タイガーアイ
今日、マーメイドアイランドのビーチはよく晴れている。そこへタイガーがやってきてきれいなビンの中に紙とパワーストーンのタイガーアイを入れ、ふたをよくしめると海に放った。彼は心の中でつぶやく。(こんなものはいらない)
タイガー、ファミリーからの脱出!?
黄金の楽園、ゴールドサマー国、マーメイドアイランドにゴールドサマーキャッスルはあり、美しい海に囲まれている。ゴールドファミリーが住み、たやすく逃げられないように海の精霊が常に見張っている。
「…」「どうした、黙ったままで?」夕闇の近づいた空を見つめて何も言わないタイガーに優しく笑いかけるチャット。オーシャンビューのテラス席に座り、タイガーはビターカルーアミルクを、チャットはエンジェルキスを飲みながら、話をしている。「…オレは、オレはどうして存在するのか、どうして戦い、強くなるのか…」その時、ガツンといきなりタイガーの頭を軽く殴ってチャットが言う。「おいこら、そんな難しいお話じゃないだろ、勝手にお話を難しくして読者が減ったらどうするんだこら!責任取れるんだろうな、アホか!?」チャットの目から炎がメラメラと燃えさかっている。「…ああ、ごめん…、でも…」タイガーは何か言いかけるが聞く耳を貸さないチャットはポコポコと再びタイガーの頭を軽く殴る。「難しくしてんじゃねぇ、わかったか、アホ!?」(シャーーーーー!)「わ、わかったわかった、落ち着けチャット!」その後、落ち着いたチャットはタイガーを見て言う。「何をそんなに考える、苦しむ?…何不自由ない日常と生活を約束されているというのに。考えなくていい、楽しく生きろ。人生は楽しく生きたやつの勝ちだ。考えなくていい、そうだろ。だから出て行くな」真剣な目をして2人は少しの間、にらみ合う。「…やめろ、止めるだけ無駄だ。軽い怪我じゃ済まないぜ。オレはもうガキじゃないし、外の世界へ行く。こんな家出て行ってやるんだ!」タイガーは強く言う。「…なんて、冗談だ。…わかってるよ」ふっと笑い、チャットは少し目を閉じて開いた。「自由に生きろ、タイガー」ホロホロと涙を流すチャットにタイガーは微笑む。「…お前に会えて良かったと思うよ。…チャット!オレはタイガーだ。自分の信念の導きがある!オレはファミリーを抜け、自由になるんだ」
すっかり夜になる。タイガーは部屋に戻るとベッドに横になる。コンコンとドアをノックする音だ。「食事の時間です」「わかった」メイドの声に応えるタイガー。
食事の席に12人の兄弟と父と母が集まる。
「ローズ、話があるんだ」ファミリーの母、ローズに近づいてタイガーが言う。「いいでしょう」ローズは応えた。「場所を変えて話したい」「わかりました」2人はローズの部屋に場所を移した。
「それで、どういったお話かしら?」「この城の下階級者を自由にしてやれ。マカロン、フォックス、カルーア、エイプリル、オアシス、リリー達を自由にしてやれ。14年前オレ達をここへ連れてきて、閉じ込め、階級まで作りやがって…。あいつ等は関係ないのにオレのせいだ。だからオレがあいつ等を自由に返してやるんだ」ローズをにらみつけてタイガーは低い声で言った。「それはできません。私達ゴールドファミリーは元々、弱く力のないファミリーです。ここを抜け出せば強く力のある者達からひどい扱いを受けるだけです。弱い者は強い者に逆らうことはできません。従い、陰としていきるしか道はありません」ローズは言い切った。「黙れ、オレは本気だ」タイガーがうなるように言う。その時、開かれていた窓から夜風が吹き抜けた。「どうしても行ってしまうのですか?」「ああ」タイガーは大きく頷いた。すると、ローズは鍵を取り出してタイガーにわたす。「下階級者の牢の鍵です」タイガーはそれを黙って受け取る。
サイレンが城に響く。
「どうした!?」「地下で誰かが下階級者を逃がしたらしい!?」警備員がざわざわと騒ぐ。「牢には鍵をかけていたはずだ、いったい誰が…」「さあな、逃げても後悔するだけだぞ」走って、地下へ向かう警備員。
「あの、ありがとう…」「ああ…、速く行け」感謝するカルーアを急かすタイガー。「でも、アレックスはどうするの??…アレックスも一緒に行こうよ!」カルーアが不安になって叫ぶ。「しっ…、速く行け。オレは反対の方角へ逃げて奴らを引きつけるから、その間にお前らは逃げろ。…できる限り遠くへだ。…オレは大丈夫だ、助っ人がいるから。それと、………その名前で呼ぶなっ!」タイガーは思わず声を上げる。すると、警備員が近くまでやってきた。「誰だ、そこにいるのは!」警備員がこちらへずんずんと近づいてくる。「…しまった、…そういうことだから、速く行け」「うん」カルーアは走った。
タイガーアイ