イエスの生涯
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一人目のイエスはパンを増やせなかった。
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十二人目のイエスは水を葡萄酒に変えられず。
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三百八十三人目のイエスは海にまっさかさま。
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六千九百三十四人目のイエスの呼びかけにラザロは答えず。
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三万二千四百七十五人目のイエスはイチジクを枯らせなかった。
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九十七万八千五百二十六人目のイエスは自棄になって叫んだ。
「ムリだ! 今度という今度は無理だ!! 不可能だ!! 『一度死んでから、復活してみせろ』だと!? 我が父よ、そんなことが――」
言い終わらぬうちに、彼は雷に焼かれて死んだ。
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二百二十九万千三百三十七人目のイエスは、そっとユダに囁いた。
「ユダ……お前が俺を裏切るんだ。俺はお前の心のうちを知っている。俺を決して裏切りたくないと考えていることも知っている。何度、お前の嘆願を聞いただろう。何度、お前は俺を裏切らなかったことだろう? だが、お前は俺を裏切らなくてはならない……そう、決まっているんだ。お前が俺を銀貨30枚で売らなければ、新しい平行宇宙がいつまでも生まれ続ける。それはどこまでも続く。無限に続くだろう。主がそうお決めになったのだから。頼む、ユダ。俺を死なせてくれ」
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槍を携えたロンギヌスは言った。「……ナザレの男、イエスよ。何か言い残すことはあるか」
イエスは言った。「――あんたらは、自分が何をしているのか知らない。俺だけだ。俺だけが知っている。これまで起きた、全てのことを。全ての『奇跡』のできそこないを。そして、この地獄を」
「……」
「あんたがそうやって迷うのは二千五百十万八千三百二回目だ。迷わなくていい、深く刺せ。俺の息の根を止めてくれ。首尾よく俺が生き返ることができたら、また会おう。一緒に美味い葡萄酒でも飲もう。……なんだか俺には、あんたが親友のようにさえ思えるんだ」
九千九百九十九万九千九百九十八人目のイエスはこうして死んで、生き返ることはなかった。
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九億九千九百九十九万九千九百九十九人目のイエスは――
イエスの生涯