二人の約束
リクエスト*トキヤ夢
朝
《全国一千万人のHAYATOファンのみんなー!
おーはやっほー☆》
朝、テレビをつけると、いま人気のアイドル・HAYATOが笑顔を振りまいていた
いつも通り高いテンション、いつも通りのキラキラとしたキャラ。
『…さすがトキヤ…』
その正体は、同じ学校に通っていて、幼馴染の一ノ瀬トキヤその人だ。
さすがプロというべきか、寒い中でもいつもの衣装で頑張っている
『寒くなってきたし、風邪ひかないといいなぁ…って、トキヤに限ってそんなことはないか』
なんて呑気なことを思いながら美樹はいつものように学校へ行く支度をするのだった
**
『え、トキヤが休み?』
「は、はい、一ノ瀬さん、どうやら風邪をひいてしまったみたいで…」
同じ作曲家コースの七海春歌が、心配そうに眉を下げて言う。
…まさか、本当に風邪をひくとは。
『私、学校終わったらお見舞いにでも行ってくるよ』
授業をほとんど右から左へ聞き流し、
はやく放課後にならないかなぁと待ちきれない美樹だった。
夕方
【放課後】
『トキヤ!』
「…美樹、どうしてここに…」
『トキヤが風邪引いたって七海さんから聞いたから…』
「風邪というよりは、疲労の溜まりすぎと医者に怒られましたよ」
『疲労…って…』
確かにここ最近テレビには良くHAYATOが出ていた。
しかもこの時期だからか生放送が多く、外でロケーションしていることも多かった
『…あんまり、無理しないって約束したでしょ?』
HAYATOとして活動を始めるときにした約束だ。
無理をしないでと言うたびに、約束でなんとかなるほど芸能界は甘くない、
そう言ってトキヤに何度怒られたことか。
今回もそう言われるだろう、そう思っていたのに─
「…すみません、少し無茶をしすぎました」
『え』
珍しくしゅんと項垂れるトキヤに、思わず目を丸くする。
トキヤが謝るなんて、無茶をしすぎたなんて言うなんて、これは何かの前触れなのか…
そんな思惑をよそに、尚もトキヤは言葉を続ける
「…私は、美樹の歌をトキヤとして歌いたい。
だからもっとみんなに認められなければいけないんです、…私という存在を」
『私の作った歌を、トキヤとして…』
「昔、約束したでしょう?
…いつか美樹の作った歌を、私が歌うと」
『そんな、昔の約束…』
トキヤは優しく微笑み、美樹の頭を撫でる。
最近はずっと忙しかったからかいつもこわばった顔をしていたので、彼の笑顔を見るのは随分と久しぶりな気がする
「…なんで美樹が泣きそうな顔をしているんですか?」
『だって…トキヤ、約束なんてって…』
約束しても、意味はない。
一度そう言われたことがあった
あれは確か、HAYATOとして売り出し始めたときのことだったか。
「他の誰でもない、美樹との約束を、私が忘れるハズないでしょう?」
『…無理はするくせに?』
「それは…」
ちゅ、と軽い音がして額に温もりが残る
あまりのことに、その温もりがなんなのか判断するのにやや暫く時間がかかった
『…!?///』
「すみません、でも私は早く美樹の作った歌をトキヤとして歌いたい」
『…それ、さっきも聞いた』
「何度でも言いますよ、…だからそのために、少々の無理には目を瞑ってくれますか?」
『……でも、私にくらいは弱音吐いてね?』
「もちろんです、私が本当に落ち着けるのは、美樹のそばだけですから」
今度は頬にキスとする
そして唇を指ですっと撫で…
「……ここへは、トキヤとして成功した時に、私にくださいね?」
『う…うんっ』
絶対叶えてみせるから。
End
二人の約束