おうちデート
リクエスト*茶渡夢
1
休日の午後一時過ぎ。
万里奈は緊張した面持ちで自室にいた。
『き、今日、茶渡くんが…くるんだ…』
同じ中学の出身で、高校に入ってやっと想いを伝えることができた。
茶渡くんは周りからは怖がられているみたいだけど、本当はとても心根の優しい人なのを知ってる。
そんなところを好きになったんだけど…
『…今日こそは、茶渡くんと…っ』
一緒に登下校したり、黒崎を交えて遊んだりはするが、今までキスは愚かデートをしたこともない二人
この間、万里奈が勇気を出してやっとおうちデートまでこじつけたのだった
『(あぁあぁでもそんなはしたないこと考えてるって思われたらどうしよう…)』
そんな自問自答をしている間に時間は過ぎ、とうとう彼が来る時間になった
ピンポーン
『っはい!い、今出ます!!』
心臓が跳ね、弾かれたように玄関へと向かう
ガチャ
『あ…い、いらっしゃい、ませ…』
「あぁ、邪魔する」
慌てドアを開けると、手土産を持った茶渡が立っていた
「これ、よかったら貰ってくれ」
『あ、はい、ありがとうございますっ
…汚いですが、ど、どうぞ』
ドキドキと早鐘を打つ心臓をおさえ、部屋に上げる。
少し待ってて、と言ってお茶と茶菓子を用意して部屋に戻る
**
『お、お待たせしました…』
部屋に戻ると、茶渡が床に座っていた
淹れたばかりの紅茶とお菓子をテーブルに置くと、少し微笑んで頭を撫でられた
「万里奈は気がきくな」
『へっ、いや、そんな…』
万里奈が恥ずかしさに頬を染めると、つられて茶渡も少しだけ頬を染めた
むず痒い空気にいたたまれず、慌てて話題を変える
『そ、そういえば!』
「ん?」
『えーと………な、何でもないです…』
…が、特に話題が思い浮かばず再び沈黙してしまう
不意に茶渡がお菓子に手を伸ばす
「…これはうさぎか?」
『うんっ、私が作ったんだけど…クッキーって難しくて』
「いや、可愛らしい…それに美味いな」
『ほ、ホントですか?…よかったぁ
茶渡君、甘いの苦手だったらどうしようかと…』
「甘いものは嫌いじゃない」
『そうなんですね!じゃあ今度はもっと上手く作れるように頑張ります』
「あぁ、楽しみだな」
ほっと胸をなでおろし、さっきの沈黙が嘘だったかのように空気が和む。
世間話や好きなものの話をしながら、時間はどんどんと過ぎっていった
2
「…ム、もうこんな時間か」
『あ、…』
楽しい時間はすぐに過ぎるもので、時計を見ると既に六時を過ぎていた
外は少しずつ夕日が傾き始め、茶渡もそろそろ帰るようだ
寂しさに、立ち上がる茶渡の服を思わずぎゅっと掴む
『もう、帰っちゃうんですか…?』
「…その言い方は、かなり卑怯だ」
『え?…─っ!?』
顔が近づき、唇に感触が……
『…え、あ、…さ、茶渡君っ!?』
「ん?」
『い、いいい今、今もしかして…ッ
……きす、…?』
「い、嫌、だったか?」
ぐるぐると思考が回る割にはうまくまとまらない。
顔が熱くて、ふわふわして、浮いているような感覚
『嫌なわけ、ないですっ…でも、嬉しすぎて、信じられなくて…』
「そうか、」
そう言って今度はもう一回、さっきよりも長く口づけを交わす
「…これでも信じられないか?」
『し、信じられますっ』
「そうか、よかった
…愛しているぞ、万里奈」
『わ、私も、好きですっ、茶渡君!
…あ、あい…愛してますっ』
End
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