鬼の博識主様。

鬼の博識主様。

鬼である忌(いまわ)と、その主様(ぬしさま)のお話。
鬼の主は博識高い虚偽娘。

忌視点のお話。

鬼親父 × 虚偽娘

鬼親父 × 虚偽娘

己の主は博識だ。

「本当に忌の髪は綺麗だね。」

ネーロ・ベネデッティーノ。
己の深い緑の髪はそういう名前らしい。

出会って間もない頃に、そう教えてくれた。

『ネーロ・ベネデッティーノ!へぇ、you.綺麗な珍しい髪色してるね。ツノも生えてるし、身長高いし…かっこいいじゃん!』

最初は覚えられなかったことも、主様はちゃんと分かるまで分かるように説明してくれる。

己は博識な主様が好きだ。

「ねぇ忌。」

名前を呼ばれる度、胸が痛くなる。

「…主様?」

視界から消えると目頭が熱くなる。

「いーまーわっ!」

触れられる度に顔が火照る。

誰も取らなかった手を、主様は優しくゆっくり取って歩いてくれる。

己は主様が好きだ。

笑みを浮かべる顔は、己が口を開けたら一口で食べてしまえる程に小さい。

色んなものを背負うその身体は、己が少し力を入れたら折れて壊れてしまえる程に脆い。

己の前を歩く主様の歩幅はとても小さい。

けれども、己はそんな主様が好きだ。

「叶刹、」

「んー?」

名を呼ぶと、少し間の抜けた機嫌の良さそうな声が返ってくる。

名前で呼ぶなんて珍しい。

さもそう言いたげな顔は己の好きな笑みを浮かべていた。

「なぁに、忌?」

「…いや、ただ少し…手持ち無沙汰になっただけだ。」

本当は、抱き締めたかった、だけ。

「そっかー、じゃあ僕は口寂しいからちゅー。」

腕の中にいる主様が己に顔を伸ばして、口付けをする。

「っ…!!!////」

「あっはは!顔真っ赤www」

ぼん、と爆発音が出そうだ。
己の顔に熱がこもる。

嬉しい。愛しい。恥ずかしい。

今までにない、感情。

互いに寄せられる顔に、主様は余裕の笑みを浮かべて見せる。

ああ、己はこんなにも人間に堕ちたのだな。

今まで憎み、嫌っていたのに…。
己はきっとこの人間になら殺されても文句は言わぬだろう。

だってきっと、「忌が死んだら僕は」

主様は「壊れてしまうよ。」

「知っているさ。」

重なる言葉は愛の印。

「「絶対に己/僕から離れてくれるな/離れないでね」」


( 博識高い主と飼いならされた鬼 )

「はは、絶対離れないよ。」
「ああ、己もだ。」
「なぁにそれ…嬉しいじゃん。」
「……愛している。」
「Yes of coure 僕も。」

end.

鬼の博識主様。

立て続けに2作目。
忌と叶刹は主従関係ですが、叶刹は忌のことを犬や下僕などと思ってません。
強いて言うならボディーガード的な。

折接忌(おりせつ いまわ)
種族は鬼。
年齢不詳。
身長は203cm。
頭に角が生えてます。

鬼の博識主様。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-02-18

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND