スラムダンク二次創作 恋愛長編「夢と現実」

第一話「憧れの人」

「ねえ!バスケ部で何か大変なことがあったらしいよ」
 朝、教室に入るなり親友の涼子が駆け寄ってきた。
「大変なことって?」
「私も詳しくは知らないんだけど、あの7組の水戸っていう不良と3年のグループがバスケ部に殴り込みしたとかなんとか」
 涼子は最近、同じクラスの流川楓に熱をあげている。彼がバスケ部なので、毎日のように放課後体育館に通っては影から練習を覗いている。
「涼子はその場にいなかったの?」
「それが、先週は用事があってさ。体育館には寄らなかったんだ
私はふーんと適当に相槌を打ちながら席に座った。――待てよ。さっき涼子なんて……
「ねえ、その三年のグループって……」
 ――ガラッ
 教室のドアが開き流川楓が入ってきた。頭に包帯を巻き、顔のあちこちに擦り傷が出来ている。
「流川くんっ!その傷大丈夫!?」
 涼子は流川の元にかけて行った。いつも冷たくあしらわれると分かっていても、未だに諦めず猛アピールを続けている。
 それにしても、三年のグループって誰だろうか。もしかして、先輩も何か関係してるのでは……私はバスケ部で何があったのかどうしても知りたくなった。中学1年のときから憧れだったあの先輩が、もしもバスケ部に帰ってくるようなことがあれば、そのときは――私はこの想いを伝えなくてはならない。
「うう…うるせえって言われちゃった」
 涼子が涙目になりながら私の前の席に座った。
「ねぇ涼子。今日はバスケ部の練習見に行く?」
「え、うん。行くと思うけど……悠里どうしたの?」
「いや。ちょっと、ね」
 ――ガラガラッ
 担任が教室に入ってきた。涼子は不思議そうな顔をしつつ、前に向き直った。私は頬杖をついて流川の席をちらりと見た。ねえ何があったのよ、流川楓。



「……る、流川楓」
 私は昼休みが終わる直前、涼子がトイレに行った隙を見て廊下にいた流川に話しかけた。珍しいやつに話しかけられたと思ったのか、目を見開いてこちらを見下ろしている。
「先週、バスケ部で何かあったって聞いたんだけど」
「……知らねえよ」
 流川は睨むように私を見ると、イラついた声でそう言った。知らない――わけないでしょう。その包帯グルグル巻の頭はなんだってのよ。
「詳しいことが知りたいんじゃない。一つ質問に答えて欲しいの」
 私はごくりと唾を飲み込んでから、周りに聞こえないよう小さい声で言った。
「三井って人……いた?」
 流川は警戒したように目を細めると、私をジロジロと眺めた。
「なんで?」
「な、なんででもいいでしょ。質問に答えてよ」
 私は緊張で声が震えた。流川に対してじゃない。今の反応で、答えが分かってしまったからだった。やっぱり、三井先輩が関わってるんだ。
「悠里ー?」
 まずい。涼子が帰ってきた。私は流川に背を向けると急いで教室に戻った。
「あれ?どこ言ってたの?」
「ん?うん、ちょっとね」
 私は明らかに不自然であろう愛想笑いを浮かべた。
「今日の悠里、変なの」
 涼子は頬を膨らませながら、私の顔をまじまじと見ていた。



――ダムッダムッ
「湘北ー!ファイッオーッ」
 ボールをつく音と気合の入った大きな声が聞こえる。私と涼子は体育館のすぐ傍まで来ていた。
「それで、その三井先輩って人がいるかどうか確かめたいわけね?」
 私の挙動不審な態度に痺れを切らした涼子は、理由を教えてくれないと体育館に行かないと言い出した。仕方なく三井先輩の存在を話した――が、私が先輩のことを三年近くも想い続けて来たことは伏せておいた。まだ自分でも整理のついていない感情だった。
「お世話になった人かなんかなの?」
 私は今も目に焼き付いて忘れられない、三井先輩のユニフォーム姿を思い浮かべた。
「そんなとこ、かな。いや、お世話になったどころじゃないのかも」
 三年前、誰もが諦めかけていた試合で逆転シュートを決めた三井先輩。歯切れの悪い私の解答に、涼子は全く納得がいかないという素振りを見せた。
「でもね、涼子。三井先輩は私のことなんて知らないの。だから今日は静かに覗くだけね」
「んもー、何なのよ!勿体ぶって。気になる!」
 涼子は、ぷりぷりしながら扉をくぐった。体育館には数人の見物客がいて、中でも目がくりっとしてサラサラの綺麗な髪をした美人が一人やたら目を引いた。
「桜木くんファイトッ」
 その子の声援に反応したのは、うちの学年で何かと話題になってる桜木花道だ。うわ、本当に噂通りの赤い髪。涼子は隣でキョロキョロしている。そういえば流川の姿が見えない。
「……邪魔」
 ちょうどいいタイミングで、後ろから聞き覚えのある無愛想な声がした。顔でも洗ってきたのだろうか、前髪が少し湿っている。流川は私と涼子の間を通り過ぎる瞬間、ボソリと「向かって右奥」と言った。私は流川の言った方角に目を向けた。
 そこには、三井先輩がいた。袖を肩まで捲し上げ、腰を落としてディフェンスに徹している。顔は切り傷だらけで、髪の毛は潔く短く切られていたが、紛れもなく三井先輩だった。三年前、コートの真ん中でチームメイトに囲まれて嬉し涙を流していた、三井先輩。今まで押さえてきた思いが溢れ出し、視界がぼやけた。
「涼子、私、先帰ってもいい?」
「え!今来たばっかりじゃ……って、悠里泣いてるの!?」
 涙目の私に気づいた涼子は驚きで大きな声を出した。近くにいた子たちも、ただならぬ様子にこちらを伺っている。
「三井先輩が、バスケ部に帰ってきた」
 私は涙を拭いながら独り言のように言った。先輩が、帰ってきた。
「涼子、いつかちゃんと話すから……今日は先に帰るね。ごめん」
 私はそれだけ言い切ると一目散に体育館を後にした。涼子が後ろか何か騒いでいたが、もう私の耳には届かなかった。

第二話「きっかけ」

 私は家に着くなりベッドに潜り込み静かに泣いた。布団の隙間から机の上に立てかけた一枚の写真を見つめた。
 ――三年前のあの日、私は他校のバスケ部に所属している幼馴染の試合を見るために会場へ向かった。大きな試合だからといって無理やり誘われたのだった。私の母校である武石中はバスケが強いと評判だったが、スポーツに何ら興味のなかった私は自分の学校がその大会に出ていることさえ知らなかった。しかし、大歓声の響く試合会場で私は一つの奇跡を目撃した。
 負けるかもしれない。だれもがそう思っていた試合で、チームメイトや観客が注ぐ諦めの視線を一心に背に受けながらその選手は力の限りシュートを放った。周りの雑音が一瞬にして消え去り、私の全神経は彼の手を離れたボールへ集中した。綺麗に弧を描いたそのボールは、シュッという軽い音をたててゴールへ吸い込まれていった。その瞬間、まるで一時停止ボタンを押したかのように全ての動きが止まり、無音になった。私は幼馴染の試合などすっかり忘れて、その選手に終始釘付けになっていた。試合が終わっても未だ冷めやらぬ観客やチームメイトの歓声に、私は体の震えが止まらなかった。
 あの時期は、私なりに背負っているものがあって毎日のように襲ってくる絶望感に押しつぶされそうになっていた。母の浮気――単身赴任でなかなか家に帰らない父に対抗していたつもりかも知れない。でも、精神的に打撃を受けたのは私だった。自分が立ち向かって行かなければならない壁とその乗り越え方を、その選手が教えてくれたような気がした。希望を持ち続ければ道は開ける、諦めたらそこで終わりだと、彼の声が私の心に直接語りかけているようにさえ感じた。
 後の表彰式で、それが私と同じ武石中の三井寿という名前の先輩だと知った。先輩はMVPという賞をもらった。当然の結果だった。その日以来、私は陰ながら先輩を人生の模範のように慕うようになり、先輩が中学を卒業したあとは、同じ湘北高校を目指そうと勉強を頑張るようになった。



 机の上に置かれた写真立ての中で、二年前の三井先輩が笑っている。卒業式の日に隠し撮りをしたものだ。この写真を心の支えにして頑張れたからこそ、今の私がある。私はそう信じていた。
 先輩が高校でバスケを辞めてしまったことはその夏に知った。湘北の試合を見に行った時にベンチにすら先輩の姿を見つけられなかったので、武石中で見かけたことのある先輩たちに思い切って聞いてみると、みんな揃って「みっちゃんは辞めたよ」と肩を落としたのだった。私は当然ショックを受けたものの、先輩があの試合で私に勇気をもたらしてくれたことは変わり用のない事実であり、辞めることも先輩が下した決断なのだからそれは正しいものであるはずだと思った。
 ただ、心のどこかでまたいつか先輩のバスケ姿を見れる日が来るかもしれないと密かな期待は抱いていた。涼子にはまだ話したことはないが、この二年間湘北の試合を隠れて見に通いつづけたのもその理由からだった。
 初めて三井先輩の不良姿を見たのは去年の夏だった。一つ年上である幼馴染が、高校に入って初めての試合を控えていたので何かプレゼントをしようとチエコスポーツに向かっていた時だった。駅前でガラの悪そうなグループが女の子達をナンパしていた。その中に、髪を長く伸ばした三井先輩の姿があった。雰囲気は全く違っても見間違えるはずはない。長い間、一目でもいいから見たいと願っていた先輩の姿が――机の上で色あせ始めた写真の中の横顔がほんの目の前にいたのだから。
 そのとき、外見は立派な不良に見えたかも知れないが、あの試合で一人輝いていた三井先輩を知る私の目には、先輩の心の中にある迷いや葛藤が見えたような気がした。私は何も見なかったことにして通り過ぎた。いつかまたバスケをしに戻ってくるはず。それが希望から確信に変わったのも、その時だったような気がする。



 昨日、バスケ部で何があったのかは知らない。詳しく知りたいとも思わない。三井先輩が戻ってきたことが――私が待ち続けた瞬間があっけなく訪れたことが、ただ嬉しかった。
 確か、あと少しでインターハイ予選が始まるはずだ。また三井先輩のバスケ姿が見られるなんて夢みたいだ。試合をいくつか見届けたら、先輩にこの想いを伝えたい。私の存在なんて全く知らないだろうけど……三年も思い続けると多少は欲が出るものだ。もっと近くで応援したい。それには、人生で初めての告白をしなければならない。
 今年の夏は湘北バスケ部の応援に燃えよう。そうと決まれば話は早い。私は布団の上に放り出した携帯を掴んで、涼子の携帯にダイヤルした。恋話が大好きな彼女ならきっと良い相談役になってくれるはず。
 私はその夜、涼子に全てを話した。高校に入学してから、私に浮いた話が全くなかったので、とても喜んでくれた。今年の夏はきっと楽しいものになる。私はそう確信した。

第三話「翔陽戦」

 三井先輩がバスケ部に帰ってきてから約一ヶ月、私は涼子と共に毎日のようにバスケ部の練習を見に行った。インターハイ予選は既に始まっていたが、土曜の午前は学校があるため今までの試合を見に行くことは出来なかった。
 流川親衛隊を含む周りのサポーターもそれは同じで、やっと見に行くことのできる今日の翔陽戦への期待は高まっていた。それも、インターハイ予選決勝への出場権をかけた試合となっては応援する身としても余計に気合が入る。
「ねぇ悠里……今日の相手って強いの?」
 試合会場の入り口を通るなり、涼子が緊張した面持ちで聞いてきた。観客の多さに戸惑っているのだろう。「翔陽」と書かれた横断幕を掲げて、緑のジャージを着た一団がつかつかと横を通り過ぎた。
「そうみたいだよ。毎年決勝に進んでるし。シード校だしね」
 私の幼馴染も以前、翔陽は強いと言っていた。ただ、今年の湘北はいつもと違うと巷ではもっぱらの噂だった。三井先輩が帰ってきたことに加えて、流川や桜木の1年コンビと宮城先輩というボールさばきのうまい人がポイントガードにつくことで今まで赤木先輩のワンマンチームだった湘北を変えたのだ。
「強いかも知れないけど、湘北だって負けないよ」
 私は涼子に向き直ってそう言った。
 私達は幸いコートがよく見渡せる席に座ることが出来た。試合開始までまだ時間があるのに、客席はもう半分以上埋まっている。翔陽のサポーターはペットボトルなどを取り出して既に声の揃った応援を始めている。
「うわー。緊張してきた」
 涼子は微かに震える手で額の汗を吹いた。私も先程から数分ごとに尿意を催していた。
「ちょ、ちょっとトイレ」
「え!悠里さっきもトイレ行ったじゃん!さては緊張してるな」
 確かに五分ほど前に行ったばかりだ。
「そ、そんなこと言って。涼子だってすごい汗だよ」
 私は涼子に意地悪な笑みを向けるとトイレへ急いだ。



「なーっはっは!!」
 トイレへ向かう途中、聞いたことのある人懐っこい笑い声が聞こえてきた。たった今通り過ぎたドアに「湘北高校控え室」と張り紙がしてある。あの部屋に三井先輩がいる、そう思うと胸がドキドキした。知り合いだったら、試合の前に訪ねて頑張ってと一言言えるのに――私は一つため息を着いたあと、女子トイレのドアに手をかけた。
――バンッ!
「誰だ!!」
 隣の男子トイレのドアが勢い良く開き、三井先輩が飛び出してきた。私は驚いて固まったまま、ドキドキする胸を押さえて三井先輩を見つめた。先輩はたった今廊下の角を曲がっていった翔陽の選手たちを睨んでいた。
 練習中は遠目でしか見たことのない三井先輩が、いまは目の前にいる。半そでのシャツから覗く二の腕は、程よく筋肉がついていてたくましい。ドアを支える手のひらは男性らしく広く厚く、そこからしなやかに伸びた指先は逆に細く繊細な印象だった。先輩はチッと舌打ちをすると、私に気づくことなく湘北の控え室に向かって歩いていった。
 びっくりした。先輩の姿が見えなくなったあとも、胸のドキドキがおさまらない。少し立てた前髪がかっこよかったな。あごにあった傷はケンカが原因なのかな。
 三井先輩を見かけたことで、試合に対する緊張はいつの間にかほぐれ尿意もすっかり無くなっていた。



 すっかり熱くなった顔を手で仰ぎながら、私は涼子の元へ急いだ。そういえば、涼子も汗をかいて暑そうにしていたな。私は途中で目についた自販機でジュースを買うことにした。小銭を入れて1つ目のドリンクのボタンを押した時、後ろに誰かが並んでいる気配がした。今日は暑いからきっとみんな喉が渇くのだろう、早く選んでどいてあげよう。そう思いながら2つ目のドリンクのボタンを押した。
 ―ガタンッ
 2つの缶を急いで取り出し、その場を去ろうとしたとき後ろから声をかけられた。
「お釣り忘れてますよ」
 うっかりしてた。私は、「すみません」と言いながら片手を伸ばすと、もう片方の手の中でバランスを崩した2つの缶は派手な音を立てて地面に落ちた。
 恥ずかしい――足元に落ちた缶を素早く拾いもう1つの缶の行方を目で追うと、頭をつんつんに立てた陵南ジャージの青年がニッコリ笑いながら手を突き出していた。
「はい、コレ」
 彼が突き出した手には缶が握られていた。
「あ、ありがとうございます!す、すみません!」
 私はあまりの恥ずかしさにその場を早く去ってしまいたかった。彼の手から缶を受け取るとくるりと回れ右をして歩き出した。



「涼子!お待たせ」
 私はジュースを差し出しながら涼子の隣に座った。
「遅いよ、悠里!一人ぼっちで心細かったんだから」
 頬を膨らませなから涼子はお財布を取り出した。
「あ、いいよ。いくらでもないんだから。おごりってことで」
 そう言いながら私は、はっとした。缶を落としたことでお釣りを取り損ねてしまった。
「そお?ありがと!」
 涼子は冷たい缶をおでこにあてた。まあいいか、大した金額ではない。私は缶の蓋を開けた。そうだ、涼子に報告しないと。
「そういえばさっき三井先輩見ちゃった」
「え!」
 涼子は興奮してサッと立ち上がった。今にも駆け出しそうな勢いだ。
「どこで!ずるい!流川くんはいた!?」
「流川は見てないけど、控え室にいるんじゃないかな」
 涼子は肩を落とした。
「控え室かあ……試合の前に邪魔するわけにいかないよね」
 しおらしくなった涼子は静かに席に座った。
「お、いたいた」
 席についた涼子の隣に、先ほどのつんつん頭の青年が立っている。彼は私のことを見ると人の良さそうな笑顔を浮かべた。声の方に顔を向けた涼子は、その青年を見るなりぎょっとした顔をした。
「君、さっきお釣り取り忘れたでしょ。はい」
 そう言って、私の方に手を伸ばしてきた。私はお釣りを受け取ると、ぱっと立ち上がって頭を下げた。
「わ、わざわざすみません!探してくださったんですか!?」
「ははは、まあね。すぐ見つかったから良かったよ」
 私は恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。
「君たちどこ高?」
「しょ、湘北です!」
 私より先に涼子が答えていた。
「そっか湘北か。一年生?」
「はい!」
 また涼子が答える。この青年を前に随分と緊張している様だ。
「そっかそっか。俺も湘北を見に来たんだけど……今年はいい選手が揃ってるから期待してるよ」
 ニッコリと微笑むとその青年は、「じゃあ」と言って去っていった。
「ちょっと!今の陵南の仙道さんじゃない!超人気のエースプレーヤーで女子にもすっごくモテるんだよ。悠里いつの間に知り合ったの?」
 興奮した様子でまくし立てる涼子に、私は先ほどの出来事を説明した。
「なるほどね。まったく、悠里ったらどじねえ」
 私は頭を掻きながら愛想笑いをした。それにしても、まさかそんな有名な人だとは思わなかった。確かに言われてみれば、背が高くスラッとした好青年だった。あれでバスケもうまいとなれば、女子は放っておかないかも。
 私は腕時計で時間を確認した。そろそろ選手たちが体育館に入ってきてもいい時間だった。



――同時刻。湘北高校控え室前。
「うぉーしっ。絶対勝あーつ!!」
「おおー!」
 キャプテンの赤木の掛け声で気合を入れた湘北高校バスケ部は、緊張の面持ちで体育館へ向かった。仙道はその一団が目の前を通り過ぎるのを見計らって桜木に声をかけた。
「おーい、桜木」
 花道が振り向くと、機嫌の良さそうな仙道が手招きをしている。
「ん?なんだ、仙道」
 花道は睨みをきかせながらズカズカと仙道に近づいた。
「湘北の応援に来てる子でさ、ショートカットの子と一緒にいる女の子いるだろ。名前なんて言うんだ?」
 花道は頭を横にかしげた。ショートカットの子?――と一緒にいる女の子?
「肩につくかつかないかくらいの髪の毛でさ、大人しそうな子だよ。流川の応援に来てるらしいんだけど」
「る、流川だと!」花道は「わーっ」と叫んだ。
「は、晴子さんが流川の応援だと!許せん!あのキツネ男め!」
 仙道はあごを押さえてにまりと笑った。
「晴子ちゃんって言うのかあ」
 花道は仙道のことなどお構いなしに、流川ーっと騒ぎながら体育館へ向かっていった。
「ははは。桜木もあの子が好きなのか。ああいう清楚で大人しそうな子、俺もタイプだな」
 仙道はジャージのズボンに手を突っ込んで、花道が駆け出していった方向へ口笛を吹きながら歩きだした。試合開始まであと10分と迫っていた。

スラムダンク二次創作 恋愛長編「夢と現実」

スラムダンク二次創作 恋愛長編「夢と現実」

この作品は「スラムダンク」二次創作です。 原作の裏で、こういう恋愛物語があれば良いなあと思って書きました。 いわゆる夢小説を意識しております(名前変換などはございません)ので、苦手な方は避けてください。 キャラクターやストーリーを心から愛しておりますので、それらの歪曲はしないよう充分配慮する努力をしております。 著作権などには十分注意しておりますが、万が一、問題が発生した場合はすぐに削除いたします。

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-04

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. 第一話「憧れの人」
  2. 第二話「きっかけ」
  3. 第三話「翔陽戦」