近未来小説「 Neo Border - The near future -」

近未来小説「 Neo Border - The near future -」

The near future <仮想地球とラグナロク>005

「さて、また旅に出るか」Markはみんなの顔を見ながら言いました。

するとJohnがかばんからリングやイヤホンなどウエアラブル端末と、モバイル端末を取り出し渡してくれました。
「この前二人が預けてくれた守護妖精さんは、 その新しいモバイルにお引越ししてもらっている。
ただしお引越しの時いろいろ能力を上げられたので、再会時にはその成長に驚くことになるよ」

Mark
「おおーありがとう」

William
「ひさしぶりに Luca(ルカ){Williamの守護妖精}にあえるな」

John
「正直、今の世界は少し揺らぎはじめている。
人を守り、幸せに導くはずの"守護妖精システム"が広まり、この数年で確かに犯罪や争いは減少していった。
それは先進国には如実にあわられているけど、途上国との格差の隔たりや、邪念を持ったAIの誕生、 スキルの無いものが簡単に入手できる手に余るアイテムの存在。
そしてもっとも危惧すべきは、妖精依存。麻薬や、悪質ドラックのように 常に妖精と一緒にいないと家から出られない人々が増えてきているのは、グローバルスタンダードの弊害というべきだし、 他にも少しずつ、新たな問題が発生してきている。

これらは守護妖精を推奨してきた俺たちも、責任を持つべきことのような気がする。
そこで、まあ、お前たちもそうだろ。俺たちはじっとしていられるわけがない。
そこで俺たちみたいな遊子(トラベラー)にとってこれらは最高のお守りとなるはずだ。
それに、一介の凡人になったとはいえ各諜報機関は一応俺たちをチェックしたいだろうが、 この中にストーカー好きがいるとは思えないし、そこら辺の役立つ機能も忍ばせてある。」

William
「へぇー、まあ外見は普通の守護妖精のモバイルだが、お前のことだ、Fairyの羽よりはるかに大きな翼がかくされているのだろうな。
ただしどんなにITやネットが進化しようとも、全ては所詮デジタルだ。
足を動かして、人々と直接触れ合わなければ、本当のことや、深層まではわからない。
そしてそれが本来の生き物の真理のはずだ。
俺たちはそれをしっている。そういうわけで、ある意味この世界では俺たちは気の合う異端児だから、こうして一緒にいる。
なんだかんだと言いながらな。ハハハ・・・。
ただし、みんな、無理はするなよ。
おれにとってお前たちは何者にも変えられない最高の・・・・そう、飲み仲間だ。墓地でパーティをしたいとは思わない。」

Mark
「お互いにな。そして、ありがとうJohn、これでみんな自由に空を渡れる」




3人はこぶしを合わせ笑い、そしてそれぞれのドアから旅立っていった。 Good Lock



・・・そしてJohnからのプレゼントはこの後大いに威力を発揮し、3人の命を何度と無く守ってくれることになります。
守護妖精にはいろいろなクラスがありますが、今回3人が手にした守護妖精は価格すらない最高位クラスのものだったのですから。




--- みんなが部屋から出て行ったので、ここで守護妖精の詳細を少しお話しましょう。


・ 2019年6月1日の守護妖精製品発売メディア用キャッチコピー

「全世界が待ちに待った"守護妖精「光の妖精 Light Fairy」SmartPhone(モバイル機器)タイプ"がついに発売開始!
あなたのライフスタイルをあらゆる角度からサポートする妖精に、あなたは釘付けになる!
この守護妖精には様々なタイプが各企業から発売され、 あなたのニーズに合わせてアウトドアタイプ、ビジネスタイプ、メンタルサポートタイプなど特殊機能が付随しているものなどもチョイスOK!
もちろんそのほかにも、ダンス、ミュージック、スポーツなどの新たなコミュニケーションツールも豊富にラインナップ!
おおーと!
ここであれもこれも楽しみたいと言ったあなた!もちろんノープロブレム!
この"守護妖精「光の妖精 Light Fairy」SmartPhone(モバイル機器)タイプ"は そんなあなたたちの願いをかなえ、ユーザーの時々のニーズに応じた守護妖精をチョイスできるサンダーバード方式なのさー。

さあいますぐ、小さな羽をもった愛くるしいパートナーを探しにモバイルショップへゴー!

詳細は各社の"守護妖精「光の妖精 Light Fairy」SmartPhone(モバイル機器)タイプ"のラインナップを、 カテゴリ別で検索できる総合サイトにてご覧ください。
きっとあなたが望む守護妖精に出会えるはずです。   」



守護妖精は、このシステムのグローバルスタンダードに成功した"ASG"というグローバルセキュリティ企業の関連企業が開発した、 "TFS(Tutelary Fairy System)"を搭載したモバイル向けシステムで稼働します。

この規格を順守した製品が各企業から「光の妖精 Light Fairy」という名前で発売が開始されました。
キャッチコピーはOwner(オーナー)の生活のサポートですが 、実際はもっと深いOwnerとの関係を築き、Ownerを守る、つまりOwnerの命を守る守護神として稼動することが本当の目的です。

このころ世界的にあらゆるリスクについての数値化が流行となり 自分の命は自分で守る系のシステムの開発が盛んになっていました。
また、これらにより社会情勢の可視化が負荷の面を表面化してしまうことにつながり始めたため、 人心が不安定になり始め、政情不安を抱える国が増えつつあったことも、このシステムのヒットに拍車をかけることになったのです。
"ASG"は約3年前に"MSSS(Medical Support Security System)"というメディカルサポートを基軸にした、 " SmartPhone(モバイル機器)タイプシステムを発表発売し、一気にこの部門での世界シェアを独走することになりました。
同種のシステムは10年以上前からは商品開発が進んでいましたが、 全てのものはクラウドや、ネットワークの依存が不可避であったため、セキュリティでの問題がどうしても解決できないでいました。
どんなに優秀なセキュリティをかけても、すぐに新手のパッキング攻撃でダメージを受け、 また、人間がデータを扱う以上人間からデータが漏えいする事例も後を絶ちません。

そこで"ASG"は独自にスタンドアローンタイプ(単独で自立できる)の開発を進め、 完成した"MSSS(Medical Support Security System)"はその結晶となりました。
業界においてはこのシステムの概要から、半スタンドアローンの分類とみなされていますが、 非公開情報ではベータ版の内部構造が特異な形態となっていることが漏洩したため、 それを知る一部の識者からはユニークスタンドアローンと小声で揶揄されたりもしたようです。

そしてこの流れを汲みつつ、スタンドアローンに小さな人工知能を搭載したシステムが "「光の妖精 Light Fairy」" SmartPhone(モバイル機器)タイプでなのです。

本文にもあったように守護妖精はユーザーの生活の全てをサポートすることを主要な目的とします。
管理できる範囲のサポートもユーザーの望みに沿って会話をしなくても行うことができ、 気分に応じた好みの音楽が自然に耳に入ったり、なにか飲みたい!と感じたときには目の前に飲みたかったドリンクを提示し、 最短でゲットできる方法を教えてくれたりは基本です。

ユーザーの好みや、行動パターンは当然把握していますし、精神状態での変化も顔の表情や、しぐさなどから読み取ります。
例えば、苦手な人とたまたま街中で出会ったりしても、適当なタイミングで電話やメールを鳴らし、 開放するチャンスを作るなどは何の造作もなくできます。
体調管理では、例えば頭が痛くなる前に予防処置はもちろん行いますが、 かかってしまった場合は自己回復能力で直すべきか病院にいくべきか判断し、 必要ならば可能な時間をチョイスして最善の病院に診察の予約を入れることもスムーズに行います。

このような特殊処理能力には"ASG"が得意とするAI技術があってはじめて実現するため、 この時点では"TFS(Tutelary Fairy System)"のコアは他の企業群の追随を許さない、 独走状態であったこともグローバルスタンダード化の成功の理由です。
つまり"「光の妖精 Light Fairy」" SmartPhone(モバイル機器)タイプ には 小さな人工知能と呼ばれる、"little AI"が組み込まれているのです。 



おおっと、それでは頭が痛くなりかけたようなのでここで ---



3人の希望に満ちた旅立ちから数か月後、Johnの予想に添うように、"地球の悲鳴"が始まります。
これがこれから始まる人類にとっての最初の試練となります。

"地球の悲鳴"とは自然災害や異常気象など、 地球の内外的要因によってまるで地球が悲鳴を上げるように世界中の環境が変調をきたし、全生物にダメージを与えている事象です。
あらゆる原因がありますが今は伏せておきましょう。
それは現在意気揚々と進められているプロジェクトにも関係しますから。
ただし、これだけは言えます。


「自然に学ぶことはすべての基本です。この星すべてのものは自然と共に生きてきたのですから」


そして補足として一つ、この"地球の悲鳴"は後に北欧神話にでてくる、"フィンブルの冬・雪の冬"にたとえられることになっていきます。

近未来小説「 Neo Border - The near future -」

近未来小説「 Neo Border - The near future -」

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted