ある日のつらつら

渋谷駅のお抱え喫煙所で、タバコを吹かす。無心な様に見えるかもしれないけれど、どうでもいいことを考えていた。
私は成人しているけれど、外見は若く見られる方だ。もし今目の前に警察官のおじさんが来たら注意を受けるかもしれない。
タバコを吸いながらメールを打つ若い兄ちゃんに、どっちかにしなよと思う。ながら行為はあまり好きではない。
足の細いお姉さんがいて、純粋に羨ましい。
ただの通行人がこちらを嫌そうに見る顔に、好きに生きさせてくれと嘆く。
タバコを一気に吸うと咽る。
でもそんなので咳をしてしまったら周りの喫煙者から暖かい目で見られそうだから涙目になっても我慢する。私って結構意地っ張りだ。
頭の中で今日の予定をシミュレーションする。
あの授業ではノートをとるだけ。あの授業では予習をしていないから指名されたら終わるな。
ポケットに入った携帯が着信を伝える。どうせ迷惑メールだろうなぁ。
次なに聴こう。最近アニソンとボカロしか聴いてない。
リピートしすぎた、そろそろ飽きたな。
今日の朝ご飯は甘いパンにしよう。
メロンパンかジャムパン。それと紅茶オーレだな。
あ、そろそろタバコの限界。
もう一本いきたいとこだけど、値上がりしたから我慢。
それよりもお腹すいたから早くコンビニ行こう。
ipodを操作する。やっぱりリピートすることにした。



喫煙所から離れ、歩き出すとようやく私の時間が動きだす。
私の中で喫煙行為はロスタイムだ。
ほんの7分くらいだけど、寝坊したら吸えなくて苛々する。
いつも通りを通せば朝の貴重な時間を7分割かなければならない。
でも、この7分に自分が振り回されているのだと思うとたまらない。
私の人生を左右できるものなんて私から関わらなければ微塵も存在しない。
私の一日を始めるにはこの7分が不可欠であることに気付いた。
でもロスタイムであることに変わりはない。
そうやって私を依存させてあっさり体を蝕む7分は、そこにいるコンビニ店員から見ても無駄なんだろうな。

ある日のつらつら

ある日のつらつら

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2010-12-08

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