娘にクリスマスプレゼントを

これは、自分が夢で見たものを小説化いたしました。
小説に取り組んだのは、初の試みですので、読みにくい、つまらないといったことがございましたら申し訳ありません。

ちなみに小説家というよりも、夢を文章に起こしただけですので、夢日記に近いです。
何度か確認はしておりますが、誤字脱字が有りましたら、ご指摘くだされば、幸いです。

短編

これは、北海道国札幌都の西区初沙夢、2031年初秋~初冬ごろの話だ。
その頃、俺は、40歳、既婚で10歳の娘が一人ペットにシベリアンハスキーが一匹という家族構成だ。
秋のはじめまでは、みんな普通の生活をしていたんだ…
だけど、時として我々を住まわせてくれる大地は、時として、我々のすべてを奪うことを忘れていたのだ…

それは、先に行ったとおり、秋のはじめに起きた。
北海道国内を壊滅させるほどの大地震だった。

それによって俺は妻と子と離れ離れになることになったんだ。

それは、突然起こった。

「ねえ父さん。今年のクリスマスは、ギターほしいな?」

「音楽始めたのか。どんなジャンルだ。」

「えっとねー友達とガールズバンドでロック弾くの」

「そっか。それなら俺が使ってたギターをやる!俺もVROCKを弾いてたからな。」

「やだよう。あれ古いし、こわれてるんじゃない?」

「何だと?俺がずうとメンテナンスしてきたんだ音は格段にいいぞ!」

そんな他愛もない会話を子どもとしている時だった。

ドン!!!

轟音と共に食卓が宙に一瞬浮いた。
何だと思った時には、家中の家具が音を上げるほどの揺れが襲う。

「キャー!!」

「テーブルだ!テーブルの下に潜れ!早く!」

「ワンワン!!」

ペットのシックスが大きく揺れるタンスのそばで吠えている

「シックス!来い!」

シックスを呼ぶが地震に驚いているのかいうことを聞かない。

「シックスを連れてくる。ここから動かないで居てくれ。」

「わかった気をつけてねパパ!」

妻の心配を背に受けながらシックスの元へ向かう。
シックスの首輪を掴んだその瞬間タンスが倒れこんできた。
俺は思わずシックスをかばい背にタンスの直撃を受ける

「グッ!!!!」

痛みのあまりうめき声を上げるが、痛みは一瞬で収まる。
どうやら大したことはなかったようだ。
そして、揺れもいつの間にか収まっていた。

「パパ!大丈夫!?」

「うん、大丈夫。」

娘と妻がタンスを持ち上げてくれた。
その瞬間、懐からシックスが抜け出し俺の頬を舐める。
シックスが無事だったことに安堵しながらも周りを見渡し被害状況を確かめる。
固定されていないほとんどの家具が倒れている。
相当な揺れだったようだ、再度家族が皆無事なことに安堵する。
と、同時にこの地震の情報が気になった。このレベルの揺れだTVで詳しい内容を報道しているだろうとテレビを付けに行くが、そのテレビ派無残な姿になっていた。
仕方なく、携帯の緊急速報を確認する。なんと、震度6の地震が起きていたらしい。

その日は、余震も乗り切りなんとか家の整理もついたが、その後数日余震は、止むことがなく、俺は食料に限りがあることを懸念し、場所も近いからと、家族を避難所へ向かわせ、俺自身は、犬を避難所へ向かわせるわけには行かないのと、幸い家が避難所よりも高い場所にあるため家に残ることにした。
だが、それがそもそもの間違いだったのだ。
妻と娘が避難所へ向かって2日後、長く続いた余震のせいで緩んでいた地盤が大雨により、滑り落ちた土砂崩れが起きたのだ。たまたまこの家は、土砂崩れから外れたが、避難所に土砂が直撃した。
俺は、焦った。
そして走った。
生きていると信じていた。
だが、避難所へたどり着いた時、絶望が襲った。

建物が半壊、瓦礫、泥、血…それらが目の前を埋め尽くしていた。
へばりそうになる体を支えながら、職員を探し妻と娘の所在を確認した。

次に襲った感覚は安堵だった。
どうやら妻と娘は、土砂崩れの少し前に道内は危険だということで青森へ強制的に避難をさせられたらしい。
それを知らせる電話をしたのだが、俺が気が付かなかっただけのようだ。

安堵したのもつかの間今の土砂崩れで避難用のバスがすべて土砂に埋もれてしまったということだ
その中には、発進間近で避難所から移動するためバスに乗り込んでいた一般市民もいたということだ。
その方たちは可哀想だが、もうなくなってしまってる方がほとんどだろう。
俺は、次の避難用バスの到着を確認した。

「次が来るって言っても、この状況で…直通で上へ連絡できる無線は泥の中だし…いつになるかわからないね。」

「そうですか。では決まり次第連絡ください。あと、家から作業着取ってきて救助者捜索の作業手伝いますよ。」

「これは、ありがとう御座います。ではよろしくお願いします。」

早く妻と娘の元へ向かいたいのは山々だが、この状況では、致し方ない。
それに土砂に埋もれたとはいえ生きてる人がいるかもしれない。
見捨てる訳にはいかない。
その気持から、家に作業着を取りに向かう。
やはり家族も心配なので、家に向かいながら妻の携帯に連絡してみるが地震の影響で皆連絡の取り合いをしているのか、繋がらない。
ここの所ずっとそうなのだ、妻への連絡は一旦諦め、救助者捜索の準備にとりかかる。
救助者がいるなら車があったほうがいいだろう。
捜索には時間がかかるため何日か泊まりこみできるよう食料とドックフード救助者の保温用と自分の寝具として毛布をありったけ車に積む。
シックスも同行し避難所へ向かった。

1日中捜索活動を行い10人ほど助けだすことができた。
しかし外傷はないが腹痛がひどいという患者がおり
救急車が手一杯で来れないため、犬が居て構わないならと、俺が病院まで運ぶことになり、夜道を走っていた。
病院につき、患者を医者の手に預けた所で信じられない事実を突きつけられた。

「笛吹さんの奥様とお子様のいる避難市民を受け入れたあと青森県に続く新青函橋が崩れてしまったそうなんです。」

新青函橋とは、5年ほど前、地下を通る青函トンネルを新幹線専用にし、乗用車用高速道路と、在来線用線路が並列し海の上を走る2つの橋ができた。
そのため、車用道路が崩れても線路橋は無事な可能性がある。
「えっ!でも線路はどうなんですか!?」

「線路はかろうじて残っているのですが地震によって脱線した車両が道を塞いでるらしくて…」

「それじゃ、避難はヘリでしかできないということですか…」

「いえ、それが十勝岳や有珠山などが地震の影響で噴火して火山灰でヘリが飛べないみたいなんです。」

「そういえばそんなニュース、ラジオで…てことは、避難どうすんの?」

「道内の被害の少ない場所に避難だそうです。」


そんな話をナースとしている時、妻から携帯に連絡が入った。

「よかったやっとつながった…ここの所地震のせいで携帯のつながりが悪いから…なかなか連絡できなくてごめんなさい。」

「それは、しょうがないよ。こっちからもつながらなかったから、そんなことよりお前たちは大丈夫なのか?」

「うん。私も美優も無事。でも、私達の居た避難所は無事じゃなかったんだってね?…」

「ああ、俺もさっきまで、救助に参加してた。今は救助者を病院に運んでたんだ。」

「ねぇパパ?なんとかこっちに来れないの?」

「せめて噴火が収まるまでは難しいだろうな…美優の声聞かせてくれないか?」

「わかった…」

「父さん!大丈夫!?」

「うん、大丈夫!父さんだからな」

「ふふっ、良かった…ねぇ父さんやっぱりこっち来れないかな?」

「大丈夫すぐに収まって、そっちで会えるよ。クリスマスまでにはギター持ってそっちまで行くから」

「うん…分かったじゃあね」

「うん、またな。ままにもよろしく伝えておいてくれ」

「うん。分かった。」

娘には、そう約束した。
だが、11月になっても地震はやまなかった。
むしろ悪化した。
長く続く地震の影響で土砂崩れや地すべり、地割れが起き、北海道に壊滅的な打撃を与えた。
噴火も収まる気配を見せなかった。
とうとう携帯も一向に繋がらなくなり、俺は、自力で青森へ行くことを決意した。
実際何十人かは、脱線した車両を通りぬけ青森にたどり着いているらしい。

早速出来るだけの食料と、防寒着、娘に上げると約束していたギターを車に載せシックスとともに車を発進した。
函館までは、高速道路が使えないため、5時間はかかる予定だった。
だが最悪なことに写万部岳あたりで吹雪に捕まり車を吹き溜まりの雪山にぶつけてしまい車が動かなくなってしまった。
ここからは、徒歩で向かうほかない。
しばらく歩いていたが、雪と火山灰の吹雪で思うように進めない。

「シックス、少し休もう。」

と、シックスに声をかけ持ってきていたテントで吹雪が止むまで休憩を取ることにした。
しばらくすると異変に気がついた。
シックスの様子がおかしい、しきりに外の様子を気にしてたまに唸っていた。
外に何かあるのか?
外を覗いてみると、30メートル向こうにもぞもぞと動く大きな影がある。

『まずいぞ。熊だ』

直感的に感じ取った。
だが、もう近くまで来ていて、今からテントを出て逃げたとしても確実に捕まってしまう。
向こうから離れてくれるまで気付かれないよう動かないで乗り切るしかなかった。
しかし、熊は食料を探しているようだった。
確かに冬眠準備のため食料を探す時期でもあった。
地震の影響で人の気配がなくなったため、人里まで降りてきたのだろう。
そんなことを考えながら、危機が去るのを待った。
しかし、その危機はテント付近まで来ていた。
テントの中には食料があるためその匂いを嗅ぎつけてきたのだろう。

護身用に持ってきていたツールナイフを構え入り口付近で熊が顔をだすのを待った。
こうなれば、この熊を殺すか、撃退させるほか生き残るすべはないだろう。
ただ闇雲にナイフを振り回したり外に飛び出せば、熊を刺激し怒らせるだけだ。
食料を求めテントの中に鼻を出した瞬間を狙い弱点である額を突き刺さねば、殺すことはできない。

そう思いナイフを構えていた。
だが予想外のことが起きた。
熊がテントの上からのしかかってきたのだ。
身動きがとれない。何度ものしかかってくる。
自分の身を守ることに手一杯になっていた時シックスが、外に飛び出していった。
おそらく自分たちの身を守るため、熊を追い払いに行ったのだろう。

「やめろ!!シックス!!」

思わず叫んだ次の瞬間肩に爪を立てたくまの足がのしかかった。
だが、すぐに軽くなった。
急いで外にでるとシックスが熊の前足に喰らいつき熊が振り解こうと体を振っていた

「もう大丈夫だシックス!!逃げるぞ!!」

そう声をかけるがその口を離そうとしない。
熊が立ち上がったことでようやく口を離したが、それでも熊野真正面に立ち吠えている。
逃げられないことは、シックスにも俺にもわかっていたのだ。
だが、幸い熊の気はシックスが引いてくれているため、俺は、熊の死角に周りそこから額付近に攻撃し撃退しようと考えた。

そのため、弱点である額を攻撃しようと移動を開始した瞬間。
「ギャン!!!」

熊がシックスを噛み雪の上に放り投げた。
頭が真っ白になった。
気づいたらナイフを振り上げ熊に突進していた。
熊は、驚き森に逃げ帰っていった。
急いでシックスに近づいたが、血だらけですでに息は細く目は閉じかけていた。
俺は、半泣きで傷に持っていたタオルを巻きシックスが痛がらないよう傷を避け抱きかかえ動く車がないか首だけ回して探していた。
動物医の所に連れて行こうとしたのだ。
この壊滅的状況で見てくれる医者がいるかもわからないのに…

「キュゥン」

シックスが細い声で泣いた。
シックスに目をやると痛いであろう傷がある首を上げ、俺の口を舐めた。

二、三回舐めたあと、シックスは俺にもたれかかるように体を倒し、一粒の涙を流し目を閉じた。

俺は泣いた。
年甲斐もなくシックスを抱えわんわん泣いた。
しばらく泣いたあと、娘と妻に申し訳なく思った。
しかし、娘と妻のことを思い出したおかげで、生きる気力がわいた。

シックスに墓を作り大好きだったゴムボールのおもちゃと、シックス用のおわんにドックフードを入れ、手を合わせたあと、シックスの首輪をポケットに入れ歩き出した。
吹雪は止んでいた。

その後、シックスを失った悲しみを思い出さないよう止まることなく歩き続け、新青函橋についた。
一度線路の前で立ち止まりシックスを思い出した。
また涙があふれた。
そこで、前へ向き直り青函橋線路を眺める。
果てない橋の先に妻の真美、娘の美優の顔を思い出し、足を上げ進みだした。

半日かけ歩いてきたためあたりは真っ暗になっていて、波の音だけが聞こえてきた。
手すりがあるとはいえさすがに危ないと思い、テントを張り夜が明けるのを待った。

夜が明けると軽く雪の積もった線路が見える。
もう何十日も列車が通っていないためレールもところどころ凍りついている。
テントを片付け歩き出した。
また2時間ほど歩くと脱線したという車両に辿り着いた。
縦にまっすぐ止まっているように見えるその列車がない方の線路は、レールだけ残し崩れてしまっている。
やはりこの車両の中を渡っていくしかない。
運転席のドアが開いている北海道脱出を先にした人が開けたのだろう。
迷わず車両内に乗り込み後ろへ後ろへ進んでいくと最悪の自体が待っていた。

後ろに車両がこれまでの地震のせいか、海側に落ちてしまっていたのだ。
このままだといずれこの車両はすべて海に落ちるだろう。
今そうならないことを願いつつ線路に降りようと今いる車両のドアが開かないか試したがムダだった。
ドアが開かないなら、抜け出る方法は窓しかないと窓を開けようとするが、車両が歪んでしまっているのか、どこの窓も開かなかった。
こうなってしまっては、窓を割るしか脱出の方法がない。
そこで、かばんの中からツールナイフを取り出そうと、リュックサックをおろしたその時

ギィィィィッィ…ガン!!

という大きな音がなった。
その刹那、最初に地震が起きた時よりも大きく体が宙に浮く

『落ちている』

そう、直感した。
窓を見ると橋の裏側が見えた

『まだ死ねない。ギターを美優にプレゼントしなきゃ…』

そう思った瞬間。

窓が割れ水が押し寄せてくる。

『ギターが流される。』

思わずギターを抱き寄せた。
体がどんどん沈んでゆく苦しい。

『美優にギター…』

もうそれしか頭になかった。
苦しさがどんどん増してくる。



苦しい。



苦しい。





ふっ、と、苦しみが消えた。
目の前が暗くなった。

娘にクリスマスプレゼントを

最後まで、読んで下さり、ありがとうございました。
この話は、まえがきに記載のように僕が実際に夢で見たものを、文章に起こしたものになります。

この夢を見て、また作品を記載していて感じたことは、災害により家族、また愛する人、友人
これらの人々が散り散りになった時、心配で胸が張り裂けそうになります。
なので、そういったことが起こる前に、普段からそうなった時に集まる約束の場所を複数個決めておくことが重要だと思います。

なぜ、複数かといえば、決めていた場所が災害によっていけなくなっていた場合、今回の作品のように、ペットが居て避難所には連れ込めない場合などがあるからです。

そういった教訓を与えてくれたこの夢と、読んでいただいた方々に感謝を申し上げ筆を置かせていただきます。

娘にクリスマスプレゼントを

2031年初秋~ 主人公:笛吹貞光(うすいさだみつ)は、妻:真美(まみ)娘:美優(みう)ペット:シックス(犬種:シベリアンハスキー)と、ともに中国との戦争により独立した元、日本の東北、北海道国で、ごく普通の家庭を築いていた。 しかし、幸せだったはずの暮らしに突如訪れた震度6の地震によって、家族は、離れ離れになってしまう…

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-04

CC BY
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