味噌田楽

これも数年前に書いたものです

その店で味噌田楽を食べようと思ったのは偶然ではない。
遠い昔におなじ店で食べたのだ。
懐かしくなってね、と主人に言うと。
そうですかい。と短く答えて嬉しそうに頭に手をやった。
もっとも、数世代まえの店主の味噌田楽を食べたのであって、今の店主の祖先だろう。
皿に二つ味噌がついたこんにゃくが串にささってやってきた。その湯気が顔にあたった。いい感じだ。
お客さんは「浦島さん」でしょう?と聞くので
ああ、そうだよ。この店に来たのは、昨日の事のようだが、数世紀前の事だと答えると
当時のこの界隈の有様を店主は聞きたがった。
前の店も変わったし、両隣も違うようだと答え、この男の祖先にあたる男の話も少しした。
それにしても、よく店を保ったものだね。と言うと。
いろいろあったみたいだけど、なんとか。と話した
又宇宙へ行かれるんで?と聞かれたので、今度は少し遠くなるから、帰りは数百年後だよと答えると
それじゃあ、子孫に渡して欲しいものがあるといって、手紙を渡された。
こういう事は良く有る。
それにしても、気になるのは、そばで寝ている猫で、前に来ていた時と少しも変わらない。
当時の店主が人魚の肉を食った猫と言っていたが、存外本当かもしれない。

味噌田楽

味噌田楽

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-12-21

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