気になる男


津留賀が屋上で弁当を食べてると、そこに三島という男が来た。

津留賀「屋上に人が来るなんて珍しいですね。何しに来たんですか?」

三島「………。」

三島は黙って津留賀を見ずに、フェンスの方へと歩き出した。

津留賀「あのー。何しに?」

三島は足を止め、津留賀の方を向いた。

三島「………関係ないだろ」

三島は再びフェンスの方を向いて歩き出した。

津留賀は急いで弁当をベンチに置くと、駆け足で三島の元に近づき腕を掴んだ。

三島「な、なんだよ!」

津留賀「いやー関係なくないんですよ。もう。私が気になっちゃったんで」

三島「はぁ?」

津留賀「私、津留賀というものです。どうも昔から何かを気になってしまっては、真相を知れないと眠れない体質なのです。」

三島「知るかよ」

津留賀「まぁまぁ、ここは人助けと思って協力してくださいよ。明日も朝から仕事があるんです」

三島「うるせぇなあ!」

三島は津留賀の手を振りほどいて、フェンスのところまで歩き、そのフェンスを登り始めた。

津留賀「あ!もしかして自殺ですか?屋上に来たのは、自殺するためなんですか?」

三島がフェンスを登りきろうとした時、津留賀は三島の足を引っ張った。

三島「ちょ…何すんだよ!離せよ!」

津留賀「自殺するんですか!?どうなんですか!?」

三島「そうだよ!俺は自殺するためにここに来たんだよ!」

津留賀は安心したような顔をすると、三島の足から手を離した。

津留賀「いやースッキリしました。おかげさまで熟睡できそうです」

津留賀は踵を返して弁当の元へ歩いた。

三島「……何なんだよ、最後くらい静かに死なせてくれよ」

三島は小さな声でぼやいた。すると津留賀は足を止めた。

津留賀「今、最後くらいは静かに…って言いました?言いましたよね?」

津留賀は再び三島の元に駆け寄り、フェンスを登ってる途中の三島を引っ張り落とした。

三島「いてっ!何すんだよ!」

津留賀「最後くらいって何ですか!くらいって!今まで誰かになんかうるさいこと言われてたんですか?」

三島は津留賀の問いに答えずフェンスを登るが、再び地面に落とされてしまう。

三島「そうだよ!上司にうるさいこと言われてたんだ!……だから最後くらい静かに死なせてくれ。これでいいか」

三島は間髪入れずフェンスに登ろうとするが、また津留賀に足を引っ張られて落とされた。

三島「なんだよ!答えただろ!」

津留賀「上司には何て言われたんですか?気になってしまいまして……」

三島「なんでそんなこと言わなきゃならないんだ!」

津留賀「ですから、私が気になって」

三島はスーツについた砂を払って仕方なさそうに話した。

三島「……上司の失敗を俺のせいだと言われたんだ」

津留賀「……失敗とは?良かったら、一部始終を話してもらえますか?」

三島は堪忍したように目をつぶってため息をつき、ベンチに座った。

三島「長くなるが、いいか?」

津留賀「もちろんいいですよ」

三島「……その上司がプロジェクトリーダーのプロジェクトがあったんだ。……あー、そのプロジェクトってのは、結構大規模なシステムを組み立てるプロジェクトなんだけどな、そのプロジェクトが上手くいかなかったんだ。それで、プロジェクトが上手くいかなかったのは俺のせいだって。上司が立てた計画に無理があったのに、俺の作業が遅いから悪いんだーっつって。第一遅くなったのは後輩のせい……まぁ俺がそいつの先輩たから、それは俺が悪いって事になるんだが、それにしても上司の計画の無謀さが……」

三島が話してる間に津留賀は弁当が気になってしまい、弁当を食べ始める。
それを見て三島は少し笑った。

三島「……まぁそんなところだ。それで全責任をとってプロジェクトの失敗した代償、700万を払えとさ。普通はリーダーの責任、ないし会社の責任だろ?それを俺一人のせいにして、あいつは痛手を負わず平気な顔して会社に居座ろうとしてんだ。そんで、そんな金は無いから、一矢報いるために、あいつの恨みつらみを綴った遺書を持って自殺してやろうと思って屋上に来たら、お前に引き留められたってとこだ。まぁお前は引き留めたつもりはないんだろうけどな」

津留賀「……なるほど、事情はわかりました。ありがとうございます、わざわざ」

三島「いや、いいんだ。すまない、ベラベラと長い事を」

津留賀「いえいえ」

三島はスーツのポケットから煙草を取り出して火をつけた。

三島「……わざわざ、死ぬことはねぇのかな」

津留賀「そうですねぇ、自殺するよりは弁護士に話したほうがよっぽど合理的な判断だと思いますよ」

三島「ま、普通はそうだよな。こんな方法で一矢報いるより、正々堂々と真正面から射るほうが気持ちいいよな」

三島は内ポッケから遺書を取り出して、それを少し見つめた後に破いた。

三島「やめだ。やめやめ。それに、自殺なんてしたら天国にいけないっていうしな」

津留賀「仏教的な考えですね。天国に行きたい理由でもあるんですか?」

三島「そりゃ地獄より天国のほうが良いだろ。それに、天国には嫁さんがいるんだ」

津留賀「奥さん、亡くなってるんですか」

三島「ああ、数年前に自動車の事故でな。いい嫁さんだったから、間違いなく天国にいるんだよ」

津留賀「天国に地獄……ホントにあるんでしょうかねぇ」

三島「さあな。そんなの死んでみないとわかんないけどさ、もしもホントにあったら困るだろ」

津留賀「……死んでみないと、わからない……」

三島はベンチから腰を上げ、メモとペンを取り出した。

三島「お前の電話番号教えてくれよ。この件がどうなったか、片が付いたら教えてやるからよ」

津留賀「……え、ああ!それはありがたいです」

津留賀は自分の電話番号を三島のメモに書き記した。

三島「それじゃ、またな。ありがとよ」

津留賀「いえいえ、私は何もしてませんよ。さようなら」


三島は屋上の扉を開けて会社に戻った。

津留賀はベンチに座ったまま何かを考えていた。


半年後、同じ屋上で三島は津留賀に電話をかけた。

『……おかけになった電話番号は、現在、使われておりません』

三島は電話を切って、ため息をつき、空を見上げた。

気になる男

気になる男

気になってしまったものは確かめないと気が済まない津留賀という男が、屋上で弁当を食べていると三島という男がやってきた。脚本として書いたものなので、小説とは少し違うけれど、楽しんでくれたら幸いです。

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-02-06

CC BY
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