私の証人になって~起きられなくなる病気と闘った少女とその少女を支えた少年の物語~

 私の娘、佐々汐実
女で1人育ててきた愛する娘
でも、もう起きることはない

だが汐実は一生懸命闘ってくれた
弱音も吐かず…
きっととても辛かったに違いない

本当にありがとう
そしてごめんね
ままがちゃんとした体で汐実を産んであげれば…
こんなこと言わない方がいいのかな?
毎回ままが言うと訂正したね
『ままのせいじゃない。神様がしおに宿題を出したんだよ。だからままのせいじゃないよ。
しおのこと産んでくれて本当にありがとう。』って

ままはその言葉を言われたとき泣いてしまったよ
絶対に泣かないって決めたのに…

だからままは一生懸命汐実を支えた
心に決めた誓いを胸に持ち続けながら

汐実、本当にありがとう
ままの子どもに生まれてきてくれて…

1997年9月のある晴れた日

 
 ある町で元気な女の子が生まれた
名前は「汐実」。とても純粋な女の子
実は母親の繭美は事故で彼氏を亡くしたばかりであった
彼氏は21歳、繭美は19歳だった
結婚はまだしていなくて繭美が子どもを産んでから挙げる予定だったのだ
なのに彼氏を襲った悲劇(トランジック)
ショックが繭美に襲い、立ち直ることが出来ないまま汐実を出産したのだった

繭美は覚悟を決めた
”汐実を育てるのは私しかいない
悟志(彼氏)の分まで汐実を守る”

それから数年が経った…



小学校高学年になった汐実
とても元気で活発な子に育っていた

しかし、この頃から汐実は悩んでいた
それは、最近になって朝起きるのが辛くなってきたのだった(貧血気味)
自分で起きることが出来なくなり、お母さんに起こしてもらうようになっていた
さすがにこの症状が2ヶ月続くので心配になり、病院に行くことにした
学校を休み、脳外科に行った
脳外科へ行ってもわからなく、内科へ行った
やっぱり分からなくて、結局脳外科に戻り、精密検査を受けた
MRI、CT、そして問診の3つで調べることになった
問診ではこんなようなことが出てきた
それは…
「夢の世界へ行くような夢を見たことがありますか?」
「今いる世界から夢の世界へ行きたくなったりすることがありますか?」
他にも項目があったがこの2つが気になった…
なぜならこの2つが当てはまるから…
MRIやCTには異常が見られなかった…

しかし、医師の林田亜裕太先生はこう言った
『汐実ちゃん、もしかしたら病気かもしれない。
病名はつけることはできないけど…
あえて言うならば、”一度深い眠りに入ると起きれなくなる病気”。
分かりやすい言葉で言えば”1回夢を見ると起きれなくなる病気”。
汐実ちゃんは知らず知らずのうちにこの病気になっていたんだね。』
この時はお母さんはいないときに話していた内容
お母さんがいる前でも同じ様なを言ってくれた…
そして診察が終わり、薬局に寄って薬をもらって帰った
1度慣れると効き目がなくなる薬のため、2週間に2回通院することになった
汐実が飲むことになった薬は興奮剤と深い眠りにならない様な睡眠薬。
そして、副作用が強い睡眠薬の3つ
しかし飲む量は興奮剤が2錠、あとの2つが1錠ずつだった

興奮剤とは心を興奮状態にさせて深い眠りにならないようにする薬
睡眠薬は弱い副作用と強い副作用がある
深い眠りにならない様な薬が弱い副作用の方
強い副作用の方は夢を見ない薬
見ないと言うよりも見ないようにする薬

汐実はこの薬を就寝前に必ず飲まなければいけないのだ
それを飲まなければ一生起きることが出来なくなってしまうから

この病気のことは担任の先生と唯一幼い頃からの友だちの美純に言うことにした
美純は保育園の頃からの大親友だ
それ以外の人は言わない
美純は特別な人だから
楽しい時も一緒にいた人だから

美純に言うと、すごい驚いていた
でも美純は言った
『あたしがしおを守るね。安心して。』


                                      

そして中学生になった

 汐実は病気と闘っていた
薬も最初持っていたものよりも強いものになっていた
今では通院も2週間に3回に増えている
見た目は普通に女子中学生
家に戻ると嫌な現実と闘っている少女
学校や一歩外に出ると
活発な少女になり元気に遊んだり勉強をしている
その勉強のおかけで成績は上位をキープしていた
でもその勉強も無駄になる日が来る
そのように思っていた
そんな時に転機が訪れたのだ

 当時受験生だった古屋斗真だ
斗真は入学してきた汐実に一目惚れしたのだ
そして斗真は汐実に告白してきた
しかし汐実は断った
なぜなら自分の病気を話する勇気がなかったから

でも斗真はあきらめなかった
汐実もまた斗真を気になっていた
汐実は自分自身に嘘をついていたのだった


 その夜のこと
汐実の家に美純が泊りに来たのだ
汐実は美純に相談した
彼が好きなこと、告白を断ってしまったこと
美純は言った
『いいじゃん!付き合ってみれば?いい人なんでしょ?
きっとしおのこと分かってくれるよ!』と言った

 汐実は決意した
そして学校の体育館裏に斗真を呼び出し話をした
「小学校高学年から病気と闘っていること
2週間に3回通院していること
薬を飲み続けていること
そして、いつ深い眠りに就くかわからないこと
…斗真のことが好きで気になっていたこと」
斗真は少し戸惑ってこう答えた
『汐実の苦しかった気持ちを俺にちょうだい。
苦しかったというよりも苦しい気持ちだね。
どんなになっても俺が汐実を離さない。
絶対に汐実を1人にしない。約束するから。俺たち付き合おう…』

そして2人は付き合うことになった
ちなみに汐実と斗真は幼馴染であるが、あまりそこまで話したことがなかった



 汐実は斗真と付き合っても何も変わらなかった
汐実の睡眠はだんだん深くなっていた
まだ薬を飲んでいるから落ち着いている方である
最初病気が分かった時に比べると深くなっていることがよくわかる
斗真は汐実といるときは病気に触れようとしなかった
自分と会っているときだけでも病気のことを忘れてほしかったから

 でも汐実が斗真の家に泊りに来たときはしみじみと来る…
汐実が飲む薬の量、そして大きさ
そして1度起きしても起きない恐怖
2度、3度起こすとやっと目を覚ます
斗真は汐実の苦しみをかばうことが出来ないと自分自身を責めていた

 その斗真の気持ちが分かったのか汐実はこう言った
『斗真…しおの苦しみをかばおうとしなくていいんだよ。
しおは斗真と一緒にいることが出来ればいいから。
だって、一番好きな人といれるってどれだけ幸せなことか…
今のしおはわかるよ。
斗真、しおのことを絶対に離さないでね。』
そして斗真も言った
『汐実、一人で考え込まないでよ。
俺は代わることできないけど相談には乗れるからちゃんと言ってな。
俺は絶対に汐実のこと離さないからな。』

それから2ヶ月が経った

 斗真は受験シーズンになっていた
でもその隣には汐実がいる
なぜかって?
それは…秘密だけれど

 斗真は成績優秀で運動良し顔良しの三拍子!!
汐実も成績優秀だ
この2人は学校一と言っていいほどすごかった
学年、そして学級で1位
斗真はイケメンで汐実もかわいい
この2人なら何年も続く
そのようにみんなは口々に言っていた

 でも現実は違っていた
汐実はだんだん深くなっていた
薬も一番強いのから2段階目の薬だ
それでなければ効かなくなってきたのだった
汐実はだんだん恐怖になってきていた
学校も休みがちにになったが心の支えがいてくれるため少しずつだが行きはじめていた…

そして…


 汐実は中学2年になった
斗真は高校生になった
東京都内ではレベルが高い高校に入学した
汐実は斗真が卒業したこの中学で1人になってしまった
クラスの友だちや先輩や後輩からは
『斗真と同じ高校に行くんでしょ?
汐実はいいよね。頭いいから簡単に行けるでしょ。』
一部の先生からも同じようなことを言われる日々
汐実は悩んでいた…

週に2回会う斗真はやっぱりかっこよかった
寒い時は高校のブレザーを貸してくれる
斗真はマフラーだけで…いつも汐実思いの斗真
汐実は斗真の優しさに甘えていた
斗真といると病気を忘れられていた
薬を飲むときはドキッと思うけど
それ以外は普通のカップルを同じだ
汐実は思っていた
「この生活がずっと続きますように」
そこで汐実は斗真に向けて手紙を書いた

大好きな斗真へ

 「しおたちが付き合って1年と4ヶ月が経とうとしているね。
色々あった1年と4ヶ月だったね。
しおは初めビックリしたよ。
古屋斗真と付き合うなんて思ってなかったし。
イケメンで魅力的な青年だなーって思ってた。
あんな人が恋人だったらどれだけ自慢できるだろうって
ずっと想像してたんだよ。
でもしおは病気だから絶対に無理と諦めていたんだ。
こんなしおを彼女にしてくれてありがと。
初めて好きになった人が斗真で本当に良かった。

 斗真に言ってなかったことがあるの。
それは病気についてのことです。
実は斗真と付き合う前より眠りの深さが下がってきたんだ。
と言うのは、いつ深い眠りに就いてもおかしくないという意味です。
もしかしたら中3になったら起きられなくなっちゃうかもしれないから手紙を書くことにしたんだ。
って上記の年は今現在のことだけど…
改めて言うね!
斗真、大好きだよ。愛してる♡

                                                     汐実より」


 2週間に3回の通院の日
今日は検査というより、問診をやった
ある一部の問診はこれである
「1.あなたは最初より眠りが深くなったと思いますか?」
「2.薬を飲んでいるときと飲んでないときとではどちらが楽ですか?」
「3.感情的になりやすくなりますか?」
「4.最近すっきりと起きられますか?」
「5.前に比べて夢の世界へ行きたいと思いますか?」
                                 略

 上記のことを踏まえて検査を始めた
というよりは3日間検査入院をすることになった
斗真と会うのは火曜日と木曜日の2日間
入院するのは火曜日から木曜日までの3日間
かぶってしまい、斗真は言った
『外では会えなくなってしまったから俺が病院に行くから。
時間まではずっとそばにいるからね。』
汐実は笑顔で首を縦に振った

 汐実は月曜日、学校を休んだ
入院の準備を斗真も来て手伝ってくれた
とても優しい斗真
繭美は思っていた
”斗真は汐実がいなくなったらきっと立ち直るまで時間がかかる”

 汐実は斗真に言った
『斗真、ずっとしおと一緒にいてくれる?しおが先にいなくなっても…』
斗真は言った
『汐実、大丈夫。俺は汐実が彼女だったって言うことの証人になってやる。だから安心して。』

そしてとうとう火曜日になった



 ”青山海林脳外科病院”というのが汐実がお世話になっている病院だ
林田先生と新垣先生が待っていた
林田先生は34歳のイケメン先生
34歳には見えない若いベテラン医師だ
汐実は林田先生のことを「亜裕兄」と呼んでいた
なぜなら…最初に恋心を持った人だったから
そして新垣先生
大学を卒業して2年が経っている
研修医最終試験の猛勉強中だ
汐実は思っていた
「彩ちゃんはいいな…こんなイケメンな先生の元で働けるなんて…」
汐実は彩ちゃんに色々相談している
そして早速検査が始まった


 薬を飲まずに眠りに就き、どれくらい深くなっているのかを検査する
正直に言えばこの検査は少し大変だ
薬を飲まないため、起きられなくなるから
だから2日、3日は眠ったままになる



 4日経ったある日
汐実はやっと起きた
あの検査の日から4日間眠りに就いていたのだ
胃には直接栄養剤を入れるためにチューブが入っている
4日間眠ったままでご飯が食べれなくなるために入院した日に入れたものである
起きてからも食欲が出ないこともあるためこのチューブはそのままにしておくのである
汐実は胃に経管のチューブを入れたままで退院をした

 斗真は心配していた
汐実が部屋(家)に戻ったことを知ると走ってきてくれた
斗真は思ったらしい
汐実はこのまま起きれなくなってしまうのではないかって
嬉しさのあまり涙を流してしまった

汐実はまた斗真に向けて手紙を書いた

斗真へ

 「大好きな斗真。心配してくれてありがとう。
しおは斗真のことが本当に大好きです。
しおを1番に考えてくれる斗真。
そういうところが大好きだよ。
でも、もうそろそろ限界なんだ…
あと1ヶ月くらいでしおはあなたの前から消えてしまう…
もう薬も効かなくて…
そして眠りの深さも…
本当にごめんね。ずっといたいけどお別れ。
斗真、言ったよね?
”汐実を離さない”って。
絶対に離さないで。しおを1人にしないで。
そして約束して。
しおの1番の証人になるって。
佐々汐実は確かに生きていた。
古屋斗真を世界で1番に愛していた。

斗真、こんなしおを愛してくれて本当にありがとう。
                                   汐実より」





 手紙を書いてから1ヶ月後…
汐実は深い眠りについていった(植物状態)
自分の好きな場所で…
2度、3度起こしても起きなかった…
好きな場所とは…
大好きな斗真の家の斗真のベッドの中だった…

汐実は最期の瞬間も斗真といたかったのだった
夢の世界にも斗真はいるのかな?
今になっては聞くことも出来ない。



 ~現在~
病院の一室には……
点滴の滴の音と一緒に汐実が眠っている



                                                                                  (完)

私の証人になって~起きられなくなる病気と闘った少女とその少女を支えた少年の物語~

汐実の素直な気持ちと斗真の葛藤が読むにつれてわかる物語だと思います。
この作品を読んでくれた人が納得する内容になっていないと思いますが、私なりの精一杯の力で書いた作品です。
この作品は高校生の時に書いたものです。
言葉の間違いもあると思いますが大目に見てくれたらありがたいです…
病気の名前は本当にありません。
また病院の名前も薬も本当にあるとは限りません。
架空のものであり、フィクッションです。

もっと色んな作品を書いていきたいと思うのでこれからも宜しくお願い致します。

私の証人になって~起きられなくなる病気と闘った少女とその少女を支えた少年の物語~

青山海林脳外科病院の一室に点滴の滴の音の中で1人の少女が眠っている。 この物語は起きられなくなる病気と闘い、恋も経験した少女のお話である。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-04-11

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 1997年9月のある晴れた日
  2. そして中学生になった
  3. それから2ヶ月が経った
  4. 大好きな斗真へ
  5. 斗真へ