---On The Beach--- 渚にて……
百億の昼と千億の夜を超えて、私はこの渚で
朽ち果てようとしている。
規則的な潮の満ち引きが、私の子守唄。
満天に輝く数個の太陽が私のゆりかご。
生まれた星に酷似したこの無人の惑星に降り立ち数世紀が過ぎようと
している。
肉体は既に消滅し、意識だけがこの宇宙の辺境の小惑星をさ迷う。
生まれた星はとうに消滅し、未来永劫を旅し、この宇宙の成り立ちを
網膜に焼き付けた今、私の好奇心を満足させる万物は既にない。
銀河という銀河を徘徊し、宇宙の隅々まで張り巡らされた
私の意識は既に神の領域に達するのか……。
また、それは、壮大なる自惚れなのか……。
精神があらゆる高みに到達したとしても、結局のところ、何の答えも得られないままなのだ。
神は存在するのか?
この宇宙に果てはあるのか?
果ての先にあるものは……絶対無などありえるはずがないのだ。
時間も空間も超越した今、この生れ故郷の惑星に酷似した無人の惑星こそが、
私の屍を晒す約束された場所なのか……。
この絶対的な孤独の中で生きながらえることになんの
意味があるのか……。
意識を全宇宙の片隅まで張り巡らしたとしても、
誰も私を認識するものすら皆無なこの世界で。
……意識を閉じよう、自らの意識が支配できるうちに、命、それ自体が無意味だとしても……。
極大は極小、有は無の集合体、死は生を産み、永遠は有限、
そして無限はループ、スパイラルな階層……。
薄らいでゆく私の意識……。
砂浜を洗う波間に私を埋めてしまおう……。
砕け散る波間に……。
朽ち果てた肉体が無に帰すとき、無情なこの世界のテロリストたちに、
多くの死を齎したサタンの末裔に……。
それでも世界を愛していると、大声で叫ぼう……。
破壊、再生、嫌悪、怠惰、情熱、苦悩、煩悩、殺戮、生、死、明、暗、
陰、陽、神、悪魔、天国、地獄、そして、真理のただ中へ……。
更に百億の昼と千億の夜、私はさ迷い続け、大いなる死を迎えるその時……。
間際、私は満たされる。大いなる幸福と大いなる絶望。
なんという包容……なんという抱擁……
カ・ミ・ハ・タ・シ・カ・ニ・イ・ル・ノ・ダ
一粒の涙が私の頬を伝った。
---On The Beach--- 渚にて……