かわいい年下の男の子
リクエスト*蛍丸夢
1
ぼくには、好きな人がいる。
とても美人で、明るくて、…そう、まるで蛍みたいな人。
『蛍ちゃん、いいところに』
「主様、どうしたの?」
この声の主、ぼくたちの主様、そして、ぼくの、好きな人。
名前は美樹さん。とても可愛らしい名前だけど、鶴丸さんとか次郎さんとかみたいに大人しか呼んでない。
別にに呼んじゃだめって言われてる訳じゃないけど…なんていうか、はずかしい。
ちょいちょいと手招きをされるがままに部屋に入っていくと、ふわんと甘い匂いが部屋中に漂う
「いい匂い!」
『一さんに手伝ってもらってね、クッキーを焼いてきたの』
「くっきぃ…?」
主様はたまに、《元いた時代》の話をしたり、物を作って教えてくれたりする。
きっとくっきぃもそうなんだろうな
お盆に乗せられていたのは、小麦色のまぁるい煎餅みたいなもの。
ただ、煎餅とは違って美味しそうな甘い匂いがする
『ほら、食べてご覧?あーん』
…また子供扱いする。
役得といえばそうなのかもしれないけど、ぼくとしては一人の男として扱って欲しいのに。
「うん、とってもおいしい!」
『本当?よかったぁ』
嬉しそうに微笑むその顔が好き。
『また何か作ったら蛍ちゃんに食べてもらわないとね』
「はーい、喜んで♪」
ぼくの頭を撫でるその細くてあったかい手が好き。
「あ、主様、今日遠征でね…」
『ん?何々?』
楽しそうに弾む、柔らかいその声が好き。
あなたが、好き。
好き、なのに…
「主様、小狐めも撫でてくださいませっ!」
『わぁ!小狐丸、お帰りなさい』
「お手入れしてまいりました!ふわふわでしょう?」
『うん、ふわっふわ!』
あなたが見るのはぼくじゃない…
「…じゃあぼく、部屋に戻るね」
『あ、待っ…』
もやもやして、苦しくて、耐えられず
逃げるように部屋を出た
**
2
『…ちゃ…!…蛍ちゃん!!待ってってば!』
「…主、様…」
『どうしたの?いきなり走って行っちゃって…』
「主様にはわからないよっ!!」
あ、だめだ。
こんな事を言うつもりじゃないのに
『…ほたる、ちゃん…?』
「ぼくだって好きで小さいんじゃない!」
ショックを受けたあなたの顔なんて見たくないのに
「…そんなに背の大きな人がいいならそっちを近くに置いたらいいでしょ?」
あぁ、主様が泣いてる。
そうだ、ぼくが傷つけたんだ。
ぼくの頬も濡れてる。ぼくも、泣いてるんだ。
主様を傷つけて、自分も傷ついて、苦しくて、切なくて
こんなことになるなら
「…人の体なんて、やだ……」
『っ、ほたる……』
──あったかい。
『ごめんね、…ごめんね蛍』
「…え…?」
あったかい。これは、主様の体温?
ぼくは今、抱きしめられてる…?
『蛍を傷つけたのは私なんだよね、ごめんね…』
「……泣かないで、主様。
ぼくも、ごめんなさい。…他の刀をそばに置くなんてやだ。」
あなたが、好きだから
「もっと、そばにいたい」
『うん』
「今はまだ小さいけど、そのうち主様を守る男になる」
頬があつい。
心臓がドキドキする。
どうしよう、どうしよう。
…言ってしまえ!
「…好き、だから」
『…え?』
「…み、美樹、ちゃん…のこと、…好きだから…守りたい…」
『……へっ!?』
言ってしまった。
しかも名前で呼んじゃった。
…美樹ちゃん、顔赤いなぁ。かわいい
「好きだよ」
『え、あ…う、うん、私も好きだよ…?』
「そういう意味じゃなくて!」
好きって伝えたら、心で詰まってたモヤモヤが綺麗に取れたみたい。
なんだかすっきりした
すっきりついでに、頬にちゅ。
『!?!?』
「美樹ちゃんのほっぺ柔らかい」
『ほ、蛍ちゃ…』
「ぼく、今日から主様のこと美樹ちゃんって呼ぶから、ぼくのことも蛍って呼んで欲しいな」
吹っ切れた、というのはきっとこんな気持ちなんだろう。
名前を呼びたい。ちゅってしたい。そばにいたい。
我慢することなんて、なかったんだ!
「…それとも、ぼくのことそんなに好きじゃない?」
『そ、そんなことないよ!
…蛍、のことは、好きだよ?』
赤いほっぺをさらに赤くして、いう。
りんごみたいでかわいい、なんて言ったら、照れちゃうかな
「これから、美樹ちゃんをもっともっとぼくの虜にさせるからねっ♪」
End
かわいい年下の男の子