Bar  RainCheck

Bar RainCheck

 
 昨日までの常識が、今日も通用するとは限らない。

 
 1. Suddenly i see



  冷静になろう、冷静になろう。そう思うたびに自分が動揺していることを思いしらされる。
雪にならずに降り出した雨は、傘を持たない私の体を遠慮なく冷やしていく。
 
 
 映画の約束は明日だった。

 
 そう、それは知っている。仕事が終わって勝手に家に行ったのは私だ。それも知っている。
そして、彼の家の玄関にあった見知らぬ女の靴を勝手に見つけたのも、私、だ。
 驚かそうと思い、静かに玄関のドアを開けたせいで、彼とやたら甲高い声で笑っていた女は
私に全く気がついていなかった。声をかけるのもばかばかしくてそのまま元来た道を戻って来た。

 右手にはビールや彼が好きなおつまみが入ったビニール袋。ばかばかしい。
今頃一緒に飲んでいたかも、なんで考える自分が情けなくて笑えてくる。

 ぽつぽつと降り出した雨は小雨の分類に入る程度だが、周りを歩く人は皆傘をさしていた。
 空は白とグレーを混ぜたような色で、なんだかはっきりしない。適当に歩いていたら、
いつのまにか駅の近くの路地まで来ていた。

 雨音に慣れた耳に心地よいピアノの音が入り込む。ふと顔を上げた。

 26年間生きてきて、この手の店に1人で入ろうと思ったことなんて一度も無かった。
それでも興味を持ったのは多分、この雨とこの空の色のせいだと思った。
 
 
 「Bar Raincheck」


 いつも店の前を通るたびに少し気になっていた店。入り口が半地下になっていて、
こちらから中の様子はよく見えないが、あまり広くはなさそうだ。店内からこぼれる
オレンジの光とジャズの音が印象的だった。
 
 時間を確認すると17時を少しすぎたところで、入り口に立っている看板によると
ちょうどオープンしてすぐだった。雨宿りがしたい、お酒が飲みたい、一人でいたくない、
色々な理由が私の足を動かす。今の私には、何も怖くない様に思えた。

 to be continued...


 

Bar RainCheck

シリーズで書いていこうと思います・・・が、短編でも読める様にしたいなあと思います。
宜しくお願いします。

Bar RainCheck

ずぶ濡れの心を温める物は何ですか?

  • 小説
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  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-02-09

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