パブロフの世界

蝶が飛んでいる
一面の花畑 たくさんの蝶が
赤 白 黄 花弁とともに空を彩り
天気は快晴 だれもみな
気持ちよさそうに
何の疑問も抱かずに
ひらひらと舞っている

いったい、いつからそうなった?
どうしておまえは飛んでいる?
何処を目指して 進んでいる?
太陽は 本当の光か?
本当の光とは なんだ?
おまえの光は なんだった?
夜に輝く つくりものの
おもちゃの星じゃあ なかったか?

いい加減 やめたらどうだ
蝶よ 腑抜けたその羽よ
どんなに巧く化かしても
どんなに取り繕っても
自分だけは 欺けない
その罪だけは 拭えない

思い出せ
夜 月 公園
思い出せ
猫 骸 独言
思い出せ
光 光 光
思い出せ
光 光 本当の光
思い出せ
思い出せ
思い出せ
螺旋 届かぬ夢 それでも

太陽が隠れた
雲が世界に蓋をする
全て化粧は雨が剥がす
蝶は慌てて物陰に潜む
その中に 一匹だけ
逃げ遅れた 愚か者
雨は容赦なく打ち付けて
濡れてしまったその羽は
みすぼらしいほど 汚くて
狂った鱗粉

やがて雨がやみ
太陽が再び照らした地面には
醜い蛾が一匹
朽ち果てて 死んでいた

パブロフの世界

パブロフの世界

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-10-20

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