なんきん かぼちゃ ぱんぷきん

なんきん かぼちゃ ぱんぷきん

青果店でいつもと違うなんきんの皮の色を見て早苗は狼狽えた。
いつもは深い緑色なのに、今日のなんきんの皮は橙色をしている。

「今日はハロウィンやから、西洋かぼちゃ仕入れましてん。パンプキンですねん」
青果店の若い男の店員がニコニコしながら早苗に話しかけてきた。

関西ではかぼちゃの事をなんきん、と呼ぶ習慣があるので早苗はかぼちゃやらぱんぷきんやらはろうぃんやらハイカラな事を言う若い男の店員に、兄ちゃんわかってへんな、なんきんて呼んだらええねん、と少しイライラした。

「パンプキンスープなんか作らはったら、ご主人喜ぶんちゃいますか〜」

なんきんの煮物が大好物だった二年前に死んだ夫の事を早苗は思い出した。しかしなんきんの煮物は息子にはすこぶる評判が悪く、孫の運動会のお弁当に作ってあげたら、おばあちゃんくさい料理や、と残して持って帰られた事もあった。けれど”なんきん”と言えば煮物か天ぷらぐらいしか75歳の早苗には思い付かなかった。パンプキンスープの作り方などもちろん知りはしない。

「お兄ちゃん、そのぱんぷきん頂戴。煮物にして食べるわ」
「毎度です〜」

家に帰って早苗は鍋でなんきん…ではなくパンプキンを出汁と薄口醤油と砂糖と味醂でコトコト煮込み始めた。ある程度煮込んだら火を止めて蓋をしてなんきんに味を染み込ませる。

「おばあちゃん、煮物の匂いが外まで匂ってたで」
近くに住む孫の大学生の朱莉がそう言いながら早苗の家の台所にずかずかと入って来た。

「美味しそうな匂いやな。なんきん?うちも今日は料理作ってきてん。パンプキンプリンやで」
「ぱんぷきん…はろうぃんやからか?」
「そや。彼氏にあげよう思て。おばあちゃんも食べてみてや」

差し出されたパンプキンプリンはプルプルとしていて美味しそうだが、なんきんイコール煮物の概念しかない早苗は、まずいんちゃうの、と思ってしまう。
しかし孫が一生懸命作ったパンプキンプリン…食べないわけにはいかない。早苗が恐る恐るスプーンで掬って一口食べてみると、初めて食べるパンプキンプリンは早苗の想像以上に美味しかった。

「これ美味しいな。ぱんぷきんのプリン言うからどんなんか思うたけど、なんきんの味もちゃんとしてるな。どうやって作るん?」
「そやろ、上手い事出来たやろ」

そう言いながら朱莉はいつの間にか鍋のなんきんを菜箸でつまんでもぐもぐ食べていた。
「なつかしいわ、この味。ほっこりする〜。自分で作ってもおばあちゃんみたいに上手く出来ひん。お母さんも煮物料理苦手やし…そうや、プリンの作り方教えたるから、おばあちゃんなんきんの煮物の作り方教えてや。彼氏にも食べさせたいから。なんやかんやで男は煮物に弱いねん」
「しゃあないなぁ…ほんならおばあちゃんの秘伝のレシピ伝授したろか。小さい頃はあんなに嫌がってたのになぁ」
朱莉は小さく舌をペロリと出した。

なんきん かぼちゃ ぱんぷきん

なんきん かぼちゃ ぱんぷきん

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-10-18

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