隣にいるのはいつも君であって(黄瀬×黒子)
この作品は黒子のバスケの二次創作です。(黄瀬×黒子)
また、この作品はBLを含みますので、あらかじめご了承ください。
1.
大好きな部活のきつい練習を終えた、帰り道に向かう校門前。僕は重いバッグを肩にかけて歩きを進める。もうすっかり日が暮れて、他の部活動生の姿も消えていた。夜空に輝く星が今日は月の光で多くは見えない。そんな月明かりのさす、静かな空間で唯一明るい光。
「お疲れ様っ!!」
その光はどの街灯よりも明るく目立つ。
「待ってたっスよ、黒子っち!」
その髪の色はひまわりの花びらのように黄色く、その瞳は太陽よりも輝き、その笑みはどんな女の子を魅了する魅惑の微笑み。肩にかけているバッグの手と反対の手を上に上げ、ぶんぶんと振るその姿はずいぶん見飽きた。
「・・・僕は別に待っていません。」
「ひどいっス~!」
黄瀬くんはいつも僕を待っている。まるで忠犬のように。いや、その姿はまさしく忠犬そのものだ。
学校はもちろん違う、僕はキセキの世代とは違う道に進んだのだから。そう選んだのだから。でも学校は違えど、黄瀬君はこうして学校に来ては僕を迎えに来てここで待っている。
黄瀬くんが帰りを一緒にできないのなら朝、僕の家までわざわざ迎えに来ては学校まで一緒に登校する。朝も帰りも一緒にできないのであれば、お昼休みか時間ごとの小休憩の時間に、黄瀬君は僕に会いに来る。
絶対、会いにくる。これをたがえたことは今までにない。
別に僕は会いに来てほしいなどひとつも言った覚えはない。もちろん、そういった関係でもない。
「一緒に帰ろ?」
僕の少し前を歩き、身長の高い彼が少しかがんで、僕の顔をその整った顔で見る。
「・・・黄瀬くんの好きなようにしてください。」
ぷいっとその顔からそっぽを向き、僕はその前を少し早歩きで歩き出す。黄瀬君は後ろで少し笑って、
「はいっス!!」
といって、僕の隣を歩き出す。
これといった話はしない。お互いに話したいときに話すような、そんな感じ。
話さないときの黄瀬君は僕の顔を見て、笑みを見せる。何が面白いのかはわからない。そんな彼にポーカーフェイスをするのが僕は精一杯な毎日。
「今日は月がきれいっスね~、ね?黒子っちもそう思うっスよね?」
空を見上げながら歩き続ける彼。月明かりに照らされた髪がきらきらと煌く。
「・・・そうですね。」
そんな彼を見ながら、気づかないことを祈った。
そう、彼の隣はいつも僕で。僕の隣はいつも彼で。
笑顔で笑う彼を僕は邪険にできず、そんなこんなで一緒にいて。
このちょっとうるさいくらいの隣の関係に僕は少しくすぐったく、そしてうれしく感じていた。
この気持ちは今日の月にしか知れない。
2.
今日の部活も終わり、着替えて、重い荷物を肩にかけて一人、校門に向かう。先輩方、火神くんと一緒に帰ろうと誘われたが、それも断った。また、黄瀬君が待っているだろうからと、仕方なさそうな不利をして。
しかし、少し不安なことがある。今日の部活は昨日とは違って少し早めに切り上げたからだ。もしかしたら、黄瀬君はいないかもしれない。彼にだって彼の部活や仕事などの用事があるのだからそれはやむおえない。でも、その場合、僕はどうすればいいのだろうか。
先に帰るのが僕なのか、それとも待っているのが僕なのか。
きっと、いつもどおりのポーカーフェイスで先に帰ってしまうほうが僕らしいだろう。僕はどっちを選べばいいのかわからなかった。考えていることとは裏腹に僕の心は待っていたいという気持ちのほうが勝っていたのだ。
待っていたら彼はどんな表情を見せてくれるのだろう。いつもとは違う笑顔を見せてくれるのだろうか。それとも驚く?どちらにせよ、そのときに彼が僕の気持ちに気づくにはわかりきったとこで、それが怖くて、でも心はどきどきで僕は結局わからずじまいに校門へと足を進めていたのである。
校門を伺うといつもと様子が違っていた。そこには多くの女子生徒が列を作って立ち並んでいたからだ。その列の先には女子に混じって一回り大きな彼が立っていた。
黄瀬くんだった。
たくさんの女子生徒に囲まれながら、楽しげに話をしていた。僕の隣にいるときとは違う笑みを浮かべて。
僕の知らないその笑顔を浮かべて。
心が音を立てて痛み出すのがわかった。ぐさりと刺さった心が、チクチクと痛み出す。
耐えられず僕はその列にさからって、黄瀬くんの隣を通り過ぎるように歩き出した。顔が見れなかった、話しかけられなかった。
「あ、黒子っち!」
僕に気がついた彼が僕に向かって手を振る。一瞬だけ止まった、しかしその方には振り返らず、再び歩みを続けた。
「ま、待って!!・・・・・ごめん、また今度っス!」
女子生徒の寂しそうな声が後ろから聞こえる。その声に混じって懸命にこちらに向かって走っている足音も聞こえる。聞こえたそのとき、僕は走り出した。黄瀬君には到底かなわない自分の足の速さはわかっていた。でも懸命に走った、後ろを振り向かなかった。
「待って!!黒子っち!!」
結局物の数分で追いつかれてしまい、離さないとばかりに彼は僕の手をにぎった。
二人とも息が切れていた。呼吸音だけが車の騒音と混じる。切れた息のまま僕は荒々しく話し出した。
「・・・別に追いかけてこなくていいじゃないですか。女の子、待ってますよ。早く向かってください。」
いかないで。心ではそう思っているのに何でうまくいえないんだろう。どうしてたった一言がいえないんだろう。
「いかないっス、俺は黒子っちを待っていたから。」
嬉しかった。素直に嬉しかっただけなのに。
「別に僕は待ってなんかいないですっ!!」
どうしてこの口はうまく動かないのでしょうか。
いつものポーカーフェイスは完全に崩れきっていた。
「待ってほしいなんていったこともありませんし、そもそも黄瀬くんが勝手に待っていただけじゃないですか!!僕はそんな黄瀬君に流されて一緒に帰っていただけです!!」
「別に僕は黄瀬くんとなんて一緒に帰りたくは無いんです!!」
そう荒れた声で話した言葉を合図に、彼は僕の手を離した。ぬくもりが消えていく。冷たい風が僕の手を冷やす。最悪だった。
「・・・それでも俺は・・・黒子っちとただ一緒にいただけなんっスよ・・・。」
後ろでいつもとは違う声音が響いた。いつものような元気さはそこには微塵も感じられなかった。それをさせたのは僕だった。
別な顔が見てみたかった。笑顔でも、もっと違う笑顔。
こんな顔をさせたかったわけじゃない。
僕は逃げるようにその場から走り去った。
「黒子っち、待って!!大事な話がっ!!!」
その声に僕は振り返ることはなかった。
いつもどおりの時間だったらこんなことはなかったにと、部活を少しだけ恨んだ。
夕日がオレンジ色に輝いていた。もしかしたら、もっと素直になれていたら、この空を彼と話しながら歩いていたのだろうか。
彼の隣には僕がいて、僕の隣には彼がいて。
夕日の空の下には影がひとつだけ。
3.
いつもより早い時間についてしまった。
今日の部活はミーティングだけで、モデルのアルバイトも今日は休み。時間ぎりぎりのいつもとは違いゆっくりと歩いてくることができた。歩きながら今日は何を話そうかとそんなことも考えることもできた。
校門前につきメールをする。たぶん返信は返ってこない。でもきっと見てくれているだろうと信じてメールする。
なんだかんだで黒子っちは俺の言うことをしっかり聞いてくれているから。
そんなところが可愛くて、優しくて、いつの間にか俺の心には友情とは違う何かか芽生え始めていた。いや、もうずっと前から。思い出すだけで顔がほころぶ。心の中に花が咲くみたいだ。
携帯を見ながら黒子っちが来るのを待っていると、三人の女子生徒が俺の前に現れた。三人は目の前でこそこそと話し合って、息をぴったりと合わせて同じことを言った。
「モデルの黄瀬涼太くんですよね!?」
言うことは前々からわかっていたから、俺は作り笑いを浮かべた。
「そうっスよ」
彼女たちは三人目をあわせて、黄色い声を上げた。
「あ、あの握手してもらえませんか?」
その中の一人が先手を切って俺に話しかけた。別に断る理由もなく俺は快く応じた。それからあとの二人が続いて握手を求め、それに応じた。
その後、彼女たちは俺の元から笑顔で去っていった。それが合図となったのか、いつの間にか俺の周りにはたくさんの女子生徒がいて俺はいつの間にか困れた状態となっていたのだ。
さっきの三人の女子たちと同様に握手やサインを求めてくる女の子たち。さすがにこの人数はやばいと思った。しかし、さっきの女子たちにはしたのにこの子たちにはしないとなると差別か何かと勘違いされてまう。俺は一人ずつ、今度は仕方なく応じた。
だから気づかなかったのだ。俺の目の前に黒子っちがいるなんて。
こっちを見て、何かを思っていた黒子っちのことなんて俺は知らなかった。
横を通り過ぎるときにやっと気がついた。いつもだったら黒子っちがしそうなことなのに、今回ばかりは何か様子が変だった。呼んでも、走っても、黒子っちは俺を避けるように走って逃げるのだ。
どんなときでも黒子っちは俺を避けることはしなかった。逃げるよなこともしなかった。
俺もさすがにあせって、女の子たちの囲いから飛び出した。後ろからは残念そうな声が聞こえた、しかしそんなことは今の俺にとってどうでもよかった。
「待って!!黒子っち!!」
やっとのことで追いついた俺は、離さないとばかりに黒子っちの手をにぎった。それは俺よりも小さく、儚い。
二人とも息が切れていた。呼吸音だけが車の騒音と混じる。
「・・・別に追いかけてこなくていいじゃないですか。女の子、待ってますよ。早く向かってください。」
先に口を開いたのは黒子っちからだった。その声は震えている。
「いかないっス、俺は黒子っちを待っていたから。」
俺は素直にそう答えた。
「別に僕は待ってなんかいないですっ!!」
その答えと同時に黒子っちが叫んだ。いつものポーカーフェイスは完全に崩れきっていた。
耳の中でそこ言葉がこだまする。反響する。
「待ってほしいなんていったこともありませんし、そもそも黄瀬くんが勝手に待っていただけじゃないですか!!僕はそんな黄瀬君に流されて一緒に帰っていただけです!!」
わかっていたことなのに、俺の心は少しだけ痛かった。
黒子っちの口から出る言葉が俺の心を揺さぶった。
「別に僕は黄瀬くんとなんて一緒に帰りたくは無いんです!!」
ぱきんとガラスが割れたような音がした。
そう荒れた声で話した黒子っちの手を俺は静かに離した。ぬくもりが消えていく。冷たい風が俺の手を冷やす。悲しかった。
「・・・それでも俺は・・・黒子っちとただ一緒にいただけなんっスよ・・・。」
俺はいつの間にか小さな声でそう呟いていた。それは俺に言える、最後のただの本音だった。
いつもとは違う声音が耳の中で響いた。俺らしい俺はそこにはいなかった。
何をやっているんだ。笑顔でいろ、笑顔だ。
こんな顔をする俺じゃない、黒子っちのことはわかっているはずなのに。
黒子っちがこんなこというはずがないことはわかっているはずなのに、それでもどこかで思っているのかと頭の中で考えてしまう自分がいて。
何か言わないとと思った瞬間、黒子っちはまた、俺から逃げるようにその場から走り去った。
そのとき思い出した。今日は絶対言わないといけないことを。
「黒子っち、待って!!大事な話がっ!!!」
今日はただ待っていただけじゃなかった。今日は大事な知らせがあった。
黒子っちは俺からどんどん離れてゆく。
夕日がオレンジ色に輝いていた。もしかしたら、もっと素直になれていたら、この空を黒子っちと話しながら歩いていたのだろうか。
ごめんと謝っていたのだろうか。
俺の隣には黒子っちがいて、黒子っちの隣には俺がいて。
『明日から三日間、撮影のためにあえなくなった。ごめん。』
夕日の空の下には影がひとつだけ。
4.
次の日。昨日のことを心の中にしまい、僕は練習に参加した。しかし、そんな中でする練習はうまくうまくいかず、すべてに空回りしてしまい、監督や先輩たちに怒られるばかり。あの鈍感な火神くんにも心配されたほどだ、きっと相当だろう。練習が終わるとさらに憂鬱になって、いつもよりも着替えるのを遅くした。いつもなら早く着替えて、早く向かうのに今はそれができない。できないというか、したくないのだ。今はまだ黄瀬君に会いたくない。会わせる顔もない。
仕方なくひとつため息をつき、部室を出ると、重い足で校門へと向かった。
すると、すぐにあることに気がつく。僕は立ち止まる。
彼がいないのだ。いつも、どんなときでもいた彼がいないのだ。今日は朝も昼だって休み時間でさえ来ていない。
「・・・・仕方ない、ですよね。」
彼がいこないのは当たり前のことだ。何せ昨日、僕が彼に勢いでも言ってしまった事はもうどうしようのできない。どんなに彼が明るくて、ポジティブだからっと言って昨日の一言で傷つかないわけがないのだ。
立ち止まった足を動かし、僕は前へと再び歩みを進めた。
月明かりさえない、暗い暗い夜。僕の隣には誰もいない。
次の日もまた次の日も彼が僕の元へと来ることはなかった。
当たり前だ、自分が何をしているのかわかっている。なのに、どうしてもどうしても寂しくて僕の心は悲鳴を上げていた。
僕が悪い。そんなのわかってる。謝らないと、いけないことも。
「そういえば、最近、黄瀬おまえんとここねぇーよな。」
火神くんが部活のときそういったのは昨日だった。二日しか来なかっただけなのに、彼はそういったのだ。でもそれだけ、黄瀬君は僕の隣にいたのだと実感する。
「何かあったのか?」
「いえ、別に何も。」
そういったはものの、僕の顔はきっといつもどおりではなかったのだろう。
三日目の今日。火神くんは僕にこういった。
「なぁ、黒子。」
「なんですか、火神くん。」
「おまえ、黄瀬のことどう思ってんの?」
思わず練習中ということを忘れてしまい、僕は固まってしまった。両手に持っていたボールを床に落とす。
「お、おい。黒子!?」
「あ、すみません・・・。」
僕が黄瀬くんのことをどう思っているか。深く追求したことは今まで一度もなかった。だからわからなかった。なんと答えれば相応しいのかも、僕の本当の気持ちもすべて。
「すみません、練習を続けます。」
僕は火神くんの問いには答えず、その場をやり過ごした。そして、心の中で悶々とさっきの質問の答えを捜し求めて、僕は今日の練習を終えたのだった。
相変わらず、校門には彼の姿はなく、僕は早々とその場を通りすぎた。
帰り道でも、家に帰って宿題をしても、考えることは同じで。眠れもせずに、いつの間にか窓からは強い朝日が差し込んでいた。
次の日である。今日で4日目。
朝から同じ問いに悩まされ、僕の頭の中はそれ一色で授業にはまったく集中できなかった。
そして、部活の時間。
「今日もまだ、来てねぇーのか?黄瀬。」
部活の練習の合間。火神くんが僕にそう問いかけた。だから僕も、ついに問いかけたのだ。言われているだけでは癪である。
「なんで僕にそんなこと聞くんですか?」
すると火神くんは当たり前のことを答えるようにその言葉を発した。間は一切なかった、躊躇も。
「なんでって、お前の隣にはいつも黄瀬がいるだろ?」
その言葉がいやというほど耳に響いた。心がざわめく。そんな衝撃を得た中、僕は今日の部活を終えた。
身支度を済ませ、校門に向かう。それは当たり前のことで当然で。別に誰を待っていようと、誰を待ってなかろうと僕が通る道なのであって校門に向かうことは普通なのである。月明かりはきれいで僕に何かを示すかのように照らす。
でも、違うのだ。当然のことで、いつものことなのに当然ではない。校門に着き、一人立ち尽くす。いつも彼が僕を待っている立ち居地と同じように。彼は今日も来てはいなかった。だから僕が変わりに待つかのように立った。
彼は今までどんな気持ちで待っていたのだろうか。それは彼しか知らないこと。
上を見上げると、暗い闇が僕の瞳を奪ってしまう。月と星が輝く空。素直にきれいだった。けど、どこか寂しいのだ。どうしてだろう。きれいなのに、美しいのに、変わらない気温に体温、なのに寂しいのだ。悲しいのだ、どうしたってどうしても。
そのとき気がついた。
「一緒に帰っていた・・・この空の下。」
僕のこの夜空の下にはいつも彼が待っていた。彼が待っていてくれると信じていたから僕は孤独ではなかった。この夜空の下、歩いていたって、立ち止まっていたって、僕の隣には彼がいて。
それが当然で、僕にとっての当然で。今ここにいる僕の当然は当然ではなくて。
僕の隣にいる彼がいない。
不意に気づいてしまうその事実に僕はひどく悲しくなった。今まで以上に、異常なほど悲しく、寂しい、喪失感。いつの間にか手にしていた携帯に、僕は電話をかけた。
コールは3回。
『・・・黒子っち!?』
その声を聞くのは4日ぶりである。
僕は息を吸い込んだ。夜の空気をすんでいて、いつもよりもおいしい。
「なんでいないんですか。」
『え?』
「なんで待っていないんですか。なんで来ないんですか。僕は待っていないでなんて言ってないです。来るなとも言っていないです。なんで、なんで、なんで・・・・・・!!」
僕は泣いていた。ここで一人ぼっち。
「なんでこんなに寂しいんですか!?なんでこんなに悲しいですか!?なんでこんなに心が痛いんですか!?なんで僕は泣いているんですか!?」
『黒子っち、落ち着いて!』
僕は精一杯に息を吸い込んだ。
「なんで隣にいないんですか!?僕はどうして一人なんですか!?」
涙が止まらない。隣に君がいない。それだけでこんなに自分がもろくなってしまうなんて知らなかった。君の笑顔、話し方、立ち姿、その何もかも僕の隣で、僕の隣にいて僕だけが知っていた。
僕の心だけが知ってした。
「黒子っち!!」
携帯から聞こえる音声ではない声が聞こえた。それは僕の片耳から。その片耳のほうを向くと、そこにはいるはずのない彼がそこに立っていた。
黄瀬くんだ。
肩で息をしながら、前かがみになって息を整えている。
「どう・・・して・・?」
僕は携帯を耳から離す。涙は自然に止まっていた。
「・・・はぁ、はぁ、・・ごめん!!」
驚きで声が出ない。
「モデルの仕事でどうしても来れなくて・・・電話でもいいから謝りたかったけどどうしてもそんな暇ももらえなくて!!今日、終わってから急いで走ってきたんだけど!!走っているときに黒子っちから電話が来て!!それで!!」
どうしてだろう。今までずっと痛かった胸の痛みが引いてゆく。
「言い訳にしかなんないっスけど、ごめん!!」
夢中で謝り続ける黄瀬君。本当は僕が謝らないといけないはずなのに、なんで君が謝っているんだろう。
不思議で、不思議で、安心して。僕は彼の目の前で笑ったのだった。
「くすくす。」
「あれ?黒子っち笑ってる?」
そんな僕を見て、きょとんとした表情。それから彼は一息ついて、笑ったのだ。
「泣かせちゃてごめん、でも笑ってくれて今は嬉しいっス!!」
その笑顔は僕を見て笑ってくれていて。それが何よりも嬉しくて。
「・・・・僕のほうこそ、ごめんなさい。」
素直にいつの間にか謝っていた。そして僕は。
「・・・・・黄瀬くん、一緒に帰りませんか。」
彼にはじめてそういったのだった。
「はいっス!!」
隣にいるのはいつも君であって(黄瀬×黒子)
遅れましたが完結いたしました。
いかがだったでしょうか?少しでも読んで頂いた方にいい話で終わらせることができたのなら幸いです。
ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。
今後の次回策にご期待ください。