけど。私たちはあなたのことを忘れないです」
「……」
裕翔は無言になる。
「裕翔さんは私達にとって。私にとって希望でした。今まで、そしてこれからの中できっと一番の時期だと思います……」
「なら、俺もそうだったのかもしれないな。きっとこんなことはもう二度と訪れない。訪れさせない……」
コヨイの声はだんだんと遠くなっていく。裕翔は涙を堪え笑っていた。
「一緒に入れて本当によかった。辛くても幸せだった」
「私もです、もし辛くなって本当のあなたを失いそうになった時は。私たちを思い出してください……」
流れる無数の星の中コヨイは最後に言った。
「きっと、未来は」

~~~

一カ月後コロスロイドが消え世界は一時的な平和を手に入れた。ユーボットはそれ以降一切の行方が途絶え世間では英雄扱いされている。
普通に学校に通う子供達を裕翔は佐那川家から見守っていた。
前に進むと決めた裕翔は都市の復興の手伝いをしていた。それと同時にコロスロイドの残党がいないかも調べている。この一か月で数体出現したが、今となっては一切見当たらない。
裕翔は大空に手を掲げると、トラスケが部屋に入ってくる。
「あれから一か月。彼らがいなくなってずいぶんこの屋敷も広くなったものです」
「衣服まで全部そのままはさすがに堪えたな。だけどきっとこの大空の先に、あいつらはいる……」
「いつかきっと、また会えますよ。未来で」
裕翔は太陽の日を全身で受けると、空を見たまま微笑みを見せた。
「そうだな、そして、未来は……」
裕翔は新たな希望ともに未来へ進む。

宇宙戦士ユーボット

学校生活でこれだけは完成させようと、無理矢理、ぎりぎり仕上げました。伏線回収もせず、展開も無理があり相当雑な内容ですが自分なりの作品です。
きっと、途中で読者が途中で投げ出して読めたもんじゃないと思うかもしれませんが。ぜひとも優しい感想をお願いします。
最後に宇宙戦士ユーボットを読んでいただき、誠にありがとうございました。 吉田

宇宙戦士ユーボット

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-17

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 一話 破滅への救世主ユーボット
  2. 2話
  3. そして、未来は