僕の兄さん
「わりぃっ…!大丈夫か…?」
「ん、平気…」
だからそんなに苦しそうな顔しないでよ。兄さん。
そう言おうとしたら咳き込んでしまった。
かふっ、っと言う変な音と一緒に何かが手を汚すのを感じて手を見ると、血。
青褪めた兄さんが救急車を呼ぼうとするのを袖を引っ張ってなんとか止めた。
そんなことしたら兄さんが捕まっちゃうかもしれない。そんなの嫌だった。
「待ってろ!今知り合いの医者を呼んでくる!」
そう言って兄さんは家を飛び出して行った。
できれば側にいてくれる方が嬉しいんだけどなぁ。
あんな傷ついた顔しなくてもいいのに。
今回のことだって初めてじゃない。流石に冷蔵庫を投げられたのは初めてかもだけど。
こうやって、誰かを傷付ける度に兄さんの心が削られていくのを見るのは苦しい。
いつも近くにいる僕が必然的に対象となることが多いのだけど。
弟を傷つけたということがますます兄さんを傷つける。
兄さんの心がボロボロになっていくのは、僕のせいなのかな。
なら、僕が兄さんから離れればいいのかな。
これ以上兄さんが辛い思いをするなんて僕も耐えられないや。
でも、ちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ、それが嬉しいとか言ったら、兄さん怒るかな…わるいこだなぼく…ああ…なんかちょっとふらつくかも…
倒れた幽を発見した静雄が幽が死んだと勘違いして大暴れしそうになり、被害者とならんとした新羅が九死に一生を得たのは別の話。
僕の兄さん