神様がいる街

神様がいる街

人間が神さまと自由に話しができたのは、昔むかしのお話し…。

あるところに

まいにち毎日
お祭りをやっている街がありました。

たくさんの下げ飾りが社のまわりの道まで飾ってあって
とても華やかで賑やかなお祭りの街です。

観光地にもなっているその社は

とてもとても
小さくて

お祭りを見に来くる観光バスを近くにとめるところさえもなく

外国からの観光のお客様も多いために
社を新しく広く大きな所へ移す計画が立ち上がりました。

昔々

ある神さまがその土地を守っていました。

神さまはその土地のお祭りがとても好きで

お囃子がはじまると
必ずその土地へやってきては楽しまれ

そして
楽しんだ御礼に…と

災害や疫病などの悪いものたちから

その土地を
その土地に住む人々を守っていました。


神さまは
万難を排する力をもっていました。


そして
いつでも

【自由】にその土地へ来れたのでした。

ある時


神さまの力を恐れている悪いものたちが、人間たちに嘘の知恵を授けました。


【 この土地に住む者たちは 神さまをお祀りしなければならない

社を建てて お祭りが好きな神さまのために毎日お祭りする。


きっと神さまも喜んでくれる

きっと神さまは もっともっと守ってくれる


きっと 神さまはこの土地と人々に幸福と富をくれるだろう。】

いつもより華やかに賑やかに行われたお祭りの日


いつものように 神さまは喜んでやってきました。


いつものように
嬉しそうにハシャぐ子供たちを笑顔で見つめていました。


『神さま!一緒にお菓子をどーぞ!』


『神さま!一緒に楽しみましょう!』


声をかけられて
神さまは勧められるままに 小さな小さな部屋へ入りました。


その途端
神さまは外へ出れなくなりました。


神さまを退屈させてはいけない

神さまが外に出れなくなったことに気がついてはいけない


だからそこでは毎日お祭りが行われるようになりました。



【お祀り】をするのは
神さまを閉じ込めておくための大切な儀式。


【お祭り】をするのは
神さまが気づかないようにするための大切な歓待


しかし
時代と共にそれは薄れて


儀式は省略され

その街で行われているお祭りの本当の意味もだんだん薄れて

神さまの為ではなく
観光客を集めるためだけのものになってしまいました。

ある日
神さまが社に閉じこめられてから


ずっとずっと見守り続けていた狛犬がいいました

『神さまが本当に気づかなかったと思うのか?』


狛犬は 自分は神さまの見守り役ではなく

【見張り役】だったと まるで自分の立場を哀しんでいるようでした。


『 神さまは気づいていたよ…最初から。

それでもなお この土地を守ってきた。

なぜだと思う?

時代と共に変わってもずっと気づかないフリをして

ここを守ってきた神さまも

社を壊せば解放される

【自由】になれる

そのとき神さまは いったいどーするのかな?

まだ神さまを見ることができる人間がいるかな?

神さまの声が聞こえる人間がいるかな?

そして
また再び

神さまが人間に姿を見せることがあるだろうか?

解放されたその時

神さまは誰にも気づかれることもなく
消えてしまうのかもしれない

そして
もう二度と姿を現さないかもしれない

それなのに

私は最後の時を 見届けることができないかもしれない。 』


狛犬は誰に話すと言うわけではなく

独り言のように

誰かに届くよう願って

誰にも聞かれないように願って


小さな小さな
呟きを風にのせた

神さまがいた
小さな街の昔むかしのお話し。

神様がいる街

とても印象的な不思議な夢をみたので、絵本風にお話をまとめたものです。

神様がいる街

社に閉じ込められた神さまは、ずっとずっと人々を信じて見守り続けていたのでしょうか。。。?

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-02-09

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